日韓通貨スワップはどうなった?
日韓両政府は今年6月29日、100億ドル相当の日韓通貨スワップ協定を復活させることで合意したと発表しました。ただ、これに不自然な点があるとしたら、韓国側からはやたらと詳細な情報が発表されている一方で、日本側の発表だと「協定の期間」に関する記述がないこと、両国の発表から3ヵ月近くが経過するなかで、公式には日韓通貨スワップ協定が発効したとの発表がないことです。
2023/09/20 17:20追記
図表1と図表2が入れ替わっていましたので修正しています。匿名のコメント主様、ご指摘いただき大変ありがとうございました。
日韓両国「100億ドルのスワップ復活」=6月
ちょっとした現状報告です。
今年6月29日に東京で開かれた日韓財務対話で、鈴木俊一財相は韓国の秋慶鎬(しゅう・けいこう)経済副首相兼企画財政部長官との間で、いわゆる日韓通貨スワップ協定の再開で合意しました。
これに関する公式発表としては、財務省のプレスリリースが参考になるでしょう。
第8回日韓財務対話プレスリリース(令和5年6月29日)
―――2023/06/29付 財務省HPより
日韓通貨スワップについて記載されたのは、次の文章です。
「両大臣はまた、地域金融セーフティネットの強化を目的として、100億ドルの通貨スワップ取極の再開に合意した。更に、両大臣は、二国間金融協力のあり得る更なる改善について、議論を継続することに合意した」。
韓国との金融協力、なんとも面黒い話題です。
なぜ対等だと思っているのか
資金循環統計に基づけば、預金取扱機関の預金量は日本が1734兆9378億円(2023年6月末)、韓国が3718兆3660億ウォン(2023年3月末)ですので、1円=9ウォンと仮定したら預金量では日本の金融システムの規模は韓国の約4倍強ですが、それだけではありません。
片や、米英欧瑞加などの主要国との無制限の為替スワップ網を持ち、自国通貨たる日本円自体が国際的に広く通用する通貨である日本。片や、ひとりあたりGDPではようやく日本と肩を並べつつあるものの、自国通貨たる韓国ウォンが国際的な決済にもほとんど使えないローカル通貨である韓国。
日本には国際的な金融システムに大きな影響を与える、いわゆる「G-SIBs」に指定されている金融機関が3社存在しており(三菱UFJ、みずほ、三井住友のいわゆる「3メガ」)、これ以外にも農林中央金庫や三井住友信託、りそなや野村HD、ゆうちょ銀といった大規模金融機関が多数本店を構えています。
これに対して韓国にG-SIBは1行もありませんし、国全体の預金をかきあつめて、ようやく日本のメガバンク2行分に過ぎないのです。
これだけ圧倒的に規模が違うのに、まるで対等の立場で協力するかのような文言を見ていると、なんだかウンザリしてしまうという人も多いでしょう。
しかし正直なところ、韓国にとって日本との協力は必要なのかもしれませんが、日本にとって韓国との協力は必要ではありません。べつに日本としては韓国との協力などなくても、これまでも欧米などの諸外国と金融行政では協力してきましたし、おそらく今後もそうでしょう。
日韓の発表内容の違い
もっとも、韓国の外貨建債務の規模などに照らし、100億ドルのスワップになにか意味があるのか、といったツッコミどころもさることながら、本件を巡っては、ほかにも奇妙な点がいくつかあります。
そのひとつが、この日韓通貨スワップを巡る日韓の報道発表の違いです。
韓日100億ドル規模の通貨スワップ締結【※韓国語】
―――2023/06/29付 韓国企画財政部HPより
記事タイトルでもわかるとおり、リンク先にはさらにPDFファイルが表示され(ブラウザの設定にもよります)、日韓通貨スワップにかなりの焦点が充てられており、PDFファイルの8ページ目にはこんな詳細条件の記述もあります。
韓日通貨スワップの内容
韓日通貨スワップに関する詳細は次のとおりです。
- (契約規模)合計100億ドル
- (契約期間)3年
- (交換通貨)自国通貨と米ドル貨を交換
韓国は100億ドル相当のウォンを日本が保有した100億ドルと、日本は100億ドル相当の円を韓国が保有する100億ドルと交換可能
韓日通貨スワップを米ドル100億ドル規模にした理由
- 通貨スワップの規模ではなく、通貨スワップが8年ぶりに復元されたという事実自体がより大きな意味をもつ
- 日韓通貨スワップは、3月の韓日首脳会談以来、急速に回復してきた韓日関係が金融協力分野でも復元されたことを象徴的に示す成果
- 今回の日韓通貨スワップは、2015年2月に終了した韓日通貨スワップの当時の規模である100億ドル規模で合意したもので、あわせて両国財務省は今後両国間の金融協力の進展のための議論を継続し続けることにする
これらの記述、「なぜ100億ドルだったのかに関する理由」や「協定の期間は3年とする」など、日本側の発表にはないものも多く含まれています。韓国側で日韓通貨スワップに対する期待が大変に強い証拠ともいえるのかもしれませんが、それ以上に不自然なのは、「いつから3年なのか」についての記述がないことでしょう。
というよりも、そもそもスワップ自体、発効しているのでしょうか。
日韓スワップ、発効せず…なぜ?
こうしたなかで、日銀は19日、財務省の代理人としてマレーシアとの間での通貨スワップ協定を改定・更新したと発表しました。
日・マレーシア間の二国間通貨スワップ取極の更新【※PDFファイル】
―――2023/09/19付 日銀HPより
これを受けて財務省のウェブサイトを調べてみたところ、『アジア諸国との⼆国間通貨スワップ取極』と題するPDFファイルについても更新されていました(図表1、図表2)。
図表1 アジア諸国との⼆国間通貨スワップ取極
(【出所】財務省HP・2023/02/06閲覧)
図表2 アジア諸国との⼆国間通貨スワップ取極
(【出所】財務省HP・2023/09/20閲覧)
不思議なことに、日韓通貨スワップに関する記載がまだ追加されていません。
過去に存在していた協定を復活させるだけなのに、なぜ3ヵ月経ってもまだ追加されていないのか、その理由についてはよくわかりません。もちろん、2015年以降のCMI契約書の改定などを織り込む必要もあるのですが、それにしても時間がかかり過ぎています。
いずれにせよ、日銀や財務省の発表を見る限りにおいては、少なくとも現時点において日韓通貨スワップが発効していないことは間違いないでしょう。
その理由はなぜなのか――。
もしかして尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が退陣するあたりで失効するよう、スワップの開始時期をわざと遅らせる、といった可能性はあるのでしょうか。
これについては現段階ではよくわかりません。
ただ、韓国は危機が到来したら外国に擦り寄るわりに、危機が去ったらあっけなく裏切る、約束破りのウソツキの常習国家でもありますので、もし日韓通貨スワップを再開させるのであれば、次の政権が発足する前後に協定が失効するように仕組んでおくことができるなら、そうすべきなのかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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今は立憲民主党と名前が変わったのだが民主党時代の野田佳彦政権が結んだ韓国との通貨スワップは700億ドルと記憶している。今更100億ドルではとてもじゃないが韓国を救うことはできない。いつでも破棄できる条約ならいざ知らず、現状発表がないのは理解できない。おれは官僚や政治家が資金還流、、つまり裏金を疑っている。日本批判や反日行為があれば破棄をするのが当たり前と思うが当の日本国民が一部中韓に与しているのだ。国会議員もいるんだから、始末に終えない。麻生太郎が国会であれだけの発言をしたのだ。いくらなんでも副総理の座にいるのだ。なんの発信がないのには疑問がのこる。このコラムで発効してない現状は安心材料ではあるが韓国とのスワップはどんな効果があり日本にはどんな恩恵があるのか聞いたことがない。また岸田を支持した地元民も信じられない。今からでも遅くはない。中止が国民の総意だと思うが。
内閣官房副長官補兼国家安全保障局次長であった兼原信克氏の著書、
「安全保障戦略」の277ページに
野田総理の700億ドル通貨スワップについてこんな記載がありました。
「韓国の全ユーロ資産引き上げの影響を相殺するといわれた
巨額の金融支援であった。日本財務省は、一部EU加盟国の
放漫財政に起因するユーロ危機に対して厳しい態度をもって
臨んだが、韓国に対しては戦略的重要性から、
即断で金融支援を決めた。」
このスワップの背景にこんな事情があったのだということを初めて知りました。
当時こんな議論は一切されていなかったように思います。
ただ漫然と韓国を支援していたように思えますし、
当時のtwitterでも日本企業の決済を支援するためのスワップであるという
おかしな議論も散見されました。
そもそも
(1)EU加盟国の放漫財政に対する厳しい態度とは何だったんだろうか?
(日米貿易摩擦時の米国と違い、EUと経済問題があったような記憶がない。)
(2)ドルではなくユーロ資産引き上げが当時話題になっていたでしょうか?
(何度見ても「ユーロ」と書かれています!)
(3)「即断」で決めたというがこんな巨額の決定を財務省が即断で決められるのであろうか?
(これは元公務員としての感覚から)
なお、この「安全保障戦略」という本は大学の講義用に書かれたようですが、
韓国に対する姿勢などを含め、外務省の基本姿勢がわかりやすく記載されていてとても興味深いです。
ギリシャ財政危機ってその頃(民主党政権発足時)だったのでは?
確かにギリシャの財政危機を緊縮財政の観点から
菅直人元総理が喧伝していましたし、
ポルトガル、イタリアなどを含めてPIGSと揶揄されていました。
しかしギリシャについて元総理が喧伝するのは
日本国内に向けての話です。
日米貿易摩擦の時の双子の赤字批判(アメリカの財政赤字と
貿易赤字)のように日本とEU間で経済・財政担当が
やりあうことはなかったように記憶しています。
にもかかわらず「厳しい態度」と記載されていたので
何があったのかなと疑問に思ったのです。
もしかしたらですけど,図表1と図表2は逆ではありませんか?
※本論とは関係ありません
匿名のコメント主様
ご指摘の通りです、早速修正します。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
確かに、よく見るとpdf内の日付と画像下の閲覧日が逆ですね。
あ、読み終わってコメントしたら治ってたw
海外中銀との協力
https://www.boj.or.jp/intl_finance/cooperate/index.htm
日銀HPの上記ページが関係するHPですが、2023年 9月19日の「日・マレーシア間の二国間通貨スワップ取極の更新」があるのに、6月29日の韓国との件は何処にも触れられていないですね。
政府間の合意止まりで、日韓中央銀行間の合意には至っていないという事?
スワップ再開が、自称元徴用工の解決策へのご褒美だとしたら、韓国の裁判所が供託を拒否したことでご破算が妥当だと思うのです♪
あとは、再開はしてるけど、国民の反発を恐れた岸田政権がその発表をしないようにしてるとか・・・・・流石にこれは妄想の類だとは思うけど
。。。o(゚^ ゚)ウーン
国会議員の先生もこういう所を突けばいいのに、何も見ていないんだな。官僚はやりたい放題ですね。与党も野党も不勉強な議員ばかり。新宿会計士さんのこのブログで与党攻撃のネタを毎日たくさん提供しているのに、野党さんは見てないのか。そうか、中韓寄り、補助金バラマキ、増税からの大きな政府は野党の方針と一致しているのか。
立憲民主党は、自民党批判はやりますが行政批判、公務員批判はやりません。公務員は支持基盤ですので。
なので必然的にスキャンダルを追及することになります。
労組を支持基盤にしている限りは限界がありますね。
国民民主党の限界もこのあたりかと。
玉木氏は連合と自民党の仲を取り持とうとしているという噂もあるようですが。
日韓通貨スワップの開始要件が「自称労働者の件が、韓国の国内問題として決着をみた暁には・・」で、あって欲しいですね。