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韓国外相「慰安婦合意は尊重するが解決法模索も必要」

自称元慰安婦問題を巡って、韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官が21日、「重要なことは慰安婦合意の精神」だとしつつ、「被害者の尊厳と名誉回復して傷を癒やすことが重要だが、合意精神に則ってこの問題を解決していきたい」と述べたそうですが、何か盛大な勘違いをされているようです。自称元慰安婦問題自体は2015年12月の慰安婦合意をもって最終的かつ不可逆的に解決済みだからです。

慰安婦問題の深層

日韓諸懸案は自称元徴用工問題だけではない!

以前の『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』でもまとめたとおり、韓国の日本に対する不法行為のなかでもとくに大きなものは自称元徴用工問題です。

世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1...
【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論

このため、日韓諸懸案といえば、どうしても自称元徴用工問題を連想する人も非常に多いのですが、これは非常にミスリーディングです。何度でも繰り返しておきますが、自称元徴用工問題は「数ある日韓諸懸案のひとつ」に過ぎないからです(図表)。

図表 韓国の対日不法行為の一覧表(※引用・転載自由)

(【出所】著者作成)

何度でも繰り返しておきますが、これらのなかで、日本として無視できるものはなにひとつとしてありません。なぜなら、本質的には、これらの行為は韓国の日本に対する一方的な「二重の不法行為」――つまり、①ウソをついて②不当な要求をする、という代物だからです。

日韓諸懸案巡る韓国の「二重の不法行為」
  1. 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  2. 韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」などは多くの場合法的根拠がなく、しかも何らかの国際法違反・条約違反・約束違反を伴っている

(【出所】著者作成)

したがって、仮に百歩譲って(いや一万歩くらい譲って)韓国が自称元徴用工問題で日本にとって妥当な解決策を出してきたとしても、それで「おしまい」、ではありません。まだまだ諸懸案は山積みだからです。

自称元慰安婦問題は日本の側にも問題があった

そのなかでも、自称元徴用工問題、竹島不法占拠問題と並び、とくに大きなものが自称元慰安婦問題なのですが、この問題自体も「ウソをついて日本の名誉と尊厳を傷つけている」、「法的根拠のない要求をしている」という点において、やはり同様に「二重の不法行為」を構成していることがわかります。

そもそも自称元慰安婦問題とは、「①戦時中(=1941年12月9日~1945年8月15日の期間)、②日本軍が組織としての正式な意思決定に基づき、③朝鮮半島で少女のみ20万人を強制的に拉致し、④本人の意に反して戦場に連行して性的奴隷として使役した問題」のことです。

しかし、この構成要素①~④のいずれに関しても、確たる物証など存在しないどころか、客観的証拠を積み上げていくと、「被害者」を騙る自称元慰安婦らの多くについては、その実態は「ただの戦時売春婦」であることが明らかでしょう。

ただ、それと同時に非常に残念なことに、1993年の『河野談話』で、日本政府はこの問題があたかも事実であるかのごとく認めてしまいました。また、安倍晋三総理自身も2015年の日韓慰安婦合意で、この河野談話を承継し、「日本が(何らかの)悪いことをした」かのように認めてしまったのです。

その意味で、自称元慰安婦問題が今日のようにこじれてしまった原因の一端は、歴代日本政府の態度にもあったことは間違いありません。

「強制連行」「性奴隷」は公式に否定されている

ただ、安倍総理の後継者である菅義偉総理の時代には、「慰安婦=性奴隷」とする表現は適切ではないとの閣議決定がなされ(『従軍慰安婦・強制労働は「適切でない」と政府が認める』等参照)、現在の外交青書上も、次のような記述が確認できます。

「強制連行」

これまでに日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった。

「性奴隷」

「性奴隷」という表現は、事実に反するので使用すべきでない。この点は、2015年12月の日韓合意の際に韓国側とも確認しており、同合意においても一切使われていない。

慰安婦の数に関する「20万人」といった表現

「20万人」という数字は、具体的な裏付けがない数字である。慰安婦の総数については、1993年8月4日の政府調査結果の報告書で述べられているとおり、発見された資料には慰安婦の総数を示すものはなく、また、これを推認させるに足りる資料もないので、慰安婦の総数を確定することは困難である。

(【出所】『令和4年版外交青書』P32)

結局のところ、今後は自称元慰安婦問題が韓国側のウソ、捏造であるという事実を広めるために、日本政府は地道な努力を続けざるを得ないのでしょう。

韓国の最新の反応

慰安婦合意の「別の意味」

もっとも、安倍総理が主導し、岸田文雄外相(当時)が韓国側と取り交わしてきた日韓慰安婦合意を、韓国があっけなく反故にしたことは、日本外交にも意外な影響を与えました。

「韓国と約束をしても、必ず破られる」という実例ができたからです。

これによって、「日韓関係を円滑に進めるためには、多少なりとも韓国に譲歩しなければならない」といった主張が、日本社会ではほぼ説得力を失いましたし、米国も日本に対し、「日米韓連携を円滑化するために、日本は歴史問題で韓国に譲歩せよ」といった圧力を加え辛くなりました。

もちろん、安倍晋三総理が日米同盟を新たな高みに引き上げたこと、日米豪印「クアッド」の枠組みを作ったこと(『米上院「安倍総理は繁栄と安全保障に忘れがたい足跡」』等参照)も、日本が韓国に対し、無用な譲歩をしなくなった大きな要因であることは間違いありません。

しかし、少なくとも現在の日韓関係においては、この自称元慰安婦問題を巡っては日本が韓国に「譲歩する」ということはあり得ません。自称元慰安婦問題については慰安婦合意をもって「最終的かつ不可逆的な解決」が完了したからです。

韓国外交部長官の盛大な勘違い

こうした文脈で、次の記事を読むと、なかなかに驚くことが多々あります。

韓国外交部長官「2015年韓日合意尊重…解決方案を早く模索する必要ある」

―――2022.07.22 06:29付 中央日報日本語版より

中央日報によると韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官は21日午後、尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領に対する部署業務報告で、次のように述べたのだそうです(日本語表現として若干意味が通り辛い部分がありますが、原文のまま紹介します)。

  • 外交部の2015年合意を正式に尊重しなければなければならないと考える
  • 重要なことは合意精神だ。被害者の尊厳と名誉回復して傷を癒やすことが重要だが、合意精神に則ってこの問題を解決していきたい

朴振氏、なにか盛大な勘違いをなさっているようですが、そもそも重要なのは「合意の精神」ではありません。「合意を守ること」でしょう。

その意味では、まず韓国政府がやらなければならないのは、文在寅(ぶん・ざいいん)政権が解散してしまった慰安婦財団を再設立することであり、また、ソウルの日本大使館前などに設置された慰安婦像を撤去することでしょう。

また、自称元慰安婦問題の「解決」が何を意味するのかはわかりませんが、「慰安婦被害者を救済する」なら韓国政府がみずからの責任においてそれをやれば済むことであり、あるいは、自称元慰安婦問題が「自分たちの国のウソである」という事実を認めるなら、自称元慰安婦の支援団体などを摘発するなりすれば良いでしょう。

いずれにせよ、日韓慰安婦合意により自称元慰安婦問題自体は完全に韓国の国内問題と化しましたので、これに関してはいちいち日本を関わらせる意味はありませんし、日本としても関わる必要はまったくありません。

市民団体は朴振氏を非難

ちなみに、自称元慰安婦問題に関しては昨日、こんな報道もありました。

韓国市民団体「対日屈辱外交を糾弾…慰安婦合意継承、審判免れないだろう」

―――2022.07.21 15:44付 中央日報日本語版より

中央日報によると、韓国の「市民社会団体」は21日、「対日屈辱外交の極みを見せた朴振外交部長官を糾弾する」、などとする声明を出すとともに、「屈辱外交を中断せよ」と要求したのだそうです。

尹錫悦政府の対日外交にはいかなる原則も代案もないということが今回の外交部長官の訪日で明らかになった」。

奇遇ですが、このくだりだけを見ると、日本の側からもまったく同じことがいえます。

原則なしに日本の譲歩だけを要求するという尹錫悦政権の外交には、日本から見れば不信感しかありませんが、韓国の「左派勢力」にとっても同様に、これが「原則も代案もない外交」に映るというのは興味深い点でしょう。

それはともかく、中央日報によると、慰安婦合意を「政府間の公式合意として尊重する」という朴振氏の発言についても、この市民団体は次のように批判したそうです。

慰安婦合意は国民全員が反対した一方的な拙速合意だった。このような合意を継承するなら尹錫悦政府は歴史的過ちとそれに伴う審判を免れないだろう」。

「歴史的過ちを犯している」のは、「ウソをついて外国の名誉と尊厳を傷つける」という意味ではむしろ韓国の行動そのものであり、「それに伴う審判を免れない」のはこの市民団体を含めた慰安婦利権の側の話ではないでしょうか。

中途半端が良くない

いずれにせよ、尹錫悦政権としては、日本に対して中途半端に「譲歩」(?)しても、どうせ国内では批判されるわけです。そうであるならば、どうせならば次のどちらかの行動を取るほうが、いっそのことスッキリしているような気がします。

  • 徹底的に国際法を順守して、前任までのすべての政権の不法行為を日本に対して真摯に謝罪し、日韓諸懸案のすべてを国際法に従って適法に解決する
  • 徹底的に国際法を無視して、日韓諸懸案のすべてを日本に責任転嫁する

もっとも、このどちらもできず、現在のような中途半端な状態が長続きしたとすれば、それはそれで日韓関係が縮小していくことにつながるのですが。

新宿会計士:

View Comments (19)

  • 韓国の日本に対する一方的な「二重の不法行為」――つまり、①ウソをついて②不当な要求をする、という代物だからです。・・・これとよく似た構図が学校のいじめ。 ①いじめて②いじめが嫌なら金をもってこい。 韓国脳の人が再生産されていじめは一向に減らない。①②の連鎖を止めるには 断固たる措置しかありえないのに 教育委員会が表沙汰にしたくなくって まあまあと隠蔽してしまう。中には旭川の事件のように公的組織までが隠蔽に加担する。 学校だけでなくマスコミ 政財界にも韓国脳が蔓延してきている。

  • > 中途半端が良くない
    その通りなんでしょうが、恐らくできないんじゃないかな。
    粛々と、日本の譲歩のみを懇願して続いていく。そして、韓国民、日本政府両方から愛想つかされる。

    個人的には、後者の「日本に責任転嫁する」をお願いしたいところですが、韓国政府は、1つだけ起死回生のウルトラCがあるとすれば、「差し押さえ資産の現金化と日本への宣戦布告」
    これをやれば、尹錫悦政権の支持率は爆上がり間違いなし、と思います。

    冗談はさて置き、どうせ最終的には「ニホンガー!」ってなると思います。

    • マスオ様

      冗談ではなく、資産売却が本当に起死回生の策かもしれません。

      では、その流れを。
      資産売却。
      100の制裁。
      ここまでは予想できます。
      次は、日韓のヒトモノカネの遮断。
      すると、あら不思議。
      宿主から切り離された寄生虫のごとく、外国に売れる製品が製造不能となります。
      外貨不足により、ウォン暴落。
      資源を輸入出来無くなり、貧困層が激増。
      ここで、ニホンガーと叫ぶものと資産売却のセイダーと叫ぶものとの争いが勃発。
      そこで、ニホンガーを弾圧するか資産売却のセイダーを弾圧するか。
      ここで、初めて慰安婦や徴用工の嘘を暴き、コイツらのせいで日本に喧嘩を売ったせいで今の状況があると叩く事で人気(爆)上がり。
      ここで初めて国際法を守った解決方法が取れます。
      ただ、生活をとるかそれとも気持ちのいい真実をとるかといわれたら、アチラの方々は真実を取りそうです。

  • 慰安婦財団の解散は、「韓国は国家間の約束を守らない」動かぬ証拠となっており、6月の訪日時に、岸田首相がバイデン大統領に「あなたも副大統領の時、日韓合意に賛成したが、その後に何が起こったのか知っているではないか」と話したら、同大統領は何も言えなかったようです。
    徴用工問題も日本から見れば、明白な国家間の約束違反ですが、海外からはやや判りにくい難点があります。
    従って、韓国政府としては、慰安婦財団を復活させて、「約束を守らない国」という汚名を返上したい。ただイヨンスや韓国世論が納得しない。
    日本としては高見の見物で良いのではないでしょうか。ただ万一同財団を復活させ、日本の拠出した資金をそこに戻す場合は、”韓国政府の公式な謝罪”を要求すべきです。「国家間の合意を一方的に実質的に無効化し、日本に迷惑をかけた。申し訳ない」と。
    慰安婦問題の本質は、「貧困による性搾取」であり、日本人はそれほど恥じる所業をしたわけではないと思っていますが、そのあたりは学者の研究に任せるべきでしょう。下手に騒ぐと、韓国の「日本人は真の反省をしていない」という主張に力を与えかねません。国際世論上、不得策と考えます。

  • 日本としては解決済みなので、
    「韓国の国内問題として、解決してください」
    と言うしかないんだよなぁ。

    さあ、尹政権はどうするかな?

  • 法律や契約書を字面どおりに読むと塩梅良くない時に、都合よく解釈するために、法の趣旨、法の精神という言葉を持ち出します。
    全ての起こりうる事象を文面に書き込むのはムリなので、そういう解釈が必要になることは、ままありますが、韓国の場合、明記されている文面までも反故にできると考えていることが理解できないです。

  • 例のイ・ヨンスおばあさんは昨日、パク・ジン外交部長官に「2015年合意は無効だ」と主張したようです。

    https://news.yahoo.co.jp/articles/5b950ed33a1fb5dafd2b7a47a0d0cd115b505810

    いや、今更無効だと云われても、現実には7割近い数の元慰安婦たちがちゃっかり受け取っちゃっていますしねぇ~」としか言えないでしょう。

    7割ですよ,7割。選挙だったら圧倒的勝利じゃないですか、これ。このおばあさんは自分がノイジーマイノリティだという自覚はないんでしょうか?(笑)

    要するに、後はそっちの身内同士で揉めてろ!として放置するしかない案件ですね。

  • >この市民団体は次のように批判したそうです。

    「慰安婦合意は国民全員が反対した一方的な拙速合意だった。このような合意を継承するなら尹錫悦政府は歴史的過ちとそれに伴う審判を免れないだろう」。

    典型的な左翼言説。
    国民全員が反対したら政府の中に合意するものはいないし、7割の売春婦が受け取るはずがない。

    ”条約・合意を守らない、嘘つき”国の国民なので、”反対でも貰える金は貰う”と言う乞食根性の者がいる可能性を私は否定しないが、この市民団体の言うことは受け取った7割の売春婦が”反対でも貰える金は貰う”と言う乞食根性の持ち主と言うことになる。

    この市民団体に突っ込む彼の国の言論人がいないのが不思議。

  • ぶん殴ってきておいて、「こっちの拳も痛いんじゃい!痛み分けだな…」

    まっぴらだね。
    今現在も殴りかかってきてる暴漢相手に出来るもんか。

  • >中途半端が良くない

    それはそうなんだけど・・・・ 

    韓国は、
    >日韓諸懸案のすべてを日本に責任転嫁する
    という立場を明確に示してるように思うのです♪

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