一帯一路会議に「日本として出席予定なし」=官房長官
「日本政府として、一帯一路会議に参加する予定はない」。松野博一内閣官房長官が淡々と述べたこの内容、一帯一路やAIIBなどの中華金融と一貫して距離を取って来たこれまでの日本政府の姿勢と整合しています。中華金融の正体は「リスクの評価がメチャクチャだ」、ということだと思われますが、ここから距離を置くのは何も間違っていません。
中華金融の正体はリスク・リターンの見誤り
先日の『岐路に立つ一帯一路:リスクの取り方を間違う中華金融』でも取り上げたとおり、「一帯一路構想」や「AIIB」などに代表される中華金融の本質は、ハイリスクな国に対しておカネを貸し付けたうえで、貸倒リスクを自ら引っ被ることではないかと思います。
巷間、よく指摘されるのは、「中国はとうてい採算性が合わないプロジェクトに無茶な融資を行い、相手国が返せなくなったときに、借金のカタにそれらの施設を取り上げる」、という問題点です。スリランカのハンバントタ港などがその典型例です。
ただ、「採算性に合致しない」というのは、言い換えれば、それらの設備、取り上げたところで中国にとってあまりメリットがない、ということでもあります。
たとえば、中国が途上国に対し、港湾や鉄道などの建設を請け負い、相手国がデフォルトしたときにそれを取り上げる約束を取り交わしていたとしましょう。それらの施設を巡り、中国としてもちゃんと(経済的・軍事的に)意味のある利用方法があるならば、まだ良いでしょう。
現実問題としては、中国人民解放軍が仮にスリランカの港を軍港(?)として利用しようとしたところで、中国本土からどうやって軍需物資を運ぶのか、という問題があります。
中国の軍艦(?)が狭いマラッカ海峡を通行すると、誰がどう見ても中国人民解放軍の行動は筒抜けです。
また、「友好国(?)」であるミャンマーやパキスタンなどの港湾を使わせてもらってスリランカにアクセスすることもできなくはありませんが、その場合はそもそもスリランカくんだりにでかけず、ミャンマーやパキスタンの港湾を使えば済む話ではないでしょうか。
中傷的で漠然としている一帯一路
というよりも、そもそも一帯一路とは、いったい何なのでしょうか?
以前の『行き詰まる一帯一路構想と中国に失望する中・東欧諸国』などでも取り上げたとおり、そもそも一帯一路という構想自体が、漠然としていて、具体的にどことどこをいかなる交通手段で結節するのか、その詳細の計画図はほとんど公開されていません。
また、鳴り物入りで登場したアジアインフラ投資銀行(AIIB)も、承認済みプロジェクトの内訳をみると、一帯一路に関わる交通プロジェクトの件数は決して多くありません。そもそもAIIBの融資は「コロナ特需」で伸びたようなものなので、それは当然と言えるかもしれませんが…。
踏み倒す国に積極的にカネを貸す中国
いずれにせよ、金融の世界は、一種の「目利き」のようなものです。
プロジェクトの採算性とリスクを適切に見積もり、リスクに見合ったスプレッドを乗せることができるかどうかという勝負でもありますし、このあたりの目利きが不十分だと、とてもリスクが高いプロジェクトに不釣り合いなほど低いスプレッドでおカネを貸してしまう、ということにもなりかねません。
同じことは、中央銀行同士の通貨スワップなどに関してもいえることです。
現在、人民元を好んで使っているのは、トルコ、アルゼンチン、ブラジル、ロシアなど、外貨資金繰りに苦労している国々が中心であり、とりわけロシアやアルゼンチンなどは外貨建て債務の踏み倒しの「常習犯」のようなものでもあります。
一帯一路は結局、中国側の思惑とは異なり、資金を利用する側に狡猾に使われるのが関の山なのかもしれません。
松野長官「一帯一路会議に日本政府として参加予定なし」
さて、そんな中華金融から一貫して距離を置いてきたのが日本政府ですが、産経ニュースが月曜日夜、こんな記事を配信しました。
一帯一路会議、欠席を表明 松野官房長官「中国注視」
―――2023/10/16 18:17付 産経ニュースより
非常に短い記事ですが、松野博一官房長官が16日の記者会見で、一帯一路国国際会議(17、18日開催予定)に「日本政府として出席は予定していない」と述べた、というものです(どうしてこの単純な発言が記事タイトルの「欠席を表明」につながるのかはよくわかりませんが…)。
松野氏といえば、東京都練馬区にて青狸と同居している特定意志薄弱児童と雰囲気が似ている、などと指摘されることもあるそうですが、あの風貌で淡々と、「日本政府としては出席の予定はない」と述べるというのは、一帯一路からは一貫して距離を置いてきた日本政府のこれまでの姿勢とまったく矛盾しません。
そういえば、AIIBを巡っては、ドイツの元財務官僚で現在はAIIBの筆頭副総裁を務めるルドガー・シュークネヒト氏が日本にノコノコやって来て、「日本の協力は極めて重要だ」、などと言い放ったという「事件」がありました(『来日のAIIB筆頭副総裁「日本の協力は極めて重要」』等参照)。
正直、日本が乗るのをいつまで経っても待ち続けているバスというのも気持ちが悪いところですが、「バスに乗り遅れるな」論を主張していた人たちは、いま、どこで何をなさっているのか、ちょっと知りたい気がしないでもない今日この頃です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
新宿会計士さんのご主張に全面的に同意します。こんな会議に出席してはいけません。
韓国は、海洋水産相を派遣するようですが。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f71cea2cfd67d6194b1e0a733623e8806e69c0a1
追伸-「中傷的」は「抽象的」の変換ミスかと。
ドイツは、東独と一つになっておかしくなった感じがする。東独出身のメルケルは、随分と中国に入れ込んだ。露にも入れ込んだ。それで、国の方向性が定まらなくなった。独裁を是としている国に入れ込んで、どこを目指すのかが分からなくなるのは当然の帰結。
これを考えると、安倍晋三さんが首相になって、中韓と距離を置く事を明確にして国の方向を決めたので、国民は安心出来た。その功績は大きい。
川口マーン惠美氏が著書で指摘してますねメルケル批判とかも含め。
中国とロシアに入れ込み過ぎたお陰で今のドイツ経済は「EUの病人」と言われるほど落ち込んでいるので、バスに乗らず良かったです。
川口氏の記事を読むと、これが厳格で規律あるはずのドイツか、と疑うほどです。
中傷的というのは
言い得て妙ですな
岸田ボンクラ政権でも最低限のリスクは理解しているらしいな。それにしてもドイツの元官僚?アホか?移民政策に失敗した国家がなにを宣うのか?鳩山ボンクラ由紀夫の意見はどうだ?だれも相手にはしないけど。
AIIBや一帯一路は、安倍総理の「質の高いインフラ整備」から逃げるために作られたとききます。
「質の高いインフラ整備」とは、途上国支援のためのインフラ整備に、“安かろう悪かろう”というものを無くそうというもの。
それまでIMFやアジア開発銀行の案件を安かろう悪かろうで取ってきたのが出来なくなったんで、自前で銀行を作ったとききます。
その様な理由から、日本がそれらに加わるというのは絶対にあり得ないと思われます。
恩の押し売り?で買えそうのは、国際会議での一票くらいでしょうか?
・・・・・
>「バスに乗り遅れるな」論を主張していた人たちは、いま、どこで何をなさっているのか
不貞腐れて、ブス(BUS)っとしてるんじゃないかと・・。
カズ さま
>>「バスに乗り遅れるな」論を主張していた人たちは、いま、どこで何をなさっているのか
かつて、「バスに乗り遅れるな」論を主張していた人で、今、そう主張していたと覚えている人が、どれだけいるでしょうか。そして、ネットでそう主張していたと晒されることに我慢できる人も。
もっとも、今から一帯一路が正しかったと証明されれば、「自分は言っていた」と叫びだすでしょう。
>「バスに乗り遅れるな」論を主張していた人たちは、いま、どこで何を
>なさっているのか、ちょっと知りたい気がしないでもない今日この頃です。
「現実が彼らの期待を裏切った」場合、貝の様に口を閉ざしているのが
この手の言論には珍しくない(と言うかむしろ大前提レベル?)パターンですね。
民主政権を褒めちぎったマスコミは絶対に自分達の過ちを認めない。
もりかけサクラに関しても「で、いつになったら証拠がでてくるの?」と言う
質問はそもそも存在その物を無視する。
あれ程無様な結果に終わったSEALDSも何が悪かったのかは
言及せず、彼らに同意しなかった社会の方を責めて自分達を慰める。
AIIBに関しても「で、バスはいつになったら出発するの~?」
「ねえねえ、ADBってオワコンじゃなかったの?」と言った突っ込みには
(銃口を額に突き付けられでもしない限り)見ざる聞かざる言わざるを貫くでしょう。
素朴な疑問ですけど、一帯一路に参加していない日本が、一帯一路会議に(出席したくても)出席できるのでしょうか。(もちろん、将来の参加の意志を見せれば別でしょうが)
蛇足ですが、松野官房長官に質問した記者は、日本が一帯一路会議に出席することもできる、と考えていたのでしょうか。
>>一帯一路に参加していない日本が、一帯一路会議に(出席したくても)出席できるのでしょうか。
特にそれに関する協定などは締結してませんけど、会議には参加したかったら参加できるんじゃないですか?
安倍政権の頃には協力を表明して政府から代表団を送り込んでたはず。
一帯一路の理念そのものは悪い内容ではないですからね。
「中国の影響力の拡大を支援するだけに終わるのではないか」という、日本の国益の観点からの疑念があるだけで。
>>「採算性に合致しない」というのは、言い換えれば、それらの設備、取り上げたところで中国にとってあまりメリットがない、ということでもあります。
この部分、「スリランカが債務の罠に嵌まって港湾を奪われた」というような批判を読むたびに違和感を感じていたところです。
中国は99年間の運営権を手に入れたわけですが、殆ど貨物船の来ない開店休業状態の港湾を自ら進んで引き取ろうとするでしょうか?
99年間というのが香港を彷彿とさせますが、あちらは割譲と租借なのにスリランカは運営権だけ。
引き続きスリランカの法が適用されるし、税金もスリランカの物です。
借金棒引きで返済受けられなくなった上に、今後の港湾の維持費まで負担しなければならない。
中国側に経済的なメリットが全然ありません。
普通に考えると「高利を返済してもらえると思ってたのに返済無理っぽい。でも無理に取り立てようとしても返済してくれるわけないし、港湾が維持できなくて朽ち果てたら投資が丸損になってしまう」という判断で渋々引き取った、と考える方が妥当な気がします。
逆にスリランカ側からするとデメリットが殆どありません。
これまで数年間の返済と維持費しか払ってません。
見方を変えると、僅かな補助金と土地を提供して港湾施設と工業団地を誘致した、というのと結果的に同じことになってます。
今はまだメリットありませんが、この港湾が真価を発揮するのは工業団地が工場で埋まって貨物船が続々と入港するようになってからでしょう。
工場の従業員や港湾の荷役労務で雇用が生まれ、近隣の農地の産物の需要も増大します。
そうなるまではまだまだ何年も先の話でしょうが、それまでは中国が赤字でも港湾を維持し続けてくれるので、99年以内に工業団地が埋まれば良いわけです。
かなり美味しい話じゃないでしょうか?
中国にとっては失敗ですが、スリランカからしたら大成功なのでは?
>この港湾が真価を発揮するのは工業団地が工場で埋まって貨物船が続々と入港するようになってからでしょう。
工場の従業員や港湾の荷役労務で雇用が生まれ、近隣の農地の産物の需要も増大します。
これだけの事をスリランカが、独自にやれる力があるなら、元から中国からお金を借りる事も無く、自分達で開発をやって来ていたんじゃですか?
AIIBや一帯一路って元々中国で作りすぎた鉄鋼とかを捌くためのシステムじゃなかったっけ。