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    Categories: 外交

プーチン「欧米は既に敗北:倒したければやってみろ」

ロシアのウラジミル・プーチン大統領は7日、「欧米諸国は戦場でロシアに打ち勝ちたいというのならばやってみればよい」、「欧米諸国はすでに敗北した」、などと述べたのだそうです。「すでに敗北している」のに「倒してみろ」という挑発も奇妙ですが、それ以上に戦略的に見て「敗北した」のはロシアの方ではないか、といったツッコミが飛んできそうですが、いずれにせよ、自分たちが窮地にあるときほど、舌鋒鋭く相手を罵るというのは、中国、ロシア、北朝鮮、その他1ヵ国の共通の特徴なのかもしれません。

ウクライナ侵略戦争、一進一退

ロシアによるウクライナに対する違法な侵略戦争が始まってから、もうすぐ5ヵ月近くが経過します。

英国防衛省が発信している『インテリジェンス・アップデート』を含めたツイートによれば、ウクライナの東部や南部はもうすっかりロシアにより占領されている(図表)ことが確認できるほか、さまざまな報道から判断しても、戦況は一進一退であることがうかがえます。

図表 ウクライナ侵略戦争の戦況図

(【出所】英国防衛省・7月7日付ツイート

ただ、それと同時に以前の『英軍制服組トップ「ロシアはすでに戦略的に敗北した」』でも取り上げたとおり、ロシアは局所戦ではそれなりの「戦果」らしきものをあげているのかもしれませんが、「戦略的には敗北した」との見方が妥当でしょう。

ロシアのラブロフ外相はBBCのインタビューに対し、「我々はウクライナに侵攻していない」と述べたそうです。なかなかに驚く認識ですし、「ウソにウソを積み重ねるとウソに呑み込まれる」という実例そのものでもあります。その一方で英軍制服組トップのラダキン参謀総長は「ロシアはすでに戦略的に敗北した」とする認識を示したのだとか。ロシアが払った犠牲が大きすぎるロシアによるウクライナ侵略の開始から、もうすぐ4ヵ月が経過します。非常に残念なことに、ロシアによる違法な侵略行為はいまだに続いており、ウクライナで多く...
英軍制服組トップ「ロシアはすでに戦略的に敗北した」 - 新宿会計士の政治経済評論

なぜなら、ロシアは当初、圧倒的な火力でウクライナを制圧しようとしていたフシがありますが、ウクライナ側の抵抗が頑強だったこともあり、首都・キーウの制圧やウォロディミル・ゼレンスキー政権の排除には失敗。いまや完全に、ウクライナがロシアの「敵対国」と化してしまったからです。

また、ロシアが嫌がっていた「NATOの東進」は着実に進んでおり、先日はフィンランドとスウェーデンのNATO加盟が正式に決定されたほか、将来的なウクライナのNATO加盟も視野に入っています。このように考えると、ロシアは事実上、戦略的には大きな敗北を喫したようなものでしょう。

ロシア経済はもうすぐ大混乱に陥る?

ロシアが受けている影響は、これだけではありません。

ロシアは現在、西側諸国から厳しい経済・金融制裁を食らっており、外貨準備の凍結措置、起債の禁止措置、主要銀行のSWIFTNetからの遮断措置に加え、西側諸国からのさまざまな戦略物資の輸入が滞り始めている、という状況にあります。

もちろん、ロシアは北朝鮮などと異なり「資源国」でもありますので、その気になれば「内に籠る」ことは可能ですし、また、外貨準備も完全に凍結されたわけではなく、とくに中国が対露制裁に参加していないため、人民元などの金融システムを使っての国際決済取引はまだ可能です。

ただ、それと同時に、ロシアは国際的な保険システムからも排除され、航空機、船舶、車両といった輸送用機器、PCなどのデバイスやソフトウェア、さまざまなシステムなどのメンテナンスができなくなるため、この状態が長引けば、数年から早ければ数ヵ月で、社会全般にさまざまな影響が出てくるでしょう。

プーチン大統領「倒せるものなら倒してみな」

ただ、こうしたなか、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は、西側諸国に対してかなり強気の発言をしたようです。

中東系のメディア『アルジャジーラ』(英語版)に7日付で興味深い記事が掲載されていました。

West wants to defeat Russia on battlefield? ‘Let them try’: Putin

―――2022/07/07付 ALJAZEERA英語版より

アルジャジーラによるとプーチン大統領は木曜日、議会関係者との懇談のなかで、「欧米は戦場でロシアを倒したいというのならば、やらせればよい」、「紛争が長引くほど、ウクライナでの和平交渉の見通しは暗くなるだろう」と指摘。

あわせて欧米諸国に対し、自国のウクライナに対する「介入」は、「多極化した世界への移行を示すものだ」との認識を示し、ロシア政府としては「和平交渉にはオープンである」と主張した、などとしています。

このあたり、非常に下品な表現を多用して相手国を挑発するというあたり、中国、北朝鮮、ロシアおよびその他1ヵ国などに共通する特徴なのでしょうか?

アルジャジーラはまた、ロシアが以前から「欧米はロシア経済に制裁を加え、ウクライナに最新兵器を供給することで、ロシアに対する代理戦争を戦っている」などと非難してきた、などと指摘。プーチン氏が「戦争が長引くほどロシアとの和平交渉が難しくなることを知るべきだ」と述べた、ともしています。

このあたり、プーチン氏の発言を見る限り、厳しい状況に置かれているのはむしろロシアの側である、という証拠にほかならないようです。

共同通信は「欧米はすでに敗北」と報道

なお、この話題について、日本の共同通信は、プーチン氏が「米国中心の世界秩序は根本的に壊れ、欧米は既に敗北した」と述べた、などとも報じています。

欧米、既に敗北とプーチン大統領 「勝ちたければ試せばいい」

―――2022/07/08 5:29付 Yahoo!ニュースより【※共同通信配信】

この発言自体はさきほどのアルジャジーラの報道では確認できないのですが、この発言が事実だとすれば、「むしろ敗北したのはロシアの方ではないか」というツッコミを入れる価値くらいはあるかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (2)

  • 独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (というより、自分でも、そんな事態は、あって欲しくないので)
    (ユダヤ系のゼレンスキー大統領の)ウクライナ政権をナチスとして侵攻したロシアが、「日本を裏で支配している(ナチスのような)日本共産党を倒すために、日本を攻撃する」と言い出したら、共産党は何と言い出すか見てみたい気がします。(なにしろ、次の日曜は参議院選挙の投票日なので、共産党が、その場合の対応として、何と答えるか気になったもので)
    蛇足ですが、他国を攻撃しようと思ったら、でっち上げでも、その口実は、何でもつくれるものです。
    駄文にて失礼いたしました。

  • モスクワやペテルブルクからの街頭撮影動画 Youtube 投稿を見続けていますが、店頭販売価格の上昇はあれ生活ダメージのようなものが広がっているようにはとても思えませんね。手ぬるいということでしょう。