韓国紙に掲載された、おかしな「韓日ウィンウィン」論

日韓大陸棚協定失効前に韓国紙「ウィンウィン目指せ」

「韓日ウィンウィン」という単語が韓国メディアなどに掲載されたときには、注意が必要です。ここで「ウィン」するのは一方的に韓国であることが多いからです。この「韓日ウィンウィン論」は、当ウェブサイトで普段から説明している「ゼロ対100理論」の応用系のようなものです。こうしたなか、日韓大陸棚協定が2028年に失効する可能性があることを踏まえ、またしても「ウィンウィン」論が出てきたようです。

2023/05/15 12:00追記

記事タイトルに誤植がありましたので修正しています。

ゼロ対100理論に要注意!

韓国ウォッチングの際に気を付けなければならないことがあるとしたら、日韓諸懸案を「日韓どっちもどっち」論に持ち込むことにより、韓国にとって都合が良い着地を目指す、という考え方であり、その最たるもののひとつが「ゼロ対100理論」です。

この「ゼロ対100理論」は当ウェブサイトの造語ですが、本来ならば自分たちの側に全面的な落ち度があるにも関わらず、屁理屈を駆使し、その「過失割合」を減らそうとする詭弁のことであり、中国やロシア、北朝鮮などを含めた無法国家たちが好む態度のことです。

※ゼロ対100理論とは?

自分たちの側に100%の過失がある場合でも、屁理屈を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく態度のこと。『「ゼロ対100」が大手メディアに掲載される時代に!』等参照。

このあたり、普段から指摘しているとおり、日韓諸懸案の正体は、基本的には韓国がありもしない「被害」を捏造し、法的権利のないことを要求している点にありますが、こうした態度を棚に上げ、「韓日はお互いに反省点がある」、「お互いに譲歩すべきだ」など、あたかも「双方に問題がある」かのように言い募ります。

こうした「ゼロ対100」理論は、べつに韓国だけの専売特許ではありません。

日本の近所でいえば、ほかにも中国やロシア、北朝鮮などが好んで使用する論法ですが、要するに無法国家には「ゼロ対100理論を好む」という共通点があるのでしょう。

ゼロ100の派生形の「韓日ウィンウィン理論」

そして、こうした「ゼロ対100理論」の派生形が、「韓日ウィンウィン理論」です。

日本や米国など、まともな文明国でいう「ウィンウィン」とは、「お互いが成功する」、「双方ともに利益を得る」などの意味合いを持っています(ちなみに著者自身、ここでいう “win” は、他動詞としての「相手に勝つ」ではなく、自動詞としての「成功する」に近い意味合いがあると考えています)。

しかし、韓国のメディアから「韓日ウィンウィン」という言葉が出て来るときには、たいていの場合、受益者は韓国のみであり、ここでいう “win” は他動詞としての「(日本に)勝つ」を意味していることが多いようです。

大陸棚協定巡り韓国紙「ウィンウィンの解決を」

こうしたなか、その「韓日ウィンウィン論」の典型的な事例を発見しました。韓国メディア『韓国経済新聞』(韓経)が配信し、『中央日報』(日本語版)に掲載された、こんな記事です。

「韓日大陸棚協定」2年後に存廃の岐路…ウィンウィンの解決策求めなくては(1)

―――2023.05.14 12:11付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】

「韓日大陸棚協定」2年後に存廃の岐路…ウィンウィンの解決策求めなくては(2)

―――2023.05.14 12:11付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】

これは韓国政府の元外交部条約局長が寄稿したものですが、端的にいえば、「ウィンウィン」の使い方が間違っている記事です。1978年6月22日に発効した「日韓大陸棚南部共同開発協定」が失効すると困る、というものだからです。

記事によると協定自体は50年間有効ですが、当事者の一方が協定終了3年前、すなわち2025年5月22日以降に相手方に終了を通告すれば、発効からちょうど50年後にあたる2028年6月22日に、協定が完全に終了するというのです。

日本政府はまだ対外的に立場を公式表明していませんが、「協定が終了すれば第7鉱区を含む共同開発区域(JDZ)がすべて日本に帰属する」、というのです。

というよりも、協定自体、明らかに日本にとって一方的に不利なものに見えてしまうのですが、どうしてこれを延長することが日韓双方にとっての「ウィンウィン」なのでしょうか?

記事によると、この協定自体は当時、日本の要求で始まった日韓間の大陸棚境界交渉の結果、両国の主張が重複する第7鉱区、および第4~6鉱区の一部を共同開発区域に設定した、といった経緯があったようです。

しかし、日韓両国は協定締結直後と2002年にそれぞれ共同で探査をしたものの、日本側は「採算性がない」という理由で追加探査に消極的であり、韓国側の共同探査要求に応じていない、などとしています。

また、1978年に国際司法裁判所(ICJ)が下したリビアとマルタの大陸棚を巡る事件で、400海里未満の水域での排他的経済水域(EEZ)と大陸棚の境界画定は中間線を適用することとなったため、こうした国際法の判例に従えば、協定終了後は該当部分が日本に帰属する可能性が高いというのです。

韓国に対する「あり得ない譲歩」岸田首相の命運

ではなぜ、記事は本件で「ウィンウィン」などと述べているのでしょうか。

ダラダラと長文が続きますが、要するに、現状では韓国の国際法的な主張にほぼまったく分がないからでしょう。

このあたり、自称元徴用工問題を筆頭に、日韓諸懸案の多くは、国際法に従えば韓国が不利になるというものが大変に多いのですが、韓国側はこうした事例においては、「韓日双方が納得する解決策を話し合わなければならない」、などと主張します。

本件も、ほぼそれと同じ構造でしょう。

それはともかく、著者自身も1人のビジネスマンとして、最近の岸田文雄政権の韓国に対する「ありえない譲歩」ぶりにはなかなか驚かされます。現在の日本が韓国に譲歩すること自体、日本にとってはまったくと言って良いほどメリットがないからです。

ただ、それと同時に2025年といえば、岸田文雄政権が継続しているかどうかは微妙、というタイミングでもあります。遅くとも自民党総裁選がその前年の9月に実施されるからです。

いや、もちろん、岸田首相が自民党総裁として再選されるという可能性もあるのですが、そうでない可能性もあります。

その意味では、韓国にとっては「日本に脇の甘い首相がいる間に何としても自国にとって有利な解決策を見つけておかねばならない」という動きが生じたとしても、何ら不思議ではありません。

そして、今後はたとえば例の「日韓鴨葱スワップ」(『詐欺師が狙う次の「鴨葱」:日韓スワップ交渉本格化へ』等参照)や「ホワイト国」(『パブリック・コメント大募集!入力方法を解説します!』等参照)など、「ウィンウィン」(?)とやらに向けた動きが加速するはずです。

私たち日本国民にとっては、まだまだ油断できない日々が続くでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. クロワッサン より:

    >しかし、韓国のメディアから「韓日ウィンウィン」という言葉が出て来るときには、たいていの場合、受益者は韓国のみであり、ここでいう “win” は他動詞としての「(日本に)勝つ」を意味していることが多いようです。

    韓国人原爆犠牲者慰霊碑にある、【悠久な歴史を通じて、わが韓民族は他民族のものをむさぼろうとしなかったし、他民族を侵略しようとはしませんでした。】なる妄言も、そんな韓国的価値観故に言えるのでしょう。

    11 韓国人原爆犠牲者慰霊碑
    http://www.pcf.city.hiroshima.jp/virtual/map/irei/tour_11.html

    そして、そんな妄言が刻まれた碑を岸田文雄は訪う予定で。

    韓国 ユン大統領 広島訪問を発表 G7首脳との会合に出席予定
    2023年5月14日 20時05分
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230514/k10014067441000.html

    >さらに岸田総理大臣とは韓国人原爆犠牲者慰霊碑を一緒に訪れる予定で、キム次長は「犠牲になった韓国人を追悼し韓日両国が平和と繁栄の未来にともに備えようという決意を新たにする機会になる」と述べて、意義を強調しました。

    安倍外交の成果をここまで全否定し、踏み躙り、日本国民に不利益をもたらすのだなぁ…と、岸田文雄の豹変っぷりにある意味感心します。

    何はともあれ、日本が民主主義国家である以上、岸田自民を選挙で否定するのが正道ですね。

  2. めがねのおやじ より:

    50年前に発効した「日韓大陸棚南部共同開発協定」が失効する。すなわち2025年5月22日以降に終了を通告すれば、発効からちょうど50年後にあたる2028年6月22日に、終了する。50年前なら韓国はまだ後発国、日本の経済的支援と米国の軍事支援に全面的に依存していた時代です。その日の暮らしもままならぬ頃。そんな時だから「50年間有効」という協定を日本は結んであげたのでしょう。

    今さらですが、韓国に甘い顔してはなりません。ウインウインでは無く「0対100」理論で説明すれば簡単でしょう。協定が終了すれば第7鉱区を含む共同開発区域(JDZ)がすべて日本に帰属するなら、その方向で進めるべきです。

    終了するとなると、どうせああだこうだと屁理屈を言うでしょうが、岸田首相が退陣しているなら、シレッと辞めれます。その後に、じっくりと探査すれば、「偶然、良い資源が埋蔵されてた」となるかもしれません(笑)。

  3. 匿名 より:

    韓国のいう「未来指向」は過去に決めたや自国に不利と思われる規則や約束はなかったことにして新たに自国に有利なルールを作り過去を抹殺することです

  4. 匿名 より:

    韓国に配慮しても何もいいことはない

  5. カズ より:

    韓国にしてみれば、海洋地下資源の協定延長は、第二の共同宣言の象徴として岸田首相に持参させたかったものだと思います。
    かつての宣言で、小渕首相が日本海における共同水域を手土産としたようにですね。

  6. はにわファクトリー より:

    社説風の軽薄文章を考えてみました。見出し付けはこんな感じで。

    「社会に受け入れられるウィンウィン経営
     口だけ大将を卒業し新聞記者こそ未来志向を実践して見せよ」

  7. シゲ より:

    支那大陸と半島の生存を掛けた歴史、半島の歪んだ振り子外交、嘘っぱちと詐欺とタカりの歴史を冷徹に見抜いた明治の偉人、特に福沢諭吉「脱亜論」是非ともキシダに読ませたい‼️1965年に先人達が如何に韓国側の理不尽な要求と戦い15年歳月掛けて不当な竹島周辺で拿捕された日本人奪還の為に様々な案を交渉して妥結した日韓協定を遵守させること。半島に少しでも譲歩したり謝罪したらその隙間を縫って攻撃して来るよ‼️反日教育と反日メディアを最大限に利用して。尹大統領も立派な反日教育の申し子、腹の奥底には日本を出し抜こうとするDNA有り、日本の歴史上半島に譲歩して成功例した例は無い‼️歴史は繰り返す。オムライス食べて爆弾酒呑んで焼き肉食べて見抜け無いとしたらキシダは日本国のリーダーでは無い。気になるのは訪韓を繰り返す麻生閣下、秋葉国家安全保障の訪韓。林芳正外相の動きには土下座外交の匂いしか感じない‼️

  8. 農民 より:

     韓国って、日本に何をどれほどしてもらおうとWinとは思いませんよね。お金を貰ってもこれじゃ足りない、助け舟を出してもこれじゃ遅すぎる、謝罪や譲歩を重ねてもこのくらい当然、等々。慰安婦でも徴用工でも漁業権でもスワップでも、また今回の処理水でもそうで、これ以上の例示は不要でしょう。
     仮に、日本に攻め込んで(度胸がなくてありえない)大勝利をして(実力が無くてありえない)大粛清をして(これだけはありえる)も、もっと早くやるべきだっただのこれじゃ民族の恨には足りないだの言うのが目に見えている。

     日本はというと、この韓国の認識のせいで今までに積み上がった負債が天文学的に多すぎて、例えば「今後は一切迷惑をかけません、中国に対峙する最先鋒になります、米軍の負担は全部こちらでもちます」まで言われたとしてもWinに届かない。どれも言ってしまえば本来は当然なことであり、その上で最悪のケースでは日本側が実力で対処可能だしそうしなければならない事でしかない。そして何よりもそんな宣言をしたところで、第三者の前で誓っても破るという実績まであって信用しようがない。

     何をしてももはやwin-winにはなれないのです。天下のマスコミサマだってよく言うじゃないですか。「宿命のライバル韓国との世紀の対決!」とかって。宿命なんだから覆らんでしょ。

  9. シゲ より:

    そもそも韓国は「反日」が国家のアイデンティティーで反日教育反日メディアが更に拍車を掛けて煽っている‼️韓国の軍事体制の本音は日本攻撃であり、対北朝鮮に本来不必要な潜水艦23隻持つ。今回の尹大統領「核保有」論議の本音はミサイル標的は日米(真田幸光教授)である‼️韓国への全面降伏土下座が日韓に何を持たせるのか‼️ウクライナ紛争におけるウクライナ戦い止めでクリミナ半島と東部地区のロシア領認定になるりのと同じ。このまま竹島問題(漁師拿捕監禁殺人行為含む)、今回の大陸棚問題、レーザー照射問題、自称慰安婦問題の最終決着、自称徴用工問題の最終決着、少女像世界中で立地等々何にも韓国側の決着無い中でのキシダ全面降伏土下座は亡国。鳩山以下、福田康夫元首相の全方位土下座外交より酷い‼️一刻も早く退陣を‼️

  10. すふちゃん より:

    外務官僚は「コトは穏便に済ませたい」という意識だけで、喧嘩することが出来ない「秀才」ばかり揃っているのかもしれない。

    せっかく安倍、菅両元総理が、韓国への扱いを「ふつうの国」にしたのに、岸田首相がこれを元通りにしてしまった。

    次の選挙は自民党ではなく、維新に力を与えた方が良いのかな?

    1. ホワイト国 より:

       今の日本の外務官僚は、勉強のできるエリートなのかもしれませんが、
      世間知らずの育ちの良いお坊ちゃまばかりなのでしょう。他人と喧嘩や争うことを
      嫌い、自分たちの主張を譲歩して穏便に物事を解決することをよしとする。
       こんな考え方では、国内では通用しても、外交ではまったく通用しません。
      さらに、首相までもがも、人の言うことをよく聞き入れ、騙されやすいお人よしの
      お坊ちゃまでは、日本は国益を失うばかりです。

  11. DEEPBLUE より:

    選挙で勝ち続けていれば岸田総裁が再任されるでしょう自民党。どこかの選挙で負ける事がれば今の路線でも良いと思ってる議員が多いと

  12. とおる より:

    元外交部条約局長曰く、「協定は50年以上にわたりこの区域で国際海洋法上安定した法的な垣根を提供してきた」ので、日韓の大陸棚協定が失効すれば、中国が待ってましたとばかりに大陸棚の自然延長を主張し、海洋権益を巡り紛争が生じる虞があるとのこと。

    中国の権利主張の図々しさの前には、仮に日韓の大陸棚協定に抑止的効果があったとしても、かなり限定的だと思いますけどね。
    何より、日本の領土を不法占拠し、海自の哨戒機に火器管制レーダーを照射して反省どころか否認する国との間の協定について、「国際海洋法上安定した法的な垣根」などと表現されても空々しいだけですわ。

    また中国の海洋覇権を防ぐ上でも、その出口となる共同開発区域は日米韓にとって戦略的に重要だと言ってますが、米中間でバランサーを気取る韓国は足を引っ張る存在だと自覚してほしいものです。
    大体、当該区域を日韓が共同開発することが、中国の海洋進出の出口を塞ぐような抑止的な効果に繋がるでしょうか?
    南西諸島に長距離SSMを配備するなどした方がよほど効果的だと思います。

    記事を読んでみて思ったのは、中国だったり、あるいは対中国を念頭にした日米韓といった、日韓二国間以外の要素から協定について見ていくアプローチ自体は分かるんですが、この元外交部条約局長の場合、「協定は日本にとっても有益ですよ」という結論を言いたくて、取ってつけたような感じが否めませんね。

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