個人の情報が大手新聞社のそれを上回ることもある時代

山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士がX(旧ツイッター)にポストした内容が、数万件以上閲覧され、「いいね」の数でも大手新聞の元ポストのそれを大きく上回っているようだ―――。情報発信の「素人」であるはずの一般人が発信した情報の方が、情報発信の「プロ」であるはずの大手新聞社の発信情報よりも多く閲覧されるというのは、興味深い時代だと思わざるを得ません。

残るメディア、衰亡するメディア

音楽はレコードが廃れてCDに、CDが廃れてウェブ配信に。

映像は映画が廃れてテレビに、テレビが廃れてVODに。

文字情報は瓦版が廃れて新聞に、新聞が廃れてウェブサイトに。

これは、ごく自然な流れではないかと思います。

そして、これは「良いか悪いか」という話ではありません。人類の文明が、より便利な方向に、より快適な方向に進んでいくのは当然だからです。

問題は、ある媒体が衰亡する際の「原因」です。

映画、レコード、ラジオ、CDといったメディアの場合、新しいメディアが出現したことによって、かつてと比べてそのメディアが衰退することは避けられませんが、それは新しいメディアの方が「利便性が高い」というだけのことで、古いメディアにも良さがあれば、意外とそのメディアは残っていくものです。

たとえば映画館にかつてほどの賑わいはないにせよ、今でも大画面で迫力のある映像や音声を楽しみたいという人は一定数存在しています。かつてほどではないにせよ、繁華街には映画館が残っています。また、レコード盤の雑音に味があって好きだ、という愛好家の方は意外と多いようです。

したがって、著者自身は、新しいテクノロジーが登場したとしても、必ずしも古い媒体が世の中から完全に消滅するというものではないと考えています。それぞれ、長所や短所があるからです。

朝日新聞の舌鋒鋭いトヨタ批判

しかし、そのメディアの衰亡に、「それ以外の原因」があった場合は、どうでしょうか。

もっといえば、これまでの独占的な地位にあぐらをかき、不正確な情報を垂れ流し続けてきたような場合、そのメディアはいったいどうなってしまうのでしょうか。

じつは、これについて私たちは、「現在進行形で」、あるメディアの衰退を目撃しているのです。

昨日の『舌鋒鋭くトヨタ批判の朝日新聞…自社記事訂正は十分か』では、朝日新聞が12日付の社説で、国交省から認証不正についての是正命令に関連し、トヨタ自動車についてこんな批判を繰り広げた、とする話題を取り上げました。

  • 自浄能力を疑わざるをえない
  • 法令逸脱を真摯に反省し、再発防止に全力を挙げるべきだ
  • グループの統治に大きなほころびがあると疑うべきだ
  • トップが問題に正面から向き合わなければ、信頼回復は出発点にも立てないだろう
  • 今回の是正命令を契機に、経営姿勢を根本から改めなければならない

あくまでも個人的な感想ですが、これらの批判、言葉も強く、トヨタ自動車がそこまで「悪いこと」をしたのか、という意味では理不尽な気もします。

というよりも、豊田章男会長自身が認証制度のプロセスへの疑問を表明していたという事実などに照らし、正直、国交省がトヨタに対する是正命令発出に踏み切ったのは少しやり過ぎではないかと思いますし、朝日新聞のトヨタ側の言い分に関する取材が不十分ではないか、という疑問は払拭できません。

ただ、トヨタ自動車が国交省による是正命令を受け取ったということは事実であり、同社が今後、製造物の安全水準をさらに高める契機となるのであれば、それはそれで歓迎すべき話ではあります。

朝日新聞自身も記事を訂正

しかし、ここで問題となるのは、そこだけではありません。

昨日も指摘したとおり、朝日新聞は8月11日付で配信した記事を巡り、国立科学博物館の谷健一郎研究主幹の発言を引用した際、谷氏の意図とは真逆の内容を伝えたとして、谷氏本人からX(旧ツイッター)上で指摘があり、その後、朝日新聞は記事の段落削除と見出し修正を行ったのです。

これについては、本当に不思議です。

自動車メーカーであるトヨタ自動車が安全性能に問題のある自動車を世に送り出したら大問題ですが(※というよりも今回の件はあくまでも検査の問題であり、安全性の問題ですらありません)、新聞社である株式会社朝日新聞社が重大な誤りを含んだ記事を世に送り出して、シレッと訂正、で許されるのでしょうか。

トヨタ自動車に対し、「自浄能力を疑わざるをえない」だの、「再発防止に全力を挙げるべきだ」だの、「グループの統治に大きなほころびがあると疑うべきだ」だの、「トップが問題に正面から向き合わなければ、信頼回復は出発点にも立てないだろう」だのと舌鋒鋭く批判したのです。

朝日新聞自身がトヨタ自動車に「今回の是正命令を契機に、経営姿勢を根本から改めなければならない」と要求した以上、自社が配信した記事に大きな誤りが含まれていたにも関わらず、それをたった数行、「段落を削除しました」、「見出しを改めました」、「ごめんなさい」、では、さすがに釣り合いません。

怪しい自称会計士のポスト

こうしたなかで、山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士がXに、こんな内容をポストしていたようです。

どちらも数万件のインプレッション(表示)があり、「いいね」の数も元ポストを上回っています。

怪しげなハンドルネームの一個人が発信した情報が、情報を専門としているはずの大手新聞社が発信した情報よりも多くの人に閲覧されるというのは、本当に興味深い時代が到来したものだと思う次第です。

この点、「紙媒体としての新聞」の終焉と、「新聞社の経営が今後どうなるのか」という点については、本来、論点はまったくの別物です。

しかし、少なくともネット時代に突入してくると、エビデンスのない情報、数値のない意見、専門的知見を欠いた記事などを配信していると、やがて社会のマトモな人々からは見放されていくことは、おそらく間違いないと思うのですが、いかがでしょうか?

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    大手新聞社といえども、取材するのは記者個人であり、その記者の能力が某会計士より劣っていれば、個人の情報が大手新聞社に勝ることもあり得るのでは。

  2. G より:

    お盆休みで実家にいて、なんかスポーツ中継じゃない普通のテレビを見て(見せられて)もうオールドメディアは高齢者相手に全振りしてるなぁって感じます。新聞も高齢者全振りって発想で見るとすごくわかりやすい。
    怒りっぽいお年寄りを刺激して、なんでも批判批判。誘導したい左寄りの思想を載せて。CMはお年寄りにお金出させるようなものばかり。

    お年寄り大変ね。。。

    正直感じました。

    ネットの世界ではコマーシャルも遮断出来ますし、好きなネタだけ見ることが出来ます。

    斜陽の産業に縋られる立場大変ですねー 振り切ることができる人は全力で逃げることをオススメしますね。

  3. 雪だんご より:

    >やがて社会のマトモな人々からは見放されていく

    これは、逆に言えば”マトモじゃない人々”からは支持され続けると言う事かも?

    いくら論破されようと論破された現実その物を認識しない人達。
    自分が間違っているとちゃんと理解した上で堂々と大嘘をつく人達。
    何らかの集団に所属していないと自己肯定感を持てない人達。
    努力してもどうにもならない位元から頭が悪い人達。

    こういう人達は”やり方を変えないオールドメディア”を求め続けるかも知れません。
    それで採算が合うのかどうかは大いに疑問ですが。

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