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自民党なら「裏金」なのに立憲民主党なら「事務ミス」

またしても、立憲民主党です。産経ニュースの27日付の報道によれば、立憲民主党の野間健氏の政治団体が政治資金パーティー収入の50万円を2020年分の政治資金収支報告書に記載していなかったとして、25日、総務省に訂正を報告していたことが判明したのだとか。ただ、事務所側はこれについて「事務的なミス」だと説明しているとのことですが、普段、自民党側をさんざん「裏金議員」だと批判していることとの整合性が取れていません。

立憲民主党は「裏金」を追及するが…

疑惑を追及している人が、じつは本来、追及されるべき立場にある、というのは、意外とよくある話なのかもしれません。

いわゆる「裏金」疑惑を巡って、最も舌鋒鋭く自民党を追及している政党のひとつが、最大野党・立憲民主党です。

ここでいう「裏金」とは、自民党の少なくない議員がパーティー券収入などを政治資金収支報告書に記載していなかったとされる疑惑などを指しますが、パーティー券収入自体はべつに違法性があるものではなく、あくまでも違法な(あるいはその疑いがあるとされる)行為は、第一義的には収支報告書の不記載です。

正直、審議すべき事項がいくらでもある現在の情勢下で、国政を停滞させてまで優先的に追及すべき課題なのかといわれれば微妙ではあります。

しかし、立憲民主党は最大野党という立場もあり、この「裏金」疑惑を徹底して追及する構えであり、先日は泉健太・党代表自身が「裏金議員のいない日本を目指し、いまこそ政権交代」などとする動画を、X(旧ツイッター)にアップロードしていたりもします。

「裏金議員を辞めさせる」――!

ずいぶんと、威勢の良い話です。

あなた方は本来、追及「される」側では?

ただ、こうした動画なり、ポストなりを眺めていて覚える違和感があるとしたら、はたして立憲民主党にそれを追求する資格があるのか、という点です。

以前の『立憲民主党にまたもブーメラン:所属議員「裏金」疑惑』でも取り上げたとおり、じつは立憲民主党の側にも政治資金収支報告書違反や公職選挙法違反などの疑いがいくつか生じているのです。

たとえば安住淳・立憲民主党国対委員長は昨年11月に、政治資金収支報告書にパーティー券収入を記載していなかったとして、報告書を訂正しています。

立憲・安住氏もパーティー券収入を不記載 政治資金収支報告書を訂正

―――2023年11月29日 18時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

また、梅谷守・衆議院議員を巡っては、有権者に対して日本酒を配布していたことなどが今年2月に判明しましたが、これについてはその最終結果について、いまだに公表されていません(もしかして、このまま「なかったこと」にして逃げ切るつもりでしょうか?)。

立民議員の日本酒配布、発覚3週間も…岡田幹事長「最終結果まだ」 与党追及機運に水

―――2024/03/12 19:35付 産経ニュースより

さらには、文春オンラインは今月、立憲民主党の川田龍平・参議院議員を巡って、後援会の収支報告書に支援者からの寄附金の不記載があることが、「『文芸春秋』の取材でわかった」、などと報じています。

参院議員・川田龍平に政治資金規正法違反の疑い! 隠蔽された寄附者は一審有罪判決を受けたあの“臓器移植仲介人”

―――2024/03/13 16:12付 Yahoo!ニュースより【文春オンライン配信】※リンク切れ

野間健氏もパーティー券収入不記載

これらのうち川田氏の件については、現時点では文春が報じただけであり、あくまでも「疑惑」の段階に留まってはいますが、立憲民主党がともすれば「疑惑」の段階から自民党などを舌鋒鋭く追及しているという点を踏まえると、報道に対して無視を決め込むのはいかがなものかと思います。

また、安住淳、梅谷守両氏の件については本人も認めている行為であり、とりわけ政治資金収支報告書不記載を立憲民主党が普段から「裏金」と呼んで批判していることを踏まえるならば、やはり立憲民主党は、安住淳氏のことを「裏金議員」として「辞めさせ」なければ、整合性が取れません。

こうしたなかで、本稿でももうひとつ取り上げておきたいのが、こんな話題です。

立民・野間健氏の政治団体、パーティー券収入50万円記載漏れ 総務省に訂正報告

―――2024/03/27 16:22付 産経ニュースより

産経によると立憲民主党の野間健衆院議員(鹿児島3区)が代表を務める政治団体が、政治資金パーティー収入の50万円を2020年分の政治資金収支報告書に記載しておらず、総務省に25日付で訂正を報告したことが27日、野間氏の事務所への取材で判明したそうです。

記事によれば、事務所側はこれを「事務的なミス」としているのだそうですが、これもなかなかに理解に苦しみます。自民党がやれば「裏金」、立憲民主党がやれば「事務的なミス」というのは、どう考えても謎と言わざるを得ません。

「与党の不祥事は悪い不祥事」、「野党の不祥事は良い不祥事」、とでも言いたいのでしょうか。

本質的にはメディアの問題でもある

もっとも、こうしたダブル・スタンダードが生じる原因としては、単なる立憲民主党の問題というよりも、メディアを挙げた問題であるようにも思えてなりません。

たとえば『立憲民主党不祥事の話題避けるテレビこそ自民党応援団』でも触れたとおり、テレビ朝日の番組で田崎史郎氏が立憲民主党の梅谷守・衆議院議員の「有権者買収疑惑」を指摘したところ、玉川徹氏が「別にここで取り上げなくてもいいかなと思います」と応じた、とする「事件」もありました。

これなど、テレビ朝日を含めた一部のメディアが堂々とダブル・スタンダードを振りかざしているという証拠そのものでしょう。

もっとも、マスメディアが「報道しない自由」を振りかざせば情報を隠蔽できていた時代は、すでに過去のものとなっています。情報の流通が新聞、テレビの独占ではなくなり、インターネット空間で情報が自由に流通するようになったからです。

このため、たとえば先ほども紹介したXのポストでも、立憲民主党に対しては「自民党議員を『裏金議員』と呼ぶのなら、御党の議員も『裏金議員』ですね」、といった趣旨のコメントが殺到しているのが実情であり、彼らの多くが安住、梅谷、川田の各氏の事例などに言及している格好です。

これも「メディア支配」から私たち日本人が脱却しつつある証拠なのかもしれません。

いずれにせよ、各種世論調査で一貫して立憲民主党を筆頭とする野党の支持率が低いのも、基本的には野党そのものに加え、立憲民主党などの野党の行状をちゃんと報じようとしない多くのメディアにも、原因があると思うのですが、いかがでしょうか。

オマケ:メディアの問題

なお、本稿のちょっとした「オマケ」です。

ロイターのティム・ケリー記者が2023年6月16日付でツイッター(現・X)にツイート(現・ポスト)したこんな動画を見ると、なんとなく日本のメディアの特徴がわかる気がします。

ケリー氏の説明によると、これは首相官邸での「ぶら下がり」と呼ばれる取材で、記者が要人に群れている様子が大変よくわかります。この手の取材方式が外国でもあるのかどうかはわかりませんが、少なくともこの「ぶら下がり」は日本のメディアでよく目にするものでもあります。

冷静に考えると、官庁ロビーなどで、こうした取材ができるのも、オールドメディアの特権です。というのも、私たち一般人が首相官邸に出掛け、要人に直接、こうやって話を聞くことはできないからです(カメラやスマホなどをもって官庁ロビーに立ち入ろうとしても、通常は中に入れてもらえません)。

そして、こうした記者が官房長官記者会見の場に現れ、「能登半島地震で物資を空中投下せよ」などと主張したりする(『パラシュート投下の危険性の実例』等参照)のですから、なかなかに強烈です。

ガザ地区で支援物資のパラシュート開かず市民5人犠牲東日本大震災から13年目を迎えます。今年は新年早々に発生した能登半島地震の影響もあり、防災意識を高めている人も多いのではないでしょうか。こうしたなか、「政府の初動が遅い」、「なぜ物資の空中投下などを行わないのか」と官房長官に詰め寄った記者がいたようですが、このうち少なくとも「政府が空中投下を行わなかった理由」がとてもよくわかる事例も出て来ているようです。東日本大震災と能登半島地震今年も、この日がやってきました。今から13年前の2011年3月11日に発生...
パラシュート投下の危険性の実例 - 新宿会計士の政治経済評論

意外な話かもしれませんが、自民党の不祥事をなくそうと思えば、こうした記者クラブ特権を廃止するのが手っ取り早いかもしれません。メディアを改革すれば立憲民主党などの野党を「報道しない自由」で守ることはできなくなり、酷い野党は自然消滅し、野党のレベルが上がることで、自民党もうかうかしていられなくなるからです。

今から10年後、「むかしは新聞、テレビという利権集団がいて、こんなぶら下がり取材が横行していたんだよ」、といった笑い話ができるようになっていると良いのですが…。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 裏金やキックバックというネガティブなワードを連呼し、犯罪と思われるように印象操作する。
    刷り込みが終われば裏金問題ですべてをくくる。
    あとは裏金問題、裏金議員と呼ぶだけで大多数の人は犯罪と思ってしまう。
    あれ~これって森友問題になんか似てますね、最も森友問題は完全な冤罪でしたけど。

    • その最初の例が(古い話ですが)ロス疑惑ではないでしょうか。(ロス疑惑は、文春の内容が正しいとは限らないという例ではないでしょうか)

  • 敵国の工作員が堂々と政治屋やって国会で妨害活動してるんだもの
    凄い国だよなあ、日本って

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    ①オールドメディア:「野党を育てるために、野党のスキャンダルを追及してはいけない」(オールドメディアと立憲は、応援している関係で心理的に一体なのでしょう)
    ②立憲:「自民がやれば裏金、我々がやれば事務ミス。他人がやれば不倫。自分がやれば純愛」
    ③オールドメディア:「将来、国民のためになるのだから、ネットは野党のスキャンダルを拡散してはいけない」
    これって笑い話ですか。

  • 「オールドメディアが報じていないからといって、事実ではないとは限らない。だからオールドメディアが報じていない○○(好きなことばを入れてください)も事実に違いない」という陰謀論ができるのではないでしょうか。

  •  台湾が日本産サンマ節の水際検査で、ベンゾピレン検出過多のため弾いたそうで。
     これ自体は珍しいことながらも別段おおごとでもなく、知識があるか、無くてもベンゾピレンってなんじゃって眼前の箱やら板やらでサクっと調べれば済む程度の話題です。
     しかしこのニュースがヤフーニュースに転載されると……

    「自民党の政治家が政治と行政をやっているのだからきちんとした検査なんてやらない」
    「日本だけが添加物や農薬をバンバン使っているのは事実、消費者としては禁止してほしいが利権の裏金もらってるためやらない」
    「農家だってまじめにやるの馬鹿らしいと思ってるせい」

     といったヤベェコメント(裏金も農薬も何も関係が無いし事実ですらない)がどしどし寄せられ、しかも"共感"の方が多いものまであります。論理的な反論コメントは投稿数自体は多いものの、こちらは"うーん"が上回るものも。
     ジミントウノウラガネ問題、かなり世間に響いてしまっています。事実や事情などそっちのけ影響・風評でかなりの害を出してしまっている方が問題に思います。まぁ政局という観点においては、立憲がクソザコナメクジ過ぎてさほどなんですが。

     ちなみに食品関連なためか、安全のためなら基準なんてどれだけ強くても構わないという無見識無責任なコメも……こちらは昨日の記事向きか。

    • 昨日近所の爺と話してたら戦闘機輸出で岸田は(三菱から)お金が入ると御高説をのたまっておりました。
      この爺以前から言動が左翼的だったのですが、この爺のSNSで「東京新聞望月衣塑子記者と歩む会で出逢った人たちの会」名の紹介記事が転載されていたのをみて、あ~そうなんだと納得しましたことがありました。
      パヨクのデマも静かに高齢者を蝕んでいると思います。

      • >東京新聞望月衣塑子記者と歩む会で出逢った人たちの会」名の紹介記事が転載
        正確にはコメント欄にキャプチャー画面を張り付けてありました。

      • >岸田は(三菱から)お金が入る

        ・そんなシステムではない
        ・リスクに見合わない
        ・なんでお前はそれを知っている
        ・お前すら知っているのになぜ逮捕されない

         この手合、必ずこれらに当てはまっちゃうのでもう笑うしかないですよね。防衛産業だと、「不要で高額な兵器をアメリカから買わされてる!」コースもほぼ同様で。

  • 某宗教の開祖が、罪人を裁こうとする人たちに対して「罪を犯したことのない人がまず石を投げよ」と言ったら誰もいなくなった、という説話があるが、2000年も経った今、恥じらいもなく石を投げ続けるタイプの者共が幅を利かせ過ぎている。