中国「日本旅行キャンセル」の動きが観光公害対策に?

オーバーツーリズム(環境公害)に悩む日本にとって、中国で相次ぐ「日本旅行キャンセル」の動きは「願ったりかなったり」、なのでしょうか。以前から当ウェブサイトでしばしば取り上げている「日本旅行キャンセル」に関する話題を、日本のメディアも報じ始めました。しかし、すでにオーバーツーリズムに悩む日本にとって、こうした動きが結果的に日本経済に打撃を与えるとは限らない点は注目に値するかもしれません。

日本への団体旅行キャンセル相次ぐ=共同も報じる

現在、中国では日本旅行への忌避感が広まり始めているという可能性があります。

当ウェブサイトではすでに先日の『中国人「福島を放射線島に改名し日本渡航を停止せよ」』や『中国人が秋の日本旅行を忌避か?』などでも取り上げたとおり、中国国内では日本への渡航を禁止せよ、などとする主張も出て来ており、じっさいに一部では日本旅行を取りやめるとの動きもあるそうです。

これに関連し、日本のメディアもこの話題を報じ始めました。共同通信が配信した、こんな記事がその典型例でしょう。

中国、日本への団体旅行キャンセル相次ぐ 大型連休利用 現地報道

―――2023/8/29 19:54付 産経ニュースより【共同通信配信】

共同通信によると中国側の複数の大手メディアが29日、「日本への団体旅行のキャンセルが相次いでいる」と報じたほか、斉藤鉄夫・国交相も29日の会見で、「中国からの訪日旅行に一部キャンセルが発生している」と明らかにしたのだそうです。

訪日客のトップは韓国、台湾、米国

ただ、正直なところ、中国人が大々的に日本旅行をキャンセルし始めたとして、なにか具体的に実害がある、というものなのでしょうか。

日本政府観光局(JNTO)のデータをもとに、今年1月から7月までの訪日外国人を国別に集計してみると、トップが韓国人で全体の3割近くを占め、これに台湾、米国、香港などが続いています。中国人は5位に過ぎません(図表1)。

図表1 訪日外国人(2023年1月~7月)
人数割合
1位:韓国3,755,27028.81%
2位:台湾2,192,89916.83%
3位:米国1,170,9948.99%
4位:香港1,126,1448.64%
5位:中国907,8856.97%
6位:タイ547,3204.20%
7位:ベトナム345,7572.65%
8位:フィリピン328,7762.52%
9位:シンガポール277,9892.13%
10位:豪州274,7452.11%
その他2,104,80016.15%
総数13,032,579100.00%

(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)

正直、日本のインバウンド観光に関しては、現在でも特定国に偏ってしまっているという点は問題ではありますが、それでも極端な話、中国人観光客がゼロになったとして、現在の日本が困るかといえば、まったく別問題です。

中国人なしでも十分に回る日本の観光産業

これに加え、2023年7月の単月に限定していえば、入国者数は232万人でした。これはコロナ前の2019年7月の299万人と比べてだいたい8割弱の水準ですが、中国人入国者数が3割弱の水準だったにも関わらず、ここまで回復しているという事実を忘れてはなりません(図表2)。

図表2 訪日外国人(2019年7月vs2023年7月)
2019年7月2023年7月増減
韓国561,675626,800+65,125
台湾459,216422,300▲36,916
中国1,050,420313,300▲737,120
香港216,810216,400▲410
米国156,865198,800+41,935
フィリピン37,77151,700+13,929
タイ73,20249,600▲23,602
ベトナム40,76244,800+4,038
カナダ29,28538,800+9,515
インドネシア25,21528,500+3,285
その他296,291329,600+33,309
総数2,991,1892,320,600▲670,589

(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)

2019年7月時点だと、中国人観光客が単月で100万人を超え、全体の3分の1を超えていたのですが、現時点だと韓国、台湾、香港、米国などにばらけています。すでに中国人観光客なしでも、日本のインバウンドは十分に多いという言い方もできます。

オーバーツーリズム対策を強化しているほど

しかも、この水準でも現在、日本では「オーバーツーリズム」の弊害が生じ始めている状況です。

おりしも斉藤国交相は29日の閣議後会見で、オーバーツーリズム対策を強化すると述べています。

オーバーツーリズム対策強化へ 政府が省庁横断会議を設置

―――2023/8/29 12:17付 産経ニュースより

オーバーツーリズムは、一部の観光地で公共交通機関や飲食店などの混雑、ゴミの投げ捨てなどのマナー違反などによる生活環境の悪化などが顕在化している問題で、「環境公害」とも呼ばれます。

産経によると、オーバーツーリズム対策のとりまとめは、26日に岸田文雄首相が沖縄を訪問中に明らかにしていたもので、これを受けて斉藤国交相は政府内で省庁横断会議を設置し、今秋にも対策を取りまとめる考えを明らかにしたのだとか。

これについては正直、「観光税」ないしは入国税を課すのが最も手っ取り早いのではないか、という気がしてなりませんが(※これに伴い出国税は廃止すべきでしょう)、こうしたなかでの中国の「ノージャパン」の動きは、じつは日本経済にとっては「願ったりかなったり」という側面もあるのかもしれません。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. たろうちゃん より:

    特に京都や鎌倉がヒドイ被害らしい。ゴミ問題。景観問題、ところかまわずの糞尿問題。報道しない自由を駆使するマスコミもインターネットの情報輞にはあらがえない。中国人の食事の跡もテーブルの下は散らかしぱなしだ。以前はカネを落としてくれたから、我慢をしたが福島の処理水放出では中国人の過剰反応が目立つ。今、ニュースがやっている。相も変わらず岸田のバカは「遺憾」だと。検討士のあとは遺憾王だな。ありゃバカだ!遺憾だけならおれでも言える。

  2. 攻撃型原潜#$%&〇X より:

    処理水放出に対する中国の過剰反応について、条件入国としてホタテを10個食わせろ(無料)とか、スシロー食べ放題とか、色々なアイデアがSNSで話題になっています。
    オーバーツーリズムとは言え、核汚染国と思っている国に折角来てくれるのですから、論より証拠の福島放出水測定ツアーなんて人気が出るかもしれません。測定器は日本で調達すると細工されていると疑われるので、それぞれ自国から持参してもらい、福島から船を出して実際に処理水を測定してもらいましょう。その前に比較のために自国での数値を測って来てもらいましょう。訪日する前に自国内の数値にびっくりするかも知れません。
    https://www.recordchina.co.jp/b919625-s25-c30-d0052.html
    ↑だそうですから、中国人民が本当のことを知ると暴動になります。で、結局中国政府により、日本への団体旅行は再び停止になって、オーバーツーリズムも収まるかと。

  3. たろうちゃん より:

    全然関係のないコメントで恐縮だが、朝鮮中央日報のコラムを見て仰天した。驚いたなんてもんじゃない、仰天したのだ。本当に遺憾王が北朝鮮に行くらしい。相手はアメリカをも騙した嘘つき大王だぞ。やっぱり岸田リスクは存在した。あのバカは、自分の力量がわかってない。またカネか?どこまでバカなんだ?拉致被害者は北朝鮮にとっては、金蔓だ。軍備がととのわず、スパイ天国の日本だから舐められるのだ。妙な功名心を抱くんじゃない。それより総理やめろ。

  4. 一之介 より:

    中国人の方々の日本旅行キャンセルはとても良い話しですが、仮に日本へ観光に来られた方は日本産の海産物を一切食せず日本で旅行を楽しむこともかなり困難だと思いますので、ここは、中国政府の自国民への安全への思いに鑑み、中国のパスポート所持者の日本への入国を当面の間停止する処置をとってあげて隣国との協調を行い友好関係を築く礎にしてはどうでしょうか?これぐらいの提案を国会でボンクラ総理やハニー外務大臣に強力に働きかければ脱糞民主党の支持率も多少は上がると思いますけれども。これから秋の観光シーズンを迎える日本人にとってもとても良い施策だと思いますがあきませんかね?コロナ全盛のときには入国制限してましたからどうってこと無いでしょう?

  5. 匿名 より:

    冒頭の
     >オーバーツーリズム(環境公害)
    は、観光公害のタイプミスかな?

  6. 墺を見倣え より:

    予約は3割しか減っていないという話もある様だ。
    まあ、予約しない事にはキャンセルできないからね。
    しかし、キャンセルする為に予約するってのは、中国の旅行会社を困らせているのでは?

    最近は、中国から団体客が来ても、運ぶバスも・立ち寄る土産物屋も・泊まるホテルも、全て中国資本ってのが多いらしいから、どんどんjキャンセルする為の予約を入れて良いんじゃない?

    1. ぬい より:

      その昔、まだ中国人旅行客が炊飯器を何台も爆買いしているような頃、日本の空港で違法営業している白タクのニュースをやっていました。しかしその運転手は日本在住の中国人でした。(しかも運転中の交通違反も問題になっていた)

      またある時には、中国人団体客がツアーに組み込まれている土産物店で偽物かぼったくりをつかまされ「日本のイメージが悪くなった」とインタビューで憤慨していましたが、お察しの通りその店も中国人が経営していました。

      これでは日本にお金は落ちませんし、「日本を好きになる」という数少ないメリットもないので受け入れる必要性が乏しいですね。

  7. より:

    残念ながら確認できていないのですが台湾のネット民のコメントに、『そんな事したら日本が喜ぶだけじゃない』といったコメントがあったようです。
    何処で見たか曖昧なのですが、本当なら台湾という国やそこの多くの人とは価値観が共有できるんだなと思った次第です。
    まぁトイレでないところで平気で用を足すとか、旅費目的で訪問地で強盗などをする国からの入国はお断りしたいです。
    できれば害務省あたりに相手から日本に出国させないようけしかけてもらいたいものですが、リンではできないかな…。
    今なら中国にいる邦人に危険が迄んでいるのでNEOするとか言って見たらどうかしら。。

  8. 匿名 より:

    入国ゲートに 習近平を粛清 とか表記し
    SNSに投稿義務を入国条件にするとかw
    「共天已死 民天當立」でも良いか

  9. めたぼん より:

    オーバーツーリズムの問題はあるにしても、中国人旅行者が来ることで儲かる人もいるんじゃないでしょうか?
    爆買いも日本にとって利益なのでは?

    中国人が来ても儲かるのは在日中国人だけ、という意見も良くみかけるんですが、中国資本の会社が利益を上げれば日本で納税しますよね。
    利益の一部は中国に送金されるとしても、それは外国資本ならどこの国の会社でも同じだと思うんですよ。
    白タクはほぼ100%脱税してるでしょう。
    しかし、それでも白タクの人が日本に住んでるなら、旅行者が払ったお金は結果的に日本に落ちるはず。

    「来ない方が良い」という意見一色なことに違和感を感じます。
    私は経済には詳しくないので、何か認識に間違ってる部分があるんでしょうか?

    1. 匿名 より:

      日本にいる中国人が潤うのです。日本と言う観光インフラ、生活インフラをタダ同然で使って中国人が儲けているのです。あいつらは設けたカネは日本で使いません。そして日本社会にもなじみません。ほんとうに欲の皮の厚い厚かましいやつらです。なぜ日本人は中国人から金を巻き上げようと言う発想がないのか?ばかみたいにインバウンドとばかり騒いでいるが、トータルでペイされているのか?財界や観光地の店主だけの満足で判断せず、広く日本国民の意見を聞けと政治家や官僚にいいたい。

      1. めたぼん より:

        ご返信ありがとうございます。
        しかし、まだ疑問が解消されません。

        在日中国人は、インフラを使用する対価として所得税(会社なら法人税)を納付してるんじゃないですか?
        同胞向けに商売してるのは中国人に限らないのでは?
        儲けた金を日本で使わないというのは、何か根拠があるんですか?
        日本に住んでる以上は日本でクルマを買ったり家を買ったりするし、食料品や生活雑貨も買うと思うんですよ。
        一部は家族に送金することはあるかもしれませんが、大部分のお金は日本国内で使うんじゃないでしょうか。

    2. 雪だんご より:

      私もそこまでは経済に詳しくないですが、今までの経緯をざっとまとめるなら

      ・中国人観光客は”数”ではそこまで大きな比率は占めていない
      ・観光客が来すぎるといろいろな弊害がある(オーバーツーリズム)
      ・日本の観光業が儲かるのは事実だが、それ以外への利益は間接的で微々たる物

      以上の理由で中国人観光客が減ると「確かに儲けは減るが、大した額ではない」し、
      その金額の為に「中国のご機嫌伺いはしたくない」と言う理屈になる訳ですね。

      完全にゼロになるとさすがに困るかも知れませんが、元々中国内であれだけ
      反日報道を繰り返しているのにそれでも観光客がやってくる事を鑑みると、
      それは杞憂かと思われます。

      1. めたぼん より:

        ご返信ありがとうございます。

        雪だんご様が挙げられた3点のうち、1点目と2点目は良く分かります。
        特に1点目はこちらの記事で数字付きで解説してくれてますね。
        イメージだけで語るブログが多い中、こちらは論理的なので読んでて納得できます。

        しかし、3点目はまだ納得できていません。
        経済効果はこのくらい、しかし観光公害で被害を被っている人がこのくらいいる、比較すると観光公害の被害の方が大きいのではないか?
        といったような主張なら納得できるんですが、他のサイトも含めてまだそういう分析をしている記事は読んだことがありません。
        無料ブログに過大な期待をかけるのはおかしいことは重々承知しておりますが、新宿会計士ならやってくれるのではないか?と期待しております。

        しかし観光公害の被害を金銭と比較できるぐらいに定量化するのはめちゃくちゃ難しそうですよね。
        さすがに無理ですかね。

  10. 元駐在員 より:

    中国人のキャンセルが埋まれば良いなと思うのですが時期的にどうでしょうかね。6-10位、ランクインされていない国の方々で埋め合わせができればと思います。ただ観光業に携わられている方の労働力の不足もあるようですし満足行くサービスが提供できない状況であるのであれば今、無理くり訪日旅行者を増やさなくても良いではないかとも思えますし、難しい問題ですね。備品を持ち帰ったり、夜中ドンチャン騒ぎをしたり、部屋を破壊したり、食べ切れないほどビュッフェで朝食を持ってきたりと他人に迷惑をかけるような人には来てほしくないというのが本音です。

  11. バイオテロ より:

    中国でコロナ再拡大、ペスト確認!
    来るな!

  12. ちょろんぼ より:

    中共の日本旅行キャンセルは2つの面が
    あると思います。
    1.経済がデフレ化し、日本に行く金がなくなった
    2.国が日本批判しているので、行く事自体が
      問題行動だと思われる。
      しかも、日本に行ったら海産物を食べなく
      ちゃいけない

    この2つの面が違う方向に行くと
    日本製品への不買運動になりますよね?
    高価な日本製品を止めて。国産製品を使おう?

    来ない方が日本の自然感興を保護する事にも
    なりますよね?
    噂では食用の為、セミの幼虫を掘り出し
    セミが鳴かない地区も出ているとか。
    本当かな~。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告