正直、「」現金化時限爆弾」とやらを止める必要はないのではないでしょうか。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝、自称元徴用工問題をめぐって「日本企業が参加する自発的基金で徴用被害者を補償する」という「代位弁済案」が「急浮上した」とする記事が掲載されていました。この手の議論を眺めていると、正直、日本としてこの問題にこれ以上お付き合いする必要はないと結論付けざるを得ないのです。
目次
止める必要、あるんでしたっけ?
中央日報「現金化時限爆弾をどのように止めるか」
いきなりの本題です。久しぶりに、「これはすごい」と思う記事に出会いました。
韓日「現金化時限爆弾」どのように止めるか[上]日本企業含む「自発的基金」で徴用補償…代位弁済が急浮上(1)
―――2022.06.28 07:21付 中央日報日本語版より
韓日「現金化時限爆弾」どのように止めるか[上]日本企業含む「自発的基金」で徴用補償…代位弁済が急浮上(2)
―――2022.06.28 07:23付 中央日報日本語版より
韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された記事です。
同じ記事を(1)(2)に分けるというのは中央日報ではよく見られるテクニックですが(PV稼ぎのためでしょうか?)、そのわりに、中央日報の編集者の方もよっぽど慌てていたのか、当初バージョンでは(1)と(2)で記事のタイトルが異なってしまっていたようです(※現時点では修正済み)。
いずれにせよ、想像するに、タイトルの『韓日「現金化時限爆弾」どのように止めるか』という文言を読んで、多くの日本人は「べつにその『時限爆弾』、止める必要ないんじゃない?」と思っているような気がしてなりません。
代位弁済案はすでに3年前の時点で否定されていますが…
それはともかく、本文もなかなかに強烈な代物です。
「日本の戦犯企業は強制徴用被害者に賠償すべきという最高裁判決にともなう現金化手続きが大詰めに近づく中で『代位弁済』が代案として急浮上している」。
そもそも論ですが、記事の前提となっている2018年10月と11月の、韓国大法院(※最高裁に相当)が日本企業に対して下した自称元徴用工判決が、1965年に日韓が取り交わした日韓請求権協定に違反する状態を作り出している、という点について、中央日報はいったいどう考えているのでしょうか?
この記事、全部で2000文字少々の長さですが、このなかに「大法院判決自体が国際法に照らして違法である」という事実への言及は、ただの1箇所もありません。
それどころか、「戦時中、日帝に強制徴用されて強制労働に従事させられた」などとする自称元徴用工側の証言を裏付ける物証がなにもなく、おそらくはこの問題自体が韓国側のウソ・捏造に基づくものであるという点についても、完全に無視されています。
さらには、「日本の戦犯企業」、などする表現も出てくるのですが、こうした表現を使用すること自体、中央日報社の日本企業に対する名誉棄損そのものでしょう。
ただ、こうした諸点をとりあえず脇に置き、内容自体を精査してみると、これも大変に強烈だと言わざるを得ません。
中央日報が報じた「代位弁済」とは、「韓日企業の出資金で基金を作り、これを財源として徴用被害者に補償金を支援する代わりに現在進行中である現金化手続を中断する案」なのだそうです。
この案自体、すでに今から3年前の時点で、当時の南官杓(なん・かんひょう)駐日韓国大使が外務省で河野太郎外相から「無礼だ」とキレられたという代物ですが(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』等参照)、そのような案を持ち出すこと自体、明らかに日本を舐めた態度と言わざるを得ません。
先ほど「速報」として、河野太郎外務大臣の談話を紹介しましたが、その続きとして、談話、記者会見、河野氏と駐日韓国大使との面談についても紹介しておきます。とくに、河野氏と駐日韓国大使の面談については、産経ニュースが動画サイト『YouTube』にアップロードしているのですが、その内容を確認すると、河野氏がカメラの前であるにも関わらず、韓国側の「基金案」に対し、通訳を遮り、「ちょっと待っていただきたい」などと激高するなど、さまざまな面で異例ずくめです。河野大臣の発言河野大臣の談話河野太郎外相は先ほど、韓国の... 「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係 - 新宿会計士の政治経済評論 |
「現実的アイデア」と述べた「日本政府高官」は誰だ!?
ただ、中央日報によると、「複数の外交消息筋」は今年4月に日本を訪れた「韓日政策協議代表団」が「日本側政府関係者」と面談した席でこの案を持ち出し、「日本側高位関係者」はこれに対し「問題を根本的に解決できる現実的アイデア」と評価した、としています。
この中央日報の記事が事実であるならば、「韓日政策協議代表団が訪日した際に面会した日本側政府関係者」という情報だけで、いったい誰がそんな発言をしたのかについてはおのずと絞り込むことができます(※自民党外交部会あたりもその者をただちに特定し、事情聴取を行うべきでしょう)。
くどいようすが、「基金案」は解決策になりえません。
自称元慰安婦問題のように、「財団方式による解決」を図ったものの、結局は韓国自身がその財団を解散させてしまうなどの「ちゃぶ台返し」をしたという顛末も日本にとっては苦い経験ですが、それだけではありません。
そもそも日本企業、日本政府が第一義的に要求しているのは「日韓請求権協定違反の法的状態を解消すること」であり、2018年10月・11月の違法判決以前の状態に戻すことです。したがって、大法院判決をそのままにした状態で、その違法判決を前提に「解決策」を考えるということ自体、あり得ない話でしょう。
また、自称元徴用工の主張する「強制労働」云々については、その事実を立証する物証が存在しないばかりか、彼らがそのように主張すること自体、日本企業、日本国、ひいては日本人すべての名誉と尊厳を不当に貶めているのと同じです。
その意味では、自称元徴用工問題を主張すること自体が違法行為である、という言い方をしても良いでしょう。
確定したら何が困るのでしょうか?日本は何も困りません
ただし、この記事自体、冷静に読んでいくと、韓国側が考える「韓日関係改善」の正体というものがおぼろげながら見えてくる、という意味では、それなりに興味深いものでもあります。というのも、記事の中では本当に「韓国側の事情」にしか言及がないからです。たとえば、次のような具合です。
「早ければ8月にも三菱重工業の韓国内資産(特許権・商標権)を強制的に売却し現金化した後に強制徴用被害者に賠償金として支給する決定が大法院で確定する」。
確定したら何が困るのでしょうか?
自称元徴用工判決自体、国際法的には明らかに違法ですが、韓国の国内手続法的には合法なのでしょうから、粛々と確定させれば良いですし、確定したら速やかに三菱重工の特許権と商標権を競売手続にかければ済む話です。
というよりも、売掛債権などの金銭債権と異なり、特許権だの、商標権だの、非上場株式だのといった資産を売却するためには、「鑑定評価をしなければならない」、「実際に買い取る人が出現しなければならない」、「買い取った資産を使用できるとは限らない」など、さまざまな問題点があります。
これらの問題点を、韓国の司法が果たしてどうやって解決するつもりなのか、じっくりと見てみたいという気がします。
また、次の記述もなかなかに強烈です。
「韓日間の敏感な過去史懸案は7月10日の日本の参議院選挙後に本格的に議論が可能な点を考慮すると、残された『外交の時間』はわずか1カ月ほどだ」。
どうして「日本の譲歩」を前提に置いているのでしょうか?
そもそも、韓国メディアには、「日本の衆院選が終われば(交渉できる)」、「韓国の地方選が終われば(交渉できる)」、「日本の参院選が終われば(交渉できる)」、といった趣旨の観測が多すぎます。
日本で参院選があろうがなかろうが、自称元徴用工問題で日本が「譲歩」する余地は1ミリもありません。そもそも自称元徴用工判決が「違法判決」だからであり、そのような判決に従うこと自体、日本が韓国の違法行為に加担しているのと同じになるからです。
現金化なら対抗措置+コリア・エグジット
ちなみにこんな記述も出てきます。
「このタイミングを逃して現金化が現実化する場合、韓日関係は元に戻すのが難しい破局に追いやられるという根本的危機感を両国ともに共有している」。
すでに日韓関係は破局に向かっていますが、その「危機感」とやらを日本は共有していません。
日本政府のごく一部の役人、政界のごく一部の政治家、ごく一部の自称有識者らを除き、日本側のコンセンサスは、「韓国が国際法を守るのであればそれを歓迎する」、というものです。韓国が国際法を守るつもりがないのならば、日本側でも韓国を「諦める」ことになるでしょう。
こうした文脈で、「関連事情に通じた外交消息筋」が語ったとされる次の記述を読むと、日本側はごく当たり前のことを述べています。
「政策協議団の訪日を通じて強制徴用問題、特に2018年の大法院判決にともなう日本企業の資産の強制現金化を防ぐことが日本の最優先関心事である点を確認した。日本側は日本企業の資産を強制的に現金化して被害者に賠償することはないだろうという点を韓国が明確に言及するよう望むそぶりだった」
日本企業の資産を強制的に現金化するということ自体、「あってはならない」話であり、それがなされたならば、韓国は名実ともに無法国家となります。
また、現金化が確定したら確定したで、日本政府としては「対抗措置」を粛々と講じるのみでしょうし、日本企業の「コリア・エグジット」の動きも粛々と進むだけの話ではないかと思います。すると、日韓関係が崩壊する危険性が生じてきます。
日韓関係が崩壊しようものならば、短期的にはたしかに日本企業などにも少なからぬ損害が生じます。日韓両国の産業が密接に絡み合っているという現状を踏まえるならば、今すぐ日韓関係が無秩序に破綻することは望ましくありません。
(※とはいえ、金融の世界では日本にとって韓国の重要性は皆無に近いです。『邦銀対外与信「5兆ドル」大台に』でも議論したとおり、「国際与信統計」では日本の金融機関全体の韓国に対する与信は対外与信全体の1%に過ぎないからです。)
円安で膨らむ日本の国富日本の対外与信(最終リスクベース)が、ついに5兆ドルの大台に乗りました。このすべてが米ドル建てであるとは申し上げませんが、円安のために日本の金融機関には巨額の「含み益」が生じていることが期待できることは間違いありません。こうしたなか、国際与信の内訳で見ると、やはりシンガポール、台湾向け与信が伸びる一方、香港、韓国向けの与信が伸び悩んでいる様子がくっきりと浮かび上がってきます。ついに5兆ドル超え!ついに、日本の金融機関による「最終リスクベース」の国際与信総額が5兆ドルを超... 邦銀対外与信「5兆ドル」大台に - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかし、それと同時に中・長期的に見ていくと、そもそも「約束を守る」「ウソをつかない」という、人間社会において最低限必要となる基本的なルールが守られないような国とお付き合いすること自体が適切なのか、という問題に直面します。
このことは、べつに日韓関係についてのみ成り立つ話ではありません。日中関係、日朝関係、日露関係などに関してもまったく同じことがいえるでしょう。
そうなると、結局のところ、日本は「基本的価値」を共有している度合いに応じて、その相手国とどこまで深い関係を持つかを決定すべきでしょう。米国、英国、豪州、台湾、欧州、ASEAN、インドなど、少なくとも日本にとって「韓国よりも重要な国」はほかにもたくさんあるのです。
困るのは韓国自身
もっとも、定期的にこの手の記事が出てきているという事実は、自称元徴用工判決問題で、じつは最も困っているのは韓国自身である、という状況証拠でもあります。
というよりも、仮に韓国が勝手な「正義」を振りかざし、日本に対して謝罪や賠償を求めたとしても、日本側が微動だにしなければ、韓国は自分で勝手に苦境に追いやられるのです。
いずれにせよ、中央日報の記事では「韓国政府はくとも来月初めまでに外交部第1次官が主宰する官民合同委員会を発足させ、意見の取りまとめ手続きを持つ予定」、とされています。
ただ、尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権発足以降の動きを見ている限りにおいては、「2018年の自称元徴用工判決自体を法的に無効化する」という解決策が図られる可能性は皆無に等しいといえるでしょう。
最後に宣伝
さて、最後にいつもの宣伝です。
当ウェブサイトではここ数日、韓国観察者である鈴置高史氏が上梓した新刊書『韓国民主政治の自壊』について、(※鈴置氏に無断で)宣伝をしています。
内容については『鈴置高史氏最新刊「韓国民主政治の自壊」の「読み方」』あたりでも詳しく紹介したとおり、大変に読みごたえがあります。とくに本稿でも紹介した中央日報の記事についても、鈴置氏の次の指摘を踏まえておけば、その背景を含めてすんなりと理解できるでしょう。
「韓国を相手にしなくなったのは日本だけではない。米国も北朝鮮も、そして中国からもまともに扱われなくなった。自らの力を過信した傲慢な外交で、孤立の一途をたどったのだ。日韓関係が悪化したのも『日韓関係の特殊性』からではない。『韓国の特殊性』が原因なのだ」(P165)。
ちなみに当ウェブサイトから確認できる売上としては、アマゾン・リンク(Kindle版ないし書籍版)を経由して販売された冊数が、昨日までに書籍版・Kindle版で少なくとも164冊です。
参院選前という状況もありますので、ぜひ1人でも多くの日本人の皆様に、この書籍を読んでいただきたいと思う次第です。
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もうり地域との各種揉め事については、全てICJで白黒つけるという方向でいいんじゃないですかね?
提訴ならいくらでもしてあげる、ということで特使などもいちいち日本に寄越さなくて結構。
早期解決させたいならどうぞICJまでいらっしゃい、それ以外の方法は認めなくていい。
国防面を除けば日韓関係が崩壊したところで多少の問題にしかなりませんよね。
それよりも条約・協定・合意といった約束事が守られないのではお付き合いできませんという筋を通す方が重要です。
国防面が厳しいですよね。
朝鮮半島は日本列島に突き付けられた匕首のようなものなので、南北共に中国側に行ってしまうと困るという言説がありますが無視するには大きいように感じます。
アメリカの都合もあるでしょうし、国防だけは最低限のお付き合いを残す感じでしょうか、それさえも韓国が信用できない国であるなら関係崩壊待ったなしでしょうね。
米国は、かなり前からROKを見捨てている、あるいは見捨てようとしている、ので、これが最後のチャンスだと思います。ROKの大統領は、しかし、大衆演劇民衆主義化した国民の前には何もできないでしょう。民主主義を確立したことがない国のまま三度亡国するのでは。
というのが鈴置氏最新刊。
国防面で確かに不安ですが、韓国を味方だと思って裏切られるのと最初から敵だとみなしておくのでは、後者の方が良いと思います。
裏切る国を味方だと思い込むほど危険な事はないと思います。
>「現実的アイデア」と述べた「日本政府高官」は誰だ!?
普通に考えたら官房副長官あたりだけど…木原さんか。
すごく言いそう。宏池会だし。
架空の高官だと思いますよ。
個人名を隠す意味がないですから。
言っても不思議ではない人は、何人か居ますが。
参加した日本企業は、韓国側の解釈では、「戦犯企業になりたいと、自ら申し出た企業なので、望み通り、戦犯企業に認定してやる。」という事なので、余程のアホ経営者でない限り、参加する筈ないと思うのですが。
昔送り込んだ特亜工作員が、日本企業内で出世して、経営の中枢に座っているのカモ知れない。
>この中央日報の記事が事実であるならば、「韓日政策協議代表団が訪日した際に面会した日本側政府関係者」という情報だけで、いったい誰がそんな発言をしたのかについてはおのずと絞り込むことができます(※自民党外交部会あたりもその者をただちに特定し、事情聴取を行うべきでしょう)。
まさにおっしゃるとおりで、外交部会がしっかり対応してくれればいいのですが、会長がコメントだけは威勢のいい髭の佐藤さんですからねえ。保守派のように見えるので、人気はあるのだと思いますが、いつも政府・与党の対応について、まるるで他人事のようなコメント出すような議員ですから期待できませんね。私は、自民党の(支持者に溜まった)ガス抜き隊ではないかと思ってすらいます。
隊長もガス抜き係に甘んじて政治家生活過ごすつもりなんでしょーかね?
そろそろメンタルも現場指揮官から上にいっとくれやす
何度断られても(時には河野・南会談のようにどやされても)性懲りも無く「代位弁済」を持ち出してくるのは他に(間接的に日本が加害者であったと認めさせる罠)案が無いからでしょう。
まあ日本は従来通り1ミリも後退しないので、行き着くところは新宿会計士様の仰るコリア・エグジット KOREXITでよろしいかと。
> 多くの日本人は「べつにその『時限爆弾』、止める必要ないんじゃない?」と思っているような気がしてなりません。
仰る通り、困るのは韓国人だけで、日本人はちっとも困りません。
中央日報は、日本語版だからと言って、日本人向けに書いているとは限りません。
日本語しか分からない在日に向けて、日本国内の世論誘導をけしかける為の工作を行なっているのだと思います。
>確定したら何が困るのでしょうか?日本は何も困りません
なんとなくだけど、論説を載せた韓国メディアも困らないと思うのです♪
確定したあとの流れを想像すると、現金化→日本の制裁から、韓国で反日の嵐が巻き起こるんだろうと思うのです♪
韓国メディアとしては、それを煽るだけでも良いし、「自分たちは解決策を考えたのに日本が無視した」といえば被害者ポジゲットで美味しいのです♪
韓国政府というか、ユン大統領も、実は似たような考えなんじゃないかと思うのです♪
日本との関係が悪くなっても、安全保障については、米国の手前、日本も「それはそれこれはこれ」で対応するだろうし・・・・なんだったら、米国ごと裏切って中国の下に走っても良いと思うのです♪
こんなふうに考えると、しつこいくらいに首脳会談を求めてきてるのも、次の反日祭りに向けての下準備に思えるのです♪
毎度、ばかばかしいお話しを。
社民党が、参議院選挙運動で「韓国の基金に日本企業の参加を義務づける」と言い出したんだって。
それから、鳩山由紀夫(元)総理が、日本政府(元)高官として、このアイデアを称賛したんだって。
この話は2022年6月28日時点ではフェイクニュースである。
蛇足ですが、参議院選挙運動で、(事実上の)日韓断交を言い出す候補が出ても、よいと思うのですが。
すみません。追加です。
そういえば、福島瑞穂(社民党)党首も、鳩山由紀夫政権時代は、日本政府の高官でしたね。
何が困るって・・・
判決が確定したら、現金化出来ないものを差し押さえてるのがバレるから。そりゃ困りますよね。弁護士がw