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日本人の半数はNHKを週5分も視聴していない=教授

国民から受信料を吸うNHKを国民はいずれ強制排除する

利権を持っている者は強欲です。そして、そんな強欲が利権自体を滅ぼしてしまいます。私たち日本人は、もうすぐその具体的な事例を目撃することができるかもしれません。それが、NHK利権です。私たち日本人は、テレビを設置してしまうと、それこそNHKの番組をまったく視聴していない場合でも、NHKに対し決して安くない受信料を支払う羽目になります。ただ、早稲田大学の有馬哲夫教授によると、日本人の半数は週に5分もNHKを視聴していないのだそうです。

利権まみれのオールドメディア

利権の3法則とメディア利権

以前から当ウェブサイトでしばしば話題にしている論点のひとつが、「利権の3つの法則」です。

これは、利権には①理不尽なものであり、②いったん確立してしまうと、外から壊すのがとても難しいものの、③利権を持っている者の強欲や怠惰で自壊する、という仮説です。

利権の3法則
  • 第1法則:利権とは、得てして理不尽なものである。
  • 第2法則:利権はいったん確立すると、外から壊すのが難しい。
  • 第3法則:利権は保有者の怠惰や強欲で自壊する。

(【出所】著者作成)

これについて考えるには、既存の利権を例にとるのがわかりやすいでしょう。

日本には「理不尽な利権」がいくつか存在するのですが(たとえば官僚機構、特定野党議員など)、ここで取り上げておきたいのは、マスコミ・マスメディア利権です。新聞やテレビ、通信社といったいわゆるマスコミ・マスメディア(あるいはオールドメディア)は、基本的には利権の塊です。

なぜなのかといえば、新聞業界やテレビ業界では新規参入が厳しく制限されていて、限られた数の業者が業界を独占しているからです。

たとえば新聞の場合は長年、再販売価格維持制度に守られ、新聞社が勝手に決めた価格で新聞を売ることが許されているほか、個別宅配制度によって事実上、新聞社の新規参入が非常に難しく、また、日刊新聞法による株式譲渡制限や、最近だと消費税法上の軽減税率規定などによっても保護されています。

地上波テレビの電波利用料は格安

また、民放テレビ局の場合は、総務省による電波の割当制度などにより、新規事業者が地上波などに事業参入することが極めて難しく、また、既存のテレビ局が支払っている電波利用料は、正直、「格安」と言うにふさわしい水準です。

総務省『電波利用ホームページ』の『令和3年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額』によると、2021年における主な業者の電波利用料は、携帯電話等7社が約641億円であるのに対し、地上波テレビ局128社の電波利用料は約78億円です。

これについて負担額が多い順に並べると、1位がNTTドコモで188.3億円、2位がソフトバンクで163.0億円、3位がKDDIで135.9億円であり、テレビ局のトップは第6位のNHKで25.2億円、続いて第8位の日本テレビ放送で6.8億円です。

これを一覧にしたものが図表1です(なお、図表1は画像ファイルになってしまっていますので、これをテキスト化したものについては本稿の末尾に掲載しておきます)。

図表1 令和3年度・主な無線局免許人の電波利用料負担額(上位20位まで)

(【出所】総務省『令和3年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額』を参考に著者作成)

テレビ業界128社が負担している電波利用料の総額は78.39億円ですが、この金額は携帯等第4位のUQコミュニケーションズ1社が負担している80.08億円よりも少ないという事実にも驚きます。

ちなみに在京民放テレビ局の場合、たとえばフジ・メディア・ホールディングスの2022年3月期決算における「メディア・コンテンツ事業」のセグメント売上高は4150億円、セグメント利益は231億円ですが、この売上・利益水準と比べて6.39億円という電波利用料は、やはり安すぎます。

(※もっとも、在京テレビ局各社はいずれも持株会社化しており、メディア・コンテンツ事業には新聞事業などの売上や利益が混入している可能性はありますが、この点についてはとりあえず脇に置きます。)

余談ですが、岸田文雄首相率いる宏池会政権は増税が大好きなようですが、1兆円増税といった姑息なマネをするよりも前に、電波オークション制度を導入して放送事業者の新規参入を促すとともに電波利用料の増収を図った方が、よっぽど生産的ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

記者クラブを通じて培った横柄な態度

それはともかくとして、新聞社やテレビ局は、新規参入が制限されているのに加え、利益水準も国の制度としてある程度保証されているのですが、それだけではありません。

霞が関の官庁や経団連などに「記者クラブ」という利権組織を持ち、フリーランスの記者や外国人記者などを排除し、限られた会社で情報を囲い込み、独占しているのです。

マスメディア各社にとっての「商品」とは「情報そのもの」ですが、その「商品」についてはマスメディア各社が「記者クラブ制度」を通じて独占することで、値段を不当に吊り上げているだけでなく、クオリティも低下させているのです。これこそ独占の弊害そのものでしょう。

こうしたなかで思い出しておきたいのが、記者会見場におけるマスコミ記者の極めて横柄で無礼、不勉強な態度です。

発射中止を失敗と決めつける態度もマスコミ批判の一因』でも取り上げたとおり、マスコミ記者のなかには、取材相手に対するリスペクトもなく、専門知識も欠いているくせに自身の思い込みだけで質問を行う者たちも存在しています。

おもにインターネット上で「マスゴミ」なる用語を見かけるようになってから久しいです。特定の業種のことをゴミに例えること自体が適切なのかどうかという点は脇に置くにしても、そのような用語が一般社会において受け入れられているという事実は、一種の社会現象として看過できるものではありません。こうしたなか、改めて「H3ロケットの発射は『中止』なのか『失敗』なのか」に関するちょっとした論証がネット上で発生しているようです。マスゴミとは?当ウェブサイトをご愛読いただいている皆さまであれば、新聞、テレビ、新聞社...
発射中止を失敗と決めつける態度もマスコミ批判の一因 - 新宿会計士の政治経済評論

こうした専門知識を欠いた記者が思い込みだけで執筆した記事を、私たち一般の消費者は、非常に高いカネを払って買わされて来たのです。言い換えれば、マスコミ業界が独占的な利権で守られてきたため、質の低い業者が生き延びてしまっているのです。

結局のところ、新聞業界やテレビ業界の利権の問題点は、少数業者による寡占構造が温存されることで、自由競争原理が歪められ、健全な競争が行われていればとうの昔に潰れていたであろう質の低い新聞社、テレビ局が生き延びていることにあります。

この利権構造は、極端な話、この世から新聞を購読する人がいなくなったりしない限り、あるいはテレビを視聴する人がいなくなったりしない限り、半永久的に温存されるものです。

まさか!新聞を読む人も、テレビを見る人もいなくなりつつある

ただ、ここで思い出しておきたいのが、利権の第3法則――「利権は保有者の怠惰や強欲で自壊する」、です。

新聞、テレビの利権は、この世から新聞を購読する人がいなくならない限り、また、テレビを視聴する人がいなくならない限り、永続するものです。

しかし、その「大前提」が揺らいでいるのです。

たとえば『「炭鉱のカナリヤ」?今度は毎日が東海で夕刊を休刊へ』などでも指摘したとおり、新聞の発行部数は急速に減り続けており、このペースで減り続ければ、夕刊はあと5~7年以内に、朝刊も13.98年以内に、この世から消滅します。

紙媒体の新聞が毎年200万部減少するなど、新聞業界の苦境が続く中、しわ寄せは夕刊に来ていることは間違いありません。こうしたなか、今度は毎日新聞が東海三県での夕刊発行を休止するようです。「炭鉱のカナリヤ」ではありませんが、夕刊の廃止が相次ぐかどうかについては注目に値する論点のひとつであることは間違いないでしょう。紙媒体の新聞の「受難」が続いています。年初の『数字で見る新聞業界の現状と未来』でも取り上げたとおり、日本新聞協会が発表するデータによれば、新聞の部数は減少の一途をたどっており、2000年に5371...
「炭鉱のカナリヤ」?今度は毎日が東海で夕刊を休刊へ - 新宿会計士の政治経済評論

また、テレビ業界の場合、総務省『令和4年版情報通信白書』などによれば、近年、インターネットの利用時間が徐々に増える一方で、テレビの利用時間については、どの年代でも一様に減ってきているのです(図表2)。

図表2 全世代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)

(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)

ことに、若年層になればなるほど、インターネット利用時間が新聞、テレビ、ラジオなどをはるかに上回っていることが確認できますが、今後もこの傾向は、進むことはあっても戻ることはないでしょう。現在の新聞業界は5~10年後のテレビ業界の姿なのです。

広告費の激減、「干からびる水たまりを奪い合う業界」

さらには『ネット広告費が史上初の3兆円台:マスコミ退勢は続く』で確認したとおり、すでに広告業界において、「レガシーメディア」(新聞、テレビ、雑誌、ラジオというマスコミ4媒体)の総広告費はネット広告費に追い抜かれ、その差はますます開きつつあります。

今年も株式会社電通から『日本の広告費』というレポートが公表されました。これによるとネット広告費は史上初めて3兆円の大台に乗る反面、マスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費は約2.4兆円にとどまりました。ネット広告費は昨年、マスコミ4媒体広告費を史上初めて抜いたのですが、今年はさらにその差が拡大し、いまやマスコミ4媒体の市場規模はネットの80%程度になってしまった計算です。日本の広告費世の中にはさまざまなウェブサイトがありますが、当ウェブサイトがひとつこだわっているテーマがあるとすれば、...
ネット広告費が史上初の3兆円台:マスコミ退勢は続く - 新宿会計士の政治経済評論

こうした傾向が逆転することは考え辛く、新聞、テレビは「読者・視聴者離れ」、「スポンサー離れ」、さらには「クリエイター離れ」という「三重苦」に直面しつつあるのです。

紙媒体の新聞業界、地上電波媒体のテレビ業界を守るための仕組みは今でも有効ではあるのですが、肝心の国民自体が新聞を読まなくなり、テレビを見なくなったため、干天の水たまりのごとく、オールドメディア業態は干からびていく市場を奪い合っているのです。

「新聞業界の宅配利権」、「テレビ業界の電波利権」など、業界が旧態依然とした利権を守り続けていることは間違いありませんが、肝心の利権で守られている業界自体が滅亡すれば、利権が温存されていたとしても意味はありません。

正直、個人的には在京テレビ局の場合、アニメや映画などのコンテンツ事業に特化し、地上波放送免許を返上し、株式持合関係にある映画会社などと事業再編を行い、再度持株会社化して「日本版ウォルド・ディズニー」を目指す、という選択肢はあると思います。

また、新聞社の場合も、産経新聞社のように、月額550円の有料会員をそれなりに獲得することに成功すれば、紙媒体の発行部数がゼロになったとしても十分に生き延びていけますし、むしろ数年後に紙媒体の発行を取りやめて電子版に特化するという決断を下すのではないかと思います。

ただ、こうした「とりえ」がない会社の場合、不動産業に特化するか、倒産するかの二択でしょう。

これも結局、業界全体が利権にあぐらをかいてきた結果であり、冷たい言い方をすれば「自業自得」のようなものです。

究極の利権・NHK

TV業界のなかでもとくに理不尽なNHK

さて、マスコミ業界が独特の利権にドップリと浸かって来たという点については間違いないのですが、そのマスコミ業界のなかでもとくに理不尽な特権を持っている組織がNHKです。

NHKを巡る問題点については、当ウェブサイトでもこれまでかなり議論してきたとおりですが、その要点は大きく「テレビをまったく見ていなくてもおカネを払わなければならない理不尽さ」、「NHKがかき集めた受信料を不適切に使用している問題」に集約されるでしょう。

このうち「NHKを視聴していなくても、テレビを設置したら受信料を支払わねばならない」という点については、昨年の『受信料は放送の対価ではなく「特殊な負担金」=NHK』でも取り上げたとおり、NHK自身は受信料を「番組コンテンツの対価」ではなく、「特殊な負担金」などと認識しています。

NHKの職員の給与は少なくとも民間の2.4倍以上NHKによると、受信料は「NHKの事業を維持・運営するための特殊な負担金であり、放送の対価としていただいているものではない」のだそうです。これはなかなかに斬新で強烈な見解です。言い換えれば、NHKがどんなにつまらない番組を作ろうが、どんなに公共性のない番組を作ろうが、それとは関係なしに、我々国民に対し「黙ってカネを払え」と高圧的に要求しているようなものだからです。テレビの問題点テレビをなぜ設置しないのか?以前からしばしば報告しているとおり、著者自身...
受信料は放送の対価ではなく「特殊な負担金」=NHK - 新宿会計士の政治経済評論

つまり、NHKや総務省の認識に基づけば、NHKの受信料は「NHKの事業を維持・運営するための特殊な負担金」であり、「放送の対価ではない」のです。

なるほど、たしかにNHKの番組は、例の「日韓歌合戦」であったり、時代考証がメチャクチャな大河ドラマであったり、と、日本国民が視聴者として支払わされている巨額の受信料の対価としてふさわしくないものも多く見受けられます。

NHKは公共放送にふさわしい存在なのか

したがって、百歩譲って「公共放送」というものがこの世に必要だと仮定しても、そのような「公共放送」を担うべき組織としてNHKが適格なのかについては、また別の議論です。改めて指摘しておくと、NHKという組織自体、いかにも異常だからです。

NHKは職員1人あたり1500万円を大きく上回る人件費を計上しており、それでも余る資金は1兆円を超える金融資産(※年金資産を含む)などに形を変え、NHK内部に不当に蓄財されています(『現代の貴族・NHK職員の平均人件費は1500万円超』等参照)。

これまた強烈な情報が出てきました。NHKは昨日、2022年3月期決算(財務諸表・連結財務諸表)を公表したのですが、相変わらず巨額の金融資産を保有するとともに、おそらく1万人を超えるであろう職員に対し、昨年に引き続き、1人あたり約1573万円の人件費を計上していることが明らかになりました。NHK職員はまさに「現代の貴族」であり、NHKとは「利権の塊」だと言わざるを得ないのです。金融資産は1.3兆円に!NHKは昨日、2022年3月期決算を公表しました。さっそくですが、NHKの連結財務諸表から判明する、NHKが保...
現代の貴族・NHK職員の平均人件費は1500万円超 - 新宿会計士の政治経済評論

しかも狭い意味での人件費(給与・賞与など)に限定しても、職員1人あたりの支給額は1074万円と破格で異常です。

国税庁『民間給与実態統計調査結果レポートのP8によると、2021年12月末時点における民間平均給与は443万円ですので、NHK職員に対する給与は少なく見積もっても民間企業の2.4倍(!)だからです。

それに、NHKは職員の国籍構成も明らかにしようとしていませんし、一説にはNHK職員は「社宅」と称し、都心部の超優良物件に格安の家賃で住めるなど、異常に好待遇を得ているとの報道もあります(※ただしこの「社宅問題」については、一部報道以外に裏付ける証拠はありません)。

こうしたなかでさらに国民世論を沸騰させているのが、以前の『受信料2倍に対しネットユーザーの怒りがNHKに殺到』でも取り上げた、「2倍割増金問題」でしょう。

NHK職員給与は民間企業の2.4倍既報のとおり、NHKの受信料2倍制度が4月に始まります。ただ、ここで注目しておきたいのは、ネット・ニューズサイトで見る一般読者のNHKに対する激しい怒りです。少なくとも高い評価を得ているコメントの中で、NHKの受信料制度を擁護するものは皆無に近いと考えて良いでしょう。つまり、NHKが打ち出してきた「受信料2倍」制度は、この国の主権者を愚弄し、挑発する行為でもあるのです。受信料2倍のNHKの問題昨年10月の『NHKは「未払者から受信料2倍」で自滅に向かうのか』では、...
受信料2倍に対しネットユーザーの怒りがNHKに殺到 - 新宿会計士の政治経済評論

それでいて、例の「日韓歌合戦」や時代考証がメチャクチャな大河ドラマなどのコンテンツを作って垂れ流しているわけですが、正直、そのようなコンテンツに「公共性」を感じる奇特な人は、この日本社会では間違いなく少数派でしょう。

有馬教授「日本人の半数は週5分もNHKを見ない」

結局、NHKの受信料制度に理不尽さを感じ、「NHKには絶対受信料を払いたくない」と思っている人がとり得る選択肢は、「テレビを見ないこと」、あるいは「テレビを捨てること」です。

「そんな極端な選択をしなくても…」、と指摘する人もいるかもしれません。

しかし、地上波テレビについてはインターネット上の “tver” で(すべての番組ではないにせよ)番組を再生することが可能ですので、「どうしても(NHK以外の)民放の番組も視聴したい」という人にとっては、画質さえこだわらなければ、「地上波が映らないテレビ」(いわゆるチューナーレステレビ)で十分ことたります。

というよりも、そもそも民放も含め、現在の地上波テレビのコンテンツがそこまで魅力的なものかどうかは、また別の論点でしょう。

こうした文脈で、「そもそも日本人がNHKを視聴しているのか」という論点を確認すると、また非常に考えさせられます。

早稲田大学社会科学総合学術院の有馬哲夫教授が27日付で、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』にこんな記事を寄稿しました。

「日本人の半分はNHKを見ていない」という衝撃データは何を物語っているか 『NHK受信料の研究』著者が指摘する問題点

―――2023年02月27日付 デイリー新潮より

このままではNHKはNetflixに完敗してしまうだろう 『NHK受信料の研究』の著者が警告

―――2023年02月27日付 デイリー新潮より

この2つの記事は同日付で公表されたものですが、本稿で注目しておきたいのはこのうち最初の記事に含まれた、「日本人の半分がNHKを視聴していない」とする部分です。

有馬氏はNHK放送文化研究所の『テレビ・ラジオ視聴の現況 2019年11月全国個人視聴率調査から』というレポートをもとに、「およそ半数の日本人はNHKを週5分も見ていない」と指摘します。

NHK総合チャンネルを1週間に5分以上見ている日本人は54.7%だった。1日ではなく、1週間である。逆に言えば、残りのおよそ半数の日本人はNHKを週5分も見ていない。BSに関して言えば、二つのチャンネルの1日の平均視聴時間の合計が6分しかなかった」。

出展がNHKの名を冠した研究所が公表しているレポートですので、「日本人の少なくとも約半数はNHKを週5分も視聴していない」というのは、誇張ではないと考えて良いでしょう(もしかしたら実態はもっと酷いのかもしれませんが、ここではその可能性は考えないことにします)。

受信料独り占めは正しいのか

これに関連し、有馬氏はこう続けます。

たしかに、テレビ視聴は、見る人々は長時間見て、見ない人々は全然見ないというように両極化している。それでも否定できないことは、全然見ない人々は、圧倒的に若者に多く、彼らは今後もテレビ視聴の習慣を身に付けることはないことだ。つまり、将来にわたってテレビ視聴時間は減少し続けるのだ」。

この指摘は先ほども引用した情報通信白書などの調査結果とも整合しています。要するに、テレビ業界には「未来がない」のです。若者が視聴しないからです。こうした問題意識を踏まえたうえで、有馬氏の次の指摘を読むと、さらに共感できるという人も多いでしょう。

NHKは受信料を独り占めにする資格があるようなコンテンツを生産し続けているだろうか。ドラマの一部は評価や人気を得ているようだが、あくまでも国内向けのものである」。

そりゃ、湯水のように予算を使ってさまざまな番組を作り続けていれば、なかにはそれなりに高い評価を得るような番組もあるでしょう。ですが、だからといって、それはNHKが自称公共放送として受信料収入を独占していることを正当化する理由にはなりません。

正直、有馬氏の論考の主張のすべてに賛同できないという人もいるかもしれませんが、少なくともこの「日本人の半数は週5分もNHKを視聴していない」という指摘は、大変に重要です。

国民が視聴もしないテレビ局に対し、「NHKを支えるための特殊な負担金」として、決して安くない金額を負担し続けること自体、将来にわたって国民のコンセンサスを得続けることができるものでもないでしょう。

ちなみに最近だとNHK内部では、NHKのネット事業化なども検討されているようです。

「NHKの受信料は放送の対価ではなく特殊な負担金」とするNHKの屁理屈が通用するならば、「ネットでNHKを受信し得る環境が出現した」場合、私たちはネットを使用する際に、NHKに受信料を支払わなければならない、という訳のわからないことになりかねません。

寄生虫は虫下しで排除される

このあたり、NHKも結局のところ、受信料利権を守ろうとする姿勢が全面に出過ぎたためか、「2倍割増金制度」を含め、あまりにも強欲な姿勢を取り過ぎたところに問題があるのでしょう。利権を死守し、拡大するために、NHKはあまりにも派手に動き過ぎたのです。

もしももう少し欲を控え目にしていたならば、NHKはここまで国民から反発されずに済んだかもしれません。

つまり、「特殊な負担金」理論を持ち出すのではなく、「受信料は番組の対価である」と位置付けたうえで、スクランブル放送化などを通じて番組を視聴しない人からは料金を徴収しない」という柔軟な姿勢を取っていれば、NHKに対する批判はここまで強くならなかったでしょう。

結局のところ、現在のNHKは国民から受信料という生き血を吸う吸血鬼、あるいは寄生虫のようなものと化しているのです(※ちょっと言い過ぎました。吸血鬼と寄生虫に謝罪します)。

私たち人間は蚊に血を吸われた場合、その蚊を容赦なく叩き落そうとしますが、これも人間の本能のようなものです。

NHKもこれとまったく同じです。NHKがもし私たち日本国民に寄生を続けようとするなら、私たち日本国民は「虫下し」を飲むことを選択するでしょう。具体的には受信契約締結義務・受信料支払義務を免れるために、テレビ自体を捨ててしまうのです。

おりしも昨今の物価高のなかで、生活防衛として無駄な支出を削減しようとする国民も増えて来るのではないでしょうか。

さすがに食事や風呂の回数を減らすことはできませんし、ネット接続環境も大事です。削減すべき無駄な支出の筆頭格は紙媒体の新聞とNHK受信料ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

参考:テキスト化データ

なお、先ほどの図表1をテキスト化したものを紹介しておきます(図表3)。当ウェブサイトの場合は基本的に引用も転載も自由ですので、もしご希望であれば、下記図表もネット掲示板の書き込みなどにそのまま使用していただいて問題ありません(※ただし出所は明示してください)。

図表3 令和3年度・主な無線局免許人の電波利用料負担額(上位20位まで)
事業者 金額 割合
1位:株式会社NTTドコモ 188.35億円 26.19%
2位:ソフトバンク株式会社 162.97億円 22.66%
3位:KDDI株式会社 135.87億円 18.89%
4位:UQコミュニケーションズ株式会社 80.08億円 11.13%
5位:Wireless City Planning株式会社 48.18億円 6.70%
6位:日本放送協会 25.23億円 3.51%
7位:楽天モバイル株式会社 24.42億円 3.40%
8位:日本テレビ放送網株式会社 6.77億円 0.94%
9位:株式会社テレビ朝日 6.51億円 0.90%
10位:株式会社フジテレビジョン 6.39億円 0.89%
11位:株式会社TBSテレビ 6.35億円 0.88%
12位:株式会社テレビ東京 6.26億円 0.87%
13位:讀賣テレビ放送株式会社 1.35億円 0.19%
14位:関西テレビ放送株式会社 1.33億円 0.18%
15位:株式会社毎日放送 1.29億円 0.18%
16位:東海テレビ放送株式会社 1.25億円 0.17%
17位:朝日放送テレビ株式会社 1.20億円 0.17%
18位:中京テレビ放送株式会社 1.13億円 0.16%
19位:名古屋テレビ放送株式会社 1.11億円 0.15%
20位:株式会社CBCテレビ 1.11億円 0.15%
その他 12.10億円 1.68%
合計 719.22億円 100.00%

(【出所】総務省『令和3年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額』を参考に著者作成)

新宿会計士:

View Comments (28)

  • UQとWCPはそれぞれKDDIとソフトバンクの傘下なので実質約85%を携帯3社で負担していると言える。

  • NHK内でこれらの「暗黒の未来」に関する話題ってどうなっているんでしょうね?
    緘口令が敷かれていて、許可なく話題にする事は許されない……なんて事になっているかも?

    極端な話と思うかも知れませんが、あまりにもあまりにも「だんまり」を続ける物だから
    そう邪推したくなっちゃうんですよね。

    • 企業ですから当然経営課題として「視聴率低下」だとか「若者離れ」だの設定しているはずてす。

      ただそのうち手を考えるのが高齢化した経営層やプロデューサーに対して、若者の支持を集めているweb媒体(例えばabemaなんかだと経営者は40代でしたかね)は圧倒的に若いかと思いますので、どちらが若者に刺さるコンテンツを作れるかというと...

      また製作費やクオリティに関してもNetflix等のwebの超大手が高額の製作費、高額報酬で有能な人材を集めているので太刀打ちは難しく八方塞がり

      結局「やってる感」を出しつつ、「ネット配信からも受信料徴収する等既得権を強化する」方向が一番労力がなくリターンが高いという判断ではないでしょうかね

      この状況を改善するには思い切って組織の若返りを図る、原点に帰って取材力を高める、事実を書く方針に切り替える等あると思いますが、顧客を集めないと存続が難しい他社とは違うので経営者や現場の理解も得られにくい気がしますね

  • NHKについて、過去を振り返ればTV放送の全国展開によるTV受像機需要の拡大やBS放送による同じくBS機器の需要拡大など、考え方によっては「特殊な負担金」の考え方としての効果があったかもしれません。
    しかし、時代が変わってきた今では、放送の中身(情報)と放送システムまたは機器に分けて考えることが必要ではないでしょうか。
    電力会社が発電会社と配送電会社に分離されたように、通信システムを持つ携帯電話会社の「電波システム」を利用して新たな携帯電話会社が出来るように、NHKがコンテンツ部門と放送システム部門に分離され、他社がNHKの放送システムを利用した新しいビジネス展開できるようになれば「公共放送」としての意味が出てくるように思います。
    (素人の考えを記してみました)

  • >テレビを見る人もいなくなりつつある

    民放で見てる番組はテレビ東京の朝の「モーサテ」、Tokyo MX の「ストックボイス」くらいかな? あとは天気予報。
    NHKはコスミックフロントの宇宙モノが知的好奇心を刺激する。
    意外に放送大学の番組がおもしろい。「中国と東ユーラシアの歴史」「漢字の成り立ち」「webの仕組み」「中東の政治」、「歴史と人間」の中の津田梅子の伝記には感動した。放送大学にも左翼学者が多いらしく「格差社会と新自由主義」なんてのもある。

  • かねてから
    ・NHK国営化、従業員は公務員として遇し給料は現在の官僚と同等
    ・使用チャンネルは地上波・衛星各1波とする
    ・コンテンツはニュース・天気予報・教育番組のみ
    ・現在NHKが行っている研究開発は民間へスピンアウト
    ・視聴料は無料
    にすべきと考えていました。
    民放が無かった時代では”公共放送”にもそれなりの存在理由があったのでしょうが、現在では民放各社の足を引っ張る存在だと思います。
    民放には電波使用料を携帯電話各社並みに上げて後は各社の自助努力で問題はないと思います。

    妄言多謝!

    • 美濃屋篠兵衛 様

      国営化をして、NHKの職員を公務員とするのであれば、国籍条項が必要になってきます。
      三親等内に外国籍や帰化人がいれば、問答無用で不採用にすべきです。
      勿論これは「差別」ではなく「区別」です。

  • 政治家が「電波料」や新聞の「軽減税率」の是正に及び腰なのは、彼らが「報道」を成羽地としてることに原因がある。
    つまり「痛くない腹」を探られる上に、痛い腹は当然として探られることを「危惧」しているからだ。
    「清廉潔白」は死語になったがマスコミに探られても「痛くない腹」を持つ政治家が皆無だから「電波料」や新聞の「軽減税率」の是正に踏み込めないんだと思う。
    新聞の「軽減税率」は聖教新聞を持つ「公明党」がガンだよ。

  • 「テレビ業界には魅力が無い。」
    ーーその通り、若者がテレビ自体持って無いのは、その現れだ。
    「NHK総合チャンネルを1週間に5分以上見ている日本人は54.7%だった。見ない人は圧倒的に若者に多く、今後もテレビ視聴はしない。」
    ーー私の周りの若者も、タブレットとスマホだけで情報を得ている人は多い。

    もうホントに過去の遺物ダネ。紙に書いて送る飛脚便か、糸電話か電報か速達郵便か・・・こんな歴史的情報伝達方法と同類(笑)。ま、でもそれらは生き残っているヨ。テレビは無理だな。壊滅的になるまで10年無いんじゃない?

  • はっきりいっていまだにNHK料金払ってる人、契約してる人、バカです笑

    • 馬鹿は承知していますが、料金を払わなければならないという悪法がある以上、バカと言われましてもね~~~。

      抵抗しても裁判所から視聴料を支払えと命令されます。この命令を無視して払わないとどうなるのでしょうね。犬HKの泣き寝入りかな?強制執行されても年金暮らしでは盗りようがないかも知れませんが。そうなると年金暮らしで借家の者は視聴料を払わなくても強制的に盗られる事はないかも知れませんが。確定判決が出ても最高裁まで争えば10年くらい掛かるようなら私などそのうちに天国か地獄に行くことになり逃げきりかも知れませんが。

  • 普段は「日本人の半数はNHKを週5分も視聴していない」かもしれないけど、
    台風や地震が起こると違うのでわ?

    • 災害報道についても、NHKの重要度は下がってますね。昔は地震が起きると真っ先にテレビをつけてNHKを見たけど、今はYouTubeで 「ウェザーニュース」 や、Twitterで 「特務機関NERV」 のアカウントを見る人のほうが多いのでは?

      今は、大規模災害発生時には通信事業者が 「00000JAPAN」 という公衆無線LAN (フリーWi-Fi) を無料開放するようになっています。地方でも携帯電話各社が中継車を出したりして、ネット環境が維持されるようにしています。

      私が住んでいる地域も数年前に台風の直撃を受けましたが、ネットにはずっとつながっていたので、情報収集には困りませんでした。よく非常時にはラジオが役立つと言いますが、今はラジオよりもスマホ用の大容量バッテリーだと思いますね。

  • WEB:一寸の虫にも五分のたましい。→言い分があるのだろう。
    NHK:一寸の隙でも五分でだましぃ。→言い訳があるのだろう。

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