利害調整は政治家の本質的な仕事
「電動キックボードは危ないから禁止してしまえ」は正しいのか
本稿では、普段から少し気になっていることをメモ書きにしておきたいと思います。最低限、政治家に必要なのは、高い志(こころざし)と実務能力ではないかと思いますが、日本のように複雑化した社会では、利害調整が政治家にとっての大きな仕事であることは間違いありません。こうしたなかで、「電動キックボードの免許制度」をどう考えるか、といった論点は、ひとつの興味深い考察事例となり得るのではないでしょうか。
政治家の仕事のひとつは利害調整
今さらかもしれませんが、政治の世界において、「絶対的な正解」というものは、「絶対的な誤り」というものと同様、基本的にはあまりありません。日本のように成熟した巨大で複雑な社会の場合だと、なにか改革をするにしても、さまざまな利害を調整する必要が出てくるからです。
これについては、迷路のように複雑に入り組んだ小路(こみち)を進んで駅を目指すようなものでしょう。街歩きをしていると、目的地に行くためには、「最短距離を進むには左に曲がった方が良いけれども、子連れで交通量の多い道を避けたければ右に曲がった方が良い」、といった事態に出くわすことは、よくある話です。
政治もこれと同じで、とにかく「国民生活をいまより豊かで安全なものにする」という大きな目標を達成し続けるようなものです。たとえば、『今さらの「電動キックボード取締強化」より必要なこと』などでも触れた、いま話題の電動キックボードは、その典型例でしょう。
電動キックボードや電動アシスト自転車の問題点
電動キックボードは今年7月以降、一定の条件を満たした場合に、運転免許証なしで、しかも公道を走ることができるようになりましたが、その一方で交通法規などのルールを無視した無謀な運転が罷り通るなど、電動キックボードを巡る事故も多発しているようです。
使い方によってはたしかに電動キックボードは便利ですが、それによって歩行者の安全が脅かされるなどした場合、本末転倒です。一部の国民にとっては生活が便利になるかもしれませんが、それ以外の国民にとっては道路を安全に歩くことすら難しくなるかもしれないからです。
ちなみに当ウェブサイトとしては、電動キックボード自体を「禁止にしろ」、などと申し上げるつもりはありません。
現在の法規制では歩行者や運転者の安全を守るうえで不十分であるため、この穴をふさぐべきだ、と申し上げているに過ぎません。
先日の議論の繰り返しですが、電動キックボードや電動アシスト自転車などは便利かもしれませんが、その一方で(一定要件を満たしたものは)免許なしに利用できることから、利用者のなかには道路交通法規を守らず、結果的に歩行者の安全を阻害しているケースが生じているのです。
たとえば東京都内などの都市部在住の方ならば、とりわけ電動キックボードについて、「▼歩行者がいるにも関わらず速度を出して走行している、▼逆走、▼信号無視、▼2人乗り、▼飲酒運転、▼ながらスマホ運転」などの危険運転の事例を見たことがある方も多いでしょう。
また、これはあくまでも想像ですが、電動キックボードについて、ヘルメットを着用していない人が多い理由は、電動キックボード利用者は街中のレンタルのものを使っているからではないでしょうか。
重要なことは負担と効果の均衡が取れていること
いずれにせよ、先日も指摘したとおり、個人的には電動キックボードや電動アシスト自転車を運転するに際しては、運転免許証、もしくは簡単な講習を受ければ無料で受領できる「交通安全講習受講済み証」のようなものを要求すべきではないかと考えています。
現在、電動キックボードについては「運転できるのは16歳以上」という制限がかかっていますが、運転免許が不要であるため、交通標識の意味について知らなくても運転できてしまいますし、目が悪い人でも眼鏡等による補正は不要です。電動アシスト自転車に至っては、年齢制限すらありません。
そこで、たとえば「運転免許証を持っていない人は、警察署や運転免許センターなどで開催される安全講習会に参加し、その受講済み証を受け取ること」、「視力検査を受けること」などを運転の条件にすれば、少なくとも今よりも事故は減らせるのではないでしょうか。
運転免許の反則点数制度に倣い、交通ルール違反を繰り返した運転者からは、その「受講済み証」を取り上げれば済むからです。何なら運転免許証と同様、この「受講済み証」も数年に1回の更新制にすれば良いのではないでしょうか。
以上は電動キックボード、電動アシスト自転車に対する当ウェブサイトなりの勝手なソリューションの事例ですが、これに対してはもちろん、政策としては他にも「こんなもの危険だから全面禁止にする」、といった選択肢もあれば、「現在と同様、なにも規制しない」という選択肢もあるかもしれません。
ただ、電動キックボードなどに運転免許を義務付けるにせよ、何らかの講習会受講を義務付けるにせよ、それにより新たな社会的負担が生まれます。論点は、こうした社会的負担を強いたことを上回るメリットが社会全体にもたらされるかどうか、に尽きるのではないでしょうか。
政治家の役割の本質
もちろん、政策のなかには官庁やオールドメディアなどの歪んだ利権構造が生み出したものもありますし、それらのなかには経済理論や日本経済の実情に照らし、明らかに間違っているにもかかわらず、ゴリ押しされてしまうこともあります。
だからこそ、私たち有権者が賢明に行動しなければならないわけですが、結局のところ、それらの政策のどれを選び、どれを切り捨てるかは政治家の役割であり、それができる政治家を選ぶことができるかどうかは、私たち有権者の技量にかかっています。
近いうちに解散総選挙があるのかどうかについては、正直、私たち一般国民にはよくわかりません。
しかし、少なくともいつ解散総選挙があっても大丈夫なよう、私たちは最低限、自身が暮らす選挙区でどんな人が立候補を予定しているのか、それらの候補者がどんな考え方で、何を主張しているのかについては知っておくべきではないでしょうか。
以前の『政治家の実務能力の本質は「妥協で理念を実現させる」』などでも指摘したとおり、政治家には最低限、志(こころざし)と実務能力の2つの要件が必要ですが、いくら実務能力が高くても志が低ければ高い成果は出ませんし、いくら志があったとしても実務能力が伴っていなければ、努力は空回りします。
現在の緊急経済対策を巡る議論ひとつとってみても、各政治家、あるいは主要政党に、「国を富ませ、豊かにし、国民が安全に暮らせる国づくり」、といった高い志があるかどうか、それらを実現するだけの実務能力があるかどうかを見極める必要があることだけは間違いないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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現在の議員先生方の仕事は「利害調整」より「利権調整」が重要視されている気がします。
本当にそんな感じですね。利害調整するとすれば、余程の票になる時ですか?
返信ありがとうございます。
最近だと、風力発電の利権調整で国会議員が離党しました。利権調整は金(競走馬)になる、利害調整は金にならないのでしょう。
昨晩(?)の「解体キングダム」で風力発電機の解体現場を放映してましたけど、プロペラ部分はGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製で処分は埋立しかない。
全く国民の利益にならない、利権調整は直ちに止めて頂きたいです。辞めても頂きたい。
電動キックボートの危険性はその構造よりも運転マナーにあることは以前から指摘されていた。生産地が中国ということで、政治家特有のことなかれ主義で法整備がおくれていると思慮している。長らく少年法の行きすぎた加害者保護が問題視されているのに未だ改正されていない。かつては東名高速道路で酒に酔った運転手のトラックが追突して幼い子供が二人犠牲になって初めて法改正されたくらいなのだ。この国の立法府である国会ないし国会議員は誰かが犠牲になって初めて動きだす。電動キックボート絡みの事故は必ずおこる。自転車でさえナガラ運転で死傷者がでて高額賠償が続いているのだ。犠牲がおこる前にしっかりとした法体制の構築を望む。
犠牲者が出まくっている刑法39条すら改正されないですからねえ・・・
心身衰弱時の犯罪の場合刑を減刑する。つまり酒を大量に飲み犯行を行なうと心身酩酊により心身衰弱が認められるから刑は軽減されるって訳か?議員の職場放棄って訳だな?話せばわかるのお花畑議員と被害にあった当人や家族、友達や恋人の思いを想像できないってことだな。まぁ日本の裁判って信じられない判決が多いもんな。
個人的には
新進衰弱時の犯罪の場合は、その原因の寄与に案分し、原因となる人、団体ほかに、その刑を案分して適用する、
とすべきだと思います。
もちろん、お酒やお薬を使ったのが本人なら軽減はなし。
メインテーマについては複雑になるので省略
どうでもよいと言えばどうでもよい余談
名称問題
https://www.freemile.jp/blog/kick-skater/
https://www.ytv.co.jp/michiura_time/contents/202301/gnw8f7c8u7zzynlh.html
https://s.response.jp/article/2002/11/11/20743.html
キックボードもキックスケーターも登録商標
キックスケーターは登録期限が切れている?らしい
日本キックスケーター協会は「キックボード」は登録商標なので電動キックボードではなく電動キックスケーターの名称を使うようにメディア要請したらしい
電動キックボード規制緩和 かとくみ(加藤久美子)氏 記事
https://s.response.jp/article/2002/11/11/20743.html
勘違いしていらっしゃる方も多いが電動キックボード規制緩和は経済産業省が主体なりおこなわれた
失礼
加藤久美子氏の記事はhttps://kuruma-news.jp/post/506463
※機械チェックにひっかかり掲載まで約20分
日曜日なのに意外とはやい
現状をいったん受け入れて、既得権者の利益にも配慮しながら改善を進めるのが「保守」の思想だと、伊吹文明氏や先崎彰容氏が言ってました。
対義的な考え方としては現状を全否定してぶっ壊す、革命的なやつでしょうかね。
現状を全否定するような主張は保守ではないということになるのでしょうかね。
私自身は保守なのか革命なのかわかりませんし、どっちに属するとか全く興味がないですが、既得権が不当なものでなければ尊重すべきと思います。
明日は我が身と思いますし。
ルールを守っている限り不当な不利益を被る世であってはならないと思います。
義務と権利はペア。
規制と責任もペア。
野放しであれば、事故については当事者同士でケリつけろ!なのですが、免許とか認可とか届出などと行政が関わるとなんらかの責任が発生します。
個人的には、行政が徹底的に逃げ腰で無視してきたのに、なんらかの外圧が加わって
「仕方なし」
で責任ゼロの落としどころで見切り発車したように見えます。
(二輪でも四輪でも当局が積極的に規制緩和するようなアクション実績を僕は知らないので、とても不自然。)
ま、自己責任でよいかと思います。
強制される訳ではないし。
税金投入はヤメロ!くらいですね。