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自称徴用工問題巡る韓国の最大の誤算は日本の国民世論

結局、日韓外相会談では自称元徴用工問題を巡る具体的な合意はなかったようです。冷静に考えたら、宏池会政権にそれをゴリ押しするだけの政治力はありませんが、それだけではありません。韓国政府が外務省や宏池会政権を騙すことはできても、このネット時代において、一般の日本国民まで騙すことはできないからです。韓国に誤算があったとしたら、このあたりの事情を読み誤った点にあるのかもしれません。

自称元徴用工問題で具体的な合意なし

日韓外相会談進展なし:韓国は日本に「政治決断」要求』でも取り上げたとおり、週末にドイツ・ミュンヘンで行われた日韓外相会談では、自称元徴用工問題(※)が議論されたものの、どうやら具体的な合意には至らなかったようです。

自称元徴用工問題とは?

本来、「戦時中、日帝の強制徴用の被害に遭った」と自称する者たちやその関係者ら、そして韓国という国家が、「強制徴用」という虚偽の主張に基づき、損害賠償や謝罪など、まったくいわれのないのない行動を日本企業や日本政府などに対して要求している問題。

(【出所】著者作成)

ドイツで現地時間18日夜7時過ぎから開催された日韓外相会談に関する報道発表が、19日朝、日韓の外交当局から発表され、一部メディアもこれに続いています。発表文や朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官の発言を読む限り、今回の外相会談で林芳正外相が「政治的決断」をしたわけではなさそうです。ただ、もしそうだとしても、それは林外相自身が確固たる立場に基づいてそうしたのか、それともたんに「上司」に決断を丸投げしただけなのかはわかりません。日韓外相会談・日本側の発表はほぼ「コピペ」『自称徴用工問題で宏池会は騙せても...
日韓外相会談進展なし:韓国は日本に「政治決断」要求 - 新宿会計士の政治経済評論

この自称元徴用工問題、韓国側は「強制徴用問題」などと誤った用語を使っていますが、その本質は「ありもしない問題をでっち上げ、法的な根拠のない内容(謝罪や賠償など)を要求している」というものであり、韓国の好きな表現を使えば、韓国こそが「加害者」であり、日本はむしろ「被害者」です。

ちなみに当ウェブサイトではこれを「二重の不法行為」と呼んでいる(『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)ことに関しては、今さら繰り返すまでもありません。

宏池会政権という闇

「保守政権なら日韓関係改善」論の間違い

しかも、韓国が作りだした問題は、それだけではありません。

古くは竹島不法占拠問題に加え、自称元慰安婦問題、日韓両政府が取り交わした日韓慰安婦合意(2015年)を韓国が反故にした問題、火器管制(FC)レーダー照射問題など、大小取り混ぜさまざまな懸案が山積しています。

これに関し、一部では、「これらの諸懸案は極左の文在寅(ぶん・ざいいん)政権が作り出したものであり、保守派の尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が発足したいまこそ、日韓関係改善のモメンタムが生じている」などと主張する者もいます(『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』等参照)。

「あの議員」の詭弁が再び出てきました。「朝鮮半島生命線説」とでも言えば良いのか、自称元徴用工問題を「解決」することが、日韓・日米韓の安全保障連携にも寄与する、といった主張です。端的にいえばお粗末と言わざるを得ません。「日本が韓国に譲歩したら日韓・日米韓連携が円滑になる」という主張自体が、そもそも理論的に間違っているからです。国益こそ重要著者自身がここ10年ほど取り組み、いまや一種の「ライフワーク」と化しているのは、「日本にとって円滑な日韓関係が国益である」とする主張の誤りを理論的に証明する作業...
「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁 - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、この認識も、大きく間違っています。韓国が日本に対し、こうした「二重の不法行為」を仕掛けてきたのは、べつに文在寅政権時代が最初ではないからです。

たとえば「現職大統領による島根県竹島への不法上陸、天皇陛下に対する侮辱発言」などの不祥事が発生したのは、文在寅政権時代でも盧武鉉(ろ・ぶげん)政権時代でもなく、李明博(り・めいはく)政権時代の話です。

同じく仏像窃盗問題が発生したのは李明博政権時代、仏像の韓国・浮石寺への引き渡しを命じる判決が言い渡されたのは朴槿恵(ぼく・きんけい)政権時代であり、さらに朴槿恵政権時代にはユネスコ世界遺産登録妨害事件などのさまざまな反日活動も行われています。

尹錫悦氏が「保守派の政治家」なのかどうかという問題は脇に置くとしても、「保守派ならば日韓関係が改善する」というのは単なる幻想に過ぎません。実際、韓国で「保守派」とされる政権時代に、日韓の信頼関係を損ねるような事件が韓国側によって多々引き起こされていたからです。

日韓諸懸案の原因は日本側にもあった!

ただ、著者自身の考えを申し上げるなら、こうした韓国の不法行為や狼藉の数々を許してきたのは、むしろ、日本の外務省や一部の政治家(たとえば日韓議連関係者や自民党の宏池会など)だったのではないでしょうか。

とくに戦後の日韓関係史は「日本が韓国に騙され続けた歴史だ」、などと指摘されることもあるのですが、これについてはあながち「騙す側」である韓国だけが悪いとは言い切れません。詐欺は「騙す側」だけでなく「騙される側」がいて初めて成り立つ犯罪だからです。

事実、あの悪名高い1993年の『河野談話』にしたって、事実上の「日韓合作」だったことが、安倍晋三政権時代の2014年6月20日付で取りまとめられた『慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯~河野談話作成からアジア女性基金まで~』と題する報告書で明らかになっています。

したがって、「日本を騙そうとしてウソをついてきている相手」に対しては、最低限、それを「相手にしない」という対応が必要ですし、理想をいえば「日本に対する不法行為のコストを利息付きで韓国にそっくりお返しする」ことが望ましいといえます。

これについて、「相手が怒っているならとりあえず謝罪してしまおう」という従来の卑屈で愚劣な外交から脱却しかけたのが、菅義偉総理大臣や、そのさらに前任者である故・安倍晋三総理大臣の時代の日本政府でした。

たとえば菅総理は2020年10月26日付の『第203回国会の所信表明演説』で、「韓国は極めて重要な隣国だ」としつつも、「健全な日韓関係に戻すべく、我が国の一貫した立場に基づいて、適切な対応を強く求めていきます」と述べました。

この発言からは、「日韓関係を健全ではない状況にしてしまった責任は韓国の側にある」とする安倍・菅政権の一貫した認識が見えて来ます。これこそが外交の「最低限、本来あるべき姿」でしょう。

(※ただし、理想を言えば、「韓国が国際法を守らないこと」に対する経済制裁などを発動するだけの法制度くらいは整えてほしかったところですが、このあたりについては今後の指導者に期待したいところです。)

岸田首相の心もとない発言

これに対し、安倍、菅両総理の時代と異なり、岸田文雄・現首相の韓国に対するスタンスは心もとない限りです。岸田文雄「宏池会」政権の場合は、こうした立場が大きく後退したからです。その証拠が、今年1月23日付の『第211回国会の施政方針演説』でしょう。正確に引用しておくと、こんな具合です。

国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国である韓国とは、国交正常化以来の友好協力関係に基づき、日韓関係を健全な関係に戻し、更に発展させていくため、緊密に意志疎通していきます」。

岸田首相は日韓を「健全な関係」に戻すために「緊密に意思疎通していく」などと述べてしまっているのですが、この発言だと、その懸案を解決する責任が、まるで日韓双方にあるかのような言い草です。関係を破壊したのは韓国であるにも関わらず、です。

宏池会政権の「トップ」がこんな体たらくだからでしょうか、漏れ伝わる報道からは、とくに昨年5月に尹錫悦政権が発足する前後から、日本政府は韓国政府から完全に舐められているフシがあります。

そもそも韓国政府が今年1月12日の「討論会」で公式発表した「財団方式による解決案」にしたって、すでに日本政府が2019年7月の時点で否定していたものです(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』等参照)。

先ほど「速報」として、河野太郎外務大臣の談話を紹介しましたが、その続きとして、談話、記者会見、河野氏と駐日韓国大使との面談についても紹介しておきます。とくに、河野氏と駐日韓国大使の面談については、産経ニュースが動画サイト『YouTube』にアップロードしているのですが、その内容を確認すると、河野氏がカメラの前であるにも関わらず、韓国側の「基金案」に対し、通訳を遮り、「ちょっと待っていただきたい」などと激高するなど、さまざまな面で異例ずくめです。河野大臣の発言河野大臣の談話河野太郎外相は先ほど、韓国の...
「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係 - 新宿会計士の政治経済評論

日本政府がそんなものをベースに韓国側と「協議」しているのだとしたら、正直お話になりません。韓国政府の土俵に乗っかってしまっている時点で「負け」です。

そもそも論として2018年判決を問題視しない時点でおかしい

自称元徴用工問題を巡っては、「外交的な協議」は2019年1月に日本政府が日韓請求権協定第3条1に従って申し入れた問題解決プロセスを韓国側が無視した時点ですでに「過去のもの」となっている点には注意が必要です。

しかも現在、日本政府自身が過去に否定したはずの「財団」案を巡って、日韓間では「日本の謝罪はどうするのか」、「日本企業による賠償はどうするのか」、といった「条件闘争」になっているフシがありますが、これについても「ちょっと待て」と言いたい気持ちでいっぱいです。

そもそもの2018年10月と11月の韓国大法院の判決自体が国際法に違反する状態を作り出しているわけですから、このことについてはこの際、国際社会の場できちんと認定するのが筋です。

たとえば韓国政府が無視した「国際仲裁手続」を再開し、韓国の国ぐるみの違法性について、第三国の視点も交えて認定することから始めるのなら、まだ理解できなくはありません。あるいは竹島不法占拠問題などの諸懸案とともに、いっそのこと、国際司法裁判所(ICJ)に付託するのも手です。

こうした努力をしていない時点で、いったいなにが「解決」なのでしょうか?

宏池会政権は外交ができないと指摘されることも多いようですが、つくづく本当に情けない話です。

日本にも世論はある

日本が譲歩するためのハードルは著しく上がっている

いずれにせよ、現在の日韓メディアの報道などをベースにまとめておくと、韓国政府の目論見は、こんな具合でしょう。まず、①財団方式による問題解決、続いて②日本の対韓輸出「規制」の撤廃、そして③「韓日シャトル外交」の復活、です。

日本は韓国に輸出「規制」なんて科していませんし、2019年7月に日本が発表した対韓輸出管理適正化措置は、日本政府が韓国との間で輸出管理に信頼して取り組むことができなくなったほか、「不適切な事案」が生じたために発動したものであり、自称元徴用工問題とは無関係です。

もしも自称元徴用工問題の「解決」(もどき)と引き換えに、日本政府が輸出「規制」(?)を撤回するようなことがあれば、この輸出「規制」が自称元徴用工問題に対する事実上の報復で行われたものであるとする韓国政府のウソを、日本政府自身が追認することにもつながりかねません。

このあたりは宏池会政権下でも経産相が安倍派から輩出されているという点を踏まえ、西村康稔・経済産業大臣には、くれぐれも対韓輸出管理の無意味な緩和措置を行わないよう、頑張っていただきたいところだと思う次第です。

ただ、当ウェブサイトでは日韓諸懸案を巡り、「宏池会政権」が無駄な譲歩をしないかどうか、細心の注意を払うべきだと申し上げてきたのですが、それと同時にもうひとつ、指摘しておかねばならないことがあるとしたら、かつてとくらべて「対韓譲歩」をするための政治的なハードルは、極めて上がっている、という事実です。

かつてであれば、官庁としても新聞社やテレビ局を中心とする大手メディアを手なづけておけば、国民が反発しそうな政策でもゴリ押しすることができていました。消費税の導入や増税などは、その典型例でしょう。「直間比率是正」だの、「国の借金返済」だのといったウソでごまかすことができていたのです。

しかし、このインターネット化社会において、官庁がこれまで「手足」のように利用してきたオールドメディア自体が「炎上」するケースが極めて増えているなかで、正直、こうした従来的な手法に限界が生じていることもまた事実でしょう。

現代社会だと、専門家が直接、オールドメディアから独立した新興のウェブ評論サイトや自前のブログ、ツイッターなどのSNSを通じ、自分自身でオピニオンを発信するようになっているからです。

経済関係説、朝鮮半島生命線説はいずれも否定されている

手始めに、日韓関係を巡っても、これまでならばおそらく外務省あたりが発信して来たであろう「朝鮮半島生命線説」、「経済的に重要」説などがネット論壇上で続々と論破され、いまやこれらの言説に一般の日本国民を納得させるだけの力はありません。

【参考】日韓経済関係論

日本企業の多くが韓国に進出する一方、韓国の産業も日本製の製造装置や部品、素材などに強く依存しており、経済的側面から、日韓両国は切っても切り離せないほど、相互に重要な関係にある。

【参考】朝鮮半島生命線説

韓国は地理的に見て日本に非常に近く、この地域が日本の敵対勢力に入れば、日本の安全保障に深刻な脅威をもたらす。だからこそ、日本はあらゆるコストを払ってでも、朝鮮半島を日本の友好国に引きとどめておかなければならない。

日本にとって「日韓関係を『改善』しなければならない理由」としてしばしば引用されるのは、まさに究極的には上記の2つの項目なのですが、これらがどちらも説得力を失っているということになれば、わざわざ日本が韓国に対して譲歩する意味はない、ということです。

いや、もちろん、「短期的には」日本にとって「日韓・日米韓連携」は重要です。

しかし、この「日韓・日米韓連携」の重要性は、安倍総理が当時外相だった岸田文雄・現首相に命じて日韓慰安婦合意を結ばせたころと比べれば、比べものにならないほど低くなっています。その理由は、安倍総理のイニシアティブに基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」が実を結びつつあるからです。

「普段からウソをつく」、「すぐ約束を破る」という韓国と、日本が基本的価値を共有し得ないことは指摘するまでもありませんが、それ以上に、中国という共通の脅威が出現するなかで、信頼し得る友邦との協力関係を深めることこそ、日本にとっては焦眉の急なのです。

そして、このことを深く理解しているのは、ほかならぬ日本国民自身でしょう。

というよりも、なぜいま急いで日韓関係を「改善」しなければならないのかに関し、外務省やその関係者(とくに外務省OBなど)からは納得のいく説明はありません。このネット時代において、多くの国民にとって「納得できないこと」をゴリ押しするためには、相当の政治力が必要です。

宏池会政権に、その政治力はあるのでしょうか?

宏池会は下手をすると第5派閥に転落する可能性がある

結論からいえば、数字で見て、宏池会にはそこまでの勢いはありません。各派閥に所属する衆参両院議員を調べ上げてみると、岸田派は40人少々で、二階派と大して変わらないからです。

自民党の派閥勢力図(5大派閥)
  • 第1位:安倍派…97人(衆59+参38)
  • 第2位:茂木派…54人(衆33+参21)
  • 第3位:麻生派…53人(衆37+参16)
  • 第4位:岸田派…43人(衆33+参10)
  • 第4位:二階派…43人(衆34+参9)
  • その他…88人(衆64+参24)
  • 合計…378人(衆260+参118)

(【出所】著者調べ。なお、所属議員数は2023/01/17時点の自民党ウェブサイトによる)

ちなみに2021年10月の衆議院議員総選挙で、鹿児島2区で自民党候補を破って当選した三反園訓氏(※二階派の特別会員)が自民党への入党を認められるなどすれば、岸田派は第5派閥に転落する、という展開もあり得るでしょう。

もちろん、現在の「宏池会政権」は麻生派(志公会)や茂木派(平成研)にも支えられている格好ではありますが、その内情はお寒い限りです。

万が一、「キシダでは選挙を戦えない」という風潮が自民党内に蔓延し、それが「キシダ下ろし」につながるようなことがあれば、菅義偉総理の再登板という可能性だって非現実的なものではありません(※著者私見。『菅総理の「口の重さ」自体が「再登板」の意欲の証拠か』等参照)。

いまから2週間前に公開されたインターネット番組に、菅義偉総理大臣が出演しました。その内容自体もさることながら、興味深いのは菅総理の「話す速度」と「表情」です。これに関し、ネット番組の司会者である長谷川幸洋氏が産経新聞の元政治部長である石橋文登氏に発言を振ったところ、非常に腑に落ちる説明がありました。菅総理が出演した2週間前のネット番組少し古い話題ですが、菅義偉総理大臣が先日、YouTubeチャンネル『長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル』に出演しました。ちょうど2週間前の2月1日に公開されて以来、現...
菅総理の「口の重さ」自体が「再登板」の意欲の証拠か - 新宿会計士の政治経済評論

こうしたなかで、限られた政治的リソースを「宏池会政権」の存在意義(?)である増税に全力投球する必要がある岸田首相にとっては、日韓関係ごときにその貴重な政治的リソースを浪費することができるのか、という問題があることも事実でしょう。

本質がわかっていない記事

これに関連し、読売新聞オンラインに19日朝掲載された、こんな記事を読むと、「どうもわかっていないな」、などと思ってしまいます。

元徴用工問題で日韓外相「真剣で深みのある意見」交換、早期決着へ落とし所探る

―――2023/02/19 08:51付 読売新聞オンラインより

読売新聞の記事には、ドイツ・ミュンヘンで現地時間18日に行われた日韓外相会談で、「日韓間の最大の懸案である元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題での議論を政治レベルに引き上げ、詰めの協議を行った」、などと記載されています。

そのうえで両政府は「韓国政府傘下の財団が被告の日本企業の賠償を肩代わりし、決着を図る方向で調整」するなかで、両外相は「残る相違点について、双方が受け入れ可能な落とし所を探った」ものの、「結論には至らなかったとみられる」、などとしています。

これが事実ならば、「まずはひと安心」、といったところでしょうか。

ただ、そもそも論として、自称元徴用工問題を巡っては「早期決着」の必要はありません。べつに自称元徴用工問題が未解決のままであったとしても、当面の日韓・日米韓連携は粛々と進んでおり、特段の不都合は生じていないからです。

というよりも、自称元徴用工問題が解決しようがしまいが、そのことと日韓・日米韓連携が円滑に進むかどうかは無関係です。これについては、日本で最も信頼に値する韓国観察者である鈴置高史氏も以前から指摘している点です(『韓国への譲歩が無意味である理由を鈴置論考で確認する』等参照)。

年末に韓国観察者・鈴置高史氏が、「尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権の総集編」ともいうべき記事を公表しています。これがまた大変に面白いのです。鈴置氏といえば、過去に「日本が韓国に譲歩したところで意味がない」という点をわかりやすく説き明かした人物でもありますが、今回の論考もそれとまったく同じ文脈に位置付けることができそうです。課題は解決しなくても良いこともある「課題山積」なら「解決法」は――?「新年から、内外ともに課題は山積している」――。こんなことを述べると、必ず帰ってくる反応のひとつが、「では、そ...
韓国への譲歩が無意味である理由を鈴置論考で確認する - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、著者自身としては、18日の日韓外相会談が自称元徴用工問題を巡る一種の分水嶺だと考えてきました。『外相会談乗り切れば「キシダを騙す韓国の試み」失敗へ』でも述べましたが、外相会談で日本側が「決断」しなかった場合、スケジュール的に「3・1節」に間に合わなくなるからです。

今月17~19日の間にドイツで日韓外相会談が開かれ、自称元徴用工問題を巡り日本が「譲歩案」を政治的に呑む、というリスクは、決して小さくありません。韓国も「宏池会政権」の間に「キシダ」を騙そうと必死だからです。ただ、逆にいえば、韓国側がこのチャンスを逃せば、そのまま日本は統一地方選に続き、5月の広島サミットを迎えます。もしかしたらそこで岸田政権が終わるかもしれません。もし岸田首相の次に菅義偉総理が再登板することがあれば、韓国の「謝罪利権確立」の野望は潰えるでしょう。韓国大統領訪日構想相次ぐ「尹錫悦...
外相会談乗り切れば「キシダを騙す韓国の試み」失敗へ - 新宿会計士の政治経済評論

そうなると、その後は政治日程として、日本側も動きが取り辛くなります。統一地方選の結果次第では、岸田首相自身の進退問題が取り沙汰され、「広島サミット花道論」が現実味を帯びてくる可能性すらあるからです。

韓国側の最大の誤算

ただ、それ以上に韓国側の「誤算」があったとしたら、日本国民の世論を舐め腐っていることでしょう。

読売の記事の末尾には、こんな記述があります。

韓国政府は国内世論を抑える観点から日本側の歩み寄りに期待を寄せている」。

この記述で根本的に欠落している視点があるとしたら、「国内世論」を気にしなければならないのは、韓国側だけではない、という事実でしょう。「国内世論」は、日本側にだって、もちろんあります。外務省ばかり見ているオールドメディアからは、本当の国内世論は見えて来ないのではないでしょうか?

もし宏池会政権が無事、統一地方選を乗り切ったとしても、それでおしまいではありません。万が一、宏池会政権が「韓国の世論」に配慮するあまり、韓国側に譲歩するようなことがあれば、日本国民の怒りが自民党全体に向かいかねません。

最近だと自民党議員も自身でツイッターやブログなどを更新している事例は多いでしょうし、期待されている政治家ほど厳しい意見に直面する傾向があるはずです。こうした国民世論の実情を肌感覚として理解している政治家は、宏池会政権の独走を許さないでしょうし、宏池会政権にそれを振り切る政治力はありません。

いずれにせよ、日韓諸懸案だけでなく、財務省の増税志向であれ、総務省のNHK利権死守であれ、国政上のさまざまな課題に対し、私たち一般国民はもっと政治家に意見を直接伝えるべきでしょう。

我々国民がネットをうまく使いこなせるようになれば、古代ギリシャ時代のような「直接民主制」に近い、より国民の声を政策に反映させるようなこともできるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (22)

  • 「そもそも韓国に対する視線は、日本政府よりも日本国民の方が厳しい」

    これ、多分韓国側ではタブー中のタブーなんでしょうね。これを認めてしまったら
    「日本の世論は説得不能、日本政府は世論を恐れて韓国に譲歩しなくなる」と言う
    彼らにとっては何よりも恐ろしくどうしようもない結論に達するのですから。

  • 日韓関係改善とやらに政治リソースを割いている場合ではない。
    共有されるべき現状認識とはそういうものだと、新聞報道や NHK は早く言及すべきですね。

  • GSOMIA破棄騒動では2019年11月22日と言う期限がありました。
    自称元徴用工問題では、現金化の確定した期限が無くズルズルと繰り下げされていて、ある意味ゴールポストが動き続けているようなものかもですね。
    GSOMIAの時とは違い、米国が韓国政府を脅していないので、韓国政府としては比較的気楽かもですね。

    • クロワッサン様

      ゴールを動かす必要はなくなってるのかもですよ。

      ゴールに近づこうにも、離れようにも、
      泥沼にはまり込んで、沈まないよう足掻くのが精一杯。
      そこから一歩も動けないのが実情のようですから(笑)。

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    韓国:「日本国民が正しい歴史観をもつように、ネットで世論工作(洗脳)をしよう。そのため、まず、新宿会計士のサイトにコメントしよう」
    韓国に限らなければ、ロシアなど第三国もやっていそう。
    蛇足ですが、朝日新聞などのオールドメディアも、ここに書き込んでいるかもしれません。

  • 林外務大臣の歩み寄りの発言が無かったので、一段落な気がします。第一、日本は今、韓国如きを相手に政治家が動いている場合じゃないんです。それこそ列の最後方で良いのです。「徴用工判決の日韓でのすり合わせ」なんて急がない。どうでもいいから、韓国が好きなようにやって、日本から宿題とペナルティを貰うだけです。

    どう考えても、岸田首相は心許ない。隙があり脇が甘いから、また同じような事態に陥るでしょう。本人だけでなく、御子息も地雷をふみますからね(笑)。ところで韓国側は日本が話に乗って来なければ、日韓議連や自称親日派らが国内を抑えきれず、困るだけ。日本の「国内世論」は、ホントにここ1〜2年で急速に変わって来てます。コロナ禍のお陰か、ウクライナーロシア戦争(露の軍事侵攻)か、安倍晋三総理のお陰もあるでしょう、官僚のゴリ押しが通らなくなったし、いずれにせよ少し賢くなりました。

  •  仏像や農産品の窃盗で韓国の印象は地に落ち、韓国を援護する政党は脱○やLGBT悪用で地に落ち、それらをまるっと援護するメディアは打ち上げ失敗と決めるけることに失敗したりしてやはり地に落ち。
     それぞれがやらかしてそれぞれが正しく日本国民に評価されているのに、「政治」が原理原則も法も民意も無視して解決などできる時代ではありません。

     これが100年前で韓国が超強大な軍事国家だとかなら話は別ですけど。

  •  岸田文雄氏は東大法学部受験に3回失敗しています。普通の人なら2回も失敗すれば諦めて方向転換すると思うのですが、「このままでは終われない」という気持ちだったのでしょう。
     また、岸田文雄氏は韓国に2回騙されています。普通の人なら1回騙されれれば「もう2度と騙されないぞ」と用心すると思うのですが、岸田文雄氏は2回騙されていても「このままでは終われない。今度こそは自称元徴用工問題を解決して『戦後最良の日韓関係を築いた令和の大宰相』になってやるんだ!」とリベンジ精神に燃えているのかも知れません。
     私は、心配で心配で昼も寝られず、夜も起きられません。どうすれば良いのでしょうか?

    • 「日韓関係改善」は得点にならないとの認識を得たら彼はあっさり引き下がると考えます。
      何をいまさらと多くの国民がそう考えるでしょう。現政権の帰趨はダメージコントロールに掛かってきますが、得点稼ぎ根性を見抜かれて支持信頼は地に落ち、まるごとダメになるやも知れません。

  • >韓国政府は国内世論を抑える観点から日本側の歩み寄りに期待を寄せている」。

    その手が通じたのは、"小さくてかわいそう"に見えていたからのことです。
    通じなくなったのは、大きくなっても"かわいそう利権"を振りかざすから。

    端的に言えば、「見かけはオトナ。頭脳はそのまま。」ってことなんですよね・・。

  • そもそも韓国がやることは大法院判決に従うのか破棄するのかだ
    従うのであれば現金化 嫌なら破棄
    日本は関係ない 協議もクソもない
    韓国の国内問題です

  •  今後の予測をしてみると、2月末の自称被害者との集団面談で、韓国外交部が①韓国企業の出資により、韓国財団が第三者弁済を行う②日本の謝罪や被告企業の寄付を再三、日本政府と交渉したが、回答は得られなかった③永年苦しんでこられた被害者をもうこれ以上放置するわけにはいかない、と説明する(求償権の放棄については言明せず)。日本政府は、当たり障りのない歓迎コメント?を出す。
     3月:尹大統領が訪日、日本は広島サミットのゲスト国に招待、5月:韓国が第三者弁済を実施、輸出規制のWTO提訴を取り下げ、7月?:輸出規制をめぐる日韓協議再開、日本が韓国のホワイト国復帰を決定、ではないでしょうか。
     韓国の原告団(遺族含め32人)のうち、9割が第三者弁済に応じると、予想します。これでいわゆる”現金化”のリスクはほぼ無くなる、と思われます。ただ求償権は残りますので、本質的な解決とはなりません。また将来韓国に左派政権が誕生した際に、二度目の「ちゃぶ台返し」をくらうリスクも残ります。その代わり、日本企業による自発的な寄付もあり得ませんので、日本全体の経済的損失はありません。
     仮にこういう決着だとすれば、まあ良しとするか、いやいやそもそも大法院判決の国際法違反を認めさせていないので駄目とするか、人によって判断は分かれるでしょうね。
     韓国民は反省していないと思われるので、私は、どちらかといえば後者ですかな。

     

    • チャーハン劇場を再開してしつこくすがりついてくるか、「見切り発車」して自壊するかどちらでしょうね。「見切り発車」の尻拭いを日本側からすることはくれぐれもないように。

    • >日本政府は、当たり障りのない歓迎コメント?を出す。

      あの宮澤喜一を尊敬する岸田さんですからやりかねませんが、これをやったら第二の宮澤喜一です。

      当たり障りのない歓迎コメント=大法院判決を認めた ことになります。

      朝鮮半島併合救済は合法的に行われたという史実を無視し、先人の約80年間の努力を無にする行為で、気づかずにやるアホか、気づきながらやる売国奴か知りませんが早急にお引き取り願うほかありません。

      やはり、『ノーコメント』か、出すとすれば『朝鮮半島は合法的に併合救済された』くらいではないでしょうか。

    • 根拠のない妄想で申し訳ありません。

      結論:日本政府・キシダ政権は何もしない

      内容:①韓国政府・ユン政権が行う財団案に対して、日本政府・キシダ
          政権は何もしない
          (黙認という名の是認。理由:他国の内政事案)

         ➁在日韓国企業の財団への寄付に対して、日本政府・キシダ政権
          は何もしない
          (黙認という名の是認。
           理由:他国の民間企業がおこなう行為)

         ➂談話等について、日本政府・キシダ政権は何もしない

      まとめ:①実質的に日韓の外交関係改善に資することを、韓国政府・ユ
           ン政権は何もしない

          ➁日韓の外交関係改善に資することを、日本政府・キシダ政権
           は何もしない

      そして、なんとな~く問題が解決されたかのような雰囲気だけが醸し出されて、ステージは日米韓の安全保障の討議の場へと。

      これぞ先祖返りをした、ザ・自民党、宏池会、キシダ内閣。見事な色と艶の玉虫色。(と、個人的に妄想中)

      駄文、失礼致しました。

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