某新聞社、再び営業赤字に…実質債務超過の要件とは?
今年も、とあるけしからんツイッター・ユーザーがとんでもない画像を投稿していたようです。厳重注意処分という名の謝意を示すとともに、さっそくその内容の解析に取り掛かってみると、なかなかに興味深いことが判明しました。やはり、売上高の急減に、売上原価、販管費の抑制が追い付いていないのです。また、貸借対照表にも資産性が疑わしい項目がいくつか見られるなど、何かと議論の余地がある決算です。
けしからん画像を投稿したユーザー
今年も、けしからんツイッター画像を投稿するユーザーが出現したようです。
梅雨時の湿気でうっかり手が滑って某中小企業と親会社の決算公告を貼ってしまったことを深くお詫び申し上げます。
深夜にコンビニで朝刊(しかも毎日)だけ買って店員から訝しげに話しかけられる恥辱に耐えて手に入れたものなので、くれぐれも拡散したり解り易く記事にしたりしないでくださいね。 pic.twitter.com/LpRH14DeUW
— りぼー (@_rtiobboitr_) June 27, 2023
これは、某新聞社の決算公告が掲載された毎日新聞の朝刊だそうです。
「梅雨時の湿気」で「うっかり手が滑り」、などと記載されていますが、まったくけしからん話です。噂によると5月1日以降、1部売りの価格は従来の150円から、なんと160円へと大幅値上げされたという情報もあるようですが、そんな大枚を使ってこのようなものを購入するとは、信じられません。
売上高は右肩下がり
それはともかく、このツイッター・ユーザーが投稿した画像をもとに、2021年3月期以降は税務上の中小企業と化した某社の決算を眺めてみると、なかなかに興味深い事実がいくつか浮かび上がります。
まずは、売上高の推移です(図表1)。
図表1 某社の売上高の推移
(【出所】ツイッター投稿画像をもとに著者作成。以下同じ)
これによると某社の売上高(※単体決算ベース)は2017年3月期に1102億円、18年3月期に1066億円でしたが、19年3月期には1000億円の大台を割り込み974億円に、21年3月期には800億円に、そして22年3月期には625億円、直近では595億円と、まさに「つるべ落とし」状態です。
たった5~6年で売上高がほぼ半分近くにまで減ってしまうという減少速度には驚きますが、それ以上に、21年3月期の減り方よりも、22年3月期の減り方の方が激しいなど、同社の売上高の動きは不自然です。一般にはコロナ禍を受け、21年3月期に売上高が急減する現象が観察されているからです。
こうした現象は、あくまでも一般論ですが、「何らかの特殊な事情」――たとえば、「押し紙」の廃止など――によって生じることも多いのですが、その詳細な事情についてはよくわかりません。
経費抑制に追いついていない!
ただ、それ以上に興味深いのが、営業利益の状況です。
少なくとも2017年以降の同社の決算では、18年3月期から21年3月期まで4期連続して営業赤字が計上され、22年3月期に関してはいったん黒字転換したものの、23年3月期において再び営業赤字に転落していることが確認できます。
そこで、売上高を売上原価や販管費と同一グラフに示してみると、図表2のとおり、見事に売上高の減少に経費節減が追い付いていない様子が確認できるでしょう。
図表2 某社の売上高と売上原価・販管費の推移
しかも、売上高が坂を転がり落ちるように減少しているにも関わらず、売上原価についてはこの数年でほとんど抑制できておらず、結果的に販管費にしわ寄せがいくかたちです。
同社はここ数年、毎年のように特別利益を計上し、なんとか決算を作っているようにも見受けられますが、基本的に営業赤字が常態化している会社は、経営分析的に見れば「赤信号」そのものです。
実質債務超過の要件とは?
一方で、バランスシート的にも、問題が見受けられます。
同社の総資産は1342億円ですが、数年前の減資で資本金が1億円に減っているため、税務上は「中小企業」です。また、流動資産は173億円であるのに対し、固定資産は1169億円と、(うち土地が631億円)と圧倒的に固定資産の比率が高いのも特徴的です。
一方で流動負債は150億円ですが、固定負債は1127億円で、純資産の部はわずか66億円にすぎません。自己資本比率(純資産の部÷総資産)は5%弱、といったところでしょう(図表3)。
図表3 某社の2023年3月末時点の貸借対照表主要項目
項目 | 2023年3月 | 前期比 |
資産合計 | 1,342億円 | -11億円 |
流動資産合計 | 173億円 | 38億円 |
固定資産合計 | 1,169億円 | -49億円 |
うち土地 | 631億円 | -17億円 |
うち繰延税金資産 | 30億円 | -18億円 |
負債合計 | 1,276億円 | -42億円 |
うち流動負債合計 | 150億円 | -129億円 |
うち短期借入金 | 53億円 | -130億円 |
うち固定負債合計 | 1,127億円 | 86億円 |
うち長期借入金 | 406億円 | 92億円 |
純資産合計 | 66億円 | 31億円 |
うち資本金 | 1億円 | 0億円 |
うち資本剰余金 | 41億円 | 0億円 |
うち利益剰余金 | 13億円 | 39億円 |
うち評価・換算差額等 | 11億円 | -8億円 |
しかも、資産の部の詳細を検討していくと、繰延税金資産(30億円)、貸付金(短期貸付金が34億円、長期貸付金が14億円)といった具合に、会計士的な視点から見て「資産性が疑われる可能性がある項目」が散見されるのも気になるところです。
総資産が1342億円もある会社の純資産が66億円しかないというのも衝撃的です(一般にこうした会社は通常、実質債務超過が疑われます)。
いずれにせよ、売上高が急減するなかで、経費抑制に失敗すれば、企業にとっては「突然死」という「最悪のシナリオ」も発生しかねません。
親会社はファイナンス会社?
ただ、この会社は、親会社(ホールディングス)からカネを借りているらしく、実際、同社の借入金額とホールディングスの貸付金額が非常に整合しています。
たとえば、子会社である同社の長期借入金は405億90百万円ですが、親会社であるホールディングス側の長期貸付金も405億90百万円と、金額がぴたりと一致しています。また、子会社側の短期借入金は52億59百万円ですが、親会社側の短期貸付金は64億03百万円で、これもほぼ整合しています。
ちなみに親会社のバランスシートを見ると、基本的には子会社の代わりにおカネを誰かから借りてきて、子会社に貸してあげるという「ファイナンス会社」の機能があるようです(図表4)。
図表4 某社の親会社の2023年3月末時点の貸借対照表主要項目
項目 | 2023年3月 | 前期比 |
資産合計 | 718億円 | 32億円 |
流動資産合計 | 162億円 | -60億円 |
うち短期貸付金 | 64億円 | -130億円 |
固定資産合計 | 556億円 | 92億円 |
うち長期貸付金 | 406億円 | 92億円 |
流動負債合計 | 160億円 | -60億円 |
固定負債合計 | 406億円 | 92億円 |
負債合計 | 566億円 | 32億円 |
純資産合計 | 152億円 | 0億円 |
ただし、「純資産合計」が152億円であるとはいえ、子会社に対する投資持分と思われる投資有価証券150億円、短期貸付金64億円、長期貸付金406億円の価値が棄損した場合、親会社もあっというまに実質債務超過状態に陥る可能性はありますので、注意は必要でしょう。
いずれにせよ、この手のけしからん画像を投稿するツイッター・ユーザーには、厳重注意処分(という名の謝意)を示しておきたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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全く利害関係のない且つど素人の見解ですが、土地の簿価が631億円として、含み益があとどのぐらい残っているのかで残存寿命が決まるのではないかと思いました。
賃貸用不動産簿価602億、時価1603億(「エルネオス」2018.8)
竹橋は1966のビルですから建物の簿価はもう無い筈ですね
含み益が1000億(その後の地価高騰でもっと増えてる?)、営業赤字が10億円だったら資産の切り売りで数十年は持ちそうな気がしますがどうでしょうか
新聞出版の赤字を年10億に抑えられているかぎり、僕(アラフィフ)が生きているうちに毎日新聞が廃刊になることはないだろうと思いますね。 そうはいっても、発行180万、実売は100万部以下、電子版はほとんど契約を取れず、取れたところで年8400円(税別)の売上にしかならない新聞業は売上を一貫して減少させていく筈で、売上減少と同額の経費をいつまで削り続けることができるか注目です。 他業種では見ることのない行き詰まり方をするんじゃないでしょうか。
5千部でも新聞社は辛うじて成り立つと大阪日日が証明したわけですし。
ココロの声が聞こえた気がします。
「新聞社に三悪あり
粉飾・虚偽・虚構
これをもって新聞記者の職業死というがごとし」
貸付金が長短合わせて49億円、借入金は長短合わせて460億円。ネット約410億円の金融負債。純利益30億円の会社がどうやって返済するんだろう。
たぶん土地630億円を売るんだろう。
素朴な疑問ですけど、某新聞社の財務状況が、一般人の関心を引く時代になったということでしょうか。
ふと思ったのですが、経済紙である日経は、各報道機関の財務状況を記事にしないのでしょうか。
いつもありがとうございます。
日本の言論機関の浄化に向けて希望がもてる記事ですね。
変態新聞の厳しい財政状況が暴露されました。
しかし,もう一つ知りたい情報があります。
工作資金の流入状況です。
皆さんが思っているように,この新聞社には
何らかの名目でチャイナからの資金が入っているはずです。
それは、変態新聞の財務や決算からは見えないと思います。いくら、○京がアホでも直接、資金を入れたり、指示はしないでしょう。そのためには○通を使うと思います。なんせあの社是を掲げる会社ですからそれぐらいの仕事は喜んで受けるでしょう。マスコミだけでなく、そっちもメスが入らないと。
まったくけしからんツイッターユーザーさんに謝意を申し上げて、もし来年度もこの企業が存続しているなら、また魔法の手でコンビニでの情報収集と拡散をお願いしますm(._.)m
しかし決算公告で、HDは新しいから分かりますが、新聞社の方が「第46期」となっているのは、それ以前に何か重大な事があったのでしょうか?いくらなんでも戦前から存続しているし、戦後に株式会社になったとしても78期ぐらいが妥当なセンだと思います。ぶっちゃけ「一度清算でもされたんですか?」(爆笑)。
親会社のバランスシートを見たら、子会社の代わりにおカネを借りてきて、子会社に貸すという「ファイナンス会社」の機能のみ。また総資産が1342億円もある会社の純資産が66億円しかない!(絶句)。エッ?コレ危ないんちゃうのん?自己資本比率5%弱、、。何も残ってない。
1977年に新旧分離してます(85年再統合) Wikipediaなどに経緯が書いてあると思います
>同社はここ数年、毎年のように特別利益を計上し、なんとか決算を作っている・・。
含み益の捻出にも限りがあります。決算を捏造(つく)てしまえば、おしまいですね。
*テレビ局との資本関係が弱い新聞社は大変だ・・。
廃業して会社解散することが一番です。
従業員の退職積立金は、信託会社に信託されていると思うので、全額支払われると思います。
従業員2千人に、一人当たり平均1千万円の退職割増金を支払うとすれば、約2百億円が必要です。
資産と負債の差額が、約2百億円強の今年辺りが、自主廃業会社解散の最後の機会だと思います。
それ以降になって、突然に倒産でもすれば、労働組合が黙っておれないでしょう。
世の中に、余計な騒動を起こすことになります。
案外、労働組合と協議調整に入っていたりして。
これは、新聞社が斜陽産業だから、早く廃業した方がいいのです。
斜陽産業とは、もやは世の中に必要のない産業ということです。
沈みゆく船にしがみ付いていてもいても仕方がないです。
赤字を垂れ流しながら、銀行からお金を借りて無理に事業を続けても、結局返せなければ、不良債権となって、預金者に迷惑を掛けるし、仕入金の不払いが発生すれば、連鎖倒産、又は、連鎖倒産まで行かなくても、取引先企業の体力を損ねることになるかもしれません。
従業員にしても割増退職金を貰えば、次の人生をスタートする原資にできます。
つまり、無理なものはさっさと止めれば、周りに迷惑が掛からないということです。
これが、合理的な考えだと思うのですが。
ブラックな労働環境でも転職せずに残る記者って、よほど熱意があるかよほど使い物にならないかのどっちかなんじゃないかと。
もうスクープを連発したところで一発逆転が出来るような時代じゃないですし、このままどんどんジリ貧になって最後はコテンと逝っちゃうんだろうなぁと。
岸田文雄同様、早くご退場頂きたい対象ですね。
>実質債務超過が疑われます
果たして突然死はあるのでしょうか。
細川ガラシャの辞世の
「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」
花も人も、散りどき(自主廃業の時期!倒産ではない)を知っているからこそ美しいのだ
豊臣秀吉の辞世の句
「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢」
大阪(大阪毎日新聞)での栄華の日々も(日本を動かしすぎた)、儚い夢のようだった
個人的には平家物語の冒頭が好きです。
祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、
盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし
自戒を込めて。
こんな辞世の句もあるようです。
遠からぬ将来に、成長分野へと雇用流動して行くであろう新聞記者の相応しいと考えます。
「華と見し 雪は昨日ぞ 元の水」
うーむ、財務状態が記事の通りだと、資本金を中小企業にしたり、自己資本率の少なさ、斜陽産業ではないかとか、競合社に対する道徳性の欠如とか、社長自体が不適切な経営を指摘されてクビになり決算が出せずに上場廃止になりそうで苦しんでいるメガネスーパー(ビジョナリーホールディングス)と似ている・・・。