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    Categories: 金融

また出た!「国の借金」論からチラ見え「Zの増税論」

ちょっと楽観的すぎる、と批判されるのを覚悟で申し上げるなら、社会のインターネット化は、官僚機構やオールドメディアが垂れ流すウソを、我々一般国民が見抜くことに寄与しているといえます。そう思うきっかけのひとつが、昨日時事通信に掲載された、「国民1人あたりの国の借金が1000万円を超えた」という与太話です。いわば「Zの陰謀」、でしょうか。財務省としては、メディアに「国の借金」論を騙らせることで増税の世論醸成を狙ったつもりなのかもしれませんが、もしそうだとしたら、仕事が雑過ぎます。

オールドメディアの犯罪

「第四の権力」としてのオールドメディア

インターネット時代が到来したことで、最も恩恵を受けているのは、じつは私たち一般国民なのかもしれません。というのも、官僚やオールドメディアなどが垂れ流すウソを、私たち一般国民レベルでも見抜けるようになりつつあるからです。

ひと昔前だと、各地に住む不特定多数の人々に向けて、毎日のように情報を発信することができる手段を持っているのは、新聞、テレビなど、ごく一部のメディア関係者に限られていました。

諸外国でも、たとえば軍部などによるクーデターが発生した場合、真っ先に制圧される対象に含まれているのは、大統領府や国会などの政府中枢施設だけでなく、テレビ局や新聞社などのマスメディア各社だったことを忘れてはなりません。

当然、マスメディア産業に属している人の間では、自分たちのことを、いつしか「第四の権力」などと騙るようになりましたし、実際、いくつかの国ではマスメディアの報道がその国の政権すら倒すことができるという状況になっていたこともまた間違いないでしょう。

日本では2009年にメディアクーデターが発生した

残念ながら、日本もその「いくつかの国」のひとつに含まれています。

2009年8月30日、麻生太郎総理が率いる自民党は衆議院議員総選挙で、鳩山由紀夫代表が率いる民主党に大敗を喫し、下野を余儀なくされました。この政権交代劇に、マスメディア、とくに新聞、テレビが強くかかわっていたのです。

たとえば社団法人日本経済研究センターが2009年9月10日付で発表した『経済政策と投票行動に関する調査』によると、新聞・テレビを情報源として重視する人ほど、比例で民主党に投票したことが、明確に示されています(図表1)。

図表1 情報源と比例区投票先の関係

(【出所】(社)日本経済研究のレポートのP7を参考に著者作成)

また、投票の約3週間前の2009年8月12日に行われた21世紀臨調が主催した麻生太郎総理大臣と鳩山由紀夫・民主党代表の党首討論会(※現在は視聴不可)ついても、メディアが無視したのはその典型例でしょう。

この党首討論会については『先祖返りする立憲民主党、今度の標語は「変えよう。」』あたりでも説明したとおり、どう贔屓目に見ても、麻生総理の完勝に終わりました。というよりも、鳩山代表の発言自体、どうも支離滅裂でまとまりもなく、いったい何を主張しようとしていたのかすらよくわからない代物だったからです。

まずは代表から「変えよう。」いまから12年前の2009年8月、麻生太郎総理大臣との党首討論会の最後に、鳩山由紀夫・民主党代表はヒトコト、「チェンジ!」と叫びました。そして、最大野党・立憲民主党は昨日、あらたなキャッチコピーを発表しました。それはなんと、「変えよう。」、です。麻生総理と鳩山代表の党首討論ちょうど12年前のいまごろでしたでしょうか。麻生太郎総理大臣が衆議院を解散し、日本は選挙に突入。21世紀臨調は2009年8月12日、自民党の総裁でもある麻生総理と、当時の野党・民主党の鳩山由紀夫代表の2名を招い...
先祖返りする立憲民主党、今度の標語は「変えよう。」 - 新宿会計士の政治経済評論

民主党圧勝の衆院選は日本の民主主義史上の汚点

もしこの討論会をリアルタイムで多くの視聴者が視聴していたならば、自民党があそこまでの大敗を喫することはなかったでしょう。鳩山代表の発言を直接に聴けば、おそらく多くの有権者は、「こんな人物が首相になるとまずい」と冷静に判断したに違いないからです。

しかし、この討論会、少なくとも在京民放5局とNHKは生中継しませんでしたし、それどころか主要全国紙や主要地方紙も、話題として取り上げないか、取り上げていたとしても、両党首の発言を詳しく報じるようなことはしていませんでした。

その結果、有権者の多くは、そんな討論会が行われていたという事実すら知らなないまま、総選挙に突入してしまっていたのです。

その意味で、2009年8月の総選挙は、オールドメディア、とくに主要全国紙とNHK、主要民放が結託した「報道犯罪」そのものであり、まさに「メディア・クーデター」という、日本の民主主義史上に残る汚点と言わざるを得ないのです。

問題だらけの日本のオールドメディア

ただ、当ウェブサイトでは『数字で見る:「既得権にしがみつく新聞業界の行く末」』などを含め、何度となく指摘してきたとおり、日本の情報を支配し、民主主義を歪めてきたマスメディア業界が、いま、音を立てて崩れ始めています。

このペースだと朝日新聞の部数は12年後にゼロになる朝日新聞の部数の落ち込みに関するデータを眺めていて、ふと思いついたのが、「新聞業界全体と比べたらどうなるか」という論点です。これについて早速実施してみると、朝日新聞の部数の落ち込みは、新聞業界全体と比べても大きいことがわかりました。ただ、「朝日新聞に問題がある」のか、それとも「新聞業界全体に問題がある」のかに関しては、また別の論点です。これはいったいどういうことなのでしょうか。新聞部数の減少朝日新聞朝刊は8年間で約40%減少した『朝日新聞、売上減...
数字で見る:「既得権にしがみつく新聞業界の行く末」 - 新宿会計士の政治経済評論

その変調は、まず、新聞業界で始まっています。いうまでもなく、業界全体として、新聞の発行部数が猛烈に減り始めているのです。最大手の一角を占める朝日新聞ですら、このペースで部数が減り続ければ、計算上、約12年後には部数がゼロになってしまいます。

この点、新聞の発行部数の減少は、べつに日本に限った話ではありません。スマートフォンなどの急速な普及により、新聞の部数が急速に減少しているという点は、おそらく全世界の新聞社が直面している、共通の課題課題に違いないからです。

しかし、日本の新聞、テレビの場合は、かなり特殊な事情を抱えています。

それは、もともと新聞社もテレビ局も、国(というよりも官僚機構)によって事実上、経営が守られてきたからです。

新聞の場合は独占禁止法の例外として、再販売価格制度をいまだに維持していますし、さらには財務省と結託しているため、一定条件を満たした場合には消費税・地方消費税についても、合計10%ではなく8%の軽減税率の適用を受けるという特権を享受しています。

また、テレビ局については電波利権によって経営がガッチリと守られ、諸外国では当たり前の電波オークションすら実施されず、法律で決まった額の電波利用料を支払うだけで、基本的には自由に番組を放送することができます。

テレビ局のなかでもNHKはさらに悪質です。

NHKは自身を「公共放送」と騙り、放送法の規定を根拠に事実上、「テレビを見ていない世帯」などからも受信料を半強制的に徴収しようとしており、年間7000億円前後という巨額の収入で蓄財を行ったり、少なくとも1万人前後の職員に対し、1人あたり1500万円を超える人件費を計上したりしています。

公的組織を騙るのであれば、少なくとも人件費水準は国家公務員並みに引き下げなければなりませんし、適正額をはるかに超える受信料を半強制的に徴収することは、社会正義にも著しく反します。

また、職員に対して民間企業なみの高給を支払うのであれば、少なくとも競争原理を導入するのが筋であり、見たくない人に「NHKに受信料を支払わない」という自由を保証しなければなりません(もっとも、そんな制度を導入すれば、NHKを解約する人が相次ぐであろうことは想像に難くありませんが…)。

さらには、新聞、テレビ、通信社などのメディア各社が官庁などに作る「記者クラブ」などの制度にも、大きな問題があります。

記者クラブは、私たち一般人が知り得ない情報を、私たち一般人に先駆けて特権的に入手する利権組織であり、フランスに本拠を置く「国境なき記者団」(reporters sans frontières)からも、「外国人やフリーのジャーナリストを差別する仕組み」と批判されています。ここでは原文のまま紹介します。

Le système des clubs de presse (kisha clubs), qui n’autorise que les médias établis à accéder aux conférences de presse et aux hauts responsables, pousse les reporters à l’autocensure et représente une discrimination flagrante à l’encontre des journalistes indépendants ou étrangers.( reporters sans frontières, “classement mondial de la liberté de la presse” より抜粋)

まさにオールドメディア業界は、こうした特権的な制度の数々を持ち、官僚機構や特定野党などと癒着することで、国益を損ねてきたのです。2009年8月のメディア・クーデターで実現した民主党政権は、まさに日本の民主主義がオールドメディアによって歪められてきた証拠そのものなのです。

ウソツキ官僚機構

メディアの問題は、結局は官僚の問題でもある

ただ、このような考察を加えていくなかで、「情報を特権的に入手する者がいる」ということは、その逆に、「情報を与える者がいる」、ということを意味します。

官僚です。

日本でいう官僚といえば、べつに選挙で信を得たわけではないくせに、ときとして莫大な政治的権力を握ることがある存在です。そして、政治家に対して暗躍し、国益を損ねかねない行動を取らせることができる立場でもあります。

たとえば佐渡金山の世界遺産登録で、「佐渡金山の登録申請をすれば米国の機嫌を損ねる」などとするウソを吹き込んだ外務省(『ウソつき外務省:「佐渡金山登録で米韓との関係悪化」』等参照)など、その典型例でしょう。

「佐渡金山の世界遺産登録に動けば韓国や米国との関係が悪化する」。こういうウソを岸田首相に吹き込んでいたのは、やっぱり外務省だったようです。これは韓国観察者の鈴置高史氏が以前から指摘してきた問題点ですが、時事通信に今朝掲載された記事にも同じ趣旨の記載が含まれているのです。2022/07/29 17:46追記記事ジャンルが誤っていましたので修正しています。ウソつき外務省日本政府が佐渡金山の2023年におけるユネスコ世界文化遺産登録を断念したとする話題については、『佐渡金山世界遺産登録断念に「落胆」すべきでない理由』...
ウソつき外務省:「佐渡金山登録で米韓との関係悪化」 - 新宿会計士の政治経済評論

また、いわゆる「加計学園問題」、すなわち岡山理科大学の獣医学部新設を巡っても、その実態をよく調べていくと、そもそも文部科学省が獣医学部の新設申請を受理しないという取扱い自体、私立学校法などの法律の規定に違反していた疑いが濃厚です。

ちなみに文部科学省といえば、大学の設置許可を握ることで、天下り利権を維持しているという疑いもありますし、私立学校に対し最大で教育経費の半額が助成されるという私立学校振興助成法の制度自体も、日本国憲法第89条に明らかに違反しています。

日本国憲法第89条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

つまり、日本の行政は私たち国民が選んだ政治家ではなく、国家公務員試験に合格し、役所の力学で出世してきただけの官僚により、相当程度歪められているのです。

メディアと官僚機構の癒着

ではなぜ、メディアは官僚機構を批判しないのか。

結局のところ、メディア業界自体、その官僚機構が「記者クラブ制度」で飼いならしているため、官僚機構を怒らせるのが怖いと感じるメディア業界は、政治家(とくに自民党の政治家)を批判することはあっても、官僚機構を批判することはほとんどないのです。

その頂点を極めている組織が、財務省でしょう。

財務省といえば、「もりかけ」問題のもうひとつの側である森友学園問題に対する土地の低廉譲渡問題を巡る中心となった官庁でもありますが、それと同時に、佐川宣寿理財局長(当時)の国会答弁と辻褄を合わせるためにいわゆる公文書改竄を行った官庁でもあります。

公文書改竄自体、野党(当時の民進党や現在の立憲民主党)の議員の揚げ足取り的な追及がもたらしたものであるという意味で、多少同情の余地はあるのかもしれませんが、ただ、公文書改竄自体はもってのほかでもあります。

それなのに、オールドメディアや野党は、不思議なことに、この問題で財務省を頑なに攻撃しようとしません。なぜか故・安倍晋三総理を筆頭に、自民党の議員を追及しているのです。

せっかくの不祥事ネタなのに、追及する相手を間違えるというのは不自然ですが、これも「官僚機構とオールドメディア、特定野党」という「利権トライアングル」が結託して腐敗した結果だと考えるなら、非常に辻褄が合う行動でもあります。

なぜなら、自民党は紛れもなく、2012年12月以来、都合8回の大型国政選挙で勝利をおさめ続けてきた政党であり、純粋な意味で有権者が民主的な手続により正当に選んだ政治集団だからです。

当然、民主主義の手続によらずに利権ないし権力を握る組織(財務省、総務省、、文部科学省)、あるいは自由経済競争の原理から逸脱した組織(新聞社、民放テレビ局、NHK)にとっては、「正当な手段で権力を握った政治集団」は、恐怖の対象そのものでもあります。

もしかすると、オールドメディアが歪んだ報道で自民党を選挙で勝たせないように努力しているのも、民意を得て勝利した政治家を恐れている官僚機構の意向に忖度(そんたく)した行動なのかもしれませんし、あるいは単純に、オールドメディア業界が腐敗しきっているだけの話なのかもしれません。

また出た!「国の借金」論という大ウソ

こうした文脈で、こんな記事を紹介してみたいと思います。

国の借金、過去最大の1255兆円 1人当たり1000万円超―6月末

―――2022年08月10日16時22分付 時事通信より

財務省による、いつもの「国の借金」プロパガンダであり、これを喜々として報じる時事通信はその片棒を担ぐ共犯者です。

時事通信によると、「国の借金」(国債、借入金、国庫短期証券の合計額)が6月末時点で1255兆1932億円になったと発表したのだそうです。これは3月末と比べ13兆8857億円増え、「過去最大を更新」した、などとしています。

いったいこれのなにが問題なのか。

そもそも「国の借金」なる概念は、経済学的にも会計学的にも、存在しません。一国には大きく「政府」「企業」「家計」という経済主体が存在し、このうちの「政府」だけを切り出したうえで、その政府部門の債務を国民1人当たりで割ったところで、まったく意味はないのです。

また、会計的に見れば、債務の裏側には資産が存在します。

たとえば、時事通信の記事にいう「国の借金」のうちのいわゆる「国債」(普通国債、財投国債、短期国債)の内訳は、財務省の元データでいえば、こんな具合です。

  • 普通国債…984兆3353億円
  • 財投国債…103兆0365億円
  • 短期国債…110兆4988億円

資産を控除したら実質的な「借金」は1000兆円を割り込む

上記以外にも借入金48兆2773億円に加え、「出資・拠出国債」、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構国債」、「株式会社日本政策投資銀行危機対応業務国債」などを合算して1255兆1932億円、という金額に達しているのですが、ここで注意しなければならない点がいくつかあります。

そもそも約103兆円の財投国債については、その資金は「財政投融資」に使われているため、裏側では貸出金などの資産が少なくとも同額程度は存在している計算です(厳密には国債以外の財源なども含まれているようです)。

また、110兆円の短期国債については、その裏側に存在する外為特会の外貨準備1.3兆ドルについて、1ドル=130円で円換算すれば、その価値は169兆円(!)にも達します。つまり、「借金」である110兆円を約59兆円分も上回る資産が存在する、というわけです。まさに「円安さまさま」ですね。

このため、あえて時事通信の「国の借金」という用語を使うなら、実質的な「国の借金」は、1255兆円から財投債103兆円、国庫短期証券110兆円、外為特会の含み益59兆円を引いた983兆円、というわけです。

これに加え、数多くの天下り法人などが保有している資産も存在しますし、一種の「特殊法人」であるNHKに至っては、巨額の資産を溜め込んでいます(金融資産に関しては年金資産を含めて1兆円超、不動産に関しても下手をしたら数千億円から数兆円レベル、といったところでしょうか)。

あるいはテレビ局などにタダ同然の値段で使用させている電波利用料についても、電波オークションの導入によって巨額の国庫収入をもたらす可能性もあります。

さらには、現在は国税庁(所得税、法人税、消費税等)、日本年金機構(社会保険料等)、労働局(雇用保険料等)、各都道府県の税務事務所(都民税等)、市町村役場(住民税等)、などと別れている歳入窓口を「歳入庁」などに一本化するだけで、歳入の捕捉漏れもなくなるでしょう。

つまり、もしも「国の借金が問題だ」というのであれば、増税よりも先に、これらの「無駄な資産」「官僚の天下り先の特殊法人」を解体し、資産の国庫返納を命じるなど、やることはいくらでもあります。

やるべきことをやっていないのに、何が増税ですか。

その意味では、「外務省はウソツキ官庁」という表現は、正しくありません。「ウソツキ官庁」という意味では、「国の借金」という誤った用語を使った報道を放置している財務省も、外務省と同等か、それ以上に悪質です。

財務省のことを、最近では「Z」と呼ぶ人もいるようですが、「Zの増税原理主義が日本経済を滅ぼす」、といった表現は、個人的には大変わかりやすいと思う次第です。

誰かの資産は誰かの負債:全体のバランスで見ることが重要

なお、いちおうもう少しだけツッコミを入れておくと、「国の借金」の絶対水準、あるいはGDPに対する割合などで財政危機かどうかを議論しても、まったく意味がありません。

その国の債務が過大かどうかについては、GDP水準ではなく、その国全体の資金循環構造(家計資産・家計債務、企業資産・企業債務、対外資産・対外債務など)との兼ね合いで決まってきます。金融商品の世界では、「誰かにとっての資産」は、「ほかの誰かにとっての負債」だからです。

ちなみに「国の借金」プロパガンダを展開する者が絶対に触れない論点が、資金循環統計です。

海外への純資産が史上最大の412兆円に!=資金循環』当ウェブサイトでいつも指摘しているとおり、日本全体としてみれば、むしろ「国の借金」の金額は少なすぎます。海外への純資産が412兆円に達しているということは、裏を返せば、日本国内で412兆円以上、資金が余っているということを意味するからです。

本日の「速報」です。日銀が本日公表した資金循環統計によると、家計資産は引き続き2000兆円を超えているのに加え、円安のためでしょうか、海外部門の資産負債差額(対外純資産)は412兆円と史上最高水準に達しました。円安が日本経済の危機だと称していたメディアの皆さんは、この状況をどう見るのでしょうか?資金循環速報値日銀は本日、「資金循環統計(速報値)」を公表しています。この「資金循環統計」、英語では “Flow of Funds” と呼ばれ、どの国でも作成されているものですが、わかりやすくいえばその国における資金の流れを...
海外への純資産が史上最大の412兆円に!=資金循環 - 新宿会計士の政治経済評論

財務省やおーおるどメディアが無視する、しかし極めて重要な概念なので、再掲しておきましょう(図表2)。

図表2 日本全体の資金循環バランス(2022年3月末時点・ストック、速報値)【※クリックで拡大】

(【出所】日銀『データの一括ダウンロード』のページより『資金循環統計』データを入手して加工)

「国の借金」(笑)とやらをことさらに問題視する人たちがかたくなに無視する論点は、家計金融資産がその2倍近い2000兆円を超えているという事実であり、また、余りまくった資金が預金取扱機関(銀行、信金、信組、労金、農協、ゆうちょ銀など)などに流入し、これらの機関は投資対象がなく、困っているという事実です。

もう少し国が国債を発行してくれれば、これらの金融機関にとっても助かるのですが、現状だと国が国債を発行してくれないがために、しかたなしに日銀当預に資金をブタ積みするか、外債を買うか、ファンド投資をするか、といったくらいしか選択肢がないのが実情なのでしょう。

理論上は国債を412兆円増発しても日本経済はビクともしませんし、これに加えて頭の悪い外国のヘッジファンド勢が国債先物を売り浴びせ、これを日銀砲で撃退してくれるので、国債のロングポジション(買い持ち)をしている投資家にとっては、干天の慈雨のごとく微々たる利益が転がり込んできます。

また、「日本の財政不安」をWSJやFTあたりが煽ってくれれば円安が進むかもしれませんし、原発再稼働が進めば、その分、製造業の国内回帰も進み、輸出主導で日本経済が力強く復活するチャンスが得られるかもしれません。

ネットが社会を変える!

いずれにせよ、「国の借金論」の間違いを指摘するウェブサイトも、インターネット空間ではずいぶんと増えてきました(なかには「MMT理論」なる、ちょっとおかしな主張をする人もいるという点については、注意は必要ですが…)。

財務省が飼いならしている新聞、テレビといったオールドメディアが一生懸命に「国の借金論」というインチキ理論を煽ろうとしても、賢明な日本国民は、徐々に騙されなくなり始めているのです。

そして、あと数年のうちに、かつては大企業だった「繰延税金資産を過大計上しているがおそらくは実質的に債務超過状態となっている資本金1億円の中小企業」あたりが倒産すれば、日本の言論空間は大きく変わっていくかもしれません。

「あの中小企業」が引き続き実質債務超過状態にある、という疑いが濃厚です。とあるツイッター・ユーザーの方が貴重な150円という大枚と引き換えに、某中小企業とその親会社の決算公告画像をツイッターに投稿したのですが、これで読むと、繰延税金資産と子会社株式の過大評価で見た目の債務超過状態をまぬかれているという可能性が浮上したのです。「ゆめゆめ拡散したりしないでくださいね」ことしもけしからん行動を取ったツイッター・ユーザーが登場したようです。「りぼー」(@_rtiobboitr_)氏というアカウント名のユーザーが、あ...
とある中小企業「売上高が5年間で40%減少」の衝撃 - 新宿会計士の政治経済評論

その意味では、私たち日本国民は、決して将来を悲観する必要などありません。官僚やオールドメディアが流してくるプロパガンダについては、冷静にひとつひとつ検討し、そして選挙では必ず投票するという態度を取りたいものだと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (42)

  •  物事の一面だけで結論を出す粗忽者が多いのでしょうね。

     東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
     と言う第一線で活躍されている方が
    「日本の「政府の借金問題」が、インフレ・円安でいよいよ「ヤバい状況」になってきた… !」https://gendai.media/articles/-/98476?imp=0
    という論文を出されている。少し前には財務省の矢野次官が同じように小学生並み否、幼稚園レベルと言えるような論文を出したが岸田くんはこの間違いが理解不能のようで、おとがめ無しのようですが、首相としての資質が問われているのですがね。

     どうしてもこのように一面からの考察しかできず、貸借対照表という概念が理解できないようです。どうして足し算、引き算という小学校の算数が理解できないのでしょうね。

     南朝鮮のように返済能力を超えて借金をし、それを投資に向けているなら分かるけど、資産の範囲で国債を発行しているのにキーキー騒ぐのはいかがなモノでしょうかね。

     利息だけで支払い能力を超えているとも書いているが、これについても高橋洋一氏は問題ないと説明しているのだが、そのことは頭に入らないか、理解できないようです。小学生以下の算数知識しか無いので、理解できないようですが。

     銀行関係者は馬鹿なやつだなと思っているでしょうが、有名人だけに反論すると後がやっかいだから黙っているのでしょうね。だって銀行は資産の範囲を遙かに超えた融資をしろと言われても「分かりました。融資いたしましょう」などとホザク馬鹿はどこにもいないでしょうに。こんな記事を載せる出版社も内容の審査能力が無いから、そのまま掲載してしまうのでしょうね。

     こんなお粗末な論文を出版社に出す前に、高橋洋一氏に、内容の審査をしてもらったらドウなのでしょうね。それでは著者の沽券に関わるかも知れないが、国民を騙すよりは良いでしょう。

     私はもう、かなり惚けているので呆け老人とハンドルネームを使っているが、この著者は呆けていないのかな?だとしたら呆けている私でも理解できることが理解できないので、余計に始末が悪い。ま、コンサルタントくらいの仕事なら、全体を見渡す能力が必要ないから問題なかろうが、この問題を全体を見渡さずに論ずることは国民を騙すことであり犯罪に近いことなのだが。

  •  財務省のこんな与太話を信じる人が思いの外多いのは、日本人は独立志向が少なく従業員を選ぶ方が多い→自ら簿記をする機会がなく財務意識があまり無いせいなのかな、などと推測していたのですが。
     どうも各国の自営業率というのを調べると、日本で12%弱、独立志向が高そうでアメリカンドリームなどともよく言われチャンスとリスクに満ちたイメージのアメリカが7%弱、と意外なものでした。英仏あたりも10%台前半と、経済大国や先進国の方が自営業率は低めになる傾向は見て取れます。企業活動が盛んならそりゃそうよねという話ではあります。あ、ちなみに韓国は世界のサムスンを擁しヒュンダイ…じゃなかったヒョンデで日本制圧にとりかかるほどの十分な経済大国と言えるでしょうが、なんと自営業28%ほど。チキン好きすぎないか。

     なぜこんな話がまかり通ってしまうのか、余計よくわからなくなりました。やはりマスコミも異論を唱えるどころか乗っかるせいかな。本気っぽいけど。
     ネットでは指摘もあがるものの、やはり程度の低い集団においては、麻生氏の「銀行にはカネが余ってしまっている」発言をとりあげて「俺は預金なんてねーよ世間知らずが!」などと無知アピール大会をしてしまう所もあるので……こういう話題こそ、敷衍が必要に思います。

  • 第四の権力を自称するなら、公平性が欠けたり、虚報に対して、他権力からの牽制があるべきだと思います。
    もちろん言論統制にならない程度ではありますが、
    優遇措置を受けたり、国民の共有財産である電波を使用しているのだから。

  • 長いので分割。

    >「佐渡金山の登録申請をすれば米国の機嫌を損ねる」などとするウソを吹き込んだ外務省
    せいぜい「疑惑がある」レベルです。
    疑惑レベルのことを事実の如く主張するのはよろしくないと思います。
    情報の受取手として、そこはチェックします。

    >ではなぜ、メディアは官僚機構を批判しないのか。
    実際に、メディアを通じて世論誘導を謀る官僚や省庁というのはあるでしょうね。
    ただ、メディアは完了の不祥事も報道するので、そこまでの強い繋がりというのは無いでしょう。
    メディアが政府を取り上げる傾向が高いのは、そっちの方が単に権力として大きく見え、ネタとして優秀だからだと思われます。

    財務省総括審議官を逮捕 酒に酔い電車内で暴行か―警視庁
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2022052000303

    • いや、いや、そんな外務省の嘘に引っ掛かる政治家が情報弱者だし勉強不足じゃないの?そりゃ、お勉強ばっかりしてきた官僚には到底太刀打ちできないわな。だいたい、なんで佐渡金山でアメリカが怒るのよ。
      それを信じる政治家のアタマの中が理解できないわ~

      • いや、「外務省が嘘を言ったかどうか分からない」と言っている話に、「そんな外務省の嘘に引っ掛かる」とか、外務省が嘘を言った前提の返信されても?
        外務省の説明を聞いて、岸田総理が信じたのかも不明ですし。
        ちょっと、話が噛み合っていないと思います。

        >だいたい、なんで佐渡金山でアメリカが怒るのよ。それを信じる政治家のアタマの中が理解できないわ~

        クアッドの存在は米国からの対韓譲歩圧力を緩和する? 2022/02/12
        https://shinjukuacc.com/20220212-01/
        >「好きこのんで韓国に譲歩する」という可能性は、さほど高くないと考えて良いと思います。
        >そうなると、とくにジョー・バイデン米大統領が岸田首相に対し、あるいはアントニー・ブリンケン米国務長官が林外相に対し、「保守派である尹錫悦氏が大統領に就任したのだから、日本も韓国と『仲直り』(?)しなさい」、などと圧力をかけてくる可能性は、十分にあります。

        韓国国会が日本政府に佐渡金山世界遺産推薦撤回を要求 2022/02/15
        https://shinjukuacc.com/20220215-01/

        結果として、アメリカが日本に圧力という真似ありませんでした。
        また、別記事でもブログ主は「アメリカは一貫して韓国に厳しい態度を向けている」「だから、日本に圧力をかける可能性は低いと思う」と言った旨の記述をしているのも見掛けました。

        ただ、どちらも2月の話なので、2022/02/12の記事で書かれたような可能性を外務省が判断材料の一つとして、報告していたのかしれません。
        また、岸田総理も、それを受けて少し迷った可能性はあるかもしれません。

        ただ、これで外務省を嘘吐きだ。迷う岸田総理が情報弱者だと言うのなら。
        可能性を言及したブログ主も嘘吐きで、それを読んで不安に思った読者も情報弱者という話になってしまうかと思います。
        真相は分かりませんが。

      • あまりこの人をまともに相手にしない方が。確か外務省は嘘つき論で以前論破されてもしつこく霞が関を擁護してる人物だよね。関係者(w)かな?

  • 常々不思議なのですが「国の借金って」、いつ頃から誰が言い出したのでしょうね?
    財務省HPとか見ても、数字が羅列された資料とかばかりで、如何にもお役所仕事というか、素っ気ないというか。
    煽るような表現を使った発表って、しないイメージなのですが。
    言い出したのは財務省ではなく、マスメディアが分かりやすく伝えるというつもりで、使い出した言葉なだけではないでしょうか?

    以下、報道の元ネタとなったと思われる財務省のページ
    https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/202206.html

    >歳入窓口を「歳入庁」などに一本化するだけで、歳入の捕捉漏れもなくなるでしょう。
    そうなるのは理想的だと思いますが、そこに至るための、時間、財源、人の意識。これらの壁は乗り越えるの大変な気がします。
    優先度的に、どうなんでしょうね? 慎重にやらないと、余計にダメになるリスクもある気がしますが。
    単に、一般企業でのシステム刷新におけるトラブルからの連想でしかないのですが。

    >やるべきことをやっていないのに、何が増税ですか。
    今、財務省って増税が必要だとか言っていましたっけ? アンテナ低いのでよく知らないですが。
    個人的には、消費税は無くせと思いますけど。こっち方面は詳しくないので、減税した方が徴税額上がるもの無い? とか漠然と思うだけですが。

    •  分割していただいたのに中間にレスを入れると途切れて見えてが申し訳ないのですが。
       具体的な検索をするとcru様が挙げられたおカタい数字資料ページに直接行き当たるのでしょうか。単に財務省トップから入り、いかにも一般国民向けに平易に解説しましたという感じの噛み砕いた説明ページではこのようになります。

      https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-debt.html
      >「公債金」:歳入の不足分を賄うため、国債(借金)により調達される収入
       カッコとはいえ借金ですと明記していますね。

       ここからでは借金論の「初出」はわかりませんが、財務省自身が国債は借金だから悪いものだ、財政健全化は節約だから良いものだ、という刷り込み意図を持っているのを個人的には感じます。穿った見方をすれば、財政健全化が必須なので増税も含めるともとれますが、悪印象なためか増税の文字はありません。「増税のお願い」なんていうのは法制化して立法側、政治家がやるものだという面もあるでしょう。

      • 農民さん

        >カッコとはいえ借金ですと明記していますね。
        ソースのご提示、ありがとうございます。
        こちらについては、自分は存じ上げませんでした。

        >悪印象なためか増税の文字はありません。
        実際に、書いてはいませんね。これもまた、ただのデータでしかないです。
        それを見て、どう感じるかは人それぞれだと思います。
        「増税の意志だ」と感じること自体は、自然な発想だとも思います。無意識に「じゃあどうするんだ?」と自問自答したらそうなるかと思います。

        ただ、提示されているのはあくまでもデータでしかないので、自分としては財務省の意志だとは判別出来ません。
        仮にマスコミや政治家、国民への忖度を期待した結果がこれだとしても、随分と消極的な真似だなあと、個人的に感じます。
        なので財務省が、そういう不安を呼び起こそうと意図したものかどうか判断出来ないのです。
        自分の中では、そこは区別しています。

        なので、自分の中では様子見です。
        こんなデータを見て、国民も政治家も、変に意図を探ったり臆したりせず、増税という手段に傾かなければいいとは思いますけどね。

  • >「国の借金」という誤った用語を使った報道を放置している財務省も、外務省と同等か、それ以上に悪質です。
    「国の借金(で日本が大変だ)」論が誤りなのは同意しますが、負債を借金と表現することも、大変だと考えることも、思想信条の自由、言論の自由の範囲内かと思われます。
    訂正するように要求しても良いとは、自分も思いますけどね。
    ただ、そこにクレームを入れるのも、国の機関としてはやりにくいものかと思います。
    それこそ、マスコミが「言論統制だ」とか言い出して仕事の邪魔したり。

    ただでさえ、非常識な要求を省庁に求めたり恫喝して、邪魔していたので。
    コロナ禍での予約システムのトラブルでも「これこれの質疑応答、あと数時間で返せよな?」みたいな真似していた記憶あります。

    恐らくですが、「国の借金(で日本が大変だ)」論を言い出したのは、大衆不安を煽ってネタを売り、政府を攻撃したいマスコミが犯人な気がします。

    >ネットが社会を変える!
    ネットはただのツールです。情報に対する人の意識が変われば、社会が変わると思います。
    なので、「情報はすべて疑え」の精神で「官僚やオールドメディアが流してくる」の他に「ブログやSNSなど」も追加した方がいいと思います。

  • ”国の借金”を論ずるのであれば、バランスシートの負債側にだけ着目しても仕方ないんですよね。
    韓国が外貨準備高を論ずるのに、バランスシートの資産側にだけ着目しても仕方ない様にですね。
    ・・。

  • 安倍元首相が亡くなられた後、岸田首相は、外交安保は保守派に配慮した運営を続けるけれど、財政については「健全化推進」に舵を切ると、予想します。
    今回の内閣改造で、麻生副総裁-鈴木財務大臣が留任となったことは、その現われではないでしょうか。さしあたり来年度予算への対応です。その先は来年4月の黒田日銀総裁の後任人事でしょうか。
    「積極財政」と「健全化推進」は、国家財政の永遠のテーマです。予算が国家にとって真に有用なものに使われているなら、新宿会計士さんの仰る通り、いくら借金が増えようとその分資産が増えているのだから、何の問題もない、ことになります。ところが、かっての”箱物行政”が象徴するように、民主主義政治では得てして利益誘導が行われ、無駄なもの・投資価値に見合わないものに、多額の税金が使われます。これは国家の損失です。民間なら自分の金ですから、結果的に失敗することはあっても、最初から変なものに投資しようとしません。しかし国家なら他人の金で、自分の利益誘導が図れるのですから、理屈さえ付けば変なものに投資しようが気にもしません(民主主義国家ではないけれど中国共産党の国内投資が良い例です)。
    アベノミクスは、日本の長期デフレーションを克服するために、①大胆な金融政策②機動的な財政政策③民間投資を促進させる成長戦略という、いわゆる3本の矢で構成されました。その見方はいろいろあるかもしれませんが、私はデフレ脱却の端緒を作ったと評価しています。
    ただまだ完全な経済回復の道筋に乗ったとはいえない中で、今後どうしていくべきか、の意見が分かれるのです。まだ途上だから①②を継続していくべきか(積極財政、安倍元首相もこの考え)、いや①②は一時的なもので本来あるべき③に重点を移していくべき(健全化推進)と考えるか、です。
    最終的には、主権者たる国民の選択となりますが、外交安保と違って判りにくいですからね。政権を握っている首相の意向が大きいのだろうと、予想します。

  • >海外への純資産が412兆円に達しているということは、裏を返せば、日本国内で412兆円以上、資金が余っているということを意味するからです。
    資産があるからといって余っているかは分からないと思いますが、ここで言う余っているとはどういう意味でしょうか?

  • > 金融商品の世界では、「誰かにとっての資産」は、「ほかの誰かにとっての負債」だからです。

    以前にも書きましたが、これの解釈は、、、

    仮に、国が百億円の建設国債を発行して、橋をかけたとします。
    帳簿上は、橋の資産が百億円で、バランスしている訳です。
    しかし、実際には手抜き工事で、仮に十億円抜かれていると仮定すると、資産は、

    橋の資産90億円 + 誰だか不明な人のポケットにある資産10億円

    でバランスしている訳です。
    「誰か」と仰るのは正に明言で、資産の方は、誰だか不明な人のポケットにある資産との合算で成り立っているという事です。

    従って、国の借金ん兆円なら、国に資産として残っている分と、誰だか不明な人のポケットにある資産(既に何かに化けているカモ知れないが)の合計でバランスしている訳です。

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