寄付金着服事件に対し「ダンマリ」決め込む日本テレビ

先日取り上げた読売テレビの経費不正請求事件、『24時間テレビ』寄付金着服事件の2つの事件を見比べていくと、個人的に関心が強いのは前者ですが、世間的に圧倒的な関心が寄せられているのは後者だったようです。とりわけ後者には、「善意を踏みにじるものだ」といった批判が寄せられているとのこと。もっとも、不思議なことに、発覚してから数日経過するのに、日本テレビや『24時間テレビ』の番組自体が、本件についてはダンマリを決め込んでいるようなのです。

テレビ局で相次ぐ横領事件

先日の『相次ぐテレビ関係者の着服は「業界の構造問題」なのか』では、日本テレビ系の2つのテレビ局で横領が相次いで発覚した、とする話題を取り上げました。

読売テレビ経費不正請求事件

大阪の読売テレビで『カミオト夜』を担当する40代の男性管理職が飲食費用などを番組制作会社に不正請求させる行為があったとして、同従業員を28日付で懲戒解雇処分にしたうえで、上司を減給処分などとした

『24時間テレビ』募金着服事件

日本テレビ系の番組『24時間テレビ』で系列局「日本海テレビ」の元幹部が募金の一部を着服していたとして、『24時間テレビチャリティ委員会』が28日、『お詫び』と題した声明を出した

…。

正直、氷山の一角では?

どちらも正直、驚く話です。

とりわけ前者に関しては、(あくまでも報道ベースで判断する限りですが)なかなかに非常識です。不正を働いていた管理職本人が下請けの番組制作会社に個人的な飲み代の領収書を渡し、それを会社に請求させたうえで、後日、自分に現金で還元させていた、というものだからです。

純粋に経理的な視点からすれば、たとえば消費税の仕入税額控除が効かないのではないか、といった問題もさることながら、法人税法上も読売テレビに請求した金額は益金算入され、税額を増やす効果がある反面、この男性管理職に支払った金額は使途秘匿金などに該当する危険性もあります。

いずれにせよ、見方を変えれば本件は下請けいじめの典型例です。下請け会社の立場にしてみれば、この管理職の飲み代を番組経費に混ぜて過大請求し、それを現金で本人に払い戻すという行為自体にはリスクこそあれ、メリットはまったく存在しないからです。

想像するに、本件も「氷山の一角」ではないでしょうか。すなわち、程度の差こそあれ、放送業界ではこのような不正事例、調べればいくらでも出て来るのではないかと思えてなりません。

産経ニュース「日本海テレビに苦情殺到」

もっとも、その後のさまざまな報道、ネット上の反応等を眺めていると、世間的にはやはり後者、『24時間テレビ』の問題の方が、社会に対しては遥かに大きなインパクトをもたらしたようです。「チャリティ」と人々の善意を前面に打ち出している番組だけのことはあります。

ここでは産経ニュースが29日夜に配信した、こんな記事を紹介してみましょう。

日本海テレビに苦情殺到250件超 「24時間テレビ」寄付金着服問題 

―――2023/11/29 18:10付 産経ニュースより

産経によると、『24時間テレビ』の問題で、鳥取市の日本海テレビには発表から一夜明けた29日、視聴者からの抗議が相次ぎ、幹部が対応に追われた、などとしています。

記事では街中の「怒りの声」を取り上げるとともに、問題の元局長が『24時間テレビ』の寄付金(8年間で総額264万6020円)を少しずつ持ち出していたほか、同社の売上金(853万6555円)を計8回にわたって着服していた、などと報じています。

なかなかにツッコミどころが多々あります。

記事から判断する限り、そもそも同テレビは寄付金を現金で保管していた、ということであり、また、集まった寄付金を集計し、記録する体制が整っていなかった可能性がある、ということです。経理の基本のキができてなかった、ということでしょうか。

これに関する産経の報道によると、元局長は1994年に同テレビに入社し、おもに経理端を歩んできたのだそうですが、これも想像するに、自身が経理・財務の責任者として、自ら金庫のカギを預かる立場にあった、ということかもしれません。

それも、事態が発覚したのは、社内の調査ではなく、税務調査での発覚を恐れて元局長が自ら申告したためだそうです。

東スポ「公益認定取り消しなら税制優遇消滅」

さて、今回の事件で、日本テレビ放送網などは今のところ、この『24時間テレビ』をどうするかについて、明確な声明を出している形跡はありません。

24時間テレビ 愛は地球を救う』のページを見ても、出演者(いま話題の「あの」事務所の男性タレント7人が)笑顔でポーズを決める姿とともに、これまでの募金総額がどうだ、キャッシュレス募金がどうだ、といった話題が並んでいるだけです。

しかし、さすがに今回のケース、系列局の不祥事とはいえ、日本テレビとしても「無関係です」、で済まされるものなのでしょうか。

これに関しては東スポウェブが29日早朝に配信した記事に、少し気になる記載がありました。

国も動く!日テレ「24時間テレビ」募金着服の大罪 内閣府担当者が回答

―――2023/11/29 05:16付 Yahoo!ニュースより【東スポWEB配信】

東スポは着服問題に関連し、公益社団法人の所管官庁である内閣府の公益認定等委員会に取材をしたところ、同委員会担当者は次のような趣旨の内容を回答したのだそうです。

  • 今回のケースをただちに把握できてはいないものの、(一般論として)公益認定基準に違反すると公益認定の取り消しはありうる
  • たとえば法人の役員や理事が禁錮刑以上の刑罰を受ければ認定取り消しになるし、認定法の基準やその他関係法令の違反が認められ、指導、監督した上で改善が見込まれない場合も公益認定の取り消しはあり得る
  • 報道など状況を踏まえ、「法人さん」にもお話を聞いたりして、それらを踏まえて適切に指導、監督する形で対応していく

…。

この担当者がいう「法人さん」とは、「公益社団法人24時間テレビチャリティー委員会」のことです。

税法上、一定要件を満たす公益財団法人に寄付をすれば、寄付をした人が税制上の優遇を受けることができるのですが、もしもこの『24時間テレビチャリティー委員会』が公益認定を取り消された場合は、こうした優遇措置も受けられなくなり、「募金の減額に拍車がかかる」(東スポ)ことになります。

といっても、あくまでも個人的な予想に基づけば、政府機関はテレビ局・マスコミ系の財団に対しては非常に監督が緩いので、今回の件についてもなあなあにして済ませてしまう可能性は濃厚だと思います(その意味で、内閣府に対する私たち有権者の厳しい監視の目は必要なのですが…)。

肝心の日テレは「ダンマリ」?

もっとも、よりにもよって善意の寄付金が横領・着服されたという事実が発覚した現在、さすがにこのチャリティを今まで通りに継続するためには、日本テレビ自身が何らかの説明をする必要がありそうです。

ただ、東スポによると、日テレ側の反応は、じつにあっさりしたものです。

来年の『24時間テレビ』で募金を継続するのか――。これについて日テレ総務局広報部に取材したところ、『現時点でお答えできることはございません』と回答した」。

これがすべてなのでしょう。

実際、これだけ重大な事件が発覚し、かつ、多くの人々がこの件について懸念を示しているにも関わらず、また発覚から数日経過しているにも関わらず、日テレ側としては、直ちに『24時間テレビ』のウェブサイトで謝罪することもしなければ、自社のホームページでこれに関する件には一切触れられていません。

また、日テレのトップページなどを探してみたのですが、探し方が悪いからなのか、本件に関する日テレの見解というものが見つかりません(もし見つけた方は当ウェブサイトの読者コメント欄にお知らせください)。

これについては「探し方が悪く見つけられていない」という可能性もありますので、「日テレが本件について何ら声明を出していない」と断言するのは若干危険ですが、それでも番組ホームページにいっさいの言及がない以上、「日テレはダンマリを決め込んでいるようなものだ」、と認定しても不公正ではありません。

(※なお、いちおう『公益社団法人24時間テレビチャリティー委員会』のサイトのトップに『お詫び』と題したページのリンクがあるのですが、これは日テレのページでも、番組のページでもありません。あくまでも公益社団法人側のページです。)

無視するのは日テレの自由だが…

ここまで世間で大きく騒がれてしまっているのにダンマリを決め込んでいるというのは、さすがに驚きです(※この点、不祥事を起こしたのは日テレではなく「日本海テレビ」ですので、「日テレが謝罪するいわれはない」、といわれればそれまでのことかもしれませんが…)。

もちろん、本件を含め、日テレがどういう対応を取るかは日テレの自由ですが、来年以降、『24時間テレビ』を視聴するかどうか、そして募金に応じるかどうかは視聴者の側の自由です。

下手をすると24時間テレビどころか、日本テレビ、あるいは日テレ系列の準キー局(読売テレビなど)、地方局などに対する人々の印象も相当に悪化するかもしれません。企業経営という視点からは、「なぜ日テレはすぐに本件で反応しないのか」が不思議でなりません。

もっとも、今回の件、日テレの社内で「何がどう問題なのかが理解できない」のだとしたら、これ以上、何も申し上げることはありません。残念ですが…。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    (24時間テレビに出演したことのある)元ジャニーズに、今回の日テレ寄付金着服事件の報道特別番組のMCをやらせたら、面白いと思いませんか。もっとも、日テレの公益認定取り消しが現実味を帯び始めたら、慌てて日テレ自身がやるかもしれませんが。

  2. 匿名 より:

    実際の被害額、余罪・類似犯等疑惑が増えますから、ダンマリしかないでしょうね。
    本職の会計士さんがお詳しいと思いますが、税務調査準備で、二重支払いでの利益の付け替えとされるものが調査前に出たんでしょう。
    支払先が個人口座で逃れられないから保身で自己申告をしたと。同口座に24時間テレビに合わせた不審入金も見つかり募金横領もバレたと。
    というわけで、横領額としているのは一つの口座への入金額で、複数の銀行口座に分散していれば、その分は隠し通せるし、募金に至っては集計前の現金を盗んでの入金ですから、現金のまま財布に入れて使った分は相当にあったはずですが、集計前だからいくら盗んだか自体が不明です。
    募金横領の不明分は犯人の懐に入ったままですから、日テレとしては少しでも騒ぎは小さくしたいでしょう。
    この手の良心を踏みにじるような行為は、本来マスコミは大好物ですが。

  3. 匿名 より:

    この事件は、日テレも相当な報いを受けて当然だと思いますね、勿論例の番組は打ち切り必至で。
    管理体制なんてあってないものだぅたのでは?それは事件が起きるでしょうというモノならもはや未必の故意、むしろ犯罪教唆とまでいえる

  4. sqsq より:

    他人の不祥事には大声で火が付いたように騒ぎまくって、自分の不祥事にはダンマリは通らないんじゃない?

    「社長出てこい」「土下座しろ」「切腹しろ」

  5. 匿名 より:

    今だけ、金だけ、自分だけの言葉を体現した様な感じだわぁ
    ま、今更だけど

  6. CRUSH より:

    ジャニーズ事件と同じですね。
    つまり、
    「みんな薄々知ってた」

    だから少しでもリテラシーある人なら該当で募金なんかしてないと思います。
    (必要な自治体や企業に直接振り込む)

    colaboなんかも典型ですが監査がザルだと腐ります。
    テレビ業界が黙り込んでるのは
    「みんな叩けば埃が出るから」
    でしょう。

    ダメダメですねえ。

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