テレビ朝日の番組でコメンテーターが安倍総理の国葬儀における菅総理の弔事に「電通が関与している」とする趣旨の発言を行い、翌日謝罪した、という一件がありました。これに関して当日の映像や関連する報道などを見てみると、さらに理解に苦しみます。結局のところ、テレビ業界はこれまで情報発信を独占するという特権的地位にあったがために、彼らの行動は一般社会通念から大きくかけ離れてしまっているのかもしれません。
「ごめんなさい」で済む問題ではない
9月27日に行われた故・安倍晋三総理大臣の国葬儀における菅義偉総理の弔事を巡り、テレビ朝日の番組で同社職員でもある玉川徹氏が「(広告代理店である)電通が関与する演出」であるなどとする趣旨の発言を行いました(『テレ朝、安倍総理国葬儀で菅総理弔事を演出と決めつけ』参照)。
当ウェブサイトとしては、27日に行われた安倍総理の国葬儀を巡り、献花台を訪れた一般弔問客数は、やはり3万人超であると判断します。その理由は、自民党本部にも急遽、献花台が設けられていたからです。これについて本稿ではちゃんと検算したうえで、その仮説の現実性を検討します。また、多くの人から称賛の声が上がっていた菅義偉総理の弔事を巡っては、テレビ朝日が盛大に「やらかした」ようです。弔問客数の再検算一般献花の政府発表人数が少なすぎる?最初に、ちょっとした検算です。結論からいえば、やはり安倍総理の国葬儀の... テレ朝、安倍総理国葬儀で菅総理弔事を演出と決めつけ - 新宿会計士の政治経済評論 |
そして、『テレ朝で番組出演者が「電通関与は事実でない」と謝罪』でも取り上げたとおり、この発言を巡っては、玉川氏が翌日の番組内で謝罪を行ったのだそうです。
テレビ朝日の番組の出演者が、安倍総理の国葬儀における菅総理の弔事を「電通が関与した演出」だと決めつけるかのような放送を行った問題で、出演者が「関係者の皆さま、それから視聴者の皆さま、訂正して謝罪致します」「申し訳ありませんでした」と謝罪したそうですが、これはちょっと謝罪して済む話ではありません。しかも、菅総理や安倍総理に謝罪した形跡はありませんし、前日の放送で述べた「テレビでは演出は当然」とする趣旨の発言についての説明もなかったようです。菅総理の弔事は「電通の演出」今朝の『テレ朝、安倍総理国... テレ朝で番組出演者が「電通関与は事実でない」と謝罪 - 新宿会計士の政治経済評論 |
この一件については、そもそも「ごめんなさい」で済む問題ではありません。
玉川氏自身の当初の発言には、「演出側の人間として」、「感動的に見えるように作るのは当たり前」とする趣旨の内容が含まれているのですが、これ自体、テレビ局が「演出」を通じ、事実を捻じ曲げて報道することがあることを認めたかのような内容です。
また、玉川氏の謝罪も弔辞を読んだ菅総理自身には向けられておらず、あくまでも視聴者や「関係者」に対して向けられたものだったようです。社会通念上、こうした「謝罪」が「謝罪」として受け入れられるかどうかについては、また別問題でしょう。
着座のままで謝罪、番組降板もせず
こうしたなか、関連する報道ないし情報がいくつか出てきています。
ツイッター上ではどなたかが投稿した番組冒頭のシーンが流れているのですが、これがまた理解に苦しむ代物です。
司会者から「昨日のパネルコーナーで玉川さんが発言したことについて、玉川さんから」と促され、玉川氏が着座のままで発言する、という流れです。
このあたり、企業で長年勤めている人であれば真っ先に抱く疑問があるとしたら、その代表例は、「何らかの不祥事があった場合はその不祥事を発生させた本人を業務から外し、上司が本人に代わって謝罪するのが筋ではないか」、といったものではないかと思います。
つまり、社会通念上であれば、番組の冒頭で司会者(やテレビ朝日の役員など)が並んで立ち、「玉川の発言は事実ではありませんでした」、「玉川が不適切な発言をいたしましたので、番組を降板させました」などと謝罪するのが一般的ではないでしょうか(もちろん謝罪は菅総理に対しても向けられるべきでしょう)。
本件は本来、謝罪で済む問題ではありません。明確なウソを伝えたのですから、最低でもこの点について真相究明を行うべきですし、再発防止策を策定して公表すべきであり、それができるまでの期間、テレビ朝日は自主停波するのが筋でしょう。
ふだん、テレビ局や新聞社は、一般企業で不祥事が発生した場合、社長などの謝罪会見を開かせ、ときとして失言を大々的に報じたりします(たとえば2000年7月4日の記者会見で、当時の雪印乳業の社長が「私は寝てないんだ」と発言したことを、新聞やテレビが大批判したのはその典型例でしょう)。
社長会見も実施せず「勘違い」で済ませる
では、テレビ朝日は社長会見を実施したのでしょうか。
これについて調べたところ、現時点ではテレビ朝日としてのコメントを報じたのは、朝日新聞系の『日刊スポーツ』だけでした。
テレビ朝日「玉川本人が勘違いをしておりました」玉川徹氏「電通が入っている」発言訂正し謝罪
―――2022/09/29 15:39付 Yahoo!ニュースより【日刊スポーツ配信】
リンク先記事によると、単純に、こうあります。
「テレビ朝日は日刊スポーツの取材に『玉川本人が勘違いをしておりました』とコメントした」。
「勘違い」で済ませようというのも凄い話です(しかも公式発表ベースではなく、事実上の系列新聞社の取材に対して、です)。
ちなみにウェブ評論サイト『デイリー新潮』の9月30日付の記事によると、テレビ朝日側は次のようにも回答しているのだそうです。
「電通が安倍元総理の国葬に関わっているというスタジオ内での発言が事実誤認であったため訂正と謝罪を行いました。この件で、抗議などはありません。今後はより一層、事実関係の確認を徹底してまいります」。
このコメント通りなら、テレビ朝日としてはこれで「幕引き」を図って逃亡するつもりなのでしょう。
このあたり、当ウェブサイトの読者コメント欄でもご指摘をいただいたとおり、本来、報道はテレビ局にとっては「主力製品」のひとつであり、「製造物責任」という観点からすれば、「ウソの報道」は「食品メーカーが毒物の入った食品を売りつけた」、「家電メーカーが欠陥家電を売りつけた」のとまったく同じです。
どうして「リコール」がなされないのか――。
一般人の常識からすれば、まことに理解に苦しみます。
統一教会ブーメランが突き刺さった日テレの問題点
ただ、今回のテレビ朝日の報道自体も、おそらくはテレビ業界全体における腐敗のほんの一角に過ぎません。
たとえば、テレビ局は自民党議員らに対し、舌鋒鋭く(旧)統一教会との関連性を追及しているわりに、自身の系列局の「看板番組」で(旧)統一教会と密接な関連が発覚したらダンマリを決め込んだ、というケースもわかりやすいでしょう(『統一教会問題で日テレ「個人的な思想・信条確認せず」』参照)。
日本テレビやその系列局に対し、強烈なブーメランが、何本も突き刺さっているようです。山際大志郎大臣が統一教会との関連を尋ねられ、「内心の自由として、どのような考えを持っているかの確認はしない」と答えたそうですが、その日テレ自身が(旧)「統一教会」との関連を巡って、「一般的に、参加される方の個人的な思想・信条について確認することはいたしません。以上」と述べたのです。山際大臣と旧統一教会との関連を批判的に報じる日テレ『日テレNEWS24』が配信した記事によると、山際大志郎・経済再生等担当大臣は(旧)「統... 統一教会問題で日テレ「個人的な思想・信条確認せず」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これは、山際大志郎・経済再生等担当大臣が(旧)「統一教会」との関連を聞かれ、「選挙を応援してくださっている方が、内心の自由として、『どのようなお考えをお持ちか確認をするか』と言われれば、確認はしない」と答えたことを、日本テレビや読売テレビなどは批判的に報じた、とするものです。
しかし、その日本テレビ自身が8月26日に公表した『弊社の番組に関わるプレスリリースについて』と題したPDFファイルによれば、『24時間テレビ』に(旧)「統一教会」の信者がボランティアとして関わっていた件を巡って、次のように釈明をしています。
「『24時間テレビ』では、番組の趣旨に賛同していただける方にボランティアとして参加していただいております。一般的に、参加される方の個人的な思想・信条について確認することはいたしません。以上」
…。
山際大臣が選挙スタッフの個人的な思想・信条を確認していなかったことを、日テレやその系列局が「不祥事」(?)として舌鋒鋭く追及していたくせに、自身にまったく同じ事案が発生したときは「個人的な思想・信条について確認しません。以上。」というのは、不誠実極まりない対応です。
いずれにせよ、テレビ局や新聞社はこれまで、自分たちが発信する情報を検証する人がいなかったことを奇貨として、やりたい放題、好きな内容を報じてきたのかもしれません。
ところが、『ネット「タテヨコの広がり」議論を深める読者コメント』などでも述べたとおり、インターネット時代になって、我々一般人でも簡単に「タテヨコ検証」ができるようになりました。
ネット時代における「タテヨコの広がり」という論点があります。これは、インターネットの普及で人々が多くのより情報源から情報を得ることができるようになったこと、同一メディアの過去の情報発信を追いかけることができるようになったこと、という2つの特徴を意味する当ウェブサイトの造語です。これを巡って本稿ではとある読者コメントを2つほど取り上げたうえで、その議論の広がりを確認してみたいと思います。ネット時代における「タテヨコの広がり」当ウェブサイトでこれまで取り上げてきた話題のなかには、「インターネット... ネット「タテヨコの広がり」議論を深める読者コメント - 新宿会計士の政治経済評論 |
現在、世の中で発生しているのは、いままで「権威がある」と思われてきた新聞、テレビなどのオールドメディアの報道には、じつはウソ、デタラメ、偏向があふれているという事実が人々に知れ渡り始め、こうしたオールドメディアの権威が急速に失墜している、という現象なのかもしれません。
このように考えていくと、オールドメディア側が「ファクトチェック」と称してネットの情報を「検証」し始めたのは、じつはこうした焦りの証拠ではないか、といった仮説も成り立つのでしょう。
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野菜を出荷するにあたり、どうしても虫が潜んでいたり(異物混入)傷みがあったり(規格外品)というのは完全には排除しきれません。こちらも誠心誠意努力するというのを前提に、流通から小売・消費者まである程度は容認していただいており、感謝したいところです。
マスメディアさんも、社会の木鐸だの市民を代表してだのファクトチェックだの偉そうな事を言うのやめて「いやぁウチもある程度は間違えるから。仕方ないんだ諦めてよ。」と公表したらどうでしょう。わかってくれる寛容な方なら契約を続けてくれるかもしれませんし、それなら価値無いから要らんわという狭量な方も契約せずに済みますし。後者の方が多くても知らんけど。ちなみに私は狭量です。
> 野菜を出荷するにあたり、どうしても虫が潜んでいたり(異物混入)傷みがあったり(規格外品)というのは完全には排除しきれません。こちらも誠心誠意努力するというのを前提に、流通から小売・消費者まである程度は容認していただいており、感謝したいところです。
ただし、野菜に限らず人間に危害を及ぼすような不良品が世の中に出回れば回収するはずです。
世の中に間違った情報を流し、謝罪だけすれば良いといううものではありません。
広がった情報を回収する努力は必要だと思います。
毎度、ばかばかしいお話しを。
テレビ局のオジサン社員:「昔は、テレビ局を疑う、新宿会計士などのサイトはなかった。だから、新宿会計士のサイトを見るような人はレベルが低い。テレビ局を批判しないのは既得権である。昔は良かった」。(まあ、これはテレビ局だけの話ではないでしょうかが)
これって、笑い話ですよね。
すみません。追加です。
(テレ朝だけではありませんが)テレ朝は、いよいよ不味くなれば、トカゲの尻尾切りを図るでしょう。それが、番組のADになるのか、番組の責任者になるのか、番組名を変えるだけになのか、番組そのものになるのかは分かりません。(玉川徹氏は、自分が切られる尻尾になる可能性は、考えていないでしょう)
これが政治家なら、まず辞任
民主党の偽メール事件みたいに自殺まであり得る
お話にならないダブスタ、甘々気質
NHKも国葬16億円を連呼してたらしいですが、16億じゃ国民一人当たり13円ほど
それに比べ、放漫経営、偏向報道したい放題のNHK受信料は、
国民から年間いくら強制徴収してるんだよと
若い年代ほどリテラシーが高く(朝日世論調査による安倍国葬儀の賛成は若い世代ほど高かった)
オールドメディア離れしてますから、
大手新聞はもちろん程なく消え、地上波も最後のあがきというか、
今現在もどんどん影響力を減じている途上なんでしょうね
テレ朝は、「テレビを見ていない若者が、どれだけ騒いでも関係ない」と思っているのではないでしょうか。
すみません。追加です。
「日本の国民である若者が、テレ朝が公共の電波を使うことに反対している」と日本政府が言い出したら。テレ朝は「テレ朝は、若者の役にたっている」と、やたらに連呼しだすでしょう。
(もっとも、「公共の電波は、高齢者のものだ」と言い出す可能性もありますが)
社会人になりたての頃先輩から「人間誰しも間違いや失敗はある。しかし評価が決まるのは失敗そのものではなく、失敗に対して逃げないで謝罪や後始末ををきちんとするかどうかでその人の真価が決まる」と教わりました。
その後社会人生活を送り、人も会社もまったくその通りであったと思います。
攻撃型原潜#$%&〇X さま
>失敗に対して逃げないで謝罪や後始末ををきちんとするかどうかでその人の真価が決まる
(テレ朝では)その謝罪や後始末は、上や仲間への謝罪や後始末なのでしょう。
まー、確かに。仲間内だけで済ませました、ってところなんでしょう。
昔、出張先のビジネスホテルで100円入れないと映らないテレビがあった。
あのころはカネ払ってでもテレビ見たかったのかな。
見たいテレビといっても娯楽番組でしょう。
TVが不要ではなくアジびらのような報道が不要なだけです。
公平中立な事実を発信するものは必要です。
>報道はテレビ局にとっては「主力製品」のひとつであり、
・・・・テレビ局が売ってるのはコマーシャルの枠だから、報道自体は「商品」じゃなくて、製品を作るための区切り用の空き時間を埋めるものって、くらいの認識なんじゃないかな?
七味 さん
するどい指摘ですね。
お客さんとはお金を払ってくれる人なんだから、テレビ局にとってはスポンサーがお客さんで、視聴者はお客さんじゃないですね。
テレビ局は、スポンサー企業への支払いとして、視聴率の報告を行っているので、視聴者から、その数字をもらわなければならないのではないでしょうか。
NHKはどうなんだろうと書類入れを掘ってみたところ、「受信料領収書」に『お客様番号』『口座番号等の表示を希望されるお客様はご連絡ください』とあるので、お客様扱いはしてもらえていました。
抗議などはありません、…か
どこに寄せられた意見ならどの位から抗議として認識するかは公表してもいいのではないだろうか
菅総理:抗議など口にしようものなら同業者あげて「政治家が報道に介入した!弾圧だ!」の大合唱。
名指しされた広告代理店:普段から商取引しているので放送会社の総務・広報部門に言わなくても商取引のルートで話をすればよろし。
内閣府:国葬を汚されたとはいえ弔辞の内容を云々する立場ではないので抗議のしようがない。
広告主:代理店が間に入ってるんだから言いたいことがあるなら代理店を通してね。
視聴者:金主でもない部外者。何を言おうが「抗議」には該当しません。
ネットで聞きつけた人:視聴者以上に関係ない部外者。当然、「抗議」には該当し得ないですね。
ということで、当事者からの抗議はありません。
めでたし、めでたし。
>このように考えていくと、オールドメディア側が「ファクトチェック」と称してネットの情報を「検証」し始めたのは、じつはこうした焦りの証拠ではないか、といった仮説も成り立つのでしょう。
んーでも昔から似非リベラル等が言葉狩りをしてきてるので、その一環なんだとも言えるかと。
あの手の連中は「情報操作」「情報統制」をしないと社会での居場所を作れない・守れない『その筋の人』ですね。
明らかになってきた、オールドTVの正しい視方
1)報道バラエティー番組内容は、スポーツ紙程度と考える。
取材・考察もせず翌日思い付きで放送。
(新聞も同様だが、いちおう専門記者がいる)
2)夕刻あたりの番組は、世相を知る程度にたまに視る
(WEB空間だけでは、知りえない世間・映像情報もある)
こうして批判的な意見が出たとしても、中には肯定的にとらえる意見もあるのでしょう。テレビ局としては、どちらにしても話題になっていることを視聴率と結びつけ、ポジティブにとらえている可能性があります。炎上商法の一種でしょうか。
選挙カーに罵声を浴びせられても「力強いご声援ありがとうございます♪」と返すウグイス嬢にはどの陣営であれ「頑張れ☆」と伝えたくなりますが、馬耳東風にみえるマスメディアには何も言う気が起きません。当該業界、"圧力をかければどうにでも言を曲げられる"と見られる訳にはいかないのでしょうが...