自称元徴用工が「我々は日本企業と直接交渉したい」と言い出す一方、次期駐日大使に「内定」しているとされる尹徳敏(いん・とくびん)氏が3年前に、この問題を巡っては「3つの原則が大事だ」とする認識を示していた、とする報道も出ています。ここに来て何かと混沌を極める自称元徴用工問題ですが、そもそも日本の側に「妥協する」必要性はあるのでしょうか?
目次
鈴置氏の著書、200冊突破!
先日より当ウェブサイトでは韓国観察者である鈴置高史氏が先月上梓した新刊書『韓国民主政治の自壊』の宣伝を(鈴置氏に無断で)勝手に行っています。
こうしたなか、当ウェブサイトから確認できる売上としては、アマゾン・リンク(Kindle版ないし書籍版)を経由して販売された冊数が、月曜日の時点で202冊に達しました。
本書のなかで、とくに重要だと考えられる記述をいくつか抜き出しておくと、こんな具合です。
「韓国の『離米従中』の背景には、朝鮮半島の歴代王朝が中国大陸の王朝に朝貢していたという古代からの歴史によるところが大きい。同時に近代に至り、自らと同様に西洋の衝撃をきっかけに落ちぶれた中国への共感も大いにあずかっている。幾重もの歴史で培われた中韓両国の密やかな連帯感を欧米人はもちろん、西洋型の近代化にいち早く成功し、植民地帝国の隊列に加わった日本人は見落としがちである」(P26)。
「正義は対立する双方にある。だからこそ話し合って妥協点を見つけ、それを守ろうと約束する。これが条約だ。『正義は韓国にある』と言い出して条約を破るのなら今後、韓国とは一切、約束できないことになる」(P118)。
「韓国を相手にしなくなったのは日本だけではない。米国も北朝鮮も、そして中国からもまともに扱われなくなった。自らの力を過信した傲慢な外交で、孤立の一途をたどったのだ。日韓関係が悪化したのも『日韓関係の特殊性』からではない。『韓国の特殊性』が原因なのだ」(P165)。
「分配とは基本的に持てる者の資産を取り上げ、持たざる者に与える作業である。党争を続ける韓国の正解が、極めて困難な社会的合意を作り上げることができるのだろうか」(P262)。
…。
どれも正論ばかりであり、頷きながら読むしかありません。ぜひ、一人でも多くの日本人がこの書籍を熟読していただきたいと思う次第です。
自称元徴用工問題の本質
再び関心集める自称元徴用工問題
さて、数ある日韓諸懸案のひとつが、自称元徴用工問題です。
今月4日、韓国政府が自称元徴用工問題をめぐる官民協議体の初会合を行ったこともあるからでしょうか、ここ数日、韓国メディアでは自称元徴用工問題への関心が再び強まっているようです。
ただ、自称元徴用工問題を考える際に、必ず踏まえておかねばならない事実がいくつかあります。
自称元徴用工問題自体、「問題自体が韓国側によるウソ、捏造、歪曲などに基づくものである」という本質的な問題点を抱えているほか、韓国の司法による違法判決、韓国の政府による国際手続法違反などの周辺論点を伴っている、という点です。
自称元徴用工問題の3つのポイント
- ①韓国側が主張する「強制連行」ないし「強制動員」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
- ②2018年の自称元徴用工判決を含め、韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」には法的根拠がない違法なものである
- ③日本政府はこの違法判決を是正するために2019年に日韓請求権協定に基づき是正を申し入れたが、外交協議、国際仲裁などの一切合切の手続を韓国政府が無視した
(【出所】著者作成)
自称元徴用工問題の本質をこのように定義するならば、その自称元徴用工問題の「解決」も、おのずから決まってきます。すなわち、少なくとも次の2つの要素に関しては、絶対に欠かせません。
自称元徴用工問題の解決とは?
- 朝鮮人の違法な強制労働というウソをついて日本を貶めたことに対する韓国政府からの公式謝罪
- 2018年10月と11月の違法判決を韓国の国家自身の責任において公式に無効にする措置
しかし、残念ながら、この2点については韓国側から回答は出てきていません。それどころか、自称元徴用工問題に関し、韓国側から出てくる「解決」構想自体、いずれも深い疑問を抱くようなものばかりです。
というのも、『徴用工「その場しのぎ」に終始する韓国「官民協議体」』などでも取り上げたとおり、韓国メディアに報じられている「解決策」とやらを眺めていると、「日本企業が『自発的に』参加する基金」であったり、「韓国政府による代位弁済」であったり、と、正直、「お話にならない構想」ばかりだからです。
本日、韓国政府が自称元徴用工の「官民協議体」の初会合を非公開で開催するとみられるのだそうです。ただ、関連する報道を眺めていても、日本側が要求する「2018年の違法な判決の問題」を根本から解決するという話はまったく聞こえてきません。韓国が根治療法を拒否し、対症療法に終始するならば、日本は日本として対処を考えなければならないのではないでしょうか。自称元徴用工問題の「3つのポイント」自称元徴用工問題、すなわち「戦時中、強制徴用された」などと自称する者たちやその関係者らが日本企業に対し謝罪や賠償を求めて... 徴用工「その場しのぎ」に終始する韓国「官民協議体」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
尹徳敏氏の「代位弁済案」「基金案」
こうしたなか、改めて確認しておきたいのは、これらの「基金案」や「代位弁済案」の具体的な中身です。
これらについては5月下旬に日本経済新聞社が主催したセミナーで、次期駐日大使に「内定」しているとされる尹徳敏(いん・とくびん)氏が述べたものが有名でしょう(『日韓関係巡る次期駐日大使内定者のお話にならない認識』参照)。
「尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権時代においても、日韓関係が健全な姿を取り戻すことはない」。これは、当ウェブサイトで一貫して報告している予想ですが、この予想が正しい証拠が、またひとつでてきました。次期駐日韓国大使に内定している尹徳敏(いん・とくびん)氏が、自称元徴用工問題を巡って「基金案」方式での解決を提案したのです。端的にいえば、お話になりません。「日韓関係改善」期待が誤っている理由世間のメディアの潮流と異なり、当ウェブサイトでは一貫して、「尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権下でも、日韓諸懸案が... 日韓関係巡る次期駐日大使内定者のお話にならない認識 - 新宿会計士の政治経済評論 |
具体的には、「代位弁済案」は自称元徴用工に対し韓国政府がおカネを払い、後日、その金額を日本企業に対して請求するという構想であり、また、「基金案」とは日韓請求権協定に関連した日韓企業が「自発的に」参加する財団が賠償金を支払う、といった構想なのだそうです。
そのうえで尹徳敏氏は「問題解決のためには日本との協力が必要」などと述べたのですが、それだけではありません。韓国が捏造したもうひとつの「歴史問題」である自称元慰安婦問題を巡っても、尹徳敏氏はこんなことを述べています。
「問題に対する責任がある日本側で、その後『お金ですべての問題が終わった』というような発言が出てきたことから世論が大きく悪化して状況が変わった」。
端的に申し上げるなら、この程度の認識の人物が駐日大使として日本にやってきたとして、姜昌一(きょう・しょういち)前駐日大使と比べ、日韓関係に対してなにか生産的な仕事ができるとも思えません。
そもそも韓国が日本との関係で真っ先にやらなければならないのは、「自称元徴用工への賠償」ではなく、「日本に対しウソをつかないこと・違法な請求をしないこと」です。自称元徴用工への賠償はやりたければ自分の国で勝手にやれば良い話であり、日本はいっさい関係ないのですが…。
過去に尹徳敏氏は「3つの原則」を示していた!?
ただ、こうしたなかで、この尹徳敏氏を巡り、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には昨日、少し気になる記事が掲載されていました。
次期駐日韓国大使、「強制動員被害財団、日本から1ウォンも受け取ってはならない」
―――2022.07.05 11:26付 中央日報日本語版より
中央日報によると、尹徳敏氏自身が「強制動員被害者に対する賠償問題」の解決策について、過去に次のような原則を示したことがある、というのです。
- ①日本側からは1ウォンたりとも受け取らない
- ②請求権は1965年に終結している
- ③大法院判決は尊重しなければならない
これらの原則は尹徳敏氏が2019年に自称元徴用工らに向けて話したとされる内容の一環だそうであり、具体的には「まずは財団を作るべき」としたうえで、「日本企業が自発的に参加するならばそれは歓迎する」としつつも、基本的には日本企業に金銭を請求すべきでないと述べたのだそうです。
非常に意外な認識です。この3原則のうち、①と②については、いちおう日本側の主張に沿ったものだからです。
もちろん、③についてはやはり日本として受け入れられるものではありませんし、韓国が自称元徴用工問題を捏造して日本の名誉と尊厳を貶めているという点について言及がない時点で、この「答案」も落第点と言わざるを得ません。
しかし、ここまで述べたのであれば、もう少しだけ頑張れば、日本側としても辛うじて歩み寄りを検討することはできたのかもしれません。とくに日本政府が日韓請求権協定に基づく外交協議を申し入れていた時点でこの案を提示していれば、そこから協議が行われていた可能性はあります。
もっとも、非常に残念な話ですが、この尹徳敏氏の構想については、おそらく今後日の目を見ることはないでしょう。先ほども指摘したとおり、韓国政府自身が問題解決に向けた努力を拒否したからです。
いずれにせよ、日韓関係がここまでこじれてしまった現在、この「2019年版・尹徳敏案」では、問題解決には至らないでしょう。
自称元徴用工側は「日本企業と交渉したい」
さて、『裁判で勝ったのに「日本企業と交渉」と言い出す徴用工』でも取り上げたとおり、ここにきて自称元徴用工らは「日本企業と直接交渉したい」などとする意向を示しているようです。
差押えたならさっさと売却すべし自称元徴用工側が、またぞろ、「日本企業と直接交渉したい」などと言い出したようです。裁判で勝ったのならばグダグダ交渉などしていないで、さっさと資産を差し押さえて換金すれば済む話ではないでしょうか。こうしたなかで思い出すのが、自称元徴用工側が昨年、三菱重工(の孫会社)の金銭債権を差し押さえたものの、あわてて債権の差し押さえを撤回したという事実です。官民協議体巡る社説中央日報社説「官民協議体と財界会議、関係の糸口開けるか」昨日の『徴用工「その場しのぎ」に終始する韓国「... 裁判で勝ったのに「日本企業と交渉」と言い出す徴用工 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、これも大変に奇妙な話です。
自称元徴用工判決自体は(国際法的には違法であっても)韓国の国内法的には最高裁に相当する「大法院」が確定判決を下しているものであり、法手続だけで見るならば、粛々と日本企業の資産差押え、換金を実行すれば済む話です。
そもそもデタラメな法解釈・法運用が罷り通っている韓国のことですから、子会社、孫会社にまで広げれば、日本の「戦犯」企業の在韓資産のなかには韓国企業に対する売掛債権を保有しているケースもあるでしょう。
実際、昨年8月には自称元徴用工側が三菱重工(の孫会社)の韓国企業に対する売掛債権を差し押さえたという事例がありました(『徴用工「金銭債権の差押」の衝撃』等参照)が、これなどもお得意のデタラメ司法で「法人格否認法理」などを乱発すれば、金銭債権を換金することができたはずです。
ただ、それをせずに、この期に及んで日本企業と「交渉」したいとは、なんとも面妖な話です。
こんな見え透いた罠を仕掛ける韓国
こうしたなか、中央日報には昨日、こんな「続報」も掲載されていました。
強制徴用被害者「日本企業と直接交渉したい」…日本の態度変化は可能か
―――2022.07.05 18:02付 中央日報日本語版より
中央日報によると、自称元徴用工やその代理人らは4日、「強制動員問題は被害者と加害企業が訴訟を行ってきた事案だ」、などとしつつ、「被害者と日本企業が会って議論をすることが当然の道理だ」、などと述べたのだそうです。
これについて中央日報は、こう述べます。
「2018年11月、三菱重工業を相手取った損害賠償訴訟で最終勝訴した<中略>さんの場合、早ければ今秋にも賠償に向けたすべての法的手続きが終わる。<中略>それでも被害者側が日本企業との対話を要請したのは、十数年にわたる法的争いの目的が単に『お金』のためだけではないという意味と解釈される」。
自称元徴用工の側が日本企業との「対話」を要請した理由は、たんに「おカネ」のためだけではない、というのはおそらくそのとおりでしょう。もう少し厳密にいえば、「おカネ」よりもさらにたちが悪い、「自称元徴用工に対する謝罪利権の確立」のためでしょう。
これについて自称元徴用工を支援している団体の代表は次のように述べたそうです。
「大法院判決趣旨に基づき日本企業の資産を強制売却して賠償を受ければ痛快なことと考えるかも知れないが、これは被害者の傷を癒し尊厳を回復する『真の和解』にはなれない。単純に賠償金をいつ受け取るのか、どれだけ受け取るのかよりは、日本企業が強制動員の事実を認めて謝罪の意向を表明し、被害者がこれを受け入れて心の荷を下ろす方式の解決策でなければならない」。
ついホンネがポロポロと出ています。彼らの目的は「真の和解」、すなわち「強制連行された」とする自分たちのウソ・捏造を日本側が全面的に認め、それに基づき未来永劫、日本に対して謝罪をさせることにある、ということなのです。こんな見え透いた罠に騙されてはなりません。
「日本企業は悪くない、悪いのは日本政府だ」
また、中央日報の記事では、三菱重工の場合、自称元徴用工と断続的に「協議のテーブル」に着いた、などと指摘しつつ、こんな記述が出てきます。
「問題は日本政府の頑強な態度だ。日本側は大法院判決直後の2018年10月末に外務省や経済産業省など日本政府官庁が共同で説明会を開き、『1965年の韓日請求権協定ですべての賠償が終わっており一切の賠償と和解には応じないように』という趣旨の指針を下した」。
具体的には、自称元徴用工が提起した訴訟で被告になった70社が集められたそうであり、中央日報はこれについて、「日本政府はこれを国家対国家の問題と認識し直接ガイドラインを下した」かたちだと述べます。
まるで、「自称元徴用工との個別交渉を日本企業も望んでいるけれども、日本政府がそれを邪魔している」、とでも言いたいのでしょうか。
そのうえで中央日報は、「日本政府のこうした指針が有効な状況では強制徴用被害者と日本企業間の交渉窓口を設けたとしても具体的な解決策を導出するのは難しい」としたうえで、「日本の頑強な態度を転換させるための韓国の外交的努力が必要だ」と指摘。
「日本政府の態度変化が先行し、その後被害者と日本企業間の交渉窓口が設けられるならば解決策が用意される余地は残っている」、などと結論付けます。
本当にふざけた議論です。
少なくとも本件について解決に向けた努力をしなければならないのは韓国の側だからです。
問題の放置は韓国のためにならない
「日本の側も妥協が必要」の詭弁
ただ、こうした議論が出てきたついでに、もうひとつ、非常に重要な論点を紹介しておきます。それは、「このまま日本が譲歩しなければ日韓関係が破綻する」、という議論です。
当ウェブサイトに昨日掲載した『【インチキ論説】韓国の関係改善の動きに日本も答えよ』がその典型例ですが、これについては自分で執筆しておいてなんですが、あまりにもばかげた議論なので、申し訳ないのですがノーコメントとさせていただきます。
本日の「インチキ論説」です。昨日、韓国で自称元徴用工問題をめぐる官民協議体が発足したとの報道がありましたが、これを受けて、一部のメディアがいかにも主張しそうな内容を想像してみました。なお、もしも本稿を「社説に使いたい」、「そのまま紙面に掲載したい」と思われる新聞社の方がいらっしゃれば、当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』が出所であることがわかるようにしていただければ、自由に転載していただいて差し支えありません。インチキ論説シリーズ当ウェブサイトではときどき、「いかにも」な論考を掲載する... 【インチキ論説】韓国の関係改善の動きに日本も答えよ - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、最近の日本では、「このままだと日韓関係が破綻してしまう」、「だから韓国が現実的に守れそうなところまで妥協せざるを得ない」、といった主張をしたり顔で述べる人もいます。「日本もいつまでも国際法の原理原則にこだわり続けていると、日韓関係がいつまでたっても好転しないぞ」、という警告、というわけですね。
この指摘、「日韓関係の破綻を避けるためには」、という前提条件を置くならば、部分的には正しいものです。普段から当ウェブサイトにて指摘しているとおり、日韓関係の破綻を防ぐためには、究極的には①韓国が約束を守るか、②日本が妥協するか、そのどちらかしかないからです。
そして①、②がどちらも実現しなかった場合、結局は③日韓関係が破綻せざるを得ない、という選択肢が待っているのです。
日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
- ①韓国が国際法や国際約束を誠実かつ完全に履行することで、日韓関係の破綻を回避する
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
- ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する
(【出所】著者作成)
逆にいえば、こんな三段論法が成り立ちます。
- ③については何が何でも絶対に避けなければならない。
- しかし、現在の韓国の姿勢を見ていると、①については期待できない。
- よって、日本が譲歩する②の選択肢しかありえない。
…。
したがって、「もしも日韓関係の破綻を防ぐのであれば、どこかで日本が妥協・譲歩せざるを得ないのだ」、という主張は、ある意味では非常に正しいと言えるでしょう。
そもそも前提条件が誤っている
ただ、ここで少し発想を転換していただきたいと思います。
この点、日本の側でも自称元徴用工問題を巡って「いつまでもこの膠着状況が続くのは良くない」、「現実的にどこかで落としどころを考えねばならない」、という主張自体、一見するともっともらしいのですが、じつは、前提条件を大きく誤っているからです。
先ほどの「自称元徴用工問題の3つの本質」という話に少しだけ戻りましょう。
自称元徴用工問題の3つのポイント
- ①韓国側が主張する「強制連行」ないし「強制動員」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
- ②2018年の自称元徴用工判決を含め、韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」には法的根拠がない違法なものである
- ③日本政府はこの違法判決を是正するために2019年に日韓請求権協定に基づき是正を申し入れたが、外交協議、国際仲裁などの一切合切の手続を韓国政府が無視した
(【出所】著者作成)
これらの諸論点をめぐっては、日本としてはたった1ミリたりとも譲歩することはできません。なぜなら、日本自身が主権国家であるのに加え、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」などの構想を全世界に向かって提唱する立場にあるからです。
とくに上記①の論点に関しては、日本が何らかの「解決策」を韓国側と「協議・交渉」などしようものなら、日本が自称元徴用工問題という「虚偽の問題」を認めた証拠にもなってしまいます。まさに、韓国が作り出した自称元慰安婦問題の二の舞でしょう。
この問題を放置することは、韓国自身のためにならない
また、この問題を放置することは、韓国自身にとっても良い話ではありません。
上記②の論点に絡めて指摘しておくならば、韓国自身が国として外国との条約を踏みにじる判決を下す国だ、という評価を国際社会において確立させることにつながりかねませんし、③の論点に関しては、韓国政府は問題が発生しても条約を守らない国である、という事実を定着させるものでもあるからです。
いずれにせよ、国際法を踏みにじる国・ロシアが現在、西側諸国からどのような扱いを受けているのかを思い出しておくと、「ウソをつくこと」、「国際法を守らないこと」が何を意味するかは明白です。
ロシアの場合はまだ軍事大国・資源国であり、中国、インドなどとの独自のコネクションもあるため、西側諸国の制裁には何とか耐えていますが、資源のない韓国の場合は国際法を尊重する産業・通商国家として生きていくよりほかありません。
その韓国が国際法を平気で踏みにじっているということ自体、韓国が自分で自分の未来を踏みにじっているのと同じなのです。
なにより、自称元徴用工問題を含めた日韓諸懸案で、日本が国際法の原理原則を無視して韓国に譲歩した場合には、それは日本自身が国際法を破るのに加担しているだけでなく、韓国のことを「自立した国家」として扱っていないという証拠でもあるのです。
また、世の中には「韓国も国際法を守るほうが良いに決まっているが、韓国のために今回は日本が譲歩してあげて、今後は韓国に法を守らせるべきだ」、などと考える人もいるかもしれませんが、それは本当に「余計なお世話」です。
いずれにせよ、韓国が韓国の未来をどう切り開いていくかは韓国自身が考える話であり、赤の他人である私たち日本人が口出しをして良い論点ではありません。
私たち日本人にできることは、「もしも韓国がウソをつかず約束を守る方向に舵を切るならば、それに応じて未来志向で付き合う」だけの話であり、「もしも韓国が今までどおりウソや捏造、約束破りを続けるならば、それに応じて日韓関係を縮小する」だけの話です。
もちろん、地政学的に見て、日韓関係は今すぐ「断交」などすることは難しいのですが、その気になれば、少なくとも産業・経済面では、現在の日韓貿易高を10年後には半減させる、韓国向けの国際与信を1年以内に対外与信全体の1%未満に抑える、といった対応ならば可能でしょう。
いずれにせよ、無秩序な日韓断交は避けねばならないにせよ、日韓関係を段階的に縮小(テーパリング)するというのは、日本全体にとっての現実的な目標として視野に入ってくるのではないかと思う次第です。
View Comments (13)
日本相手なら何しても問題ない って思想を韓国は捨てられるかな?
冷戦時代の乳母日傘が忘れられないのはわかるけど、北の核開発牽制すらできない今の韓国にしゃぶらせる飴は無い
現金化からの報復合戦になったとしても、多分戦争にまではならないような気がするのです♪
じゃあどうなるのかなってちょっとだけ想像してみたのです♪
政府間では、機会があれば相手を批判するだろうし、二国間で何かするなんてことはなくなると思うのです♪
ただ、多国間で顔を合わせることはあるだろうし、そういった枠組みの中では協調することもあり得ると思うのです♪
民間も交流が減ったりはするかもだけど、利益が出るなら企業は取引するだろうと思うのです♪
・・・・・なんか、今と変わんないのです♪
法と秩序、力に拠る現状変更を許さないと世界中で唱える日本が今自ら其れを犯しますかって話になりますね、始まったばかりの素人ユン政権に努力を期待するしか今は無いでしょう、チョット両国騒ぎすぎだと思います。
党争を続ける韓国の正解が、極めて困難な社会的合意を作り上げることができるのだろうか」(P262)。
「正解」は「政界」でしょうか?
この手の韓国相手の妥協って、「暴漢は私を10回殴ると言っているし、私は殴られたくないから、中間を採って5回だけ殴られるようにしよう」とするのと大差ないです。
日韓関係をどうマネージするべきか、についての、私の基本的な視点は次の2つです。
1つは、国際世論とりわけ米国はどう見ているか、です。現状のところ、米国は①現状の日韓関係の悪化はより多く韓国側に原因がある②問題を一方的に起こした韓国側が、日本が検討可能な対案を提示すべき、という「日本の一貫した立場」を消極的に支持している、ように見えます。ところがその解決策として、(日韓基本協定で解決済なので)日本および日本企業に、将来も含めて一切損害が及ばないようにしろ、だけにとどまらず、大審院判決が無効であると(日本では当然)韓国内でも認めよ、というところまで行けば、それは「日本の態度が頑くな」とみなすかもしれません。その程度の”妥協”(大審院判決の韓国内の評価に日本は関わらない)は、ありだと考えています。
もうひとつの視点は、日韓関係がここまで悪化した要因は何で、それをどうやってマネージしていくか、です。韓国が”特殊”で韓国が変わらなければならない、という主張もよく見かけます。ただ友人関係もそうですが、”相手が変わるべき”といくら言っても変わらないでしょうし、何の問題解決にもなりません。もちろん付き合いを絶つという選択肢もあるでしょう。ただそれは、韓国の方がより多く困るでしょうが、日本にとっても必ずしも得策ではありません。
私は日韓関係が悪化した要因は、日本人の過去の植民地支配に対する過度の贖罪意識と、その反射効果としての韓国人の「もめれば日本が譲るのが当然」意識だと考えています。毎日新聞によれば、参院選候補者の52%が「韓国がより譲るべき」ではありますが、12%が「日本がより譲るべき」27%が「双方が譲るべき」だそうです。本来の問題は、日本人のこの層にあると思います(朝日新聞やサンモニの青木理なんかは典型)。
大審院判決を無効にしないと火種は残り続けるわけですから、ユンさんが火あぶり覚悟で国際法を上に持って来る法律をゴリ押しすれば済む話では無いでしょうかね、今の国会構図では無理っぽい話ですが。
「ところがその解決策として、(日韓基本協定で解決済なので)日本および日本企業に、将来も含めて一切損害が及ばないようにしろ、だけにとどまらず、大審院判決が無効であると(日本では当然)韓国内でも認めよ、というところまで行けば、それは「日本の態度が頑くな」とみなすかもしれません。その程度の”妥協”(大審院判決の韓国内の評価に日本は関わらない)は、ありだと考えています。」
韓国大審院の判決が有効かどうかは韓国の国内法の問題で韓国の内政問題ですよ。現金化しなければ日本との国際問題にはなりません。現金化すれば国際法違反ですから、日本は毅然と韓国に制裁を加えればいいだけの話です。
韓国の国内問題の解決のために日本に甘えているだけですよね。
そうでないなら、韓国との間にいかなる条約・協定・合意などの国際的約束をしても無意味ということになるだけでしょう。
韓国国内で解決しなさいで終わりな話。
最近疑問思ってることがあります。文中に「・・・韓国自身が国として外国との条約を踏みにじる判決を下す国だ、という評価を国際社会において確立させることにつながりかねませんし、③の論点に関しては、韓国政府は問題が発生しても条約を守らない国である、という事実を定着させるものでもあるからです。」とありますが、それが具体的にはどんな不利益を意味するのか、よくわかりません。国際社会で陰口を叩かれるかもしれないが、韓国が国連から追放されるわけでもなく、諸外国との条約を放棄されるわけでもない。国益が錯綜する国際社会において単純な二国間の衝突などほとんど影響を与えないのではないか(だって韓国がイランと石油代金でもめても日本は問題にしていない)と思っております。この後段にロシアの例がありますが、韓国の日本(だけ)に対する約束破りとはレベルが違うと思います。もちろん私は悔しいですが、要するにこの国際評価の部分についてはわれわれ日本側の自己満足(負け惜しみ)ではないのかと思っています。韓国は日本との約束破りなど恐れていないのではないかと疑っております。それを考えると実は(夏にはと言われる)現金化についても焦っているふりをして日本に譲歩を迫っているのではないのかと疑っております。まさに罠だらけ、鈴置先生の慧眼に感心しております。
「自称元徴用工問題の3つのポイント」の
②2018年の自称元徴用工判決を含め、韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」には法的根拠がない違法なものである
についてですが、「自称元徴用工判決」、「自称元日本軍性奴隷判決」、「盗難対馬仏像返還拒否判決」、「靖国神社放火容疑者(中国人)引き渡し拒否判決」など、韓国裁判所の判決には、『法的根拠』が無い訳では無く、一応もっともらしい『法的根拠』が示されています。
例えば、「自称元徴用工判決」では、「大日本帝国による朝鮮併合は違法無効であり、違法な植民地支配に基づく戦犯企業の強制連行・強制労働という不法行為に対する強制徴用被害者の慰謝料請求権は、日韓請求権協定第2条第1項により完全かつ最終的に解決されたとされる日韓両国・両国民間の請求権には含まれていない」という法的根拠が示されています。また、この判決の根底にある「大日本帝国による朝鮮併合は違法無効」という考え方は、韓国の最高法規である大韓民国憲法の前文に明記してあり、十分な『法的根拠』があると言っても過言ではありません。
しかし、上記の韓国裁判所判決の問題点は、その『法的根拠』としている論理が全て国際法違反であり、大韓民国憲法前文そのものが国際法違反であることです。
通常の国であれば、行政府や立法府の憲法違反や法令違反を司法府が正す役割を果たし、最高裁判所は「憲法の番人」と言われていますが、韓国の場合、憲法そのものが国際法違反で、韓国大法院も平気で国際法違反判決を連発しています。
こうした国に対して「国際法を守れ」と言うのは、泥棒に対して「盗みをするな」と言うのと同じで、期待するだけ無駄だと思います。
日経新聞の7月1日の社説で、北朝鮮だけでなくロシアや中国の脅威に立ち向かうには、岸田首相も信頼回復に向けて積極的に動くべきだ、と主張しています。
日本が信頼回復に向けてできる事は、韓国に対して条約を守れと言い続ける事しか無いと思いますが。
この日経の論説委員さんは、日本が譲歩すれば相互の信頼が回復するとでも思っているのでしょうかね?