先日、韓国紙が「日本の真心が足りない」などと主張するコラムを掲載したとする話題を取り上げましたが、その「続報」でしょうか、毎日新聞論説委員の澤田克己氏が韓国側の日本に対する不信感を伝える記事がありました。正直、日韓関係が壊れるきっかけを作った側である韓国から「不満」を伝えられても対処のしようがない、という気がしますが…。
「日本の真心が足りない!」
先日の『韓国紙「日本の真心が足りない」』では、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)が配信した、こんな記事に関する話題を取り上げました。
日本はなぜ「釜山万博支持」と言えないのか【コラム】
―――2023/09/10 12:29付 朝鮮日報日本語版より
執筆したのは同紙の論説室長、内容についてはすでに触れたとおり、「日本の譲歩が足りない」とするものです。おそらく多くの日本人にとっては、次のような記述を読むと、かなりムッとするのではないでしょうか。
「日本は学ぶべきところの多い大国だが、国力に似合った『大国外交』をする国ではない。価値・原則・大義よりも目の前の損益を計算する『そろばん外交』を駆使する」。
「『万博相互支援』のような基本中の基本的協力すらためらうのであれば、日本の真心が疑われることは避けられない」。
これは、日本の大阪万博(2025年開催予定)を韓国が支持したのだから、韓国が名乗りを上げている2030年の釜山万博を日本が支持するなど、日本はもっと韓国に配慮すべき、とする文脈で出て来たものです。
ちなみになぜ日本が韓国にもっと譲歩しなければならないのかといえば、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国現大統領が今年3月、自称元徴用工問題の「解決策」(※解決になっていない)を出してきたから、これに対して日本も「積極的呼応をしなければならない」からです。
「破綻直前まで行った韓日関係を復原したのは尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の決断だった。それは決して『タダ』ではない。尹大統領としては、国内世論の反発と反日逆風という大変な政治的損害を甘受して勝負手を打ったのだった。この構想は、日本の積極的呼応を前提としている」。
ずいぶんと盛大な勘違いです。
そもそも日韓関係が壊れかねないきっかけを作ったのは、2018年10月と11月に韓国の最高裁に相当する「大法院」が下した違法判決です。(中途半端な)「解決策」でとりあえず日韓関係の破綻を先送りしただけの状態で、いわば、日本にあと一歩の譲歩を要求している、というわけです。
なかなかに、強烈な認識と言わざるを得ません。
澤田氏「日本の不安、韓国の不満」
こうしたなか、これとほぼ同じ話題を、毎日新聞系のメディア『サンデー毎日×週刊エコノミストOnline』が21日に配信しています。
日韓に依然ある深い溝 日本の「不安」と韓国の「不満」 澤田克己
―――2023/09/21 10:45付 Yahoo!ニュースより【サンデー毎日×週刊エコノミストOnline配信】
この記事、先ほども紹介した朝鮮日報のコラムの内容を踏まえて読めば、現在の韓国側における雰囲気を知ることができるかもしれません。執筆者は毎日新聞論説委員の澤田克己氏です。
記事タイトルは、澤田氏が先日、ソウルで開かれた民間対話「日韓フォーラム」のとあるセッションで耳にした、司会者による「日本側には期待と不安があり、韓国側には期待と不満があるようだ」とする発言からとったものでしょう。
日本側の「不安」とはもちろん、尹錫悦大統領が退任して以降も韓国側の日本に対する協力姿勢が続くのかどうか、ですが、これについてはまったくそのとおりです。日本側の期待(あるいは信頼?)をこれまでさんざん裏切ってきたのですから、これに不安を抱くのは当たり前の話でしょう。
一方で、韓国側の「不満」とは、なにでしょうか。
澤田氏によると、これは「日本が相応の誠意ある呼応をしてくれない」、というものだそうです。
澤田氏はフォーラム終了後に尹錫悦政権の要人と会ってみたところ、彼らは「(現在の韓国が)日米韓連携を進め、日韓関係を重視して努力しているのに、日本がきちんと応じてくれない」と強い口調で語るなど、「不満の強さを感じざるを得なかった」というのです。
とりわけ「韓国世論を刺激しやすい歴史認識問題」に関しても、「日本側の否定的な態度に依然として悩まされている」、といいます。
正直、「知らんがな」、と言いたい人も多いでしょう。「釜山万博に対する支持を明言していない」ことも、そのひとつの現れ、というわけです。また、韓国外交部の幹部からは、「日本政府は韓国との関係はもう大丈夫と安心しきっているのではないか」という苦言もあるのだとか。
(※もっとも、一部メディアによると、岸田文雄首相は釜山での万博開催を支持する方針を固めた、などと報じられているなど、このあたりについてはもう少し追加情報も必要かもしれませんが…。)
普通の国と国との関係で良い
さて、澤田氏は朝鮮日報のコラムの「日本は学ぶべきところの多い大国だが、国力に似合った『大国外交』をする国ではない」、の一文を引用したうえで、こう述べます。
「さて、これにどう答えるのが適切なのだろうか」。
どう答えるも何も、「普通の国と国との関係」で良いのではないでしょうか。
日韓両国はお互いに隣国同士ですし、古代より文化交流もあったわけですから、それなりによく似ている国ではあります。
しかし、それと同時に忘れてはならないのは、日韓はお互い「外国同士」である、ということです。
当然、日本の国益と韓国の国益は一致するとは限りませんし、日本政府が最優先すべきは日本の国益であって韓国の国益ではありません。釜山万博ひとつとってみても、それを支持することが日本の国益につながるならば支持すれば良いだけのことであって、本来はそれ以上でもそれ以下でもありません。
なにより、問題は「日韓関係の特殊性」ではなく、(韓国観察者の鈴置高史氏が強調する通り)「韓国の特殊性」でもあります。
日韓関係が「改善された」と岸田首相らが騙っている一方で、肝心の自称元徴用工問題に関しても、尹錫悦氏らが満を持して出してきた「解決策」とやらが、すでに破綻する気配も見られます。第三者弁済案を呑まない原告らに対する賠償金の供託を、韓国の裁判所が続々と棄却しているからです。
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ちなみに昨日の『日韓通貨スワップはどうなった?』では、今年6月の日韓財務対話で再開に合意したはずの日韓通貨スワップ協定を巡って、「その後の発表がない」という話題を取り上げました。
日韓両政府は今年6月29日、100億ドル相当の日韓通貨スワップ協定を復活させることで合意したと発表しました。ただ、これに不自然な点があるとしたら、韓国側からはやたらと詳細な情報が発表されている一方で、日本側の発表だと「協定の期間」に関する記述がないこと、両国の発表から3ヵ月近くが経過するなかで、公式には日韓通貨スワップ協定が発効したとの発表がないことです。2023/09/20 17:20追記図表1と図表2が入れ替わっていましたので修正しています。匿名のコメント主様、ご指摘いただき大変ありがとうございました。日韓両... 日韓通貨スワップはどうなった? - 新宿会計士の政治経済評論 |
これ自体、たいへん不自然ではあります。
しかも、韓国側は「協定の期間は3年」と発表している一方、日本側は期間について明示していません。
「じつは日韓間では通貨スワップの再開に秘密裏に合意しているけれども、世論の反発を恐れてその旨を公表していない」、という可能性もないわけではないのですが、もしかすると協定の期間など、契約の重要な条件で折り合いがついていないのかもしれません。
そもそも日本にとって韓国とのスワップの必要性は、ますます薄れています。現実問題、『邦銀の台湾向け与信残高が急減中』でも指摘したとおり、邦銀の対韓与信については減少の一途をたどっており、直近だと邦銀の対韓与信額は対外与信総額の1%を割り込んでいるほどです。
いずれにせよ、日韓関係の改善は表面的なものに過ぎませんし、その意味で澤田氏のいう「不安」は、「起こるべくして起こるもの」であると指摘せざるを得ないでしょう。
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最近、韓国が経済に行き詰っているとの報道がはいっいこないですね。
ウクライナと中国金融問題の陰に薄れているような気がします。中国は不動産バブルが深刻化していますが、ウクライナ・ロシア戦争の武器特需で乗り切ろうとしているのではないかな。ひょっとして韓国も一枚乗っているのではないでしょうか。
毎日新聞の澤田克己記者って、今は論説委員なんですね。20年近く前に、こんな本を書いていた元ソウル支局長なんですが。
「脱日」 する韓国 ― 隣国が日本を捨てる日 – 2006/7/1 澤田 克己 (著) - Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4877585044/
それから10年以上経ってから、こんどはこんな本を書いていました。
反日韓国という幻想 誤解だらけの日韓関係 – 2020/2/15 澤田 克己 (著) - Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4620326216/
こういう人が、ソウル支局長 → 外信部長 → 論説委員と出世できるんだから、毎日新聞社は (韓国にとっては) 良い会社ですね。
この人、安倍政権の時に韓国と慰安婦合意が結ばれた時には、毎日新聞のサイトで、わざわざ動画で 「まだ強制連行した徴用工の方々への賠償が残っています」 と言っていたのに、外交問題化したらシレッと削除した人でもあります。
岸田氏と尹氏が勇気ある人物賞なるものを、米国のケネディ図書財団から受賞したそうです。聞いたことも無い賞ですが、こんな茶番劇で分かる通り、米国はじめ外国人は日韓問題の本質を理解していない。事実に基づかない被害妄想で韓国が一方的に日本を貶めているのが真実なのに、日本が理不尽にも一方的に折れているのが真実なのに、日本に非があり、韓国が妥協したことになっている。これは政治家、外務省、学者、メディア全ての責任です。
折角安倍首相が慰安婦合意という苦渋の決断をしたのに、徴用工という次の嫌がらせの種を摘んだのに、岸田氏が元に戻した。この一点だけで岸田氏が暗愚であることがわかる。それがこんな賞を受賞したことで勘違いする。一日でも早く岸田氏は退陣しないと、ますます日本が妥協することになる。
> 「日本は学ぶべきところの多い大国だが、国力に似合った『大国外交』をする国ではない。価値・原則・大義よりも目の前の損益を計算する『そろばん外交』を駆使する」。
これは、岸田首相一派とエッフェルさんがらみの外務官僚に対して言った言葉でしょう。
> 「『万博相互支援』のような基本中の基本的協力すらためらうのであれば、日本の真心が疑われることは避けられない」。
この様な要求こそ”価値・原則・大義よりも目の前の損益を計算する『そろばん外交』”の典型
こういうのを "乞食根性が抜けない” と言うのだと思う。
日本国は”価値・原則・大義”を重視するからこそ、”世界遺産登録(軍艦島、佐渡の金山等)での不始末”に対する反省とその始末で”価値・原則・大義”に沿う相手なのか否かを見ているだけ。
国の責任を理解できず・ただ一味の都合での主張しか考えられない相手に迎合する程岸田さんも○○ではないと思うが、”価値観を共有する”と言ってしまうような人なので心配ではあります。
『そろばん外交』”の典型
の後に句点が抜けていました。
『そろばん外交』”の典型。
失礼しました。
ネット上ではいまだに”変態”のイレズミがついている”あの”毎日新聞ですからねえ。
朝日新聞の子分の様な立ち回りばかりしている所ですから、こんな記事を書くのも
当然と言うべきでしょう。
ただ、昨今の「どう考えても嫌韓が多すぎて勝ち目がないが、それを認める事は許されない」
と言うマスコミの基本的スタンスからは逸脱していませんね。
決して口には出しませんが、彼らはやはり”負けを認めている”のだと感じました。
>さて、これにどう答えるのが適切なのだろうか。
(^o^)「お互いさまですね。で、それが何か問題でも?」
>価値・原則・大義よりも目の前の損益を計算する
っていうけど、そういうものを異にする韓国との外交は損得勘定でいいと思うのです♪
それも基本はその時々で精算するようなのが良いと思うのです♪
韓国には甘えを許さない毅然とした対応をした方のが支持率はあがる。それをしないのは裏金が回っているのかと考えてしまう。スワップ協定の発表が具体化しないのは①支持率への影響②本当に韓国の経済状況を危惧している。釜山万博を支持をハッキリさせないのは③経済援助を危惧している、、じゃないかな。万博だけ呼び込んで施設建設や運用費をねだられては敵わない。実際にW杯スタジアムの建設資金の300億は返済されていない、政治家が見返りを得ている可能性は十分にある。だからおかしいのだ。
韓国がスワップを引き出した時の利率はどうなってる?
まさか無利子じゃないだろうな。
推測の域を出ないが、文政権時代からアメリカをはさんで交渉していたが、文が高いボールばかり投げるので話がまとまらなかった。
尹に代わってアッというまに合意ということではないだろうか。
これは何度も見てきたパターン。
もういい加減に韓国を庇護が必要なガキ扱いするのをやめませんか?日本は今まで韓国を拗ねれば何でも言うことを聞いてもらえる子供扱いし続けてきたことを反省すべきです。こんな国との関係に日本が一喜一憂する必要がどこにありますか?と思いますね。