「容量市場」巡る朝日新聞記事に電気事業連合会が反論
大手新聞が報じた内容を業界団体などが即時反論する、といった事例が増えてきたように思えます。その典型例でしょうか、朝日新聞が14日に報じた容量市場に関する記事に対し、電気事業連合会が16日、反論文を公表しました。具体的には容量市場や容量拠出金を巡って、「『公平な費用負担になっていない』や『正当な競争状態が損なわれ、電力自由化に逆行する』との指摘はあたらない」、などとしています。
「容量市場」に関する朝日新聞の記事
「大手新聞が報じた内容に対し、業界団体などが反論する」――。
最近、こういう事例が増えている気がします。
本稿で紹介したいのは、朝日新聞が4月14日に報じた、こんな記事の事例です。
地域新電力の半数「価格転嫁」 将来の電力不足防ぐ「容量市場」本格開始 朝日新聞社・NGOに75社回答
―――2024年4月14日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より
残念ながら記事自体は有料会員限定版であるため、朝日新聞と契約をしていなければ全文を読むことはできませんが、無料で読める部分にはこんな趣旨の記述が確認できます。
- 将来の電力不足を防ぐため、発電所の維持・建設費を捻出する制度で負担の支払いが今年度から始まる
- 1.6兆円の大半は、電気を売る小売り電力会社が負う
- 発電設備を持つ大手電力は追加収入が見込める一方、発電設備をほとんど持たない新電力には新たな負担だ
このリード文から判断する限り、この「容量市場」という仕組みに何やら問題がありそうです。
容量市場とはなにか
では、この「容量市場」とは、いったい何でしょうか。
資源エネルギー庁の2021年6月29日付『くわしく知りたい!4年後の未来の電力を取引する「容量市場」』という記事によると、「容量市場」とは「必要な時に発電することができる能力(kW)」を売買するために、2020年に創設された市場のことです。
少しわかり辛いですが、これについてもう少し噛み砕いておきましょう。
そもそも論ですが、『太陽光発電には総量規制が必要だ』などを含めて当ウェブサイトでも以前からしばしば指摘してきたとおり、電気は発電する側(供給側)と使う側(需要側)が基本的にはピタリと一致している必要があります。
もしも需要が多すぎると周波数が下がり、最悪の場合は停電してしまいます。停電すると社会全体で莫大な損害が発生します。さまざまな精密機器が壊れるかもしれませんし、病院で手術などをしていた場合には、命に関わるかもしれません。
そのとくに深刻なものが、「ブラックアウト」です。2018年9月、北海道で発生した地震などの影響によるものが有名でしょう(その概要については資源エネルギー庁ウェブサイトの次の記事などもご参照ください)。
日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか
―――2018-11-02付 資源エネルギー庁HPより
ただ、「ブラックアウト」などを防ぐために、無制限に発電力を高めれば良い、というものでもありません。
需要以上に発電しすぎれば送電容量をオーバーするかもしれませんし、また、供給側が需要側を上回ってしまった場合には、周波数が上がってしまうかもしれません。つまり、電力は多すぎても少なすぎてもいけないのですが、これが重要な問題を引き起こします。
当ウェブサイトでは何度も指摘して来たとおり、太陽光を筆頭に、再エネの多くは発電量が安定しません。その日の天気によっても発電量が異なるため、もしも再エネだけに依存していれば、電力の過剰や不足が頻繁に生じます。
だからこそ、その調整力として、火力などの発電が必要になってくるわけです(図表)。
図表 火力発電などによる調整
(【出所】資源エネルギー庁)
朝日新聞の記事を図書館で読んでみた
さて、朝日新聞の記事自体は有料契約をしていないと読めないのですが、別件で図書館に出掛けた折、この記事をざっと読んでみました。
朝日新聞には、こんな趣旨の内容が記載されています。
- 2016年の電力自由化により大手電力10社以外にも電力が販売できるようになった
- 一方、価格競争が進むと新たな発電所建設が進まなくなる恐れがある
- そのため国は「容量市場」を創設。発電会社を対象に入札を行い分配する一方、原資のほとんどは小売会社が負担する
- 環境NGOや朝日新聞が地域新電力75社から得た回答では、半数以上が価格転嫁を予定していた
- 公平な費用負担になっているかとの質問に対し、地域新電力の75%は「なっていない」「あまりなっていない」と答えた
- 容量市場の費用負担によって新電力だけ値上げせざるを得なくなれば、大手との価格差が広がる
- 正当な競争状態が損なわれ、電力自由化に逆行するという批判も強い
- 初回入札で維持・建設費を受けられる発電所の割合は化石燃料の火力が72%、原子力が4%、再エネ(水力以外)が0.2%で、運転から30年以上が4割を占めるなど、結果的に古い火力発電所を支える制度になっている
…。
たしかにこの記事「だけ」を読むと、この新制度は大手を優遇する一方で中小事業者に不利な制度であるようにも見えますし、日本全体が環境に優しい社会を目指さなければならないところ、古い火力発電などを不当に優遇するという、問題だらけの制度であるかにも見えます。
「優先給電ルール」や「ピーク電力やミドル電力は火力発電所によらざるを得ない」などの実情(『【総論】電力系統の維持に適さない太陽光発電の問題点』等参照)を知っている人でもなければ、「火力発電所を推進するとはなにごとだ」、などと思ってしまうかもしれません。
電気事業連合会が朝日新聞記事に反論
以上を前提に置いたうえで、電気事業連合会が16日、ウェブサイトに公表した、こんな声明文を確認してみましょう。
容量市場における容量拠出金負担に関する一部報道について
―――2024年4月16日付 電気事業連合会HPより
「一部報道」、とありますが、リンク先を読んでいただくとわかるとおり、朝日新聞を名指しした反論文です。通常、この手の「一部報道」と称する声明文では報じた社を伏せるケースが多いように思えるのですが、電気事業連合会は本文の冒頭で、こう述べています。
「4月14日付朝日新聞1面において、容量市場における容量拠出金負担に関する記事が掲載されております。記事では、容量拠出金の負担が大手電力と新電力の間で公平になっていないとの印象や、正当な競争状態が損なわれ電力自由化に逆行するとの印象を読者に与える内容になっていると考えております」。
筆致自体は抑制的ですが、ただ、情報源については「4月14日付朝日新聞1面」とはっきり名指ししていますので、上で引用した記事に対する反論、ということで間違いないでしょう。
では、いったい朝日新聞の記事の、何が問題なのでしょうか。
電気事業連合会はこの「容量市場」が創設された背景について、次のように述べます。
容量市場が創設された背景
- 全面自由化後、小売電気事業者は、自らの需要(販売)に見合った供給力を確保する義務が課されたが、多くの事業者は発電設備を保有していない
- 発電事業者においては、卸電力市場の取引量の拡大や、市場価格の低下により、発電設備の維持費等の回収の見通しが不透明になっている
じつは、電力が全面自由化されたことで、そもそも現在、小売電気事業者(電気を各家庭などに販売する業者)と発電事業者は別々になってしまっています。
そして、本来ならば小売電気事業者の側に、十分な電力を供給することが義務付けられているのですが、業者の多くは肝心の発電設備を持っておらず、逆に、発電事業者の側も、将来の電力需要を当て込んで設備を維持しようとしても、その見通しが立たなければ、発電設備を十分に投資できません。
つまり、この「容量市場」は、将来が不確実な電力需要に対応するため、小売事業者と発電事業者の間で、「将来の発電能力」を売買するための市場であり、その売買価格を市場メカニズムによって決定しようとする仕組みだと考えれば良いでしょう。
朝日新聞の指摘は「あたらないと考えている」
電気事業連合会は、こう続けます。
「将来の安定供給への影響が懸念される中、容量市場は、日本全体で必要な中長期的な供給力(kW)を効率的に確保するための仕組みとして設けられたものであり、容量拠出金についても、全ての小売電気事業者に需要規模に応じて、負担が公平に求められているものと承知している」。
つまり、私たち一般家庭は小売電気事業者から電気を買っていますので、この容量拠出金は全小売電気事業者を通じ、公平に負担されているものだ、とするのが電気事業連合会の主張です。これについては、次の記述が参考になるでしょう。
「このため、『公平な費用負担になっていない』や『正当な競争状態が損なわれ、電力自由化に逆行する』との指摘はあたらないと考えている」。
このあたり、新聞報道が正しいのか、それとも資源エネルギー庁や電気事業連合会の説明が正しいのかの判断は、私たち国民の側に委ねられていますので、当ウェブサイトではどちらが正しいか(あるいはどちらが間違っているか)についての判断を述べることは差し控えます。
ただ、ひとつだけ事実を述べておくと、1997年に7271万部(※朝・夕刊セット部数を2部とカウントした場合。以下同じ)に達していた日本全体の新聞の部数は、直近の2023年には3305万部と、最盛期の半分以下に落ち込んでいます。
ということは、新聞社やテレビ局がかつて持っていた絶大な社会的影響力が、インターネットやSNSなどの発達に伴い、急速に剥落していることは間違いありません。
あくまでも個人的な感想ですが、オールドメディアの社会的影響力が低下している要因は、単に「インターネットやSNSが便利だから」というだけではなく、どちらかといえば、「新聞、テレビの側の情報が不正確だということがインターネットでバレ始めたから」、という側面があるようにも思えてなりません。
いずれにせよ、もしも「不正確に報じられる」というリスクを低減するならば、官庁や企業としても、「新聞、テレビなどを通して発表する」のではなく、「みずからインターネットなどを使って直接に情報発信する」方が良いのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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電気事業連合会の記事は技術的にはその通りです。
今までも消費者が自家発電を設置すれば点検などで停止中の電力は電力会社から購入するわけでその分の電力を基本料金として支払っています。
しかしFITによりその部分が消えた?(見えなくなった)様に見えます。
FITの普及を第一にしたのか。と思っていましたが今回の改正で正常化した様です。
技術的には正常化ですが政治的にはどうなのか。
FITのいかさまも知られ始めましたから政治的な思惑では戻らないと思います。
>朝日新聞の記事を図書館で読んでみた
ネットストーカーみたいネトウヨって朝日新聞を嫌ってるくせに朝日新聞の記事を読んで批判するんだねそんな朝日新聞が嫌いなら読まなければいいのにネトウヨってキモイ
>読んでみた
この、読んでみた、は、チェックしてみた、という意味なんだよね。チェックは必要なことだからね。
読解力の無い人間は、文章全体の意味や筆者の意図を読み取ることが出来ないから、字面だけ見て突っかかって来るんだね。
やはり、朝日のような言葉遊びの記事?ばかり読んでいると、文字面にしか反応出来なくなるのかね?
この投稿ってキモイ
嫌っているからこそ読む必要があるのではないですか。
自分が好む主張ばかり読んでいると自らエコーチェンバーに引きこもるようなものでしょうね。
”彼を知り己を知れば百戦殆からず”
匿名さま
「知的好奇心を刺激すること」
がブログ主さまのコンセプトと思います。
そのコンセプトから考えると
気になる記事を読むことに何ら違和感は感じませんが如何ですか。
キモイで思考停止していると指摘好奇心は刺激されないですよ。
ハハハはは
わざわざこういう排他的で非建設的な投稿が平気で出来る
『あんたが一番キモイ』ということを自覚することを
これからのより良い人生のために強くおすすめします。
と、
それと人を批判するのであれば、名を名乗れ、無礼者。
と、思いますけれども。如何かな?
Xで毎日のようにパヨがコミュノに被弾してるのなんでかなーと思っていた。なるほど!確認すると敗け、ソースに当たるとしぬのね。パヨは論理的な思考ができない、建設的な議論が出来んわけだ。
ネトウヨ連呼する連中にまともな奴はいないって自ら証明するとは律儀なお方。
大盛況ですね。私も先日農繁期直前の最後の余暇として管理釣り場へ行きまして、暖かな日差しの中で一日楽しく過ごさせて頂いたところです。
また、お笑いのボケの要点を抑えているにも関わらず短文で仕上げる技術も素晴らしいです。売れている笑い芸人コンビCなども、意味不明な事を言ってオウム返しのツッコミでなぜか客が笑うというのに辟易としております。ソレに比べて、◯◯を嫌いなのに◯◯を見ているんだね、という唐突な発言によって「別に見ていることと好き嫌いは関係がない」「新宿会計士が嫌いなら新宿会計士を読まなければいいのに」などなど、一つの発言から多数の矛盾や理不尽を包括して読者の脳を興奮させる。私もボケるときはかくあらねばならないと思いました。
朝日新聞やマスコミ連中が何か悪さをしてないか、企んでないかと警戒すること、そしてその事実や兆候があれば世の中に警報することは安全で健全な社会を作るためにとても意義あることです。個人の好き嫌いの問題じゃないですよね。
そうそう、社長だか芸人だか「嫌なら見るな」と言っていたテレビ局が今ではテレ東にさえ抜かれる始末。
朝日新聞社もきっと1部でも多く買ってもらいたいだろうから、まさか「嫌なら読むな」とは言わないでしょう。
むしろ「図書館で読むより家で購読して」というのが本心じゃないでしょうかね?
これは……レスを沢山もらいたいが為の釣りですよね?さすがに。
既に「このブログがキモいなら読まなければ良いのに」と当然の事を言われていますし。
まさか、まさか、ガチの朝日新聞大好きな「ネトウヨ!ネトウヨ!」タイプが
このブログに書き込むなんて事は……さすがにないですよね?
……でも、句読点もない。改行もしていない。もしかして、ホンモノ……?
◎ 挨拶状では「句読点」はつけない?句読点を入れない理由とマナー
https://www.aisatsujyo.jp/column/manner/punctuation-in-greeting-cards/
句読点の話題が出ましたので、少し引用が長くなりますが、付けない理由があるようです。
>伝統的ではないから
日本における句読点の歴史は浅く、使われるようになったのは明治以降であるといわれています。そのため、日本の伝統的な文書には句読点が使われていません。これが、挨拶状に句読点を使わない一つ目の理由です。
>相手を子ども扱いすると捉えられる可能性があるから
句読点が使われ始めたころ、句読点は子供が文章を読みやすくするために付けられていたといわれています。そのため、挨拶状で句読点を付けることで、相手を子ども扱いしていると捉えられてしまうリスクがあるのです。
その他、目上の社会的な地位が高いと思われる方への便りにも、句読点は使うな、ということも聞いたことがあります。(尤も、句読点を気にする方達は、もう引退されている世代の方々でしょうけれど。)
さて、それは、ともかくとして、最初の匿名コメント主が、句読点を全く入れなかったのは、上記のようなことではなく、以下のようなことかもしれません。
◎ 中高年は知らない…若者がLINEで句読点がついた文を心底嫌悪する本当の理由
https://president.jp/articles/-/61340?page=1
これによると、今の若者は、特に、句点付きの文章を読むと、「詰問」されているように感じるのだそうです。
最初の匿名コメント主は、この見方からすると中高年以上ではないようです。尤も、コメントの内容も「青い」ですから、中高年以上とは思えませんが。
「句読点がついた文章」を威圧的に感じる、と言うのは
目から鱗でした。私はむしろ句読点も改行もないと
「矢継ぎ早に叫ばれている」と言う印象を受けていました。
これはもう人それぞれと言うしかないでしょうね。
発電専業事業者っての再生可能エネルギーなる美名の元に、クリームスキミングを公認されているんだから、当然の権利なんでしょうね。エンロンと同じでクソきわまりなく、健全では無い。
ご紹介いただいたHPのひとつ上の階層。
http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/opinion/index.html
関連報道に関する当会の見解というものが常設せれているのですが、対象に挙がっているのが共同通信、東京新聞、日経新聞、朝日新聞。
如何にもという面子です。
日頃からハラワタ煮えくり返る思いをしていたのだと推察します。
あれ?毎日新聞がいない?
電力需要に応じて蓄電設備で平準化したときに貯めておいた容量を、容量不足になったときに発電事業者が場合によって買い取る仕組みかと思った。
そういう仕組みがあっても良いかもしれませんね。
今の蓄電技術では経済的にペイしないと思いますが。