好調「宇都宮ライトレール」は地方活性化の良い事例だ

たかだか路面電車と侮るなかれ、宇都宮のライトレール・トランジット(LRT)が開業から半年を迎え、順調な滑り出しを見せているようです。鉄道というものは、その輸送効率(エネルギー効率、労働効率)の良さから、とりわけ都市部における交通手段としては絶大な威力を発揮していますが、そのネックは建設費の高さにあります。ところが、LRTの場合は地下鉄と比べ建設費が非常に安いのです。そして、宇都宮LRTを巡っては、事前に懸念されていた問題はさほど生じていないのだとか。

鉄分が増える当ウェブサイト!

当ウェブサイトを執筆する、山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士は、金融・ハンバーガー・エクセルの専門家を騙っており、国際金融や株価、バリュー・アット・リスク、あるいはマクド・ナルド(仮)社の株主優待といった重要な話題を取り上げることもあります。

こうしたなか、最近の当ウェブサイトでは「鉄分」が増えていることも事実です。

この点、鉄道というものは、鉄道の車両自体を愛好しているファンなども多いようですが、『ネットワークでない鉄道は無意味』などでも触れたとおり、当ウェブサイトとしての注目点は「鉄道車両そのもの」ではなく、どちらかといえば鉄道の交通システムとしての経済性などにあります。

鉄道のメリットとデメリット

鉄道のエネルギー効率は大変に優れている

思えば、鉄道というものは経済性という観点に照らし、非常に興味深い分析対象でもあります。

改めて指摘しておくならば、鉄道は建設や維持に膨大なコストを必要としますが、いったんシステムが出来上がれば、大変効率的な輸送システムです。

たとえば日本通運のウェブサイトにある『環境に優しい鉄道輸送』という記事の説明によれば、トンキロあたりのエネルギー消費量(KJ/トンキロ)は、航空機が21,439、トラックが2,099、船舶が553であるのに対し、鉄道はなんと442に過ぎません。

つまり、鉄道を1としたときのエネルギー効率は、船舶が1.25倍、トラックが4.74倍、そして航空機に至ってはなんと48.5倍(!)、というわけです。

日本通運は鉄道貨物輸送について、「長距離・大量になるほど効率的」としつつ、「正確な鉄道ダイヤに基づく安心で安定的な輸送手段」であるとともに、「もっとも環境に優しくエネルギー効率の高い輸送手段」、などとしていますが、これは貨物輸送だけでなく旅客輸送でも同じことがいえます。

物理的にいえば、鉄道は鉄軌道上を鉄車輪で走るため、たとえばアスファルト舗装された道路などをゴムタイヤで走行する自動車と比べれば摩擦係数が大変に低いことなどが、こうした高いエネルギー効率の高さの要因でもあります。

長大編成により少ない職員で多くの人員を輸送可能

また、交通システムとして見た場合、とくに大都市部の通勤路線などの場合は、1編成につきいくつもの車両を連ねていることが一般的です。

東京都心部を走る路線――たとえばJR線の例でいえば、すべて20m型の車両で山手線は11両編成、京浜東北線や埼京線、中央線・総武線(各停)などは10両編成が標準で、東海道本線や横須賀・総武快速線、東北本線などについては、通勤路線でありながら15両編成のものも走っています。

また、京急、東急、小田急、京王、東武、西武、京成といった首都圏の主要私鉄路線にも、8両や10両などの長い編成が見られますし、JRや私鉄などとの相互直通運転を行っている東京メトロの主要路線でも、やはり同様の編成が乗り入れているケースが多いです。

ちなみに東京メトロのウェブサイトの『東西線15000系』というウェブページや、そのページに張られているスペック表のPDFファイルの説明によると、「東西線15000系」の10両編成の定員は1,500人少々とされていますので、これがピーク時に1時間30本走れば、45,000人という途轍もない人数が運ばれます。

しかも、鉄道の場合は特定の区間のみしか乗車しない人もいますので、実際に利用しているのは「1時間に45,000人」どころの話ではありませんし、区間によっては混雑率が200%近くに達するケースもあるため、さらに多くの人々が運ばれていることは間違いありません。

そして、これだけ多くの人々が効率よく運ばれるにもかかわらず、たいていの路線では、乗員は運転手が1人、車掌が1名の合計2名です。しかも東京の場合だと、東京メトロやいくつかの私鉄路線で車掌がいない「ワンマン運転」も行われており、この場合は運転手1人だけで旅客の輸送が行われているわけです。

バスやタクシー、自家用車と比べ、輸送効率は格段の差

もちろん、大型駅などの場合は駅務を管轄する駅員が必要ですし、とくに通勤時間帯だと、ホームで安全確認などを行う駅係員がいたりしますので、「1編成あたり常にたった1~2人で運行している」というわけではありません。

しかし、たとえばバスの場合、1台で輸送できる人数は、どんなに詰め込んでも50~60人程度が限界のようです。

横浜市ウェブサイトに2023年4月20日で掲載された『路線バスの基礎知識』という記事によると、大型バス(11m×2.5m)の乗客定員は約80人だそうですが、現実問題として、「11m×2.5m」というバスのサイズだと運転席のスペースなども考慮すれば、大人が80人も乗ることは物理的に不可能に近いでしょう。

ましてやタクシーの場合、運転手1人で運べる乗客はせいぜい数人ですし、都会の住民すべてが自家用車で通勤するとなると、それらの自家用車に乗るのは1~2名でしょうから、非効率なことこのうえありません。

さらにいえば、鉄道の多くは専用軌道であるため、道路渋滞とは無縁である、という特徴があります。

東京や大阪などの大都会で、もしも近郊の通勤路線や地下鉄などからなる都市交通システムが存在せず、人々が自家用車やバスなどで通勤していたと仮定した場合、そもそも生産性が著しく低下するという可能性があります。通勤ラッシュ時になると、道路は間違いなく麻痺状態に陥るからです。

交通渋滞が悲惨なジャカルタの事例

現実に、都市圏人口は東京並みの3000万人を超えているともされる、インドネシアの首都・ジャカルタがその典型例でしょう。

『製造業エンジニアのための海外業務サポートサイト・FACTORIST』というサイトの『インドネシア編』というページには、『ジャカルタ名物!?世界屈指の大渋滞の実態』と題した記事が掲載されていて、なかなかに興味深いことが書かれています。

  • 大都市にも関わらず、地下鉄などの公共交通機関がほとんど未発達で、都心の移動手段は車かバスに限られてしまう
  • ピーク時にはたったの5㎞の移動に1~2時間かかってしまうこともある
  • 商談など、どうしても遅刻ができないシーンでは、渋滞を避けるために「目的地に近いホテルを利用する」という方法もある
  • ジャカルタに滞在するビジネスパーソンや旅行者の多くは、帰国前夜は空港に近いホテルに泊まるという方法で、帰国便に乗り遅れる事態を回避する

…。

この記事、文脈から判断して、おそらく執筆された時期は7~8年前ではないかと思われる記述も出てくるほか、ジャカルタにはその後、円借款による地下鉄が部分開業するなどしているため、現在のジャカルタに地下鉄がまったくないというわけではありません。

ただ、「巨大な人口を擁する大都市圏に、もしも地下鉄などがいっさい存在しなかったならば、いかなる不都合が生じるか」、という意味では、この数年前のジャカルタの事例など、大変に参考になるものであるといえるのではないでしょうか。

日本の場合は東京や大阪など、ほかの先進国の場合はニューヨーク、パリ、ロンドンなどのように、たいていの大都市部には地下鉄網が張り巡らされていますが、これも大都市の機能を維持するには地下鉄が必要だという証拠でしょう。

(あるいはこれらの都市の場合、地下鉄網があったから都市として発達した、という見方もできるのかもしれませんが…。)

いずれにせよ、鉄道には少ない従業員と少ないエネルギーで多くの人たちを反復的に定時輸送するうえで適している、という特徴があることは間違いなく、その意味で、鉄道は都市機能の維持・発展には絶対に欠かせない、人類の発明品なのです。

建設費が高すぎる…都市化した地域の用地買収は大変!

ただし、鉄道には、非常に大きなデメリットもいくつかあります。

その最たるものが、莫大な建設費でしょう。

当たり前の話ですが、鉄道を走らせるためには、土地を買収してその上に軌道を敷設しなければなりません。

「まだ発展していない、地価がまだそれほど高くない地域で土地を買収し、そこに鉄道を敷設して、沿線に住宅を開発する」――といったビジネスモデルを確立したのは、阪急電鉄創設者の小林一三である、などと伝えられています。

また、自治体経営という意味では、前世紀には神戸市の宮崎辰雄・元市長(2000年2月没)が「株式会社神戸市」とも称された「経営手腕」を見せたことでも知られていますが、この「宮崎市政」のなかにも、市営地下鉄を郊外まで敷設して沿線をニュータウンとして開発する、というものです。

(なお、現在のこれらの「ニュータウン」がどうなっているかについては、本稿では敢えて触れませんが…。)

しかしながら、こうした「何もない土地に鉄道を敷く」というケースでもない限りは、土地の買収と路線の建設には、かなりの費用が掛かります。

小田急電鉄株式会社といえば、小田急本線の代々木上原から登戸までの約10.4㎞の区間を複々線化するという難事業を成し遂げた会社として知られていますが、構想から実現まで半世紀もの時間を費やしたといわれています。

小田急の場合は複々線化事業を行うにあたり、多くの区間ですでに市街化が進んでしまっていたがために、土地の買収にはかなりの時間を要したといわれていますし、一部区間では住民訴訟沙汰となり、さらに時間をかけて地下化を余儀なくされるという事態にも苦しみました。

こうした障害を乗り越え、鉄道の安全運行を続けながら、少しずつ複々線化事業を完成させていった小田急電鉄という会社の偉業は、もっと高く評価されてもしかるべきでしょう。

地下鉄建設ならたった1㎞で数百億円も!

しかしながら、すべての会社が小田急のような「主要路線の複々線化」という偉業を達成できるわけではありませんし、なかにはそれを計画していながら、最終的には断念せざるを得なかった、という事例も、かなり存在しています。

また、土地の買収の必要がない事例としては、公道の下に地下鉄路線を建設する、というパターンもありますが、地下鉄を敷設する場合にはその前提として、トンネルを掘り進めなければならず、下手をすると1㎞あたり数百億円か、それ以上のコストが必要でしょう。

かなり古いデータですが、国土交通省ウェブサイトに掲載されている昭和60年(1985年)の『運輸白書』によれば、「近年においてはキロ当たりの建設費は150~300億円」、といった記載が確認できますので、資材が高騰している昨今だと、区間によっては1㎞あたり一千億円以上、というケースもあるかもしれません。

さらには、大都市の場合は既存の地下街や地下鉄、高速道路、水道管、果ては洪水防止施設、といった障害物を避けなければならないこともあり、その場合にはさらに地中深くを掘り進める必要があるでしょう。

土地の買収コストをかけるか、それとも巨額の地下トンネル掘削費用を投じるか――。

いずれにせよ、都市部における新規路線の建設には、大変なコストが伴うことは間違いありません。

過疎地の場合は保線コストもバカにならない

ちなみに地価の高い大都市部だと、建設コストが非常に膨大であることはいうまでもありませんが、大都会と比べ相対的に地価が安い地方都市で新規路線を建設した場合だと、「採算性」という、まったく別の問題が出てきます。

実際のところ、鉄道路線は線路の状態を維持するために、緻密(ちみつ)な保線計画を立てる必要がありますし、車両の導入や維持にもコストはかかります。

きわめて多くの人々が路線を利用する大都会の路線だと、こうしたコストは乗客ひとりあたりに換算して無視し得る水準ですが、過疎地域などの場合はそういうわけにはいきません。そもそも路線の保守・メンテナンス費用すら、運賃では捻出することができない、という事態に陥ることもあります。

このため、鉄道路線には最低限の採算ラインというものがあり、この採算ラインを割り込んでしまうと、鉄道路線の維持すら難しくなることもある、という点は見逃せません。

この点、ときどき地方の不採算路線の廃止などが批判的に報じられたりすることもありますが、「路線を維持するだけでもコストがかかる(こともある)」、という鉄道の特性を踏まえていれば、これはある意味で「当然の判断」、という考え方も成り立ちます。

そもそも鉄道は人口稠密(ちょうみつ)な地域でこそ、その効率的な輸送手段としての本領を発揮するからです。

宇都宮LRTの現状と可能性

地方都市活性化の切り札としてのLRT

ただ、鉄道のデメリットのひとつといえば「建設コストが高いこと」であり、大都会以外の地域――たとえばそこそこの人口がいるものの、地下鉄を建設してもペイするほどの人口がいないような地域など――だと、おいそれと地下鉄を建設するわけにもいきません。

こうしたなかで近年、「救世主」として期待されているのが、LRT(ライトレール・トランジット)と呼ばれている「鉄道」で、多くの場合は公道上などに敷設されるものです(一部区間については公道ではなく専用軌道が設けられることもあります)。

LRTの大きなメリットは、なんといっても地下鉄と比べた建設費の安さであり、一説によると1㎞当たりの建設コストは、区間によっては地下鉄の10分の1以下なのだそうです。

ちなみにこうした「鉄道」は、日本の法的には「鉄道」ではなく「軌道」と位置付けられていることもあり、「鉄道」と「軌道」は法的には異なるものだそうです(※なお、本稿では「鉄道」と「軌道」の法律区分に基づいた厳密な使い分けはしませんのでご了承ください)。

このLRTは、富山市などですでに導入されているほか、「宇都宮ライトレール(LRT)」の事例が有名ではないでしょうか。

この「宇都宮ライトレール」、以前の『75年ぶり路面電車に期待高まる』でも話題として取り上げたとおり、路線としてはJR宇都宮駅から東部に向かって伸びる路線で、本来であれば需要が高いと見込まれる駅西部に向けて伸びる路線ではありません。

このため、当初は「利便性が低いのではないか」、といった冷ややかな見方もあったことは事実です。

鉄道ライター・杉山淳一氏の興味深い論考

しかし、この宇都宮ライトレールが開業してからおよそ半年が経過するなかで、鉄道ライターの杉山淳一氏が、大変興味深いレポートを発表しています。

宇都宮のライトライン、東側の成功と西側延伸が必要な理由

―――2024年02月24日 05時00分付 ITメディアオンライン『杉山淳一の「週刊鉄道経済」』より

端的にいえば、力作記事です。宇都宮ライトレールの現状とその課題、将来的な展望をわかりやすくまとめているからです。

(※ちなみに記事タイトルでは「ライトライン」とする表記が出てきますが、これは宇都宮ライトレールの公式ベースの愛称のことです。本稿では記事を引用する際に引用文で「ライトライン」という表記が出て来るなどの表現の揺らぎが生じるかもしれませんが、ご了承ください。)

杉山氏によるとこのLRTは2023年8月26日に開業して以来の5ヵ月間で、当初予測の1.2倍の約190万人が利用したそうで、今年4月1日のダイヤ改正では所要時間の短縮やラッシュ時の増便、さらには快速運転も実施する予定、とあります。

ということは、一部の批判的な人たちの冷ややかな予測を覆し、まずは順調な出だしを切った格好で、杉山氏の今回の論考では、宇都宮駅西口以西の延伸計画などにも言及があります。

ただ、今回の記事の興味深いところは、杉山氏が現地を実際に訪れ、その際の印象や乗り心地、ICカードの使い勝手などにも言及がある、といった点でしょう。記事を読んでいるだけで、まるで実際に宇都宮を訪れたような感覚を楽しめます(このあたりは記事原文を是非とも直接読んでいただきたいところです)。

それはともかく、杉山氏によるとLRT路線を東側から建設した背景には、沿線に工業団地が進出していて、宇都宮市中心部との渋滞ポイントである鬼怒川を渡る橋などがある、といった事情があったのだそうです。

効果も出ているうえ、懸念点もほとんど生じていない

そして、今回のLRT開通により、沿線の開発も進んだほか、バス通勤が減り、企業も送迎バス運行を取りやめ、マイカー通勤も減少するなど、非常に大きな効果がでているのだそうです。とりわけ興味深いのは、こんな記述でしょう。

マイカー通勤が減れば、工業団地内の駐車場も減らせる。駐車場は非生産的設備だ。駐車場を撤去できれば、その土地に生産設備や研究設備をつくれる」。

こうした視点は、なかなかに重要です。

もっとも、今回のLRTは良い話題ばかりではなく、課題もあります。

たとえば、杉山氏の記事によれば路線バス自体、LRTを軸として再編され、増便されたものの、「ライトラインの3つの停留場を起点として新設されたフィーダーバスは目標水準に達していない」のだそうです。いわば、需要の定着を待つ必要がある、ということでしょう。

また、LRTで懸念されていた2点――①併用軌道が建設されることに伴い、自動車交通が混乱するかどうか、②ICカード利用客に限り、すべての扉で乗降可能というシステムが運行に混乱をもたらすかどうか――についても、今のところはどちらも発生していないのだとか。

むしろ西側への延伸、そして東武線との直通も!?

では、今後の課題は西側への延伸です。

これに関しての具体的な検討区間やそれぞれの課題については元記事をご参照いただきたいのですが、私たちのような素人からすれば、「宇都宮駅の西側という交通稠密な区間に併用軌道などを設置したら、道路交通が大混乱に陥るのではないか?」、といった疑問が浮かびます。

しかし、杉山氏はこれについて、こう述べます。

しかし、西側にこそライトラインが必要な理由がある。沿線には学校がたくさんあり、通学需要が見込まれるからだ。計画区間の終点を『教育会館前停留場』までの沿線に、15以上の高校と私立中学がある」。

これは、どういうことでしょうか。

杉山氏は宇都宮に1泊した翌朝、宇都宮駅西口バス乗り場では小雪がちらつくほどの寒空の下、学生や生徒が長い列を作っているのを見て、こう思ったのだそうです。

親御さんはこの状況をご存じだろうか。私は親ではないけれども、この状況は解決してあげたいと思った」。

たしかに、バス乗り場が通学客などで溢れているのを見ると、気になります。

それでは宇都宮市は具体的に、どう考えているのか――。

そのヒントが、「トランジットモール」だそうです。

この「トランジットモール」とは公共交通機関だけ通行可能であることを除けば「歩行者天国」のような状態の道路のことだそうで、日本でもバス通行を許可するトランジットモールがあるほか、欧米ではLRTと組み合わせたトランジットモールがあるのだそうです。

それを宇都宮市はLRTで実現させようとしているのです。

これに関する反対派の主張や懸念点については、杉山氏の記事で展開されていて、大変に興味深いところですが、結論からいえば東側で道路交通に大きな混乱が生じていないという実績などを踏まえれば、宇都宮市当局としては、「西側のトランジットモール化」は十分にコントロール可能、と見ているのでしょう。

杉山氏の記事にはほかにも興味深い論点が多く出てきますので、もしご興味がある方は、是非、直接読んでみてください。

それはともかく、この杉山氏の記事を読んでいて個人的に気になったのは、「鉄道のネットワーク化」です。

じつは、JR宇都宮駅から約2㎞程の地点に、東武宇都宮駅があります。

宇都宮ライトレールは路面電車ですが、軌間は在来線と同じ1067㎜であり、また、東武宇都宮駅は単線でありながら、多くの区間で複線化のための用地がすでに確保されています。電圧や車体長などの問題をクリアする必要はありますが、技術的には相互直通運転も不可能ではありません。

もちろん、杉山氏の記事でも指摘されるとおり、そもそもLRTの西側への延伸にはまだいくつかの課題はあるのですが、こうした課題をひとつひとつ乗り越え、宇都宮に鉄道の有機的なネットワークが形成されれば、これは大変な成功事例となり得ます。

路面電車という一見地味な話題ですが、宇都宮の成功事例次第では、これが日本の地方都市の活性化という観点から、大変に良い前例となる可能性を秘めていることは間違いないでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. sqsq より:

    東京の地下鉄は総延長304kmで世界8位だそうだが、東京は地下鉄を通す前に国鉄や私鉄(東急、京王、小田急。京急その他)がかなり発達していた。
    日本って昔からカネあったんだね。

    1. sqsq より:

      東京行進曲の歌詞の中に「いっそ小田急で逃げましょか」というのがある。
      この意味は東京を逃げ出し小田急に乗って箱根まで温泉つかりに行きましょうかという意味。
      この歌が出たころ(1929年)すでに新宿から小田原まで小田急が通っていて、箱根登山鉄道で箱根の温泉まで行けた。

  2. すみません、匿名です より:

    自動車を運転する前提で郊外に家を持ったけど
    高齢になり周りの圧力で、免許を取り上げられたら
    医療・公共サービス・商業施設・交流など、どうするのか
    コンパクトシティとはいうけれど、今更、都市の中心周辺に引越すのかな?
    でもLRT、地方都市のタクシー・バスの運転手不足解決になればいいですね。

    映画、映像で見る欧州の路面電車は魅力的でいつかは観光ついでに乗ってみたいと思います。

  3. クロワッサン より:

    地震のあった能登半島では穴水町までしか電車が通っておらず、穴水町から珠洲市、能登町、輪島市への線路は既に廃線となり、志賀町は調べるともっと前の1972年に廃線となっているとの事。

    今回の地震を受けて、どの程度の人が住む家や住む在所を離れ、ある程度まとまって生活する事を選ぶかは分かりませんが、どうなる事か。

  4. 陰謀論者 より:

    富山ではLRTの際に、高速道路などで実績のある上下分離を軌道にも適応できるよう国に働き掛けて、ルール変更により実現させました。
     行政というのは前例主義に陥りがちですが、ルールが現実に追いついていないときに、声を上げれば地方からでも国のルール変更が可能なのだと知れた良い事例でした。
     宇都宮もそうなんでしょうが、車社会だと朝夕の渋滞の弊害が大変なんですよね。バス専用車線とか道路幅が余計に必要なうえ、その分車が走れないから渋滞が加速するんですよね。
     富山でLRT沿線に住んでる人はうらやましいです。東京で駅近というか、一律料金210円で山手線乗れるようなものですからね。

  5. 引きこもり中年 より:

    「宇都宮ライトレールが成功したから、うちもライトレールにしよう」と、条件の違いを無視して言いだす地方自治体がでてきたりして。

    1. 地震は大丈夫でしたでしょうか より:

      上越市が作ったら長岡市がアップを始めて
      それを見た格式高い新潟市はあんなものは政令指定都市や中核市の乗り物だと見下し地下鉄を作り始めることでしょう。議員には北欧風のカッコいいデザインの車両がウケるのでシャープなデザインでお願いします、冨山宇都宮に続いてあとニ都市くらいの人口50万都市で成功したら飛びつく都市が出てくるはずです。公共交通や都市工学のような難しい話より議員の感性に訴えるデザインが重要です。

  6. ムッシュ林 より:

    飛行機より圧倒的に輸送効率のいい鉄道ですが、新幹線はなぜ飛行機と値段があまり変わらないのか、LCCなら新幹線より安いのはなぜかが気になってしまいました。

    1. はにわファクトリー より:

      空港は税金でできています。鉄道会社は線路車両から建物まで自社で賄わなくてはなりません。

    2. さより より:

      LCCは、全便満席戦略で、機材(機体)稼働率100%、つまり、全便満席で飛ばすという経営戦略。その他、余計なサービスはしないことで、コストカット。そこまですれば、飛行機は、格安値段で飛ばせるということの証明をしているようなもの。
      片や、大手航空会社は、機材稼働率を緩く設定して運賃は高く設定し、その高さを目眩しする為に、目眩しの余計なサービスをする。
      空席のある飛行機を飛ばすというのは、空気の力で、空気を運ぶようなもの。
      大手航空会社の運賃は、高過ぎることは、社員の給料が高いことや、企業年金の支給額の高いことを見れば分かる。
      それが怪しからんということではなく、高い金を払うのが嫌なら、LCCを利用すれば良い。
      しかし乍ら、LCCの料金は、兎に角びっくりするほどに安い。

    3. ムッシュ林 より:

      はにわファクトリー様、さより様
      コメントありがとうございます。私はJR東海がライバルが航空会社しかいないのをいいことに運賃高くしてがっぽり儲けてるからかと思ってました。中国やインドネシアの高速鉄道は1/3以下の運賃で乗れますので。

  7. 栃木県民 より:

    宇都宮LRTの成功は、本当に運が良かった。建設費が高騰する前に完成させて、コロナ禍が明けたタイミングで開業。本当はもっと早く開業する予定だったけど、遅れてよかった。
    もしコロナ禍の真っ最中に開業していたら、ガラガラの様子が全国に報道されて 「宇都宮LRTは失敗」 という烙印を押されただろう。

    あと、個人的に大きいと思っているのは、栃木県が 「県都一極集中型の県」 であること。栃木県の人口は200万人を切って減少中で、群馬県と 「関東地方で一番人口の少ない県」 の座を争っているけど、宇都宮市は50万人都市で北関東最大。

    しかも記事にも書いてあるように、高校や大学、企業や工場、公共施設や商業施設、あらゆるモノが宇都宮と隣接市町に集中していて、県内全域から宇都宮への通勤・通学の流動がある。
    だからJR宇都宮線 (東北本線) も、東京から15両編成の列車が、そのまま宇都宮まで来る。以前は栃木県内の途中駅で、高崎線のように増解結していたけど、今はなくなった。

    これと対照的なのが、同じ北関東の茨城県。県内各地に空港や港、工業地帯や研究学園都市が分散している上に、南部は東京の通勤圏でもあるので、「日本一、県庁所在地への一極集中の度合いが低い県」。
    そのため県都・水戸への流動が少なく、つくばエクスプレスの延伸先も水戸市ではなく、つくば市の隣の土浦市になった。常磐線も、せっかく上野東京ラインで東京都心まで繋がったのに、前回のダイヤ改正で、普通列車はほとんど全て土浦乗り換えになって、土浦以北は5両編成。茨城県の人口は栃木県の2倍あるのに。

    【都道府県別】人口1位の都市が占める割合ランキング – YouTube
    https://www.youtube.com/watch?v=3qAe_nB4OJ8

  8. がみ より:

    横浜市交通局と呼んでいた部署が都市整備局になっていたのを知り時がたったなと…
    その昔、交通局長になったええかっこしいの御仁が市営バスにちょっかい出して
    「バスの運転士が自家用車で通勤するのはけしからん!」
    って言い出して
    「始発や最終バスの運転士はどうやって通勤するんだよ!」
    って騒動になったのを思い出します。

    ロシアがウクライナに侵攻してからは、陸上で重量物運搬するのは実質鉄道一択なんだなと思い知りました。

    ふと視点を変えると高層ビルにオフィスがある方々って毎日縦方向に移動しているわけですが、各国の都心部の渋滞は階段で高層ビル内を乗降するのと同じと考えると効率の悪さがより鮮明になりますね。
    エレベーター渋滞も嫌だけど階段昇降よりどれだけ楽か。

    はい、明日私は代休で休みなので酔っ払ってまして思考が怪しいです…

  9. 県民2 より:

    栃木県民2です。小生否定的です。全長15KM、所要時間48分、時速19弱。遅いですな。朝の忙しい中
    バスより遅いって。そのために早起きするの?。家族との時間削って。また、終点の芳賀含め、各停留所付近には何もないところが多い。今は試しに乗ってみっぺ。が多いのでその内すたれる。各停留所の保線はコミニティバス,orタクシー。宇都宮市は 成功と言っているけど、現実は 停留所 徒歩圏内の人だけ。西口並にバスを回せば済むこと。ゼネコンの設けと、話題作りだけ。東口沿線は企業はあるが観光できるところはほぼない。

    1. 栃木県民 より:

      最初の栃木県民です。
      所要時間に関しては、最高速度を併用軌道区間で時速50キロ、専用軌道区間で時速70キロに引き上げるのと、快速の運行が予定されているので、実現すれば今より短縮されるでしょう。

      問題は乗り換え・乗り継ぎですね。東西に走る1路線だけでは、LRTで行ける場所は限られる。これまでは公共施設もマイカー利用を前提に、郊外に作ってきたから、宇都宮は公共施設も商業施設も市内各地に分散している。
      しかし宇都宮では、公共交通機関同士の連携がうまくいってるとは、お世辞にも言えません。バス路線を再編して、LRTの停留所から出発するフィーダー路線も開設したけど、利用者数は予想を下回っていますし。

      今のところ、主な利用者は、送迎バスが廃止されてしまった工場に通勤する人たち。だから朝ラッシュは駅から郊外に向かう方が混んでいて、夕ラッシュは郊外から駅に向かう方が混んでいるという、普通の通勤ラッシュとは逆になっています。
      なので、「べつにLRTじゃなくても、ボトルネックになっている鬼怒川に橋を掛ければ、渋滞は解消するだろう」 という意見も多かったですよね。実際、国がLRTを推していて、建設費の半分以上を負担してくれる制度がなかったら、宇都宮LRTは出来ていなかったと思います。

      ただ、作ってしまった以上は活用することを考えないと・・・新宿会計士さんが日頃から力説しているように 「鉄道交通はネットワークを形成してこそ絶大な力を発揮するもの」 なので、東西に走る1路線だけでは弱いです。現在の起点であるJR宇都宮駅も、宇都宮の中心部からは微妙に外れた場所ですし。
      まずは西側に延伸して、宇都宮の中心部を通るようにして、その次に、南北方向に走っている東武宇都宮線と直通することを考えるのがいいと思います。まあ、それでも県内最大のショッピングモール 「FKDインターパーク」 は通らないんですけどね・・・。

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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
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