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無責任な岸田首相「防衛費は国民が責任もって負担を」

やることをやらずに増税というのもおかしな話ですが、岸田首相はあくまでも増税を押し切るつもりなのでしょうか。岸田首相は昨日、「責任ある財源が必要」として、増税に理解を求めたそうです。安易な増税に逃げている時点で、ご自身が「責任ある態度」を取っているとは言い難いなかで、なかなかに戸惑う発言です。その一方で、高市早苗氏は昨日、「総理の真意がわからない」などとする自身の発言を巡って「罷免されるなら仕方がない」との見解を示したそうです。

財務省のロジックの誤り:税収弾性値は1.1ではない!

防衛費増額のための財源を1兆円分の増税で賄うという、岸田文雄首相による衝撃的な発言が出て来てから、世間、あるいは自民党内の反発が続いています。

財務省のロジックの誤りについてはいくつもあるのですが、その最たるものは、「経済が成長すれば税率を変えなくても税収が増える」という経済学の鉄則に正面から反していることでしょう。

経済学の基本中の基本ですが、そもそも自然に成長を続けている経済においては、財源というものは無理に増税をしなくても、経済成長による税収の自然増によって賄うことができます。『税収3兆円増えているのに「1兆円の増税が必要」の怪』でも指摘したとおり、今年は税収が過去最高を更新しています。

増税原理主義・財務省の手先としての正体を隠そうともしなくなったのか――。読売の報道によれば、岸田首相は2027年時点で年間1兆円程度の税収増を目指す方針だとしていますが、本末転倒した議論と言わざるを得ません。すでに今年だけで3兆円も税収が上振れているのです。むしろ現在の日本の場合、税金は「足りない」のではなく「取り過ぎている」のです。「年1兆円分を増税で」=読売報道まともに経済学を学べばわかるはずのことを、なぜか理解していない人物が、日本の首相を務めているというのは不幸です。読売新聞オンラインに掲...
税収3兆円増えているのに「1兆円の増税が必要」の怪 - 新宿会計士の政治経済評論

このあたり、財務省が「税収弾性値」、つまり「名目GDPが増えたときに税収がどの程度増えるか」という値を1.1に置いていることは有名ですが、現実のデータから見る限り、この1.1という税収弾性値自体が誤っている可能性が極めて濃厚です。

財務省の目的は税「率」の最大化

このように考えていくと、そもそもの財務省のロジックの間違いは、税「収」と税「率」を意図的に混同していることにあります。

当ウェブサイトで以前から提示してきたとおり、著者自身は財務省の目的が「日本のGDPの最大化」でもなく、ましてや「税収の最大化」でもなく、「税の最大化」「新税の創設」にあると考えています。このように考えないと、財務省の行動が合理的に説明できないからです。

もちろん、現実には政治家との駆け引きにより、「消費税等の税率を引き上げる代わりに所得税や法人税の最高税率を引き下げる」などの交渉は行われているのですが、それでも多岐にわたる税法が定められ、日本はまさに「税金地獄」になりつつあるのです。

東日本大震災直後に創設された「復興税」などもその典型例です。

病人を治すためには、まずは働かずに療養させるのと同様、本来、震災からの復興は、傷ついた経済の回復を最優先させるべく、事情が許す限りは国債発行によるべきなのです。それをなぜ、増税という形で傷ついた日本経済に負担させるのでしょうか。

財務省の役人は、国民から直接選挙で選ばれたわけでもないくせに、国家財政の入口(国税庁、国税調査権)や出口(主計局、予算配分権)を一手に握り、それによって私たち国民が選んだはずの国会議員をも上回る政治的権力を手にしてしまっています。

「自由・民主主義から逸脱したプロセスにより、不当に大きな政治権力・社会的影響力を握り、その力を悪用して国益を破壊している勢力」を「国民の敵」と呼ぶとすれば、財務省などはその「国民の敵」の総本山のようなものでしょう。

国債デフォルトの3要件を日本はひとつも充足していない!

財務省のロジックのおかしさは、それだけではありません。

そもそも国家財政は個人と異なり永続するものですし、企業と異なり国家には徴税権があります。国債が自国通貨建てであり、国内に国債引受余力があり、その国の通貨が国際的に通用するハード・カレンシーである限り、国債引受には3つのバックストップが存在します。「国内投資家」「海外投資家」「中央銀行」です。

言い換えれば、ある国の国債がデフォルト状態に追い込まれるためには、①国内投資家、②海外投資家がいずれも自国の国債を買ってくれず、これに加えて③中央銀行も国債を引き受けてくれない、という状況が生じることが必要です。これが「国債デフォルトの3要件」です。

国債デフォルトの3要件
  • ①国内投資家が国債を引き受けてくれないこと
  • ②海外投資家が国債を引き受けてくれないこと
  • ③中央銀行が国債を引き受けてくれないこと

(【出所】著者作成)

残念ながら、現在の日本では、この①の部分の条件が満たされていませんし、おそらく5年や10年の間に満たされる可能性もありません。国内で資金が余りまくっていて、銀行セクターや保険・年金セクターなどの機関投資家に資金がダブつきにダブついているからです。

また、日本円自体が国際的に通用するハード・カレンシーであることから、日本国債も利回り次第では海外投資家に買ってもらえますし、極端な話、財政法第5条の国会決議を経れば、日本国債を日銀に直接引き受けさせることだって可能です。

それに、どう頑張っても現在の日本の財政は危機的な状況とは言えません。現在の国債の利回りは10年債で0.28%、20年債でやっと1%を少し超えて1.103%、最も長い40年債ですら1.564%に過ぎないからです(※コンスタント・マチュリティ・ベース、12月12日時点)。

もし日本が財政危機ならば、国債利回りが一時のギリシャ並みに10年債で7%だの、8%だのといった水準に達しているのが自然ですが、残念ながら国債利回りは10年ゾーンで2012年4月5日に1%を割り込んで以降、一度も1%を超えていないのです。

この状況でどうやって日本が財政危機だというのでしょうか?

繰り返す!増税は「やるべきこと」をやってから!

なお、百歩、いや一万歩くらい譲って、「日本国債はたしかにたくさんあるから、少しは『借金』を減らさなきゃならない」という議論をするのであれば、増税の前にやることはいくらでもあります。その最たるものが、資産の圧縮でしょう(『生活保護に学ぶ財政再建:「増税する前に資産を売れ」』等参照)。

「資産を売りなさい」、「能力を活用しなさい」、「あらゆるものを活用しなさい」。これは、私たち国民が生活保護を求めようとしたときに、政府が国民に要求する内容です。このこと自体は仕方がないのかもしれませんが、逆もまた真です。もし政府が財源不足に陥りそうになるのなら、増税よりも前に「資産を売りなさい」、「能力を活用しなさい」、「あらゆるものを活用しなさい」と要求する権利が、私たち国民の側には存在するのです。「生活保護の前に資産を売れ」生存権と生活保護日本国憲法第25条第1項によると、すべての日本国民...
生活保護に学ぶ財政再建:「増税する前に資産を売れ」 - 新宿会計士の政治経済評論

巨額の外為特会、巨額の財政融資資金、さらには無駄に巨額の資産を抱え込んでいるNHKなどの組織に埋もれている埋蔵金を無視し、いきなり1兆円の増税などと言われても、なかなかにリアクションに困ります。

初歩的なマクロ経済学や会計学を少しでもかじったことがあれば、増税の前にやるべきことがいくらでもあることくらいわかりそうなものでしょう。

なお、ごく一部には「増税の前にやるべきことがある」という命題を、なにやら「現実には難しい」などとする意味不明な理由で否定しようとする主張もあるようです(もしかして、当ウェブサイトには外務省に続き財務省の工作員も湧くようになったのでしょうか?こんな弱小サイトにご苦労様なことです)。

「責任ある財源を考えるべき」とする岸田首相の無責任な発言

もっとも、『高市氏ら党内・閣内関係者からも岸田首相に相次ぐ批判』などでも紹介しましたが、みたところ、岸田首相に対してはツイッターなどで保守性向の政治思想を持つ一般人に加え、自民党の党内でも総スカンを喰らっているようです。

岸田首相、「コンセンサスを取りながら進める」という最低限のことすらできていない可能性も「1兆円増税」が岸田首相にとってケチのつき始めとなるのでしょうか?閣僚職にありながらもなかば公然と岸田首相批判を展開している高市早苗氏は12日、インタビューに応じ、こうした批判については「一定の覚悟を持ってやっている」と述べたそうです。この「一定の覚悟」が何を意味するかは定かではありませんが、少なくとも自民党の党内で、あるいは閣内で、岸田首相の仕事のやり方に対する不満が溜まっている可能性は、それなりにありそう...
高市氏ら党内・閣内関係者からも岸田首相に相次ぐ批判 - 新宿会計士の政治経済評論

こうした党内や世論の反発におそれをなしたのでしょうか、岸田首相は昨日、なかなか驚く発言をしたようです。

岸田首相、防衛費増額「責任ある財源考えるべき」

―――2022年12月13日 12:26付 日本経済新聞電子版より

日経電子版の報道によると、岸田首相は13日の自民党役員会で、防衛費の増額を巡り「責任ある財源を考えるべき」としたうえで、「いまを生きる国民が自らの責任としてしっかり重みを背負って対応すべきもの」、などと述べたのだそうです。

そのうえで岸田首相は、「自らの暮らしを守り、国を守るという国民一人ひとりの主体的な意識こそが何より大切なのはウクライナの粘り強さが示している」、などとも述べたのだとか。

このあたり、「国民が自らの責任として」云々の言い草は、「増税の前にやるべきことがある」という批判に耐えかねて出てきた苦し紛れの言い訳にしか見えません。「増税の前にやるべきことをやったのか」、という疑問点に対する答えになっていないからです。

その意味で、岸田首相のこの発言自体、無責任の極みでしょう。

これに加えて岸田首相自身が根本から誤解なさっているようですが、防衛予算の大幅な積み増しは、安保環境が厳しさを増すなかで、国の安全をしっかりと守るうえで必要な措置であり、その恩恵は現在だけでなく未来の国民にも及びます。

受益者が未来の国民なのであれば、なおさら増税によるのではなく、国債により将来世代にも負担を求めるのが適切ではないでしょうか。

高市氏は「罷免されるなら仕方ない」

こうしたなかで、自身のツイッターで「総理の真意がわかりません」などとする意見を投稿した高市早苗・内閣府特命大臣は13日、閣議後の会見で「罷免されるなら仕方がない」と述べたそうです。

高市安保相「罷免されるなら仕方ない」、防衛財源巡る発言で

―――2022/12/13 15:56付 Yahoo!ニュースより【ロイター配信】

高市氏といえば、12日に記者団に対し「一定の覚悟を持って申し上げている」とも発言した人物ですが、その「一定の覚悟」が改めて示された格好だともいえます。

ロイターによれば、高市氏は12日夜の閣僚懇談会で岸田首相と約10分間会話し、防衛力の抜本的な強化や将来的な安定財源の必要性などでは一致したとしつつ、「財源検討の指示のタイミング」を巡っては、岸田首相との相違が埋まらなかったと明らかにしたのだそうです。

もしそうであるならば、やはり閣内で岸田首相が閣僚に「増税方針」を伝達しているわけではなさそうですし、今回の増税方針も、どうも自身に近い関係者(宮沢洋一・自民税調会長、あるいは木原誠二・内閣官房副長官あたりでしょうか?)らとの密室の会議で決めたという疑いは濃厚でしょう。

くどいようですが、岸田首相は宏池会という党内で第5番目の弱小派閥です。党内コンセンサスを無視して物事を進めるだけの余裕が、岸田首相にあるとも考えられません(あるいは、財務省が「岸田政権はもう持たない」と見切り、増税方針だけねじ込んできた、というシナリオも成り立たないわけではありませんが…)。

もちろん、岸田首相が本当に高市氏を罷免するのかどうかはわかりません。

しかし、ここで高市氏が「罷免」というかたちで内閣を去ることになれば、結果的にはそれは高市氏自身にとって悪い話ではないのかもしれません。「筋を通さない岸田首相に対し、自説を曲げなかったがために罷免された」という体裁ができるからです。

このあたり、個人的には「高市早苗総理」が誕生する可能性がさほど高いと見ているわけではありませんが、年末に降ってわいた「増税論」への対処次第では、思わぬ政治家が浮上する可能性があるかもしれない、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (31)

  • 「欲しがりません、勝つまでは」「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」的なスローガンまでもうすぐですかね?

    古代ローマの歴史を知れば、戦時国債を国会議員達が私費を投げ打って買い求めるなんてのもある訳ですが。

    対中武力戦争が本格的に近づいて来ているのでしょうけど、茂木幹事長の発言なども考えると、独裁者キシダまでもうちょっとな感じですね。

  • 僕は比較的に岸田を鷹揚に評価してるつもりなのですが(バカと岸田は使いよう等)、この件は理解も擁護もしにくいなぁ。

    手段は明示されてるけど、達成目標が不明確。
    「俺たちはこれからどこへ向かうのか?」
    ゴールを示して民意を問うてから、ですよね。

    不本意なんだけどとりあえず米国がうるさいから防衛費を増額するけど、番頭が怖いからリストラやダイエットせず安易に増税で乗り切ろうとしてる感じかしら。

    調整型の人は、平時にはよいけど有事に二律背反を捌くのは無理なのかもしれんですな。

    • 機械製品造りだと相反する諸要素をコンセプトに沿ってどれだけ高い妥協点にまとめあげるかが製品完成度に反映さ…
      あーキッシーはそもそもコンセプトが…

  • コロナでいろいろばらまいたので,それが終わる頃,税金や社会保険料が増加することは最初から予想していましたが,防衛費増税は想定外でした。中国の現状を見たら必用かもしれませんが,憲法改正をしない限り,装備を調えても有効に使うことはできません。そっちのほうを急いでほしいです。
    2022年の世界幸福度ランキングで日本は146国中54位だったそうです。上位には税金や社会保障等の控除率が高い北欧諸国が並んでいます。台湾は27位,中国は72位,韓国は59位でした。
    このランキングは,基本的には国民へのアンケート調査によるようです。ランキングの結果は,外から見た客観性より,国民の感情に大きく左右されるように見えます。簡単に言うと,日本人は幸福感という肯定的評価を表明しにくく,心配や怒りや悲しみという否定的感情のほうを強く持つ民族のようです。「空気を読め」という相互監視社会で,上意下達的部分も多いので,ストレスがたまりやすいのかもしれません。国を頼るくせに国への信頼感は低くで不満が多い,とか,外交的にはニコニコしているのに,内心は不満だらけ,というように,ストレスを発散せずに体内にため込んでいるのでしょう。中国は日本より暮らしにくそうなので,中国共産党の統治下にはなりたくないです。でも,そういう心配をしている日本人が少なそうなのは,幸福度ランキングと同様に謎です。

    • 幸福感について、日本人がというか東アジア人に共通していることなのですが、セロトニントランスポーターがSS型という不安を抱えやすい遺伝子型をしているのですよ。
      セロトニントランスポーターとはなんじゃ?というと、セロトニンは脳内で不安を抑制する働きをしているんですね。セロトニンはリサイクルされるのですが、それに関わってくるのがセロトニントランスポーター。
      東アジア人はセロトニントランスポーターの遺伝子型が短く、セロトニントランスポーターの量が少ないことによってセロトニン不足で不安を感じやすいのですよ。
      日本人が幸福感を感じにくいのは、これが一因なのではないか、という説が有ります。
      尤も、だからといって岸田さんに問題が無いかといったら、それは別問題ですが。
      以上、記事の内容とは一切関係の無い雑学でした。

  • 自民党同士であえて雑に争いを発生させることで批判という立憲の十八番を奪って増税派も国防派も取り込もうという雑な芝居としてみるとある程度整合性は取れそうだが、素人からすると岸田さんあまりに強引過ぎるように見える。

  • 税収増は、採取ではなく ”栽培” にて成していただきたく存じます。
    安易な法人税の負担増で、経済の生態系を乱さないで欲しいですね。

    *新たな設備投資・雇用の芽を摘まないでください。

  • 税率と税収どちらが大事か?
    普通に考えたら税収ですよね。
    しかし、財務省は税率が大事だというバカ集団だというのが日本の不幸か。

    どれだけ所得税をあげても所得を隠されたら意味はありません。所得が減ったら税収も減ります。
    おそらく、財務省にとって税収はさほど重要ではなく税率絶対主義なのでしょう。

    今は幕末と世界情勢が似ています。
    クロフネ(ロウ戦争)が来て、幕府(財務省)のやり方では国が滅ぶと外様大名(積極財政派)が政府と戦ってます。
    大政奉還が起きるかどうか。
    政権交代が起きなければ国が滅びます。
    自民から立憲ではなく、国のトップは常に財務省です。もちろん民主党時代でもそう。国の運営を議会に戻さねばなりません。

  •  「増税はやるべきことをやってから」というご指摘には、全面的に賛成します。まずは①不要な支出の見直し(補助金やら租税特別措置など、ゼロベースで再検討)②売却可能資産の処分、でしょう。防衛費をGNPの2%まで増額することに、国民の多数による同意があって、それでも上記の対応で賄えないなら、初めて増税の検討に入るべきです。復興税の転用など小手先の対応はもっての他です。
     そのうえで、「国債は資産であって借金ではない」などと、国債を防衛費の恒久的財源とする考えには、明確に反対します。ある仮説につき、極端なケースを想定して物事を考えることが、その欠点やリスクを炙りだすには、よく使われる手法です。本当に「国債が資産であって借金でない」のであれば、所得税も法人税も消費税も廃止して、国債だけで、国の支出全てを賄う国家を想定してみれば、判ります。そんな国家が永続できますか?ありえないと私は思います。
     しかしながら、防衛費の増強は喫緊であり、①支出の見直し②資産売却③増税検討には、それなりの時間を要する(1年か?)ことから、その間を国債発行で繋ぐというのであれば、それは許容範囲と考えます。
     今回の岸田首相のやり方は、あまりにも拙劣だと、考えます。

    • そうですよねぇ、普通、手持ちのお金の中で消費項目に優先度を付け、この高い優先度を入れると何を落とすかを議論すれば良いだけと思いますがねぇ。既得権のように低優先度項目が削れないといようでは、政府は機能していないとしか言いようがないですね。

      どこの亭主も小遣いの使い道は、自分で考えて決めているとおもいますけど。

    • taku様

      おっしゃる通り、国債だけで国の支出全てを賄うのは不可能です。防衛費の恒久財源にはなり得ません。
      ただ、今は増税を打ち出すにはあまりにもタイミングが悪いです。

      バブル崩壊後の日本経済は、信用収縮により流通するマネーが極端に枯渇してしまいました。通常であれば金利を引き下げれば回復するのですが、ゼロ金利でも借り手がなくマネーの流通量は回復しません。そのような状態を何十年も続けた結果、マネーの枯渇が常態化してしまいました。
      ゼロ金利でもマネーの流通量が増えない場合、大量の紙幣を発行して流通させる必要があるのですが、日銀にはこの紙幣を配る手段がありませんので、国債購入という形をとります。
      政府の国債発行による財政出動と日銀の国債買入れという組み合わせによって、流通するマネーを増やして経済を回復させるのが日銀の金融緩和です。

      日本の物価指数は11月のコアコアCPIが2.5%と、少しずつデフレ脱却の希望が見えてきました。増税は流通するマネーを回収する手段ですので、今このタイミングでやってしまうと、またデフレへと逆戻りしてしまいます。
      増税などが可能になるのは、物価目標と経済回復を達成して日銀が量的緩和策を終了させてからだと考えます。

      ご指摘のように国債は資産ではありません。しかし、負債というのも正しくないように思います。
      大量の国債発行が問題になるのは、ハイパーインフレなどの大幅な物価上昇をまねく場合です。適切な量のマネーを流通させ、物価を安定させる国債の発行量が適切であって、多すぎても少なすぎても害があります。

      長文、失礼いたしました。

      • ふんだんさま
         ご返信ありがとうございます。
         私も現段階での増税は反対ですが、理由は異なります。
         財政政策の活用による景気対策は、一時的には可能(ルーズベルトのニューディール政策や、評価は分かれるかもしれませんがアベノミクスによる日本経済の長期低迷からの脱却)だとしても、永続しないと考えるからです。
         財政赤字を通貨発行によって賄い続ければインフレを引き起こすという考えは、自明のこととして永年受け入れられてきました。新しい経済学説がそれに挑戦するのは悪いことではありませんが、日本がその実験台になるのですか(エルサルバドルがビットコインを法定通貨としたように)。私は日本という国にそんなリスクを取って貰いたくない。かなりの確率で、物価高と通貨安を招き、日本国民に大打撃を与えると危惧するからです。
         景気回復を図るには、そのような安易な手段に頼らず、①移民も含めた人口増・少子化への対策②成長する産業・分野への積極的投資③高齢者に偏った支出の見直しなど、本質的なことにもっと目を向けるべき、と考えます。
         個人的な利害を申し上げれば、私はあと30年も50年も生きるとは思っていませんので、
        財政赤字による景気浮揚はありがたい限りです。政治家が相当な無駄遣いをしていただいても、痛くも痒くもありません。
         

  • 首相はこれから益々ちぐはぐなことを言うようになると予測します。中身空っぽで総理大臣をやっていることが誰の目にも明らかなる。そもそも自分が何をいっているか理解できてない。「こう言えばいいんですよ」などと振付師(=ごく少数の周囲)から入れ知恵をしてもらいながらやってる。強行突破しかないと考えているから、いよいよビビりの本性が露わになるのです。

    • 「私が決断いたしました」っていちいち注釈しないと、誰も岸田氏が決断したとは思わない。尤も、言っても心ある人はそう思いませんが。
      「国民の責任で~」なんて台本は、いかにも財務省辺りが言いそうなフレーズです。もう少しふわっと書かないと黒子の場所が分かってしまいます。
      台本通り喋る事しか出来ない(それも噛み噛みです)のだから、財務省ももっと気を付けて書いてやって頂きたい。
      と思う今日この頃です。

  • あーキッシー起きとんけ?
    モトよりワレワレ日本国民はテメーらの議員報酬から財務官僚の賃金はじめスベテニ責任を負って納税しとるんですが?
    ナントナレバ金融機関通じて直接間接に国債にも投資しとるんですが?

  • 昨年岸田氏が首相になった当初に、こちらのウェブや読者コメントで辛口批評が付く度に「岸田氏は何も出来ないから安心して」という岸田擁護論が幾度となく見られましたが、今は見られません(或いはWeb主様が片っ端から消してしまった?)
    何も出来ない岸田氏が、下手をすれば内閣が倒れるリスクがある増税を根回しなくぶち上げるとは、辻褄が合いません。いかに岸田擁護論がその場しのぎの気休めだったかを表しています。
    岸田擁護派は何か援護射撃はないのでしょうか。普段はもっともらしい理屈を展開するのに。

    • 「岸田は何も出来ない」は”擁護”ではなく”低評価”なのでは……?

      それはともかくとして、私は岸田擁護派ではありませんが、「岸田首相が何か
      思い切った事を出来るか?」と懐疑的には見ていますね。
      他者に「だから安心しろ」とまでは言いませんが。

      ただし、最近の「増税!増税!増税!」は不思議ではあります。
      私が思いつく路線は「辞任の為のプロレス」くらいですが、これも確証が
      ある訳ではありませんからね。依然として、様子見継続です。

      • 岸田氏が絶対増税マンになったのは財務省系のブレーンからこんなことを囁かれたんじゃなかろうかと想像してみた。

        「総理、財源の裏付けが無いまま大きな支出をすると、市場からノーを突きつけられてイギリスのトラス前政権みたいなことになりますよ。宿願の広島サミット出られませんよ。」

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