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メガソーラー火災で燃え尽きるまで消火できない蓄電池

原子力発電所に対しては安全性基準をタテに、原子力規制委員会が再稼働を頑として認めないくせに、太陽光発電所では頻繁に火災、土砂流出などの災害が生じる――。なんだかよくわかりません。とくに、27日に鹿児島県伊佐市のメガソーラーにある蓄電池施設で発生した火災は、水をかけて消火するわけにもいかず、燃え尽きるまで待つしかなかったようなのですが、なんとも危険な施設です。

「伊佐市から始まる挑戦的な太陽光発電所」

日経クロステック』というウェブサイトに、今から7年前の2017年5月30日付で、こんな記事が掲載されていました。

伊佐市から始まる「挑戦的な太陽光発電所」/追尾架台、蓄電池併設など、メガソーラービジネスの開拓者

―――2017.05.30付 日経クロステックより

記事は細かく分割されていて、ウェブページ換算で9ページ分あり、全文を読むためには最初のページにアクセスしてからも、少なくとも8回、追加でクリックしなければなりません(一般に内容の薄い記事をうんと分割してPVを稼ぐというのは、ウェブ評論サイト運営者にとってはよく知られたテクニックです)。

ただ、タイトルからもわかるとおり、この記事は鹿児島県北部・伊佐市で太陽光発電を営む事業者に関して取材したもので、とりわけ『日本初の「夜間売電型」メガソーラー』(同P6)などの記載を読む限りでは、この発電事業者の取り組みに対し、おおむね好意的な記事であると考えて良いでしょう。

(なお、発電所名称や運営事業者などについては、本稿では伏せます。記事原文でご確認ください。)

「挑戦的な太陽光発電所」、蓄電池から出火か

さて、『電力問題の本質は「資料に中国企業の透かし」ではない』でも少しだけ取り上げたとおり、鹿児島県伊佐市のメガソーラー発電所で27日夜、火災が発生し、消火活動にあたっていた消防隊員4人が負傷するなどの事態が発生しました。

これに、続報がありました。

メガソーラー発電所で火災 建屋で爆発 消防隊員4人けが あす29日にも実況見分へ

―――2024/03/28 16:12付 MBC NEWSより

リンク先記事など、各種報道から判断するかぎり、事故が起きたのは7年前の『日経クロステック』で取り上げられていた、蓄電池施設であろうと考えられます。

報道によれば、火災は27日午後6時すぎ、伊佐市にあるメガソーラー発電所から出火したもので、「蓄電設備」が入っている建屋1棟130平米を全焼。屋内で複数回の爆発も発生し、駆け付けた消防隊員4人が火傷などを負い、うち1人は顔に重い火傷を負う重傷だとのことです。

取り急ぎ、消防隊員の皆さまの快癒をお祈りしたいところです。

この点、各社の断片的な報道をつなぎ合わせていくと、どうやら今回の火災で爆発・炎上したのは、同所の「夜間売電」施設に設置されたリチウムイオン蓄電池なのだそうです。これについては鹿児島テレビの次の記事に詳しく記載されています。

ソーラー施設火災 消火難航のワケは?

―――2024/03/28 19:44付 FNNプライムオンラインより【鹿児島テレビ配信】

すなわち、携帯電話のバッテリーに水をかけるのと同じで、電気設備に水をかけるとショートしてしまい、感電や爆発のおそれがありるため、「電気火災の場合は水での消火ができない」のです。

リチウムイオン蓄電池による火災の厄介さ

鹿児島テレビによると、「今回の火事もリチウムイオン蓄電池が設置されていた建物が燃えていたことから、消防は放水することができず、火が消えるのを待つしかなかった」、と記載されています。

ちなみに充電式リチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリーを押しつぶした際に火災が発生するに至る実験については、東京消防庁が動画をアップロードしているほか、チャンネル登録者100万人を超えているGENKI LABOの市岡元気さんの動画でも取り上げられています。

正直、家庭用の電池でも大きな問題となるのに、業務用のリチウム蓄電池が燃え始めると水をかけて消火することすらままならないというのは、大変に危険です。

消防当局などによる現場検証がなされていないなかで、なぜ今回のような火災が発生したのかについて、軽々にその要因を断定すべきではありませんが、太陽光発電施設や蓄電施設の安全性については、意外な盲点かもしれません。

私たちは「太陽光は再生可能エネルギーを活用した環境に優しい電源だ」と聞かされ、それを信じ込んでいるフシがありますが、今回のように太陽光発電施設から出火するという事態は、調べてみると意外と多いことに気付きます。

こうした火災リスクなども踏まえると、太陽光発電というものは、案外、環境には優しくないのかもしれません。

太陽光パネルの火災も「感電リスク」が厄介

そして、今回の伊佐市のケースでは蓄電池が燃えたと見られていますが、太陽光パネルが燃焼する場合も、その消火活動には注意が必要です。というのも、太陽光パネルなどの発電システムに対しては、放水した際に、水を通じて消防士が感電する危険性があるからです。

消防庁消防研究センターが2014年3月に公表した『太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策』【※PDFファイル】という資料の120ページ目によると、太陽光発電システムに放水する際には次のような注意点があるのだそうです。

  • 水に濡れても高い絶縁性能のある手袋及び靴を着用する
  • 放水は噴霧注水を用い、棒状注水は極力避ける
  • 棒状注水を行う場合は太陽光発電システムから6メートル(可能であれば10メートル)以上の距離をあける

…。

なんとも難儀な話です。

正直、原子力発電所に対して、あれだけ「安全基準が~」、などと称して難癖をつけ、再稼働を阻んでいるわりに、太陽光発電施設については火災や土砂流出などの災害が頻繁に生じるのは不思議です。

太陽光発電所に対しても、現在の安全基準が適正なものとなっているか、事業者がそれらの基準をきちんと遵守しているかどうか、そして安全基準が守られていることを担保する仕組みに問題はないのか――などについて、包括的な検証が必要ではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (25)

  • インチキ開明主義・原理主義運動の片棒を担ぐ新聞記者や TV 局を許すな。
    そんな幻聴が聞こえた気がします。

  •  今回はメガソーラーというより蓄電池(リチウムイオン電池)の発火問題ですね
     BEVでも同様の問題が起こってます
    参考 池田直渡氏によるBEV火災訓練レポート
    https://www.goo-net.com/magazine/newmodel/car-technology/204799/
    ※素人での消火はまず無理(ブランケットを使用する場合でも消防士の重装備が必要)
    ※水での消火の場合は莫大な量が必要
    ※鎮火したと思えても再出火の危険性がある(鎮火後約8時間程度の経過観察が必要)

    参考 夕刊フジ 有本氏の記事
    https://www.zakzak.co.jp/article/20240329-45D7GJCQDNKGPIPJ7ZLV4BFWXQ/
     特に2ページ目(5)は重要
    インフラに限らず外国人の土地取得にも制限をもうけるべきだと思います
     

  • >私たちは「太陽光は再生可能エネルギーを活用した環境に優しい電源だ」と聞かされ、それを信じ込んでいるフシがありますが、

    推進したい人、誘導したい人たちはメリットばかり誇張して連呼しますがデメリットを語りませんからね。
    EVも同じですね、異論を唱えた専門家であるトヨタ会長を無視するかトヨタは出遅れた、もうダメだとか中傷されてましたからね。
    で、結局は手のひらを返したようにトヨタ会長は評価されてますけどね。

    なんでもそうだけどメリット、デメリットや将来的なデメリットの解決策を徹底的に論じて判断することが必要なんですけどね。
    少なくとも国民にはメリットだけではなくデメリットも報道してほしかったですね。

    • 2021年8月24日 TV会議
      当時の制改革担当大臣 河野太郎氏の名言

      「それからなんか知らねえけどさ、日本が再エネ入れるのに不利だ。みてえな記載がいっぱいあっただろ。あれ全部落としたんだろうな!?」

  • 伊佐市「夜間売電型メガソーラー」Liイオン蓄電池韓国LG化学製採用

  • >太陽光発電所に対しても、現在の安全基準が適正なものとなっているか、事業者がそれらの基準をきちんと遵守しているかどうか、そして安全基準が守られていることを担保する仕組みに問題はないのか――などについて、包括的な検証が必要ではないでしょうか。

    これですね。
    しかし、ここで危惧されている3点は、危ういでしょう。太陽光発電事業者には、個人も沢山いますから。

    • 単純な電気絶縁ですら、本来なら交流と直流とで設計基準を分ける必要があるんですよね・・・。特に経年劣化は別次元と考えるべき。AC1000Vは怖くないけど、DC100Vは本気で恐ろしいです。

  • 太陽光が環境に良いというのは嘘でしょう。メガソーラーが出来る前は自然豊かで動物や昆虫の住処だったはずですが、それらを追いやり二酸化炭素排出に大切な木々を切り倒します。

    また、太陽光パネルの廃棄方法も確立されていませんので数十年後に大量廃棄が増えた場合にさらに環境汚染が始まります。財団の多くに大学の教授の名がありますが、これは罠です。教授は大学にいくら企業などから金を引っ張ってくる事ができるかどうかで地位が決まります。また、同時に経歴にもハクがつきます。さらに教授退任後の天下り先の確保もできます。財団は教授が参加している事をアピールする事で素人をだます事ができます。

    さらに大手企業出身のメンバーも怪しいです。企業から出向で送りこまれたか(利権のため)それとも金の匂いを感じて肩書を使って入り込んできたかです。

    そんな怪しい連中が環境負荷など言うはずもありません。常に環境に優しいとしか言いません。政府も同じで金と利権に群がっているのですよ。その先陣が河野太郎です。

  •  太陽光発電カルト信者は、今回の火災やパネルに含まれる有毒廃棄物、設置に際しての環境破壊を「原発の出す放射性廃棄物や事故に比べれば大したこと無い」とマジで信じてるとしか思えません。

  • 毎度、ばかばかしいお話を。
    ①太陽光発電カルト信者:「メガソーラー火災を消火できなかった、消防署が悪い」
    ②太陽光発電カルト信者:「太陽光発電の技術的な問題点を、未だに解決できない自民党が悪い。○○党が政権をとれば、それはすぐに解決する」
    ③太陽光発電カルト信者:「我々の信仰を邪魔する者は許さない」
    ④太陽光発電カルト信者:「未来は太陽光発電に決まっているので、それを信じない愚者は旧人類である」
    昔、「社会主義は資本主義の次にくるのだから、社会主義の勝利は決まっている」
    今、「化石燃料での発電の次には、太陽光発電なので、我々が正しいことは決まっている」
    蛇足ですが、革新がリベラルに代わり、次は太陽光発電になるのでしょうか。(もちろん、今後、太陽光発電が上手くいく可能性もありますが)

  •  「太陽光はクリーン」というのは、温暖化、スモッグ、酸性雨、オゾンホール、資源枯渇……といった問題が次々に噴出した石油全盛の時代に起源を持つ"元"救世主だった時に作られたイメージでしょう。要点として燃料を燃焼させない、エネルギー源が無尽蔵、当時の問題に対してならば影響が無い、といった特性を以って、一括りに"クリーン"と呼びかけたのでしょう。

     今となってはそれら"しか"メリットの無い発電方法、というところ。クリーンではない現在の諸問題の噴出を無視してまで崇拝するようなドグマではありません。

  • 太陽光、リチュウムバッテリーの危険性は恐ろしい
    消防署には危険物を届け出なければなりません。
    万が一の時消防署員が消火に駆け付けます。
    事前に危険物のありかが分かれば消火作業も安全に行うことができます。
    今回消防署員が重症になられたとのこと。本当に大変なお仕事ですね。
    早急に法律を改正し安全な消防行政が行えることを祈っています。
    まさかこんなことにまで神奈川族議員がでしゃばるとも思えませんが注意をしていきたい。

    • 原発に対しては「テロリストが~」「ミサイルが~」「火山が~」などと騒ぎ立てていますが、太陽光発電所は、Liイオンバッテリーのような危険物を備えているわりには、メンテも適当で無防備すぎないかと思います(かといって、弱小な発電施設にガチガチな防備をするのもいかがなものかと思いますが)。放射線が出なければ、使い捨てで無問題という考えでしょうか。

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