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日本を騙す「徴用工解決案」を冷ややかに見る日本国民

記事本文よりも読者コメントを眺めている方が面白い、という事例がありました。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に11日付で掲載された、「強制徴用問題」は「戦犯企業の参加がカギ」で「岸田首相の決断が必要」などとする記事が、その典型例でしょう。「ひたすら日本に非を認めさせる努力」しかしていない韓国政府とそれに毅然と対処しない日本の外務省、そしてそれらを冷ややかに眺める日本の世論、という構図が見えてくるのです。

日韓諸懸案巡る「3つの落としどころ」

自称元徴用工問題を含めた日韓諸懸案については、当ウェブサイトではそれこそこれまで何百回となく取り上げてきましたテーマですが、なにどどう議論したにせよ、これら諸懸案の「落としどころ」には、究極的には3つのパターンしかあり得ません。

それは、①韓国が国際法などを誠実に守ることで日韓関係の破綻を回避すること、②日本が国際法などの原理原則を捻じ曲げて韓国に譲歩することで日韓関係破綻を回避すること、そして③日韓関係が破綻すること、です。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法などを誠実に守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が国際法などの原理原則を捻じ曲げて譲歩することで、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法などを守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

(【出所】著者作成)

外務省の愚劣さ

なぜ「②」を絶対に避けなければならないのか

著者自身としては、この3つのなかで最も避けなければならないのが②であると、当ウェブサイトで一貫して申し上げてきたつもりです。

その大きな理由は、本来ならば国際法に基づいて守らなければならない日本企業、日本国民の利益や尊厳が韓国により侵害されているにも関わらず、日本政府がそれをやらないこと自体が、日本政府の日本企業・日本国民に対する背任だからだ、というものですが、それだけではありません。

現在の日本は故・安倍晋三総理大臣が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の考え方に従い、世界に対し「国際法秩序を守ること」の大切さを唱道(しょうどう)する立場にあります。

それなのに、その日本自身が韓国の不法行為に対し、毅然として自国の立場を主張することなくヘニャヘニャと譲歩してしまえば、世界の日本を見る目が極めて厳しくなります。韓国が起こした日韓諸懸案の多くは、そもそも日本に一点の非もなく、紛れもない韓国による「二重の不法行為」だからです。

日韓諸懸案に関する韓国の「二重の不法行為」とは?
  • ①韓国側が主張する「被害」の多くが韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  • ②韓国側が日本に対して要求している謝罪や賠償の多くは法的根拠がないか、何らかの国際法違反・条約違反・合意違反などを伴っている

(【出所】『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)

世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1...
【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論

おりしも国際法秩序を重んじる西側諸国は現在、ロシアが発生させた違法で一方的なウクライナ戦争をロシアに止めさせるべく努力している最中にあります。もしもロシアがウクライナ戦争で1ミリでも領土を獲得するようなことがあれば、国際法秩序が破壊されかねないからです。

また、ウクライナ戦争は日本にとっても他人事ではありません。

もしロシアがこの戦争で少しでも利益を得ようものなら、今度は中国が台湾に侵攻するかもしれませんし、そうなれば日本の安全保障にも甚大な影響が生じます。さらには「台湾有事」「半島有事」が同時に発生するという事態も考えておかねばならないでしょう。

こうした視点を加えるならば、日本が国際法秩序の原理原則を無視して韓国に譲歩するということが「絶対にあってはならないことである」という点については、自明の理なのです。

「日韓関係は重要」――、そもそもそれは正しいのか?

ただ、その一方で、「日本にとって韓国との関係は死活的に重要だ」、「日韓ともに歴史問題にこだわっている場合ではない」、などと述べる者もいます。

こうした主張の背景には、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させるなかで、日韓・日米韓連携がこれまで以上に重要である、といった問題意識があることは間違いありませんが、ここにもじつは大きな「罠」が潜んでいます。

そもそも論として、「日韓・日米韓連携」が半島有事を防ぐうえで本当に有効な枠組みなのか、といった点についての議論が欠落しているからです。

昔から「ウソツキは議論を嫌う」といわれますが、とりあえず「北朝鮮の脅威に備えるために日本は韓国と協力しなければならない」、「だから日本は日韓諸懸案で韓国に譲歩しなければならない」、と強く主張しておけば、そこで議論がストップすると外務省関係者あたりは考えているフシがあるのです。

ところが、社会のインターネット化は、この日本社会に「徹底した議論」を好む風土をもたらしました。

そして、優れた論客が、「日本が諸懸案で韓国に譲歩したとして、日韓・日米韓連携がうまくいくという保証はない」などと主張し始めたのです。

その典型例が、日本で最も信頼に値する韓国観察者のひとりである鈴置高史氏でしょう。

鈴置氏は日韓諸懸案を巡って、韓国への譲歩が無意味であるだけでなく、有害ですらあるという点について、かなり以前から懇切丁寧に解説し続けています(『韓国への譲歩が無意味である理由を鈴置論考で確認する』等参照)。

年末に韓国観察者・鈴置高史氏が、「尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権の総集編」ともいうべき記事を公表しています。これがまた大変に面白いのです。鈴置氏といえば、過去に「日本が韓国に譲歩したところで意味がない」という点をわかりやすく説き明かした人物でもありますが、今回の論考もそれとまったく同じ文脈に位置付けることができそうです。課題は解決しなくても良いこともある「課題山積」なら「解決法」は――?「新年から、内外ともに課題は山積している」――。こんなことを述べると、必ず帰ってくる反応のひとつが、「では、そ...
韓国への譲歩が無意味である理由を鈴置論考で確認する - 新宿会計士の政治経済評論

鈴置氏の指摘を著者なりに要約すれば、「韓国は日本の譲歩で動くような国ではない」、が正しいでしょう。韓国を動かしているのは「大国への恐怖」であり、したがって韓国の行動を決定しているのも、中国と米国の「綱引き」の結果なのです。

そもそも論として、「日本がちょっと譲歩したくらいで韓国という『外国』を思い通りに動かせる」、などとする認識は、あまりにも甘すぎます。日本が韓国に譲歩しようがしまいが、米国が韓国を脅せば日米韓連携は動きますし、中国が韓国を脅せば日米韓連携は止まるからです。

つまり、「日本が韓国に譲歩しなければならない理由」自体が、理論的に成り立たないのです。

韓国の「食い逃げ外交」にはすでに前科がある

というよりも、日本がもし韓国に譲歩すれば、先ほど指摘した問題点――①日本が自ら国益を放棄してしまうこと、②日本が自らルールに基づく国際秩序に反する行動を取ってしまうこと――に加えて、もうひとつ、大変に大きな問題が生じる可能性が高いです。

それが、「韓国の食い逃げ外交」です。

韓国はこれまで、日本から何らかの「譲歩」「支援」を引き出した直後に手の平をひっくり返す、といったことを続けてきました。

野田佳彦内閣発足直後の2011年10月、欧州債務危機の余波で外貨流出リスクに直面していた韓国に対し、日本が通貨スワップの規模を130億ドルから一挙に700億ドルに増額するという支援を実施したところ、当時の李明博(り・めいはく)大統領はこれに感謝するどころか、恩を仇で返したからです。

具体的には、同年12月の日韓サミットで韓国側が自称元慰安婦問題を突如として蒸し返し、翌・8月には李明博大統領自身が島根県竹島に不法上陸し、さらには天皇陛下に対して極めて無礼な発言を行い、野田佳彦首相からの親書を郵送で送り返すという、非礼の限りを尽くしたのです。

これに関連し、先週の『日本国民の対ロシア親近感は史上最悪に=外交世論調査』では、内閣府が発表した『外交に関する世論調査』をもとにした日本国民の意識調査を紹介しました。

ロシアに対する親近感が史上最悪レベルになったようです。内閣府が公表した『外交に関する世論調査』の最新版によれば、ロシアに対し「親しみを感じる」「どちらかといえば親しみを感じる」と答えた合計割合は過去最低の5.1%(0.5%+4.6%)に留まる一方、「親しみを感じない」「どちらかといえば親しみを感じない」と答えた合計割合は94.7%(27.3%+67.4%)と過去最大値を記録しました。また、ロシアに引きずられたためでしょうか、中国に対する親近感も悪化しているようです。外交に関する世論調査の最新データ今年も、大変興味...
日本国民の対ロシア親近感は史上最悪に=外交世論調査 - 新宿会計士の政治経済評論

これによると、日本国民の対韓感情・対韓意識は、2012年10月時点の調査で急速に悪化していることが確認できます(図表1図表2)。

図表1 韓国に対する親近感

(【出所】内閣府『外交に関する世論調査』をもとに著者作成)

図表2 韓国との関係に関する認識

(【出所】内閣府『外交に関する世論調査』をもとに著者作成)

最近でこそ「韓国に親しみを感じる」と答えた割合が回復傾向にありますが、韓国に「親しみを感じない」という人が日本社会の多数派を占めるに至った大きな理由のひとつが、この李明博元大統領の日本に対する常軌を逸した非礼な行動だったことは間違いないでしょう。

いずれにせよ、韓国が「手のひら返し」をする国であり、これまでも「食い逃げ」をしてきたという実績を持っているという事実を踏まえるならば、「日本が譲歩すれば丸く収まる」式の外務省外交は通用しないばかりか、日本が韓国に「譲歩した」という実績だけ残るという結果になることは、火を見るより明らかです。

それでも韓国に譲歩しようとする愚劣な外務省

こうしたなかで最近、当ウェブサイトで頻繁に取り上げている話題が、どうも日韓諸懸案を巡って、日本政府が韓国政府にまたしても譲歩してしまうのではないか、という論点です。

とくに、日韓諸懸案の最も大きな柱のひとつである自称元徴用工問題を巡っては、韓国政府が今年1月になって打ち出してきた「財団による肩代わり」方式による「解決法」を、日本政府も受け入れてしまうのではないか、という点が、非常に懸念されます。

もちろん、自称元徴用工問題(日本政府の表現でいえば「旧朝鮮半島出身労働者問題」)を巡っては、日本政府としては「1965年の日韓請求権協定で解決済み」との立場を示してきたため、基本的にはこの建前に反する「解決策」は受け入れられない、との見方があることは事実でしょう。

ただ、やはり韓国政府はあの手この手策を弄し、「日本に非を認めさせる努力」を全力で続けていると述べて良いでしょう。

最近の報道だと、韓国政府が「財団方式」による解決策を発表し、日本政府側としては日本企業(あるいはその経営者ら)が「自主的に」財団に寄付することは「黙認」したうえで、過去のおわびの談話などを読み上げる、といった「落としどころ」がささやかれているようです。

これらが事実ならば(※というかおそらく事実でしょう)、外務省という組織は本当に愚劣と言わざるを得ません。いずれ外務省という役所自体、解体すら検討しなければならないのではないでしょうか。

(※もっとも、「解体が必要」な役所としては、ほかにも財務省、総務省、文部科学省など多数存在しますが、これらについては少し論点がズレますので、別稿などにて随時議論していくつもりです。)

韓国側の視点

日本に非を認めさせる努力巡る「韓国側の視点」

これに関連し、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に11日、こんな記事が掲載されていました。

「強制徴用賠償、戦犯企業の参加がカギ…岸田首相の決断が必要」(1)

―――2023.02.11 11:04付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】

「強制徴用賠償、戦犯企業の参加がカギ…岸田首相の決断が必要」(2)

―――2023.02.11 11:09付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】

文字数は全部で2500文字前後と中央日報にしてはやや長めですが、「コリア・ウォッチャー」にとってみれば、これまでの韓国・尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権の主張を再確認するという意味では、一読の価値はあるでしょう。日本に非を認めさせる努力を巡る「韓国側の視点」がよくわかるからです。

この中央日報の記事をわかりやすくまとめれば、「日本は韓国に譲歩しろ」、です。記事では国民大学の李元徳(り・げんとく)日本学科教授が「現在進行中の強制徴用問題交渉に関する分析と見通し」を騙る、というものです。

「強制徴用問題」だ、「戦犯企業」だという用語が出てくる時点で正直論外なのですが、それと同時に「敵」が何を考えているかを知る上では、頑張って読んでおく価値はあります。

李元徳氏は「強制徴用問題」の解決法の「最大の障害」を巡って、こう述べます。

カギは三菱重工業や日本製鉄(旧新日鉄住金)のように実際に強制動員被害者を雇用した企業の参加だ。日本は韓日請求権交渉でこの問題が決着したという立場を固守している。韓国政府はこれら企業の参加を貫徹させるために交渉力を集中している」。

のっけから、これです。

いわば、韓国政府が自称元徴用工問題を「国際法に従って妥当なかたちで解決する」という意思がまったくなく、「何としてでも日本に非を認めさせること」だけに努力している、ということがよくわかる記述です。

本当に呆れるしかありません。

「以前と比べると日本の雰囲気が好転」、それどこの世界ですか?

ただ、ここで興味深いのは、こんな記述です。

現在としても交渉妥結の見通しは厳しい。ただ、以前に比べると日本国内の雰囲気がはるかに良くなったとはいえる」。

後述する通り、記事の読者コメント欄から透けて見える日本側の世論が「以前と比べはるかに良くなった」という兆候はいっさいありませんが、この李元徳氏という人物、いったいどこの何を見て「日本国内の雰囲気がはるかに良くなった」と判断したのでしょうか?

じつは、著者自身はこれについて、李元徳氏を含めた韓国側の関係者(政治家、日本専門家)らが日常的に面会しているのが、▼外務省関係者、▼外務省の御用学者、▼日韓議連関係者、▼宏池会政権関係者――らに限られているという証拠ではないかと睨んでいます。

李元徳氏の発言からわかるのは、それだけではありません。現在の韓国政府が「現在の自称元徴用工らに対する賠償だけを何とかすれば、自称元徴用工問題は解決する」、といったウソを、韓国側が日本に信じ込ませようと必死になっている、ということです。

ウソの連続

実際、記事にはウソがこれでもかというほど出てきます。記事の続きを読んでいきましょう。

しかし今は少し代わった。実質的な訴訟当事者は1000人程度にとどまり、このうち証拠不足などで大法院(最高裁)まで行って勝訴する可能性がある人は200人ほどだ。2018年の大法院判決以降、すでに時効3年が経過し、新しい訴訟は提起できない。金銭的にみると200億ウォンほどあればこの問題が解決するという認識が日本で広がっている」。

…。

よくこういうウソを平気でつくものだと思います。

日韓請求権違反の2018年の大法院判決をそのままにして、日本企業(あるいは日本の財界人)らが何らかの形でカネを払うというスキームを作れば、そこを足掛かりにして、韓国側が日韓請求権協定そのものの骨抜きを図るつもりであることは、ちょっとした思考力があれば、誰にでもわかることです。

また、普段から鈴置論考を読んで免疫を付けていれば、こんな発言もウソであることがわかります。

日本は実用主義外交を重視する。日本政府は交渉の成否に基づく損益計算をするだろう。特に韓日関係の正常化を望む米国との関係を重視するため、日本政府の悩みは深いはずだ。岸田首相ら最高位層の決断が要求される事案だ」。

残念ながら、米国は日本に対し、「日韓関係正常化」のための圧力をかけてくることはありません。

それどころかむしろ、米国が主導する対中半導体包囲網に、韓国がのらりくらりと立場を明らかにしていないという事実は、米国を苛立たせるのに十分でしょう。

おそらく外務省は岸田文雄首相らに「米国の意向に忖度(そんたく)して日韓関係を早期に正常化しなければならない」などとするウソを吹き込んでいるものと考えられますが、現実はその真逆なのです。

肝心なところはボカすご都合主義

ただ、日本にとっては正直、韓国との関係が「死活的に重要」という状況は、もう消え失せています。安倍総理やその後継者である菅義偉総理大臣が、「価値観に基づく外交」を大々的に展開し、その結果、日本と基本的価値を共有しない韓国の日本外交における重要性は著しく低下したからです。

これに関し李元徳氏はこう述べます。

安倍政権当時に日本が韓国に対する戦略的比率を大きく低めたのは事実だ。日本は韓国の過去の政権が強硬態度を見せて協力の空間が狭まったという。そして米国とは緊密な関係を維持しながら韓国を排除する動きを見せた」。

ここは、事実関係が少し異なります。

安倍、菅両総理の時代に、日本にとっての韓国の戦略的な重要性が著しく低下したことは事実ですが、それは安倍総理らが提唱したFOIPの概念に韓国が賛同しなかったからであり、また、日本が韓国を排除したのではなく、韓国がFOIPから自ら距離を置いたからです。

そして、この点を突き詰めると、「では文在寅(ウェン・ツァイイン)政権から尹錫悦(イン・シーユエ)政権に代わったことで、韓国がFOIPに参加し、日米による対中包囲網に参加するようになったのか?」という疑問が飛び出してきますが、これに対する李元徳氏の答えは、こうです。

米国と日本が主導するインド太平洋戦略の枠組みでみると、韓国の位置づけは非常にあいまいだ。しかし根本的に韓半島は日本外交の出発点と見ることができる。日本の外交の筆頭である米国の圧力も無視できない。結局、日本も韓国との関係改善が避けられない状況だ」。

…。

なんだか、意味がわかりません。

なぜ「FOIPの枠組みで韓国の位置づけがあいまい」なのに、その「位置づけがあいまいな韓国・朝鮮半島」が「日本外交の出発点」になるのでしょうか?

日本外交の出発点は米国との同盟であり、これを重層化する「日米豪」、「日米豪印(クアッド)」などの枠組みです。最近だと日米関係に英国やフィリピン、台湾などが加わりますが、残念ながら日米両国にとっての韓国の重要性がこれらの国々と比べて著しく高いという事実はありません。

なぜその肝心なところをボカすのでしょうか?

これだと「ご都合主義」の誹りを免れないでしょう。

というよりも、「なぜ日本にとって、韓国との関係『改善』が避けられないのか」に関する精緻な説明ができていない時点で、この点が韓国にとっての弱点であることを、李元徳氏自身が証明してしまった格好です。

本当の価値は読者コメントにあり!

ただ、この記事を読むさらに重要な意味は、ほかにもあります。

中央日報の場合は読者コメントが投稿されるからであり、また、上記中央日報の記事を転載した『Yahoo!ニュース』の記事にも同様に多数の読者コメントが掲載されているからです。

「強制徴用賠償、戦犯企業の参加がカギ…岸田首相の決断が必要」(1)

―――2023/02/11 11:17付 Yahoo!ニュースより

「強制徴用賠償、戦犯企業の参加がカギ…岸田首相の決断が必要」(2)

―――2023/02/11 11:17付 Yahoo!ニュースより

正直、記事本文よりも読者コメントを読んでいた方が遥かに参考になります。

ちなみに『Yahoo!ニュース』の場合、昨日深夜時点で、読者コメントは(1)の方に200件以上(2)の方には300件以上、それぞれ付いていました。それらのすべてを紹介することは非現実的ですが、高評価上位順に並べると、少なくとも上位10位圏内にこの李元徳氏の見解に賛同するコメントは皆無です。

たとえば記事本文にある「戦犯企業の参加」という表現に着目したコメントも大変に多く、なかには「『戦犯企業』なるものは存在しない」、「そもそも『徴用』自体は当時合法であり、『戦争犯罪』を犯した日本企業は存在しない」、といった本質的な指摘に迫るものが散見されます。

また、これまでの日韓関係史に照らし、日本が「解決した」と思っても、韓国では政権交代後、必ず蒸し返されてきたという歴史を踏まえ、「韓国側の要請に対しては戦略的無視が最適である」、といった指摘もあります。

さらには、「応募工問題」(※自称元徴用工問題の別称)を巡っては、この問題が韓国の司法システムで生じたものである以上、韓国の司法システム内において「現金化で解決するのが筋だ」、といった指摘も見られますが、これもまったくその通りでしょう。

つまり、現在の日本のネット世論を見る限りは、一般読者のコメントのレベルが非常に高く、しかもそのレベルの高いコメントに対し、多くの高評価が集まるという循環が生じているのです。

韓国が出してきた「財団方式による妥結」に対して日本の世論が冷ややかであるというのは、意外と日本の新聞・テレビを中心とするオールドメディア、あるいは外務省を中心とする役所の者たちにとっては「盲点」といえます。

なにより、昨今だと自民党議員を中心にツイッターやフェイスブックなどのSNSにアカウントを持つ人も多く、なかには山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士に絡まれた際に、「自民党の外交部会で追及します」と確約する鈴木隼人・衆議院議員のような人物もいるほどです。

ちなみにこの「怪しい自称会計士」はツイッター上で自民党の議員に絡みまくっているようですが、当ウェブサイトの読者の皆さまも同様に、もしSNSユーザーであれば、自民党議員などに有権者としてのメッセージを送ることが可能です。

国会議員を数十人、数百人と動かせば、宏池会政権や日韓議連、外務省などが裏でこそこそと国益に背く行動を画策することは許されなくなります。これが本当の「対韓譲歩案を国民の力で潰すこと」です。

「韓国の強制徴用解決策に対し、日本が輸出規制解除やホワイトリスト編入、シャトル外交再開などで呼応しようとしている」。この韓国メディアの報道自体、本当に単なる虚報と見て良いのでしょうか。やはり、不安を完全に払拭することはできません。報道から数日が経過するなかで、日本政府が報道に腹を立てて交渉を打ち切ったという事実はないからです。こうしたなかでひとつの希望があるとしたら、「聡明な日本国民の存在」ではないでしょうか。日本の呼応措置巡る嫌な予感韓国紙「日本政府の呼応措置」報道、本当に単なる「虚報」な...
自称元徴用工での対韓譲歩案を日本国民の力で葬り去る - 新宿会計士の政治経済評論

正直、「日本に非を認めさせる努力」しかしていない現在の韓国政府に、日本がまともにお付き合いする意味はありません。

基本的には「財団方式」などに関しては「丁寧な無視」戦略を続け、資産現金化が実現した場合に直ちに対韓制裁に踏み切ることができる準備を整えつつ、目先の「日韓・日米韓」を(形の上で)進めるという「ツートラック」の狡猾さを持つことが日本外交には求められるといえるでしょう。

新宿会計士:

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  • 外務省には、『 譲歩=追認 』であると肝に銘じて頂きたく存じます。
    「日本が非(請求権協定の不備)を認めた証左」とされることでしょう。

  • 20世紀残渣のような高級官僚と、進んで手を貸す澱みのような新聞記者や NHK など落伍メディアに向けられる冷淡な視線は、この先和らぐことはあり得ず強まっていくばかりでしょう。落命した安倍元首相がこの国に遺していったのはこうゆうものだったのです。

  • 国民の大多数が、韓国に譲歩しても解決しない意味がないと思っても 賢い官僚が馬鹿な国民の意思をきくよりも 自分達の思い通りに進める方が国益に適うと動くかも知れません。

    何故なら、どんなに国民の意思を無視しても、排除されるのは国会議員。
    官僚は痛くも痒くもありません。

    コロナで経済が苦しいのに消費増税するような官僚です。
    消費増税が国民の意思かどうかは自明の理。
    しかもキシダ総理は官僚の話を聞きやすい様にみえます。

    ここから予想されるのは
    国民の意思とは無関係に
    外務省が勝手に
    韓国に譲歩する
    未来が予想されます。

    かつて李明博大統領が竹島に上陸し天皇陛下に悪態をついたとき、当時の野田総理が官僚に騙されたと悔し涙を流したとききます。
    しかし、どんなにマトモそうにみえても韓国人は韓国人なのに外務省に言いくるめられ援助したのは馬鹿だと言われても仕方ないこと。
    あの時きちんと崖に落としていれば。

    つまり、何が言いたいかといえば 官僚は国民の意思とは無関係に暴走する。
    ので政治家がしっかりしないと 韓国に譲歩します。

    こんなことなら、李罪メイが大統領になってたら こんなに悩まくてすむのに。

  • ヤフーニュースのコメントは、広く読まれているだけに
    「便所の落書き」
    レベルの自己満足で溜飲を下げるレベルの書き込みが多いのですが、日韓関係についてだけは
    「超まともなマジレス」
    が多数寄せられている傾向があります。

    マーケットリサーチ的には、すごいですよね。

    よほど深く失望や激怒が、日本国民に蔓延してるのだと推察されます。

    今の野党は有権者のニーズ把握能力(なにをしたら得票につながるのか?のマーケットリサーチ)が絶望的に無能ですが、勿体ないですよね。

    韓国問題を、密室にせずきっちりケリつける!
    と公約するだけで自民党&外務省の弱腰にウンザリしてる層の票をゴッソリ獲得できるのに。

    銭ジャブならぬ票ジャブですよ。

  • 外務省にとっては、日本人の名誉を毀損し日本企業と日本国民に実害が生じたところで、相手国の外交当局から責められることはなく自分たちの省益は守られるので、いくらでも譲歩して構わないのではないでしょうか。
    「他人が踏まれている足の痛みは3年でも我慢できる」

  • 韓国徴用工は、民族的にできなかったと思う。
    なぜなら、GMや現代を見ればわかるが、そんなことしたら、暴動が起きて
    中国と戦争どころではなかったと思う。
    逆に聞きたいのだが、慰安婦が、助けを求めていた時、あなたたちは、
    何をしていたんですか。
    韓国徴用工が事実なら、GMや現代等から、どうやってやったんだ?
    教えてくれと依頼が来るんじゃない。

  • 日本が優しいうちは向こうも「日本は譲歩してくれるだろう」と期待して、韓国政府側や原告側も「謝罪」「賠償」を言い続けます。
    こっちが確固たる意志をもって「謝罪」「賠償」をしないつもりであっても。
    いくら丁寧に無視をしても、それが威圧感や脅迫されているという感じがない限り、日本政府は韓国メディア等に舐めた対応を取られ続けるでしょうね。
    中国のような露骨に脅す外交ができない(したくもない)日本は、国際法違反に対して淡々と正当で実行力のある制裁を加えていくしかありません。制裁を加えない時点で「優しさ」をみせ、余計向こうはつけあがり国際法違反を見逃してもらう方向に努力しますからね。

    • 制裁は徹底的でなければいけません。中途半端であぅたり、小出しの制裁では国際的に見ればただのやり合いと見られ、喧嘩両成敗となります。
      もう日本には逆らえないと思わせるくらい、完全に押し込んでしまうようなものでないと逆効果です。
      隣国には丁寧な無視は不要です。ただの無視で十分。なにも丁寧にする必要はないと思うのですが。

      • 韓国が「日本は加害の歴史を反省している」と認識するのは「謝罪と賠償をし続けている限り」であって、終えれば「日本は加害の歴史を反省していない」って認識します。

        なので、日本が韓国を殴り続け、蹴り続けている間「だけ」は韓国は日本の言う事に従いますが、辞めるとまた謝罪や賠償を言い出す事が予測されます。

        韓国を殴り続け、蹴り続けて従わせる事に支障が無いのは中国やロシア、北朝鮮くらいじゃないですかね?

        日本にしろ米国にしろ、続けると国内の無知な連中などから辞めろって声が挙がるでしょうから。

  • 韓国が大法院判決を破棄しないかぎり
    普通に考えて3の日韓関係破綻しかないだろう
    韓国がそれを望んでいるのだから

    • >日韓関係破綻しかないだろう
      全くその通りですね。
      簡潔明瞭で良いとおもいます。

  • 中央日報には甚だ日本に対して失礼で、日本の尊厳を無視する記事を書いてます。この部分→
    「実質的な訴訟当事者は1000人程度にとどまり、このうち勝訴する可能性は200人ほどだ。金銭的には200億ウォンほどあればこの問題が解決するという認識が日本で広がっている」。

    何の寝言でしょう?勝手に取らぬ狸の皮算用をしても、我々としては呆気にとられ、噴飯物の記事です。何故日本企業が賠償金を払うのか?まともな新聞とは到底思えない。

    繰り返して言いますが、韓国に譲歩するのは絶対に許されません。これをやるとまた、元の木阿弥です。韓国は「してやったり!」と更にツケ上がるでしょう。キリが無いんですよ、韓国のお代わり、タカリは。外務省や日韓議連、韓国側訴訟団、韓国議員らは、いわば日本から搾り取ることしか頭に無い。0対100です。

    またコメントにもある通り、戦犯企業なるものは存在しない!戦犯なんていつ、誰が認定した?国家に協力した事を非難するのか?また強制労働も無かった。徴用自体は日本人と当時同じである朝鮮人にも与えられた仕事だ。金も支払っている証拠はある。ピンハネする朝鮮人とは違う。この問題は「盛り上がっている」わけでは無いが、徹底的に無視することです。

  •  この国民大学の李元徳日本学科教授の議論は、お話にならない程度の低レベルで、論評に値しません。
     主張が対立する場合に、原理原則とか関係なく、お互いに妥協できる(足して2で割る)着地点を探そうというものです。過去はともかく、現在ではもはや相手にされません。
     日本政府は、従来の交渉で、本件は日韓請求権協定で解決済みとの立場を、一歩も崩していません。そのうえで、前政権と異なり解決に汗を掻こうとしているユンソンニョル政権に、原則を外さない範囲で、一方的かつ恩恵的に、何とか協力してあげようとしてるだけです。いわゆる”呼応措置”について韓国と交渉するつもりもないでしょう。
     従って、被告とされる企業が、財団に寄付することは、ありえません。
     米国の意向は、日本も気にはしていますが、米国は慰安婦合意が実質破棄された経緯もあり、中途半端な介入はしてこないと、思われます。
     過去の植民地支配に対する謝罪は、慰安婦合意の際で終わりです。過去の談話の確認も、今回で最後になるでしょう。
     米国と日本が主導するインド太平洋戦略の枠組みでみると、韓国の位置づけはさほど高くはない。ここだけは筆者の認識は正しいと思われます。
     こういうレベルの方がまだまだ韓国には多いと思われますので、本問題の早急な解決は、長期的な日韓関係には、かえって良くないのでは、と考えてしまいます。

    • 文書は脳内で願望に基づいて組み立てられた理屈ですよね。この程度で大学教授になれてしまうのもすごいですが、なんだか客観的な事実を見ることができない典型的な韓国知識人という感じます。

      • ムッシュ林さま
        ご返信ありがとうございます。
        彼ら韓国知識人のレベルもありますが、まだまだ韓国マスコミには「日本が深く関わる問題で、日本に有利あるいは韓国に不利な意見を言ってはならない」という不文律があります。これが除去されないうちに、慰安婦合意の破棄案件もそうですが、本件のような国際法違反、条約無視案件を、解決してしまってはいけないのではないかな、と考える次第です。

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