韓国の半導体産業、一部品目の対日依存度「100%」

韓国が「半導体素材の国産化を達成した」などと主張しているわりには、韓国の半導体産業における対日依存度は、半導体製造装置のうち半導体ウェハーを個別チップに切断する機器が100%、ウェハー製造用ルツボが99%、フォトレジストを塗布・現象・硬化させる機械が98%だったのだそうです。この状態でよく国を挙げた反日行動を継続できるものだと思わないでもありません。

日本の輸出品目は「モノを作るためのモノ」が中心

当ウェブサイトでは「数字をもとにした議論」を好んでいるのですが、そのひとつは産業構造分析です。

以前からしばしば指摘してきたとおり、日本の輸出高は「モノを作るためのモノ」、すなわち半導体製造装置や半導体等電子部品などが主要品目を占めています(たとえば2021年の例だと日本の輸出高は83兆円でしたが、うち半導体製造装置が3.4兆円、半導体等電子部品が4.8兆円を占めています)。

つまり、現在の日本は「最終製品」の輸出で稼いでいるのではなく、中国、台湾、韓国といった「モノづくり大国」に対し、「モノを作るためのモノ」を輸出することで稼いでいるのです。その意味では、国を挙げた「迂回貿易」のような構造が生じている、という言い方をしても良いかもしれません。

あるいは、台湾や韓国は世界から「半導体大国」などと呼ばれていますが、これらの国々が日本にとって半導体製造装置などの主要な輸出先であるという点を認識していない人は、わりと多いのかもしれません。

輸出「規制」後も続く半導体製造装置等の輸出

ところで、『もう3年:輸出管理適正化措置の原因は韓国側が作った』などを含めて何度も議論してきたとおり、日本政府が2019年7月に発表した、韓国に対する輸出管理の適正化措置を巡っては、韓国側では「日本による不当な輸出規制措置だ」、などと主張されることもあります。

フッ化水素、レジストなど、半導体の製造工程における必須品目とされる原材料の韓国向けの管理が強化され、これに加えて韓国を輸出管理上の(旧)ホワイト国から除外するなどの措置が講じられたからですが、これが韓国にとっては「日本による韓国に対する半導体産業への脅威」と認識されたのかもしれません。

ただ、実態として見ると、今回の措置はあくまでも安全保障上の観点から講じられたものに過ぎず、べつに日本から韓国に対するフッ化水素等の輸出が「禁止」されたわけではありません。

それどころか、半導体製造措置等の韓国に対する輸出高は、むしろ日本の輸出管理適正化措置以降に増えています(図表)。

図表 半導体等製造装置の対韓輸出額

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

もしも日本が本気で韓国の半導体産業を壊滅させるつもりがあるのなら、フッ化水素だ、レジストだ、フッ化ポリイミドだといった製品ではなく、半導体等製造装置そのものを「規制」すれば良いのです。それをやっていないという時点で、日本の輸出管理適正化措置が韓国への制裁ではないという証拠でしょう。

対日依存度は依然として高い

もっとも、少し嫌な言い方をすれば、現在の状況は、日本が今でも韓国などを含めた諸国の産業の「キーデバイス」を握っている、ということでもあります。

実際、以前の『韓国の半導体産業は素部装の4割を日本に依存=韓国紙』でも取り上げたとおり、韓国の半導体産業においては、とくに「素材・部品・装備(素部装)」分野では日本の依存度が依然と高く、国別依存度も日本が40%でトップだった、とする韓国メディアの報道がありました。

こうしたなか、この手の「韓国の日本依存」に関する情報はしばしば出てくるのですが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日掲載されていたこんな記事もそのひとつかもしれません。

韓国の素材・部品・装備輸入依存、中国・日本の順…半導体関連は日本依存度高い

―――2022.08.29 11:41付 中央日報日本語版より

本日の記事によると、韓国の「ともに民主党」の金会在(きん・かいざい)議員が産業通商資源部から提出を受けた資料「2022年上半期の特定国依存品目」で、今年上半期における1000万ドル以上の輸入品目のうち、特定国の輸入額が75%となったものが636品目に達していたというのです。

国別の輸入依存度をみると、中国が全体の55.2%の351品目で最も多く、次いで日本(83品目、13.1%)、米国(49品目、7.7%)、ベトナム(20品目、3.1%)、ロシア(12品目、1.9%)などの順だった」。

さらには、これらの輸入品のうち特定国への依存度が90%に達していたものが339品目であり、自動車バッテリーの核心素材や半導体の素材・部品・装備に関する「中国と日本への依存度が高かった」、などとしています。

ちなみに中央日報によると、半導体製造装置のうち対日依存品目は、半導体ウェハーを個別チップに切断する機器が100%、ウェハー製造用ルツボが99%、フォトレジストを塗布・現象・硬化させる機械が98%と、日本への依存度が非常に高かったのだとか。

今後の日本の貿易額は?

個人的記憶に基づけば、文在寅(ぶん・ざいいん)前大統領あたりははたしか、「日本の輸出規制を克服し、素材・部品・装備の国産化を進めたこと」などをご自身の在任中の成果に挙げていらっしゃた気がしますが、実態は分野によっては依存度100%、というわけです。

この状態で、ありもしない歴史問題をでっち上げてでも、国を挙げて日本を貶める態度を改めない韓国という国を眺めていると、やはり非常に不思議な気がします。

いずれにせよ、韓国が日本に対し不快な挑発を行っていたとしても、日本は法治国家であり、社会のあらゆる物事が法に基づいて運用されていきます。そして韓国が輸出管理上の「グループB」という優遇措置を受けている以上、日本から韓国への半導体製造装置等の輸出も継続されていくのでしょう。

ただ、日本社会が韓国に代わる輸出先を見つければ、この関係がいつまでも続くというものでもないのかもしれません。

こうしたなか、明日は2022年7月分の貿易統計が発表されるそうですが、個人的には輸出相手国の順序がどうなっているかについては、気になるところだと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 墺を見倣え より:

    > 半導体ウェハーを個別チップに切断する機器が100%、

    切る時は、その装置に極薄砥石を付けて切断します。
    装置だけでなく、極薄砥石等の消耗品類も御調べになると面白いと思います。
    尤も、貿易統計が半導体用途を焙り出せる分類になっているかどうか知りませんが。

  2. 雪だんご より:

    素材や装置だけでなく、「反日」の部分も含めて
    韓国は日本に”依存”しているとも言えるでしょう。

    韓国社会はストレスだらけなので、しょっちゅう自画自賛しまくっている。
    それでも自〇者が相次ぐ有様なので、更なるストレス解消の為に
    「反日」をせずには居られない。本質的には自国以外全て見下して嫌っている
    フシがあるが、”安全に殴らせてくれる”奇特な国なんて日本以外にはない。

    その唯一甘やかしてくれた日本がもう付き合ってくれなくなってきたので、
    今後彼らはストレス処理をどうするのかが見物です。

    1. 箱庭 より:

      韓国社会はストレスだらけなので、しょっちゅう自画自賛しまくっている。
      それでも自〇者が相次ぐ有様なので、更なるストレス解消の為に
      「反日」をせずには居られない。本質的には自国以外全て見下して嫌っている
      フシがあるが、”安全に殴らせてくれる”奇特な国なんて日本以外にはない。

      これには「ストレス解消」に加えて『自己愛性パーソナリティ障害患者は自分の能力を過大評価し,自分の業績を誇張する。自分が優れている,独特である,または特別であると考えている。患者の自分の価値および業績についての過大評価はしばしば他者の価値および業績の過小評価を含意する』と言う側面もあると思います。

  3. Sky より:

    サプライチェーンの脆弱さ。政府は兎も角、サプライチェーンを構成する個々の企業は、よくもまぁこのハイリスク状況を容認しているものだと思います。サムスン電子が今後6年間に20兆ウォンかけて半導体の国内開発拠点を作るそうで起工式を行いました。国内投資が吉と出るのかどうか。

  4. 匿名 より:

    > 半導体ウェハーを個別チップに切断する機器が100%、

    ディスコのサイトが、参考になるかと
     https://www.disco.co.jp/jp/introduction/index.html
     私が、この業界いた、2008年まででは、
     国内トップ です。

    因みに、ダイシングの時、
     ウェハーに貼り付けるテープも、
     ノウハウの塊です。 とても、恐ろしくて、語れません。

    一朝一夕では・・・

    1. 通りすがりの自由人 より:

      なるほどディスコ(6146)の株価をみると期待値が高い会社ですね。さすかオンリーワン。

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