時事通信「河野氏が官邸指示を拒否」→タイトルを改変

「水曜日だと深夜になってしまうので、就任会見は祝日を挟んで金曜日にしましょう」。この発言だけを聞くと、何も違和感はありません。ところが、これが時事通信の手にかかると、「河野太郎氏は当日中に会見をしなさいという官邸の指示を拒否した」、という見出しになってしまうようです。しかも、これを河野氏本人に指摘されたためか、時事通信はバックデートで記事タイトルをシレッと修正しているのです。

時事通信「河野氏らが会見に応じなかった」

昨日の内閣改造でデジタル担当相として入閣した河野太郎氏が「就任当日の記者会見に応じなかった」として、時事通信がこれを批判的に取り上げているようです。

河野デジタル相ら、記者会見せず 官邸は「改造当日」指示

―――2022年08月10日21時22分付 時事通信より

記事の見出しだけを見ると、「河野太郎(氏)は官邸の指示に逆らい、改造当日の記者会見を拒否した」という印象を持つ人も多いでしょう。ただ、そもそも論として、このうちの「官邸の指示」の部分については、時事通信によると「関係者によれば」、だそうです。

関係者によれば、首相官邸は全閣僚に同日中の会見を指示していた」。

また、時事通信が伝える河野氏自身の言い分は、こうです。

記者を待たせて深夜の会見を行うのは本意ではない」。

これは、いったいどういうことでしょうか。

時事通信によると、河野氏は2020年の菅義偉内閣発足時、当時の慣例に従い、未明に会見を行った際、この会見を巡って次のように述べたのだそうです。

前例主義、既得権、権威主義の最たるもの。こんなもの、さっさとやめたらいい」。

正直、「よくぞ言ってくれた」と思う国民も多いでしょう。オールドメディアの前例主義、既得権益に付き合うために、深夜・未明まで待機するというのも、意味のわからない悪弊そのものだからです。

河野太郎氏自身のツイートは?

ただ、本件を巡って河野氏自身のツイートを確認すると、さらに不可思議なことが判明します。

河野太郎

「今晩遅くなりそうなので、会見は金曜日にしますね」「了解」というのが時事通信の見出しになるとこうなる。
河野デジタル相、記者会見せず 官邸指示を拒否(時事通信)
―――2022/08/10 21:06付 ツイッターより

河野氏のツイートは、「今晩だと遅くなるから(祝日となる木曜日を挟んで)金曜日に会見を実施します」というものであり、「記者会見そのものを拒否する」、という話ではありません。河野氏のツイートが正しければ、時事通信のこの記事、タイトル自体に捏造の疑いがあります。

しかも、この一連のやり取りの問題点は、これだけではありません。

ここで鋭い方は気付くと思いますが、河野氏のツイートで引用されている、Yahoo!ニュースに転載された時事通信の記事のタイトルは、先ほど挙げたものと微妙に異なっています。

  • 河野デジタル相、記者会見せず 官邸指示を拒否
  • 河野デジタル相ら、記者会見せず 官邸は「改造当日」指示

…。

はて?河野氏が時事通信を貶めるために、ウソをついているのでしょうか?

時事通信、記事タイトルを「あとから改変した」

じつは、正解は時事通信の側が「あとから記事タイトルを改変した」、です。

実際、時事通信のトップページ(※下記スクリーンショット参照)を確認すると、やはり「河野デジタル相、記者会見せず 官邸指示を拒否」となっています。

図表 時事通信トップページ・スクリーンショット

(【出所】時事通信ウェブサイト・トップページ、2022/08/10 23:00時点で閲覧)

河野氏のツイートで引用されている『Yahoo!ニュース』の記事の掲載時刻が午後7時40分、河野氏のツイートが午後9時6分、冒頭で紹介した時事通信の記事の配信時刻が午後9時22分です。

ここから判断して、時事通信は当初、遅くとも午後7時台にオリジナルの記事を配信したものの、河野氏のツイッター上での指摘を受け、間で時事通信は慌てて記事タイトルを改変して16分後に公開したものの、自社ウェブサイトのトップページやツイッター上ではバッチリと当初タイトルが残ってしまった、というわけでしょう。

素人が検証してもわかる、非常にお粗末な対応です。

そういえば、時事通信といえば、昨年10月の衆院選でも、選挙当日に「自民党惨敗」を示唆する記事を配信しておきながら、数時間後に選挙情勢で自民党優勢が明らかになった際、慌てて記事を差し替えた、という「事件」がありました(『「自民1強に終止符」と報じシレッと修正した時事通信』参照)。

べつに「間違った報道をしてはならない」という話ではありません。人間、誰にでも間違いはあるのですから、間違いがあれば「間違っていました」とヒトコト述べたうえで、記事を改変すれば済む話でしょう。

それにしても、オールドメディアはバックデートでシレッと記事を修正する、という事例が多すぎます。いずれにせよ、インターネット時代において、それが通用すると考えているのだとしたら、これはとんでもない思い違いではないかと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. クロワッサン より:

    報道機関ってそれなりに教養のある人が働く者だとなってるんでしょうけど、実際には『過ちて改めざる、これを過ちという』を知らない残念な人達なのでしょうかね。。。

    ISO認証でトレーサビリティってのがありますが、共同通信みたいなレベルだと認証を受けられなさそうですね。

    歴史修正主義な体制って事で。

    1. KN より:

      他人の文書改竄をさんざん批判しておきながら、自分たちはこれですからね。

  2. 同業者 より:

    「よくぞ言ってくれた」と一番思っているのは記者のみなさんでしょうね。
    ただでさえ激務の記者です。
    家族と一緒に過ごす時間も大切ですからね。
    特に小学生以下の小さなお子さんをお持ちのご家庭は。

    1. 匿名 より:

      逆に連休の谷間の明日も出になって夏休みの予定を変更せざるを得なくなった方々もいるでしょう、メディアにもデジタル庁にも。

      1. 匿名 より:

        役所は暦通りだから登庁日

  3. わんわん より:

     昨晩(10日夜)はこのようなの記事ばかり w

    河野デジタル大臣 慣例の就任会見はせず書面でコメントを発表(TBS NEWS DIG Powered by JNN)
    https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/591e74660139da929367d7f16e15246328ce7c12&preview=auto

     主要メディアみんな同じ感じ(河野氏を貶める方向)
    複数メディアを読み比べて
    時事もJNNも(Yahoo)コメントを合わせて読まないとわけわからん w

     縦割り行政の解消・悪しき慣例の打破は(欠点はあるが)河野氏が適任だと思う

  4. 旗迷惑 より:

    私みたいな高齢者しか記憶にないでしょうが、その昔、当時の佐藤栄作首相が「新聞はウソをつく」と言って、テレビ取材しか対応しないという行動をとったことがありました(テレビも切り取りされるんですが)。
    権力を監視する役目という、自ら設定した弾除けの陰で、中立的立場を装いながら自分の意見に沿う内容を報道していたのが、今や一般人や、政治家自身が直発言できるようになり、また魚拓などにより逆に監視され、オールドメディア様たちはうかつなことが出来なくなりましたね。外国のメディアと組んでの情報ロンダリングなどに頼ることが多くなりそうな気がします。

  5. sqsq より:

    「切り取り」はメディアの常とう手段。
    王が巨人の監督だったころ夕刊紙にデカデカと「王解任」。
    こりゃあ大変だと思って夕刊紙を買ったがそれらしい記事がない。もう一度一面を見直すと王解任の下にハエくらいの字で「も」と書いてある。
    記事の内容は成績が悪ければ王といえども解任もありうるというあたりまえのことを書いただけのものだった。
    もうひとつ、みずほ銀行の最初のシステム障害時、今のNHK会長の前田氏が社長だったが「実害はありませんでした」とういう発言が大問題になった。大きなシステム障害を起こしておきながら「実害はありませんでした」とはどういうことだという論調でメディアに叩かれた。
    実は記者会見で記者の一人の「実害はあったんですか?」という質問に「実害はありませんでした」と答えただけ。こういうことを繰り返しているとメディアは相手にされなくなる。

  6. Sky より:

    本日の日経新聞の朝刊一面広告に「朝日新聞記者記事の書く力」という「朝日新聞の人気コラム筆者」という真田正明氏の本が宣伝されまして笑わせてくれました。

    1. sqsq より:

      「朝日新聞記者のこく力」のまちがいじゃない?

    2. 門外漢 より:

      確かに創作力はあるんでしょうねww

  7. 雪だんご より:

    「嘘じゃありませんよ~。勝手に誤解したらそれは読者が悪いんです~。
    あ~もううるさいな~、じゃあタイトルくらい変えてやりますよ~だ。
    別にこっちが間違ってる訳じゃありませんから謝りませんよ~。
    むしろこっちの善意に感謝して欲しいくらいですね~?」

    マスコミの中の人の本音を聞いてみたい物です。
    例え首にチェーンソーを当てられても言いそうにないですが……

  8. 元ジェネラリスト より:

    いつも朝5時更新直後にコメント入れてた人、今日は書いてないですね~。w

    河野氏のネット監視力は目を見張るものがあります。教えてくれるお仲間がたくさんいるんでしょうかね。
    記事差し替えや改竄に効果を発揮するくらいなのだから、ネットを使ったメディア対策、政権は河野氏のやり方をまじめに研究したらとも思うんですけど、どうもいまいち無関心のようです。
    専門部隊設けられないんでしょうかね。おおっぴらにやると「言論統制だ~」が始まるかもしれませんが。誤報・虚報が正されるなら公益です。

  9. KY より:

     媚中派と目される岸田首相や他の閣僚に対して保守派の目が厳しいですが、マスゴミがそれを見越してか知りませんけど、彼らに対する印象操作を時たまやってるとしか思えません。河野氏に関してはこれで二回目ですが、普段デマやガセネタに飛びつく「アベガー」を批判する自称保守が岸田首相や河野氏に対してはガセネタをソースにしても飛びついて批判する様はまさに「同族嫌悪」。しかも誤報が訂正されても全く恥じいる様子はないのですから増々アベガーとうり二つ。まさにマスゴミの思う壺。マスゴミは保守派にフレンドリーファイヤーさせるために不定期にこの手の印象操作をやってる気がします。岸田首相に対しても同様の印象操作をやった過去もありますし。

     https://ksl-live.com/blog51652

     リンク先はまとめサイトなのですが、このような信憑性の曖昧なものまで根拠にして岸田批判をするってもうまともじゃありません。批判ならあくまで信憑性の高いニュースソースを根拠にするべきなのに、無批判で飛びつく人たちは「反岸田無罪」とでも思ってるのでしょうか。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告