大谷選手が「結婚」語らない原因はマスコミ自身では?

大谷翔平選手が結婚した奥様を公の場に連れて行かないのは「米国の常識に反する」、などとする主張が出てきました。スポーツ選手が家族を公の場に連れていくことが米国の常識なのかどうかはわかりません。ただ、想像するに、大谷選手がそれをやらない理由は、とりわけプライベートについて無神経に尋ねるわりに、野球に関する専門知識もろくにない素人記者に対する不信感があるのではないでしょうか。

2年前の大谷選手会見に見る日本のメディアのレベルの低さ

当ウェブサイトは「政治経済評論サイト」を標榜しており、普段であれば、スポーツなどに関する話題を取り上げることはあまりありません。

ただ、政治経済評論にかかわる分野で間接的にスポーツに言及することもあります。

それが、日本のマスメディアの「レベルの低さ」です。

数年前に当ウェブサイトでは、米メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手(当時は米大リーグ・エンゼルス所属)を巡る記者会見の様子を取り上げたことがあります。詳しくは『野球選手の記者会見で「結婚予定」を尋ねる日本の記者』でもまとめていますが、記者団からの質問が、本当に酷いのです。

2021年11月15日に行われた改憲の様子は、現在でも、動画サイトYouTubeの動画などで確認することができます。

要領を得ない質問や無関係な質問も!

ためしに視聴してみると、記者団から投げられる質問には、大谷選手の活躍とあまり関係のないものが目立ちます。冒頭の司会者(スポニチの記者)からの質問が2分近くと非常に長く(動画の06:00~07:36)、これに対する大谷選手の第一声が、これです。

ちょっと質問が長かったので、何から答えたらいいのかちょっとわかんないですけども…」。

この司会者は会場・オンラインの記者らに対するアナウンスもダラダラと長いため、おそらくは「要点をうまくまとめる」などが苦手なのなのかもしれませんが、それにしても強烈です。

しかも、「質問内容がひどい」のは、この司会者だけではありません。

もちろん、(質問のレベルはさておき)いちおうは野球に関連した質問もあったのですが、それ以上に目立つのは漠然とした質問、あるいは「野球と無関係の質問」の数々です。

たとえば読売テレビの『ミヤネ屋』の記者を名乗る人物からの質問(36:40~)は、「会場の皆さん、大谷選手に拍手を!」などと呼びかけ、「私生活でいちばんお世話になった人はだれか」「日本の家族と連絡を取っているのか」などと質問していました。

また、テレビ朝日の記者(40:50~)は「印象に残っている試合は何か、理由とともに教えてほしい」、「印象に残っているホームランは何か」などと尋ね、大谷選手が半ば困惑しながらもいくつかの試合を挙げる、という一幕もありました。

さらには「NP通信」の記者と名乗る人物(46:10~)は、大谷選手に「いわゆる高額所得者・高額納税者として気付いたこと、ご要望について教えてほしい」などと質問したのですが、大谷選手はこれに「納める税金は納める」と応じたのです(当たり前でしょう)。

野球選手に結婚の予定を尋ねる記者

野球選手に質問をしているのですから、良い成績を残している秘訣であったり、あるいは選手自身の課題認識や現実の具体的な試合の内容(たとえば何月何日の試合で活躍したことなど)について尋ねれば良いのに、なぜかこうした質問は、ほとんど見られませんでした。

ただ、驚くのはそれだけではありません。プライベートに関する質問が、大変に多いのです。

たとえばメールでの質問(48:36~)で「家庭を持つというタイミングはありますか」と尋ねられたほか、フリーの記者(54:00~)からは、「食事についての質問」、「今シーズン一番のひらめきはなんでしたか?」といった、まことに漠然とした質問も投げかけられました。

少なくともその人の専門分野とは無関係の「好きな食べ物は何ですか」、「結婚の予定はありますか」、「休日は何をして過ごしますか」、といった質問を投げかけるのは、端的に申し上げて会見に応じている人に対し大変失礼ですし、時間の無駄でしょう。

テレビ出演者「大谷選手は米国人からするとおかしい」

こうしたなかで、問題の記者会見から2年あまりが経過したわけですが、大谷選手は先日、自身が結婚したと発表しました。

これに、一部のメディアが「激怒」(?)しているようなのです。

「サンジャポ」お相手を語らない大谷翔平「アメリカ人からするとおかしい」東大大学院准教授が指摘「ここまで隠すのは…」

―――2024/03/03 11:07付 Yahoo!ニュースより【デイリースポーツ配信】

デイリースポーツによると、TBSの番組『サンデージャポン』で大谷選手の結婚について取り上げたところ、出演者が大谷選手の態度について、こう述べた、というのです。

もし、これからも日本のメディアを気にして、(公の)場に連れていかないということになると、チームメートやファンからすると、“変なんじゃないかな”。実際、LAタイムスとかに解説記事が出て、『これはストレンジだけれど、なぜ日本の文化だと、これは普通なのか』って、出るぐらいアメリカ人からすると、ちょっとおかしい」。

すなわち、結婚相手について「隠す」こと自体が「おかしいじゃないか」、という問題提起です。

このくだりを読むと、「ストレンジ(奇妙)」なのはこの場合、大谷選手の側ではなく取材する側なのではないか、という疑問が思わず頭に浮かんでしまいそうになりますが、とりあえずこの点は脇に置きましょう。

残念ながら私たち日本人の多くは米国の「常識」を知らないため、この出演者が主張したという、「結婚相手を公の場に連れて行かない」のが「ストレンジ」だというこの人物の主張が正しいのかどうかについては、よくわかりません。

ただ、この出演者の番組の言い分だと、まるで「秘密主義」を貫く大谷選手の側に非があるような内容ですが、こうした見方は正しいのでしょうか。

2年前の記者会見のときもそうでしたが、日本のメディアの質問は、総じてレベルが低すぎるうえに、野球とまったく関係のない内容をずけずけと聞いてくることもありますし、そのこと自体、大谷選手が野球に集中する妨げになっている可能性はないのでしょうか。

大谷選手はスポーツ総合誌の独占インタビューには応じている

著者自身は大谷選手と知り合いでも何でもありませんし、そもそも野球関係者にも知り合いはいませんので、大谷選手の内心を直接知ることはできません。しかし、これまでのメディア取材を通じ、大谷選手が日本のメディアに対し、相当の不信感を覚えている可能性が高いことについては、指摘しておく必要があります。

想像するに、このタイミングで大谷選手が自身の結婚を発表したのも、移籍でチームに馴染まなければならないこと、大リーグ開幕に向けて野球に集中していく状況を作らなければならないこと、といった事情も大きいように思えてなりません。

こうしたなかで、もしも奥様の実名や顔写真などを公開してしまうと、奥様のもとにメディアの取材が殺到するなどして、大谷選手が不要なことに気を遣わざるを得なくなる可能性が出てきます。

要するに、日本の多くのメディアが大谷選手と信頼関係を築けていない、という仮説です。

こうした仮説を裏付けるのが、スポーツ総合誌『ナンバー』のウェブ版に3月2日付で配信した独占インタビューです。

《独占インタビュー》大谷翔平、結婚を語る…大谷さん、何と呼ばれているんですか?「さん付けですね。僕は(彼女の)名前を呼び捨てにしています」

―――2024/03/02 11:02付 Number Webより

冒頭で申し上げたとおり、著者自身は野球そのものや大谷選手のプライベートに関しては関心がありませんので、リンク先記事について詳細を引用することはしません。

ただ、このような記事が現実に出て来ているという事実が、大谷選手がすべてのメディアを毛嫌いしているわけではなく、信頼関係を築けているメディアのインタビューには応じているのだ、という証拠でしょう。

すなわち、もしもテレビ、新聞、週刊誌なども、どう考えても野球のことをほとんど知らない素人記者らではなく、少しは野球を知っている記者に取材にあたらせていれば、マスコミ各社はもう少し、大谷選手との信頼関係を築けていたかもしれませんし、大谷選手も情報をもっとオープンにしていたのではないでしょうか。

原因はマスコミ関係者にある

というよりも、芸能人やスポーツ選手、ノーベル賞受賞者、はたまた政治家らを追いかけまわす素人記者らの存在は、マスメディアが一部では「マスゴミ」などと蔑まれる理由を、みずから作っているようなものです。

すなわち、その原因は、マスコミ関係者にあるのです。

最近だと、マスコミが「事実を見抜くプロフェッショナル」だ、などとする意見を述べた方もいらっしゃいましたが(『サッカー選手を告発した女性が虚偽の住所記載か=報道』等参照)、勉強もしない、専門知識もない記者やジャーナリストらに「プロ」を名乗る資格があるものでしょうか。

新聞とテレビの広告費が落ち込んでいる(『ネット広告が成長:新聞とテレビの広告費はさらに低下』等参照)事実を指摘するだけでも、ある程度答えが出ているように思えてなりませんが、いかがでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 新宿会計士 より:

    記事本文の補足です。Xにこんな趣旨のポストがありましたが、全面的に同意せざるを得ません。

    1. こんとん より:

      一応、関連の補強情報を載せておきます
      ライブドアニュース 大谷翔平選手 結婚発表した大谷翔平の囲み取材 日米のマスコミで質問内容が違うと話題
      https://news.livedoor.com/article/detail/25968656/

      Xを「大谷 取材」あたりのキーワード検索すると、大体の空気感も理解るかと…
      https://twitter.com/search?q=%E5%A4%A7%E8%B0%B7%20%E5%8F%96%E6%9D%90&src=typed_query&f=top

  2. 伊江太 より:

    何だか最近、マスコミが追っかけてる話題そのものより、
    取材に当たってる記者なんかの挙動、言行の方に
    スポットライトが当たる事例が目立つような。

    「大谷選手が結婚したことも、そのお相手も隠してたのは、
    ケシカラ~ン(怒)」

    「大谷番やってて、そんなことにも気づけなかったんかい。
    それを失敗と言いま~す(笑)」

    1. kiriya より:

      欲しい情報が出てこなければ、今度は出羽守ですか…
      アメリカ暮らしが長い大谷選手の方がその辺りは詳しいでしょうに、何故こうも上から目線なのでしょうね。

      有名人からも一般人からも信頼度は右肩下がりなのに殿様商売やめる気が無いなら、もう落ちる所まで落ちるしかなさそうです。むしろ落ちた方がいい。

  3. 農民 より:

     日本人である大谷選手がアメリカ人からするとおかしい部分があるのは当然ですが、この教授様やマスコミ各位に於かれましては、日本人なのに日本人からするとオカシイんですがそれは。

     ”配偶者を連れ歩くのが常識ではない文化”を受け入れるのが多様性の尊重かと思いますし、配偶者をアクセサリーのように付随させるというのも現代の感覚に合わないと思います。
     非協力的な取材対象には「やましいことでもあるのか」と圧力を加えてみたり、権力に圧力を加えられたこともない人達には自身のしていることを理解できないのかもしれませんね。

    1. 名前 より:

      同感ですわ!

  4. 匿名 より:

    学校のセンセが身なりをととのえ電波を使って
    そのへんのオッサンが言ってるのと同じ軽さ。そしてこれで出演料をもらってる。

    男の嫉妬はひどいから、日本人男性からの大谷選手への嫉妬の火をつけたいのかな。
    やだやだ。

    1. 匿名 より:

      男が大谷サンに嫉妬するだろうか。嫉妬するにも明らかに人間としてのレベルが違い過ぎてて尊敬の念しかないよ、少なくとも私は。
      むしろ何とかして「一般女性の素性」を暴き出し、未婚女性の嫉妬心を煽って羽生結弦の二の舞にさせたいのではないかと。

  5. Masuo より:

    スポーツ選手やミュージシャンは、マスコミと係わらない方がいいと強く思う。
    百害あって一利なし。

  6. sqsq より:

    松井がヤンキースに移籍した時、アメリカ人選手達がたまげたのはゾロゾロと松井の後をついて歩く日本人記者の数の多さ。
    大谷番もさぞかし多いんだろうな。
    要するに日本のメディアが異常なんだよ。

    1. nanashi より:

      松井秀喜氏で思い出しましたが、彼も既婚者なのですが、嫁さんの事を公にはしてないですよね。
      選手としてのピークを過ぎていたからなのでしょうが、兎に角、日本のメディアはハイエナ以下だと思いますよ。

  7. 通りすがり より:

    この「東大大学院准教授」とやらはこんなしょうもないことを言って、自分の株が下がるだけとは思わないのかね?w
    TBSから貰う小遣いはそんなに美味しいのかな?
    一般には情報提供者や識者への謝礼は基本的にないと言われているけれど、御用聞きコメンテーターさんには自分の名誉を切り売りしても納得できるくらいのカネが出るんでしょうかね。
    その場合はTBSから「なんでもいいから大谷選手を批判するコメントを出せ」と言われてるんだろうけど。

  8. 田舎の一市民 より:

    大谷選手だってオープンにして気兼ねなく本業に集中できるのならそうするでしょうが
    日本のマスゴミにはオープンにしたくない気持ちにさせるような前科と信用(逆の意味)があるからそうしないわけで
    マスゴミがすべきは、まず自身のこれまでの振る舞いによって相手(大谷選手)に余計な心遣いを必要とさせていることについて詫びることですよね
    それができる輩ならマスゴミと揶揄されることはないんでしょうが

    1. 名前 より:

      メディアは”プライバシーの侵害”という言葉を知らない。

  9. 田舎の一市民 より:

    仕事でいろんな病院なんかにお邪魔する機会があって、先日結構な規模感の病院の売店で、週刊誌の取扱を止めます。という張り紙がされてました。
    この規模でも利益が出ないのか…と驚きました。
    占有面積と入れ替えの手間等考えてのことでしょうが、一番はヒマを持て余す見舞客等が週刊誌を見ないってことだと思います(スマホばっかりみてるとか)。
    良い傾向だと思います。

    1. カズ より:

      病院の売店なんかですと、雑誌があろうと無かろうと「その他の売上げ」に違いは無いのかもですね・・。
      ついで買い特需?の損失リスクのない環境では、返本運賃をペイできない取引を続ける理由が無いのかと。

  10. 名前 より:

    メディアやファンが鬱陶しいから言いたくないんだろうな。大谷の妻の有ること無い事適当に書くメディアが目に浮かぶよ。

  11. クロワッサン より:

    >斎藤 幸平(さいとう こうへい、1987年[2]1月31日[3] – )は、日本の哲学者、経済思想家、マルクス主義研究者。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授[4]。フンボルト大学哲学博士。

    米国のスポーツ界と縁が深くなさそうだし、専門もスポーツじゃないし、専門外の事なのに知ったかする残念な人ってところ?

    1. 雪だんご より:

      これはまた、非常に分かりやすい”御用学者”ですね。

      「お金さえ頂けるのならどんな専門外な事でも無責任な発言してあげますよ!
      炎上大歓迎!だってもっと”御用学者”として活用できるってアピールになるもん!」

      こういう立場にはなりたくない物です。

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