欧米人は「思い出横丁」に好意的

物価高の欧米人から見て現在の日本はひときわ魅力的に

ツイッターで外国人(たとえばイーロン・マスク氏など)をフォローしていると、ときどき、欧米人のツイートがタイムラインに表示されるようになります。こうしたなか、欧米人のツイートを何気なく眺めていると、唐突に、見慣れた街並み――新宿の「思い出横丁」が表示されました。そして、ツイートに対しては「日本に行きたい」とする趣旨のリプライが殺到しているのです。

外国人観光需要を振興することの「目的」

かなり以前の『【宣伝】正論2020年5月号に論考が掲載されました』などでも触れましたが、著者自身、これまで「インバウンド観光需要に過度に依存すべきではない」と考えてきましたし、とりわけ「インバウンド観光客の人数目標」には否定的です。

「人数目標」に否定的であるという理由は簡単で、「外国人観光客の人数目標」を入れること自体、その「人数」自体が独り歩きするリスクが極めて高いと考えているからです。

そもそも論ですが、外国人訪日客の急増を、素直に歓迎して良いものなのかという問題がありますが、これについては観光立国を推進する「目的」が重要です。これには大きく「①旅行収支改善を通じた国民経済発展への貢献」、「②日本国の良き理解者を増やすこと」にあります。

観光振興の目的
  • ①旅行収支改善を通じた国民経済発展への貢献
  • ②日本国の良き理解者を増やすこと

(【出所】著者作成)

外国人(とくに欧米人)から見て日本の物価は?

このうちの「旅行収支改善を通じた国民経済発展への貢献」、わかりにくい表現ですが、もっと平たくいえば「おカネ儲け」――、つまり、外国人観光客に日本に来てもらい、おカネを落としてもらうことです。

「失われた30年」のせいでしょうか、日本の経済成長がすっかり停滞している間に、諸外国が経済発展し、いまや諸外国から見た日本の物価は非常に安く見えます。物価の高い欧米などから見ると、現在の日本は大変魅力的な滞在先であり、その分、外国人が日本で支出することは、日本経済にとっても望ましいのです。

実際、『支出額トップは中国、最下位は韓国=観光庁直近調査で』でも詳しく取り上げましたが、総じて欧米諸国からの観光客には、観光旅行中の支出額が多いという特徴があります。

なお、観光庁が『訪日外国人消費動向調査』として、先月19日に公表した、訪日外国人旅行消費額に関する調査結果(2023年1月から3月までの3ヵ月間が対象)による、純粋な観光・れじあーを目的とした訪日客の旅行支出を再掲しておきます(図表)。

図表 一般客1人当たり費目別旅行支出(観光・レジャーのみ)

(【出所】観光庁レポートをもとに著者作成)

単純に、欧米からの来日者には(ビジネス、就労などではなく)「観光」を目的とした人が多いのではないか、といった仮説も成り立つのですが、それ以上に、観光でやって来た人たちが多くのおカネを日本に落としてくれるというのは、ありがたい話であることは間違いありません。

いろいろ課題もあるが…

次に、目的の2番目に挙げた、外国人観光客に「日本国の良き理解者になってもらうこと」については、意外と認識されていませんが、大変重要です。日本を知ってもらうことで日本のファンになってもらい、なにかあったときには日本の味方になってもらうという、いわば「草の根外交」という意義があるからです。

実際、多くの外国人が日本を訪れると、さまざまな点で驚くそうです。

伝統的な建築物と最新のビルが同居する大都会の風景、雑然とした雰囲気の中でも清潔感のある街並み、自然豊かな国土、新幹線を含めたテクノロジーの塊のような快適な乗り物、そして独特の「温水洗浄付の座ると温かい便座」――。

もちろん、ありのままの日本がすべての外国人にとって良い印象を与えるものとは限らないでしょうし、外国人観光客のなかには、日本の慣習(裸で温泉に入る、など)に戸惑い、あるいは日本の食事が口に合わない、といったケースもあるかもしれません。

さらには、最近、日本でも一部地域で、外国人観光客をターゲットにした、いわゆる「ボッタクリ」の商店も出現しているようです。たとえば近畿地方の大都会の「とある商店街」には、海鮮や肉を焼いて外国人向けに高額で提供している店が多い、といった話題を見かけることも多いかもしれません。

(ちなみに東京でも、とある繁華街にある著名な「横丁」では、大変酷い商品を高額で売りつけるというケースもあります。「マグロ千円、マグロ千円」などと叫んでいる店でマグロを買ってはならないというのは、安物買いの銭失いにならないための「鉄則」ですので、どうかご注意ください。)

総じて日本は外国人にとって好評

ただ、外国人の日本滞在は、総じて好評のようです。

ツイッターでイーロン・マスク氏(@elonmusk)などをフォローしていると、自身のツイッターのタイムラインに欧米諸国の人々のツイートが飛び込んでくることが増えるのですが、こうした外国人のツイートを眺めていると、唐突に見慣れた日本の風景が目に飛び込んでくることがあります。

たとえば、東京・新宿西口にある、「思い出横丁」と呼ばれる「名店(?)街」が、外国人観光客にとってひそかな人気スポットとなっているようなのです。

このあたり、昨日の『外国人観光客急増受け「ホテルデポジット」検討も必要』では、外国人観光客が増え過ぎたことに関連し、現在発生している様々な「不都合」について触れたのですが、それと同時に私たちが知っておくべきは、物事には常に両面がある、ということでしょう。

観光資源は意外と豊富

わが国には独自の伝統と美しい自然、新幹線に代表される最先端の技術と高度な社会インフラが同居しているなど、観光資源は豊かであり、東京・大阪などの大都会はもちろん、地方にも数多くの観光資源が埋もれています。

著者自身が欧州のとある小国を訪れた際、「わが国の観光地はここです!」などといわれているのが、首都の街並みと、首都から北西にある湖と滝が美しい国立公園、そして首都の南西にある鍾乳洞くらいだった、という経験をしたことがあります。

これに比べれば、日本の観光名所は山のようにあります。

著作権の侵害に厳しいことで知られる千葉県の遊園地もそうですが、同じ国内だけでも、北海道のように寒冷な土地もあれば、沖縄のように温暖な土地もありますし、首都圏近郊だと東京に関してはおそらく1日どころか1週間かかってもめぼしい観光スポットを回り切ることは難しいでしょう。

したがって、欧米などの外国人観光客には、是非とも日本の「リピーター」になっていただくのが良いかもしれません。

あるときは北海道でスキーと冬の海鮮の味覚を楽しむ。

あるときはひたすら東京に滞在し、隅々まで見て回る。

あるときは関西を訪れ、京都、奈良、大阪、神戸を歩き回る。

あるときは沖縄本島を拠点に離島を巡る。

あるときは東北、あるときは四国、あるときは九州、あるときは名古屋、あるときは東京以外の関東、あるときは信州、あるときは伊勢志摩、あるときは広島、あるときは北陸…。

いくらでもあり過ぎて、ちょっと列挙し切れません。

しかも、最近だと、首都圏から新幹線でアクセス可能なスキー・リゾートに注目が集まっている、といった話を聞きます。冬はスキーが楽しめるのですが、夏場だと、たとえば富裕層の子弟向けの林間学校、といった使い方も考えられるようです。

まだまだ努力は必要だが…まずは英語表記を徹底するのも一案

もちろん、日本にとって「来てほしい国の人たち」にターゲットを絞ったマーケティングをするという努力も必要ですし、中には残念ながら、外国人(とくに欧米人)にとって、案内標識が十分でない、あるいは英語表現がおかしいという場所もあります。

しかし、こうした点をひとつひとつ改善しながら、日本の魅力を訴求していくことは重要です。

その意味では、とりあえず街中や鉄道駅などにある案内標識について、すべて日本語と英語の表記を徹底する、といった工夫はあってしかるべきでしょう(もっとも、日本語と英語以外の言語についての表記が必要かどうかについては議論の余地はありそうですが…)。

ちなみに私たちの近隣には、非常に残念なことに、「反日」を国是とするような国がごく少数存在していますが、そのような国々からも多くの人々がやってきて、彼ら自身の目で直接日本の姿を見れば、もしかしたら少なくない人たちが自国の反日教育の間違いに気付くかもしれません。

そして、国民レベルで相互理解が進めば、国同士のいさかい(あるいは最悪の場合には軍事的衝突)が発生するリスクを大きく下げることもできるかもしれません。

その意味で、観光立国の推進は、さまざまな点で国益にかなっているという言い方をして良いでしょう。

ただ、個人的には、観光需要を掘り起こすべき相手国は、こうした「反日」的な国ではなく、日本と基本的な価値を共有し、経済水準も近い国々(たとえば欧米諸国、豪州、ニュージーランド、台湾、シンガポールなど)を優先すべきではないかと考えている次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. クロワッサン より:

    >ちなみに私たちの近隣には、非常に残念なことに、「反日」を国是とするような国がごく少数存在していますが、そのような国々からも多くの人々がやってきて、彼ら自身の目で直接日本の姿を見れば、もしかしたら少なくない人たちが自国の反日教育の間違いに気付くかもしれません。

    呉善花氏はまさしく其れですね。
    事実を知って直視した結果、母国からは「好ましからざる人物」として政治的迫害を受ける身となっちゃいましたが。
    日本国籍は既に取得していますが、この様な方が本来の“難民”であり、今の日本で難民申請している外国人の殆どは経済的豊かさと秩序ある社会を求める“偽装難民”に見受けられます。

    1. 元日本共産党員名無し より:

      呉善花氏はご自身を振り返り、単に日本に長く滞在するだとか単に頭脳明晰だとかだけでは反日は解けない、むしろ強固な反日になると言って居られます。そして記憶の彼方で自分の親が日本の事を悪く言わなかった事だとか、ごく幼い時に少し日本語を話した時に地元でちょっと褒めてもらった微かな記憶があると書いていました。
      シンシアリー氏もご母堂の日本を悪く言わない姿や差別されていた肉屋さんとも普通にやり取りする様子に言及されています。
      ちょっとやそっとの観光や長期滞在では反日は変わらないと言う事だと思います。

    2. わんわん より:

      >呉善花氏はまさしく其れですね。

      バイアスかけすぎ
      呉善花氏経歴
      1983年 来日
      1988年 日本国籍取得
      1990年 「スカートの風」出版
      2007年 2013年 韓国入国拒否
      ※元韓国籍であっても正当な理由をあかさず「日本国民」を入国拒否したことが問題であり「難民」の問題とは「直接の関係」はない

  2. はにわファクトリー より:

    「♪ 空きましたよ、どうぞどうぞ
    「♪ 何にしましょう」
    『つーつー、ほぉぁ』
    「♪ 二つで十分ですよ、分かってくださいよ」

    1. 匿名 より:

      ぶれーど・らんなー ふぁん、みっけ♪

  3. めがねのおやじ より:

    「まずは英語表記を徹底するのも一案」「もちろん外国人(とくに欧米人)にとって、案内標識が十分でない、あるいは英語表現がおかしいという場所もあります」(会計士さん)

    そうなんですね。首都圏特に23区は英語表記がかなり徹底されてますが、それ以外例えば関西圏などは英語は十分で無いわ、ハングル表記、中国北京語表記が幅をきかせてます。地下鉄など日本語を含め4か国語並列のLEDの為、煩わしさ、苛立ちを感じます。こんなにコロコロ変わるディスプレイ、アナウンスは余計に分かりにくいです。日本語と英語で十分です。反日教育してる国にサービスしてやる必要は無い。分からなかったらガイドでも見なさい、スマホ持ってるやろ、という事ですね。

    1. 匿名 より:

      ハングルでの表示は、在日朝鮮人のクレーム封じ、在日を雇わないためと、聞いたことがありますが、真相はどうなんでしょうか?

  4. 農民 より:

     長野の農家は冬場はスキー場勤めという方が多いのですが、聞くと日によっては日本人よりオーストラリア人の方が多いくらいだそうで。逆転現象については日本人がすっかりスキースノボから離れただけなのかもしれませんが、オーストラリアから見たら季節が逆で移動距離も最短に近い日本の冬山という特質をうまく使えたものだなと感じます。「確たる目的を持って訪日する外国客」の誘致ですね。
     ちなみに入国の問題もあってか中韓人がかなり少なく快適だったそうです。

  5. 匿名 より:

    観光白書は、かなり面白い読みものです。
    多色刷りで、図表や写真も多く表現も分かり易く、コラムでトピックの紹介もあります。何より、白書なのでいろんな角度からのデータが揃っており、観光政策の方向、課題、課題への取り組み、などが詳しく記述されています。
    その中で、最も強調されている事は、欧米豪の高額消費観光客に照準を合わせた観光開発へのシフトです。
    一人当たりの消費額は、欧米豪の観光客は、東南アジアの観光客の3倍以上あるようです。ただ、人数は、4分の一程です。やはり、距離的に遠い事とそれ故に飛行機の便が良くない事があります。
    ただし、欧米豪の観光客は、日本の文化や歴史、自然、芸術、伝統、工芸、風俗、特産品など、日本独自の「もの・こと」に関心が高いので、まだまだ、各地の観光開発の余地は沢山あります。
    日本は、日本独自の伝統に裏打ちされた「もの・こと」が、本当に沢山あり、又、それらが一つ一つ奥深く味わい深いので、欧米豪人の高い知的なセンスを刺激し満足させる広さと深さが豊富にあるのでしょう。
    それこそ、新宿の思い出横丁は、欧米豪人のセンスにはぴったり合うでしょう。
    日本はアジアでありながら、欧米人のセンスを持ち合わせています。

    所で、問題は、観光開発に於ける大型投資は、中韓などの外国資本が割と多い事です。日本人資本が開発に失敗した観光地を中国資本が買い取り再投資して大成功している所もあります。理由は、ターゲット客層が明確である事と大胆な投資です。マーケティング力の違いです。この例のターゲットは、中国人の富裕層家族です。
    これは、中国人のお金を中国人が回収している構図です。日本に残るのは、地元採用の従業員のパート代くらいでしょうか?

    これからの観光開発は、日本企業の資本でやらなければ、観光でも日本にお金が残らない事になります。
    日本の豊富な観光資源が、外国資本の儲けの手段になってしまいます。

    日本の大企業は、内部留保を、日本の観光開発に回すべきです。

    観光白書を、是非一度読んでみてください。

    1. 匿名 より:

      早速オーバーツーリズムが問題化している京都では中国資本が不動産を買い漁ってホテルを大量供給すると息巻いているらしい。
      京都は自治体としても財政状況が思わしくないし、気づいたら京都のほとんどが中国資本に買われているかも。こわっ。

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