二次避難先としてホテルや旅館に移る場合は、有料か、無料か。答えは無料です。この論争は、さる著名人の方が岸田文雄首相のポストに「被災者にそんなカネがあるか」、などと噛み付く形で生じたものですが、岸田首相本人や馳浩・石川県知事らの反論を受けて本人が謝罪したことで決着しました。ただ、岸田首相のXのポストを見ると、岸田首相は「公共機関等からの情報の確認」をお願いしており、「報道機関等」とは記載していないことに気付きます。
目次
岸田文雄首相、馳浩・県知事らのポスト
岸田文雄首相や馳浩・石川県知事らがX(旧ツイッター)に相次いでとある「警告」をポストしました。
この「二次避難」とは、被災地で避難している被災者の方々が自宅に戻れるようになるか、または仮設住宅への入居が決まるまでの間、一時的に、被災地外などのホテルや旅館にて避難生活を送ることができる、という仕組みのことです。
馳知事の情報発信にもあるとおり、このホテルや旅館に避難するための条件は、自立した生活を送ることができるか、家族の介助つきで生活することができることであり、ホテル自体は行政が手配したものであるために宿泊料はすべて無料であり、罹災証明も必要ありません。
論戦の契機はさる有名人のポスト
ところで、岸田首相のポストにある、この二次避難を巡る「誤解を招きかねない、事実に基づかない投稿」とは、いったい何でしょうか。
結論から言えば、さる有名人の方が12日付でこんな趣旨の内容をXにポストしたことへの対応ではないでしょうか。
「被災者にそんなカネあるか/だったらあんた<注:岸田首相のことでしょうか?>が金を出して、旅館やホテルを借り上げ避難民を移動させろ/五輪誘致のアルバム作りみたいに、馳浩石川知事に官房機密費から金出してやらせろ」。
このポスト自体、そもそも「被災者からカネを取る」という時点で明らかな事実誤認であり、各方面から大変な批判があったほか、冒頭に取り上げた岸田首相、馳知事らの反論につながった、というわけです。
ちなみにこの有名人の方は、(おそらくは)該当するポストを現時点で既に削除しており、これとは別に14日午後2時過ぎに、こんな趣旨の謝罪文をポストしています。
「政府の地震災害への対応に怒りを感じる連続だったので、二次避難の呟きにも即反応してしまい、ホテルや旅館が有料であるかのような誤情報を流す結果になりました。被災地の皆様にはただならぬご迷惑をお掛けしたことを深くお詫びします。一日も早く平穏な日々が戻りますことを願っております」。
このあたり、批判されても決して謝罪も取消もしない人もいますので、それと比べればずいぶんと違います。
いずれにせよ、現時点においては、とりあえずこの誤った情報に関しては取り消されているはずですので、当ウェブサイトにおいてもこれを実名入りで過度に「糾弾」することは控えたいと思います。
岸田首相のポストは「報道機関」ではなく「公共機関」
ただ、ここで改めて岸田首相のポストを見て感慨深いのは、末尾の記載でしょう。
「その他の誤情報も散見されます。/影響の大きいアカウントだから正しいとは限りません。/公共機関等からの情報の確認をお願いします」。
「影響力が大きいアカウントの情報が正しいとは限らない」。
これは、まったくそのとおりでしょう。
そのうえ、「正しい情報の入手先」として、「報道機関等」ではなく、「公共機関等」という表現が用いられているというのも興味深いところです。これについて紹介しておきたいのが、共同通信が土曜日に配信した、こんな記事です。
首相「2次避難負担なし」 偽情報に注意呼びかけ
―――2024/01/13 21:56付 Yahoo!ニュースより【※共同通信配信】
これは、本稿冒頭に取り上げた、岸田首相のXへのポストを報じた記事です。
ただ、記事の長さは200文字少々と非常に短く、内容としても岸田首相による13日付のポストを紹介したうえで、「ホテルや旅館への2次避難は被災者負担とする一部情報が念頭にあるとみられる」、などとするものです。
どうしてこの記事では、岸田首相によるこのポストの前段階として、「影響の大きいアカウントによる誤った情報の発信があった」と正確に報じることができないのでしょうか。
一部報道機関は残念ながら「デマの担い手」に
正直、今回の災害が発生して以降は特に、Xのコミュニティノートの威力を痛感するような事例が相次いでいます。いわば、(あくまでも「ケースによっては」、ですが)報道機関の報道よりも、Xの方がはるかに正確に、「いま何が生じているのか」を知ることができてしまうのです。
ここで思い出すのが、働き方改革総合研究所株式会社代表取締役の新田龍氏が11日付でX(旧ツイッター)にポストした、こんなコメントについても紹介しておきましょう。
新田氏は「地震発生からの10日間で観測されたデマ、根拠のない批判などのうちの主要なもの」として、次のようなものを列挙しています。
- 初動対応が遅い
- 自衛隊初動1000人は少ない/逐次投入はけしからん
- 政府はハイパーレスキューの出動を2日も止めていた
- 震度速報に誤報があったのは不手際だ
- 津波避難のアナウンスはヒステリックでパニック状態!
- 志賀原発で変圧器の火災が! 冷却水の一部が溢れ出た、異常だ
- 中国に忖度して台湾からの支援を断った
- 被災地は大変な状況なのに、首相は新年会をハシゴした
- 海外にはバラまいてるのに、被災地には40億しか出さない
- 避難所の自販機をチェーンソーで破壊、飲料と金銭盗み避難所がパニックになった
- 物資が運べないなら空中投下しろ
- なぜヘリを使わないのか
- なぜ岸田は現地に行かないのか
- 被災地の道路はガラガラ
- 特定非常災害指定が遅い/激甚災害指定が遅い
- ヤマザキパンが国からお金をもらっている、癒着だ
- 七尾市の職員が炊き出しを食べている…その分を避難民に配れ
非常に残念なことに、これらのなかには当ウェブサイトの読者の皆さまも信じているデマがあるかもしれません。
それぞれのデマのどこがどう間違っているかについては新田氏のポストにだいたいの見解が書いてありますので、当ウェブサイトでは(後述する空中投下を除き)その詳細については触れないことにします。
専門家に尋ねればわかるはずの「空中投下」
ただし、ここで重要な点があるとしたら、これらのデマの発信者に、岸田首相がいう「影響力が大きいアカウント」に加えて、なかには新聞記者や大手新聞社も含まれている、ということではないでしょうか。
このあたり、新聞記者や新聞社、あるいは報道機関等といえば、ちょっと前までであれば「信頼されているメディア」の代表格だったはずなのですが、いったいこれはどうしたことでしょうか。
とりわけ『例の記者「なぜパラシュート部隊を派遣しなかった?」』などでも取り上げた、例の「空中投下」に関する話題なども、非常に象徴的な事例といえるかもしれません。
これは、とある新聞社の「名物記者」とされる人物が、官房長官記者会見の質問の場などで、あるいはXなどを通じて、折に触れ「なぜパラシュート降下/パラシュート投下などをやらないのか」、などとする問題提起を行っている、というものです。
当たり前の話ですが、「そういうことが(物理的に)できる」ということと、「災害支援として有効である」ということは、論点としてはまったく別です。
もちろん、それなりのコストをかけるとともに、作戦の失敗により家屋や人命に損害が生じることを覚悟するのであれば、物資を空中から投下したり、あるいは現場に空挺部隊を着陸させたりすることもできるでしょう。
しかし、人命救助、災害支援のプロフェッショナルである自衛隊が「やらない」と判断したのであれば、それには「やらない」と判断するための理由がある、と考えるのが通常ではないでしょうか。
いずれにせよ、「報道機関」と呼ばれる組織、あるいは集合体は、私たちが思っているのと比べ、物事を正確に報じる能力が高くないのかもしれません(あるいはインターネット空間の情報発信力が、飛躍的に高まり過ぎたのでしょうか)。
専門家が簡単に補足できる時代に!
このあたりは、やはり、非常に気になるところです。
べつに報道機関の調査・報道能力が低い、などと申し上げるつもりはありませんが、それと同時に「空中投下は危険」といった情報は、ちょっと専門家に話を聞くだけで簡単に調べられるような範疇の情報であることもまた間違いありません。
結局のところ、ネットが普及する以前であれば、報道機関の「言いっぱなし」に終わっていたようなことがらも、ネットが普及したことで専門家が報道機関に対し、簡単に反論できるようになり、これらの専門家らが報道の誤りをバシバシと指摘するようになった、というのが実情ではないでしょうか。
また、コミュニティノートについては「常に100%正しいわけではない」、という指摘があることも事実ですし、著者自身が見たところ、ノートによっては問題があるものもないわけではありませんが、それと同時に今のところは、「着弾」するポストによっては、ノートが注意喚起としての機能を十分に果たしているというケースが多いようです。
その意味で、2024年という年も、引き続き、XなどのSNS、あるいはネット空間が、報道機関に代替し得るほどに信頼性の高い情報を提供する場であり続ける可能性は高そうだと思う次第です。
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東京新聞が『東京新聞の名物コンテンツ「こちら特報部」です。「ニュースの追跡」「話題の発掘」をモットーに、独自の取材手法で深層に迫ります。』と謳っているコンテンツですが、…
こちら特報部
https://www.tokyo-np.co.jp/n/tokuhou
震災関連でのデマの流布に一役買っているコラムが散見されるのは、やはりというか流石というか。
デマの流布のために、消費税軽減、さすが財務省です。
Q. この報道機関はNHKも含まれるのでしょうか?
A.
①そらそうよ
②NHKは報道機関ではない
③その他
②報道機関ではない。
NHKは、法的には、公共放送機関です。それを逸脱して、近年、親中韓の偏った放送内容が多い上に、勝手に報道機関になったつもりになっている。
これは、法律に、反しているのでは?
NHKに関する法文は読んだことがないが、法律に報道機関であるという定めがあるのだろうか?
報道機関、赤っ恥。(笑)
安芸高田市の記者会見くらいに痛快ですね。
ここから返す刀で、
「記者クラブ不要」
まで行ったら面白いのですが。
首相としては、報道機関を使わずとも、ネットで公共機関から直接、個々人に情報が届く、と言いたいのでしょう。
>いずれにせよ、「報道機関」と呼ばれる組織、あるいは集合体は、私たちが思っているのと比べ、物事を正確に報じる能力が高くないのかもしれません
それ以前に「物事を正確に理解する能力」が高くないように思えます。
報道の第一義は「事実の周知」であり、『燃料投下』ではありません。
一部の人は、「政府発表など例外なく真実を隠蔽するプロパガンダであり、国民をだまくらかそうとしているものに過ぎない」と固く信じ込んでいるようですからね。問題は、その「一部」というのがどのくらいの割合かということで。
そして、そういう人ほど某新聞の記事を100%鵜呑みにしてたりする傾向があるように見受けられますが、新聞記事のかなりの部分が政府発表を右から左に垂れ流しているだけということは見ないふりでもしてるんでしょうか。
旧民主党政権なら、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の予測結果を隠蔽するんですけどね。
「良い隠蔽」と「悪い隠蔽」とがあるんですよ、きっと。
「あの」ラサール石井氏も、政府や自治体から否定されると訂正するんですね。
そこは徹底的に闘ってほしかった。(笑)
共産党にも窘められてましたから。
新宿会計士さんへ:
最近、話題が同じようでもう少し政治に食い込んだ内容が欲しいですね。
こういう勘違い投稿をするのを、野党体質というんだが、この意味分かるかな?
何処でも、何でも、自分の詰まらない思い付きを、ろくに考えもせずに、言ったり、やったり、してもいいと大いなる勘違いをしている。これ、山本某、立民防災担当、と同じ穴の住人では?
何度も言うが、自分好みの発信をしたければ、自分でサイトを作れば。
個人的には、このサイト主の自由な発想を楽しみしている。今度は今日は、どんなテーマかな?と。そこへ、つまらない要望を出すんじゃない。
毎度のことながら一々相手しなきゃいいのに
ほんと沸点低いですね、貴方・・・
ということは、いつも同じ方?
ホント、突っ込まれるポイント、分かっていて書かれているのですか?
でも、何気なく書かれているように見えても重要なポイントだと思う所で、書かせていただいているつもりなので、ご意見があるなら、そのご意見を書いて頂ければ、勉強になります。
今回は、本当に感じたことを書きました。
沸点とはどういう意味で書かれたか分かりませんが、ポイントだと感ずる感度の水準値は、低いかもしれません。
大地震が起こるたびにいつも誰かが言い出す「人工地震」説。
今回も最初期からそこら中で見かけましたが、列挙されたデマ情報の中にも入らないほどの荒唐無稽なものという扱いなんでしょうかねえ。
まああれは内容見ても、陰謀論を超えたファンタジーなので論外ですけど。
人工地震自体は存在しますからねぇ。
実態はアレな人達が考えるような代物ではありませんが。
https://yumenavi.info/vue/lecture.html?gnkcd=g010093
人工地震はp波しかない事を分かっていれば
騒ぐ筈ないんですが。