前回総選挙で「ギリギリだった」のは立憲民主党も同じ
本稿は、先日の「2021年10月の衆院選の小選挙区におけるすべての得票データをもとに、政党間で票が移っていたら、選挙結果がどうなっていたか」に関するシミュレーションの補足です。先日の実験結果を受けて、当ウェブサイトの読者コメント欄でもさまざまな盛り上がりがありましたが、ふと思い立って、もうひとつ、「立憲民主党からX票、自民党の方に移っていたらどうなっていたか」に関しても実験してみました。結果は惨憺たるものです。Xが5,000票であれ、20,000票であれ、立憲民主党は大敗となるからです。
試算の前提
先日の『数字で見る衆院選:「維新の大躍進がまだ難しい理由」』では、当ウェブサイトとしての「初の試み」として、2021年10月の総選挙における全国289のすべての小選挙区のデータを使い、「かりにある政党からほかの政党に票が移転したら、実際の選挙結果はどうなっていたか」の実験を実施しました。
その結果を再掲しておくと、こんな具合です。
前提条件
- ケース①自由民主党・立憲民主党双方が公認候補を出している選挙区において、自由民主党候補者から立憲民主党候補者に票がX票動いたとしたら?
- ケース②自由民主党・日本維新の会双方が公認候補を出している選挙区において、自由民主党候補者から日本維新の会候補者に票がX票動いたとしたら?
- ケース③立憲民主党・日本維新の会双方が公認候補を出している選挙区において、立憲民主党候補者から日本維新の会候補者に票がX票動いたとしたら?
Xの値
- (A)X=5,000票
- (B)X=20,000票
気になる計算結果は?
上記の前提について、実験した結果が、図表1のとおりです。
図表1 ケース①~③の実験結果
ケース | X=5,000票 | X=20,000票 |
ケース①自→立 | 自187→155(▲32議席) 立*57→*88(+31議席) 維*16→*17(+1議席) | 自187→102(▲85議席) 立*57→143(+86議席) 維*16→*15(▲1議席) |
ケース②自→維 | 自187→181(▲6議席) 立*57→*61(+4議席) 維*16→*18(+2議席) | 自187→163(▲24議席) 立*57→*71(+14議席) 維*16→*26(+10議席) |
ケース③立→維新 | 自187→190(+3議席) 立*57→*53(▲4議席) 維*16→*17(+1議席) | 自187→196(+9議席) 立*57→*45(▲12議席) 維*16→*19(+3議席) |
(【出所】著者作成)
これによると、自民党が大敗し、小選挙区で第1党の座を明け渡すのは、この6つのシミュレーションのうちの「ケース①・X=20,000票」の場合に限られ、それ以外のケースでは自民党は第1党の座を他党に明け渡すことはありません。
それどころかケース③では、自民党候補者の獲得票数はまったく変わらないはずなのに、自民党候補者の議席が増えています。立憲民主党の候補の得票数が減る結果、自民党がその小選挙区で1位となり、議席を獲得する、というケースが考えられるためです。
逆にいえば、日本維新の会はもし2021年なみの候補者数に留まった場合、どう頑張っても議席を大きく伸ばすことはできません。また、立憲民主党も前回、小選挙区で57議席を獲得していましたが、結構ギリギリだった選挙区が多い、ということです。
こうしたなか、その後、読者コメント欄では「自民党、立憲民主党がともに5,000票ずつ減らし、維新の候補者が10,000票増やした場合はどういう結果になるか」、といったシミュレーションのご要望もいただいたのですが、これに関しては実施しません。
その最大の理由は、2021年の選挙結果だと、日本維新の会の公認候補者数が94人と少なく、上記結果と大差ないことが容易に予想できるからです。
(もうひとつ理由があるとしたら、「2つの政党から5,000票ずつ減って1つの政党が10,000票増える」という計算式を組み込むのが少々複雑であるためですが、これについては工夫すればできるようになると思います。)
立憲民主党が票を減らしたら?
ただ、ここでもうひとつ思いついたのが、「ケース④」「ケース⑤」です。
- ケース④自由民主党・立憲民主党双方が公認候補を出している選挙区において、立憲民主党候補者から自由民主党候補者に票がX票動いたとしたら?
- ケース⑤自由民主党・日本維新の会双方が公認候補を出している選挙区において、日本維新の会の候補者から自由民主党候補者に票がX票動いたとしたら?
その結果が、図表2です。
図表2 ケース④の実験結果
ケース | X=5,000票 | X=20,000票 |
ケース④立→自 | 自187→213(+26議席) 立*57→*31(▲26議席) 維*16→*15(▲1議席) | 自187→242(+55議席) 立*57→**5(▲52議席) 維*16→*14(▲2議席) |
ケース⑤維→自 | 自187→192(+5議席) 立*57→*53(▲4議席) 維*16→*15(▲1議席) | 自187→210(+23議席) 立*57→*45(▲12議席) 維*16→**6(▲10議席) |
(【出所】著者作成)
このシミュレーションの結果、立憲民主党は壊滅的な打撃をこうむることがわかります。
たった5,000票、立憲民主党から自民党に流れただけで、立憲民主党は57議席から31議席へと半数近くが失われてしまいます。これが20,000票だった場合、立憲民主党は10分の1にまで激減してしまう計算です。
また、意外なことに日本維新の会が5,000票減った場合、維新の議席はたった1つしか減らず、なぜか立憲民主党が4議席も減らしてしまいます。日本維新の会が20,000票減った場合も、なぜか立憲民主党の方が大きな打撃を受けるのです。
このあたりは、意外な発見であるといえると思うのですが、いかがでしょうか。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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考察ありがとうございます。
前回と今回の票の移動は一定数ですが、これが一定割合(10%とか30%とか)だとどうなるかも面白そうです。
5000票の重みが選挙区によって異なっちゃいますし。
賃金上昇率、過去最高らしいです。
また今度、新宿会計士さんにはぜひ、悪い円安論が間違っていたことをマスコミ批判と一緒に取り上げてほしいです。
立憲が伸びるには、とにかく「自民を減らす」しかないというのがさらに強調されましたね。また辞めたくてしょうがないんじゃないかという感じの泉氏が100議席や140議席あたりではなく「150議席」としたのも、このシミュレーションを基にして絶対安全圏を取ったんじゃないかという合致ぶりで草でございます。
だらしのない自民都連あたりより立憲の方が選挙に精通していそう。結果はひどいけど。
連中が路線を改めちょっとだけマトモになってしぶとく生き残って害を撒き散らし続ける、という未来は無さそうで少し安堵しました。
泉代表の150議席発言の根拠はこれ。次期衆院選の党方針。
https://www.youtube.com/watch?v=8oLAqHtyTsY
「150小選挙区で与党と互角に」立憲民主党 岡田克也幹事長(2022年10月9日)テレ東BIZ
岡田氏の「150小選挙区で与党と互角に」という表現からつらつら拝見しましたが、150区で勝つなのか互角=半数の75区取りたいなのか、泉氏の言うような最終的な議席数が150、なのか意図がイマイチで、具体的な予測がよくわかりませんでした。150小選挙区で互角であれば結果立民が150議席でゆくゆくは政権交代という青写真、ということで良いんですかね?
岡田「対決とか提案とかじゃない、批判のための批判ではダメ、でないと前向きな議論にならない。」からの即時に批判のための批判をしてまずツカミ、
・風だけで政権取っても長続きしない→民主政権の自虐ネタかな?
・30年ブレずにやってきた→政権とっても変化ナシで30年成果無しかい。
・維新との協力→この放送から半年程度で瓦解するんかい……
・国民民主の票もほしいれす(^p^)→もうムリどころか吸収される側だと思うよ。
笑いすぎて中段を飛ばしましたが、ここまでネタのオンパレードだと、さすがは岡田だと言わざるをえませんでした。
企画側の日経はというと、統一教会問題を盛り上げたいのと、立民は左じゃないよーセンターだよー(という理想で現在未遂って自分で言っちゃってる)だから立民に期待だねー、て方針を放送したいだけやなこれ。というの私のひねくれた感想でした。立民、やっぱ選挙分析ヘタか……?
分析が下手なのでは無く、分析すべき中身が無いという事でしょう。中身の無いものを縦横から分析しても何ま出てきませんよ。分析の前に、中身を作れ!
何しても、データを掴んで置くというのは、大事な事だと改めて思いました。
次に、データの中身を精査していければ、より推測がし易くなります。
いずれにせよ、自民も立憲も薄氷です。誰かが言ったという、政界一寸先は闇、ですね。
♡いいね
次回の衆議院選挙で、維新は小選挙区に289名の候補者を立てることが出来るのでしょうか?
前回94名ですから約3倍の候補者数になります。
最低でも主要都市とその周辺地域には候補者を立ててもらいたいですね。
維新が票を奪うのは自民党からなのか、あるいは立憲民主党からなのか、結果を見てみたいです。