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じつは岸田政権下でひそかに進み始めている原発再稼働

岸田政権下で、少しずつではありますが、原発再稼働が進み始めているようです。というよりも、もしかすると、安倍政権や菅政権と比べて、岸田政権下のほうが、原発再稼働が進む可能性すらあります。オールドメディアや特定野党の追及の矛先が鈍っているフシもあるからです。あるいは、自民党の「派閥政治」という特徴に照らすならば、やはり岸田政権は結果的に「ステルス型安倍政権」のような状態になるのかもしれません。

原発再稼働の必要性

少しずつ、良い兆候が出てきたのでしょうか?

「20年ぶり円安」の好機生かすには原発再稼働が必要』でも詳しく説明したとおり、現在の日本経済の最大のボトルネックは、電力供給が不安定であるという点に尽きます。

昨夜、20年4か月ぶりの円安水準となる「1ドル=134円台」を記録しました。本来ならば、日本の製造業、観光業にとっては大変に歓迎すべき現象です。ただ、ここで立ちはだかるのが電力の安定供給という課題であり、鉱物性燃料の輸入コストが日本経済の足を引っ張るという問題です。政府は早急に原発再稼働に道筋をつけるべきですし、また、インバウンド観光再開に当たっては1人あたり支出単価が高い国から優先的に受け入れるべきでしょう。為替変動とはなにか為替相場は日々刻々と変動する日本は変動相場制を採用しており、為替相場は...
「20年ぶり円安」の好機生かすには原発再稼働が必要 - 新宿会計士の政治経済評論

それなのに、政府から「冷蔵庫の出力を下げるなどして節電に協力してほしい」、といった対症療法的なアナウンスが出てくると、はやり、政府の原発再稼働に向けた本気度が疑われるところでもあります。

それに、岸田首相自身が今年5月、訪問先の英国で、原発再稼働に「コミット」したはずです。

岸田首相がコミット:「原発再稼働」の多くのメリット』でも述べたとおり、これには電力供給を安定化させ、日本の製造業の国内回帰を促進するという効果に加え、電気代を安定させ、不安定な再生可能エネルギーへの必要性を減らすだけでなく、ロシア産のエネルギー輸入を削減することも期待できます。

報道によると、訪英中の岸田文雄首相が現地時間の木曜日、ロンドンの金融街で演説し、エネルギー輸入を減らすために原発を再稼働する考えを示しました。これが事実なら、まことに歓迎すべき話です。電力の安定供給、製造業の国内回帰、貿易赤字の削減、そしてロシアの戦争遂行能力の低減などに寄与するからです。「是非とも実現していただきたい」。本件に関し、言いたいことはそれだけです。サマリー原発再稼働がもたらすメリット 鉱物性燃料の輸入抑制を通じ貿易赤字の削減に寄与する 日本の鉱物性燃料輸入が減少すれば世界的にエ...
岸田首相がコミット:「原発再稼働」の多くのメリット - 新宿会計士の政治経済評論

それに、民主党政権禍の2011年以来、多くの原発が操業を停止するなかで、日本の貿易収支構造はエネルギー(とくに石油、石炭、天然ガスといった鉱物性燃料)の輸入額により圧迫され、貿易赤字状態が常態化しています(図表1)。

図表1 鉱物性燃料の輸入額と貿易収支

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

ちなみに2011年以降の鉱物性燃料の輸入額が半額だったと仮定した場合、貿易収支はほぼ黒字に転換します(図表2)。

図表2 2011年以降の鉱物性燃料の輸入額が半額だった場合の貿易収支

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

それだけ、民主党政権期以降の原発停止の日本経済に対する影響が大きかったということでもありますし、一刻も早く原発の再稼働が待たれるという点に関しては、これまでも当ウェブサイトで何度も何度も申し上げてきたとおりです。

東京新聞は1月時点で「再稼働ゼロもあり得る」と予測していたが…

このあたり、今年1月に掲載された、東京新聞の『原発のない国へ』と題するシリーズ記事によると、「原子力規制委員会の審査で新規制基準に適合した原発の新たな再稼働はゼロの可能性がある」、などと指摘されていました。

2022年は新たな再稼働原発「ゼロ」も 審査7原発10基は終了見通せず

―――2022年01月10日付 東京新聞より

これによると、まだまだ稼働していない原発も多く、また、原発差し止め訴訟も依然として各地で提起されているなど、原発の本格的な再稼働に向けた動きは緩慢です(※余談ですが、「原発のない国」よりも「新聞のない国」の実現を願っている日本国民のほうが多いのではないか、といったツッコミはしないでください)。

では、こうした東京新聞の予測は、実際にはどうなったのでしょうか。

結論的には、岸田政権下でさりげなく、少しずつではあるにせよ、原発が再稼働を始めているか、または近いうちに再稼働が見込まれるという動きがみられ始めました。たとえば九州電力は今月、川内原発2号機については11日に原子炉を起動し、7月中旬には通常運転に復帰する、と発表しています。

川内原子力発電所2号機の発電再開予定をお知らせします

―――2022/06/07付 九州電力HPより

また、関西電力も今月、美浜原発3号機の運転再開予定時期については当初の10月20日ではなく、8月12日に前倒しすると発表しています。

美浜発電所3号機の特定重大事故等対処施設の運用開始時期見直しおよび運転再開時期の変更について【※PDF】

―――2022/06/10付 関西電力HPより

さらには、中国電力島根原発2号機をめぐっても、昨日、島根県の丸山達也知事が萩生田光一経産相と会談し、再稼働に同意したことを伝達した、とする報道がありました。

島根原発再稼働 知事「やむをえず」、経産相に同意伝達

―――2022年6月15日 13:30付 日本経済新聞電子版より

日経電子版によれば、同機の再稼働は早くても2023年春以降の見通しだそうですが、島根原発2号機自体の再開には大きな意味があります。というのも、同機自体、東京電力福島第一原発と同じ「沸騰水型」と呼ばれるタイプだからです(これに対し、すでに再稼働した6原発10基はいずれも加圧水型です)。

このように考えていくと、原発再稼働は「ステルス型」で少しずつ進み始めているのかもしれません。

岸田政権≒ステルス型安倍政権?

この点、もしも現在が岸田文雄内閣ではなく、菅義偉内閣、あるいは安倍晋三内閣のままだったとしたら、いったいどうなっていたでしょうか。

あくまでも邪推ですが、ここまですんなりと再稼働の動きが相次いでいなかった可能性があります。安倍総理に対しては「もりかけ問題の説明がまだ終わっていない」、「桜を見る会の説明はどうした」、といった攻撃が飛び、原発再稼働どころではなかったかもしれません。

あるいは菅総理に対しては「日本学術会議の委員任命問題はどうなった」、「ワクチン接種の進め方が強引すぎる」、といった攻撃が飛び、やはり同様に、原発再稼働を妨害する動きが相次いでいた可能性があります。

このあたり、岸田文雄首相自体、スキャンダルらしいスキャンダルがない(あるいはオールドメディアや特定野党が好きそうなスキャンダルネタが少ない)というのが、さりげなく役に立っている可能性はあるでしょう。

吉川赳議員の離党問題が岸田派の弱体化につながる理由』などでも取り上げたとおり、結局、自民党政権は「派閥の連立政権」のようなものであり、とくに政治的指導力が乏しい首相の場合、各派閥の思惑を抑え込んでまで自身の政策を貫徹することは難しいのが現状です。

吉川赳・衆議院議員の醜聞が、岸田派を弱体化させる可能性が出てきました。FNNの報道によると吉川議員本人は周囲に対し、議員辞職しないと述べているそうであり、自民党内からも岸田派に対し、本件を巡って「説明責任を果たすべきだ」との批判が高まっているからです。あるいは、岸田首相自身の「派閥の領袖」としての事態収拾能力のなさが露呈した、という言い方もできるでしょうか。「女子大生飲酒」報道の吉川赳議員、選挙にめっぽう弱かった昨日の『吉川議員の離党にともない衆院第5派に転落した岸田派』でも取り上げた話題の...
吉川赳議員の離党問題が岸田派の弱体化につながる理由 - 新宿会計士の政治経済評論

一部では、「岸田首相は『検討使』だ」、「岸田首相は『決断しない』という点では一貫性がある」、といった批判も見られるのですが、逆にいえば、有力派閥(とくに安倍派、茂木派、麻生派)から圧力を受けると、その圧力で動く、という性質もあります(『骨太方針に見る安倍総理「院政」』等参照)。

岸田首相が掲げる「新しい資本主義」とやらはどこに行ったのか。政府が昨日閣議決定した「骨太の方針2022」を読むと、「アベノミクスの3本矢」の記述がみられるなど、安倍政権が復活したかにも見えます。とりあえず岸田首相としても、安倍派、茂木派、麻生派などに配慮せざるを得ないようであることだけは間違いありません。細かい文字がびっしり!骨太方針2022いかにも「自民党らしい」と思える事例がありました。昨日、政府は「骨太の方針2022」を閣議決定しました。経済財政運営と改革の基本方針2022―――2022/06/07付 内閣府HPよ...
骨太方針に見る安倍総理「院政」 - 新宿会計士の政治経済評論

左派メディアも、むしろ安倍政権や菅政権が復活するのを警戒するあまり、岸田政権の攻撃を手控えているフシもあります。

個人的に、岸田首相自身の政治家としての適性、センスなどをめぐっては、さまざまな疑念を抱いているのも事実ですが(『吉川赳議員の離党問題が岸田派の弱体化につながる理由』等参照)、裏を返して言えば、岸田首相が派閥の力学を押し戻せるだけの政治力を持っていない(かもしれない)、という意味でもあります。

吉川赳・衆議院議員の醜聞が、岸田派を弱体化させる可能性が出てきました。FNNの報道によると吉川議員本人は周囲に対し、議員辞職しないと述べているそうであり、自民党内からも岸田派に対し、本件を巡って「説明責任を果たすべきだ」との批判が高まっているからです。あるいは、岸田首相自身の「派閥の領袖」としての事態収拾能力のなさが露呈した、という言い方もできるでしょうか。「女子大生飲酒」報道の吉川赳議員、選挙にめっぽう弱かった昨日の『吉川議員の離党にともない衆院第5派に転落した岸田派』でも取り上げた話題の...
吉川赳議員の離党問題が岸田派の弱体化につながる理由 - 新宿会計士の政治経済評論

ということは、「岸田派が弱小派閥」という状態で岸田政権が続けば、実質的に安倍・菅政権が続いているのと大差ない結果が生じる、というシナリオもあり得るかもしれません。いや、もっといえば、岸田政権自体が事実上の「ステルス安倍政権」と化す、という可能性も考えておく価値はありそうです。

新宿会計士:

View Comments (23)

  • 岸田さんを下すと高市さんが出てくる、という状況だと文句がつけにくいのかもしれないですね。
    河野太郎さんとか、小泉進次郎が出てくるのは勘弁してほしい。
    これでステルス憲法改正を進めてくれるならいいんですけど。

    9条もそうだけど96条をどうにかしてほしいですね。
    増税は勘弁してほしいけど。

  • 電力危機を作り出したのは誰か(JBpress)
    https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/e807ad1c7085e1898e95d1d530342e55f98ce371&preview=auto

    電力危機を克服するには「脱炭素化モラトリアム」が必要だ | アゴラ 言論プラットフォーム
    https://agora-web.jp/archives/220517084343.html?amp=1

     ↑ともに池田信夫氏

    ①原発再稼働
    ②電力自由化の見なおし
    ③再エネ(太陽光・風力)の新規増設の一時停止
    ④送配分離の一時停止
    を行わないと今後も「電力不足」が起こる可能性があると思います

    • わんわん  様

       仰る通りですね。ただ、④は本質ではなく、本丸は②だと思います。
       日本の政治屋・官僚がまともな法律を作れない(利権がらみか?)のが原因だと思います。
       
       ”自由にはそれを縛るルールが必要”で、其れを理解できない政治家・官僚の劣化が真の原因と思います。
       電気・ガス・水道・鉄道・バス等インフラ全てに言える事は、安定供給を適正価格で実施する責任を果たさせる法律になっているかが、怪しい。

      再エネ推進も良いが、再エネ発電事業者に最低責任供給電力を義務付け、買取価格に差をつける等の方法を取るべきと思う。
      当然、責任を果たせない場合はその事業者と経営者が再起不能となる高額な罰金を科す。

      • 再エネ自体はあっても良いと思う。エネルギー安全保障の観点からも、多様性は会ったほうが良い。
        しかし、自由競争、正確には「フェアな競争」で適切な価格、シェアにすべき。
        エコを謳って木を切り倒して太陽光パネルを設置するなんて愚かとしか言えない。

  • ちょっ!
    ステルスばらしたらステルスじゃねーし()

    なんて
    結果同じ様なルートでも麻生安倍菅路線強硬派が焦れるくらいのペースがATM反政権キャンペーン起動を鈍らせているのかも??

  • 護衛艦や潜水艦は産業維持のために隔年発注をしたり気を使ってますし、コロナになれば客商売の人に補助金支給し、詐欺られたりしてますが、原子力産業には、なにかしてやったのでしょうか?
    韓国では、原子炉当てにして超巨大鍛造炉作ったのにサヨク政権が原子力廃止をぶち上げて涙目になった会社がありました。

  • どうも岸田さんは水面下で話を進めるのが戦略のようですね。韓国関連についても外相訪日も首脳会談もつぶしました。原発についても巷の声には直接反応せず水面下で進める。

    これは岸田さんの、というより安倍総理菅総理も交えた自民党の戦略なのかなと考えています。目立った動きをしないから野党も攻撃のしどころを失ってしまう。

    参院選は自民党の地滑り的大勝を予想します。一人区をかなり自民党がとるだろうというのと、東京神奈川あたりでも複数当選が見えてきています。

    じゃあ参院選大勝のあとなにか変わって『本性」をだすのでしょうか?私はそれもないような気がします。上手くいく戦略を変える必要はありません。まあ憲法改正も防衛費倍増も上手くいくでしょう。

  • 岸田政権では、何故か「邪魔する人」が現れないので、政策を宣言すれば行政機構が淡々と仕事を進められるってとこでしょうか。

    安倍菅時代のヒステリーは何なんでしょうね。
    政権が変わればまたアレがいつでも復活すると思います。
    ステマなのか民意なのか。
    選挙の結果は参考にしてますが、今度の参議院選は低投票率であまり参考にならないかな。

    •  岸田政権がマスゴミに対する「弾除け」になっているので、安倍氏としては政策を粛々と進められると考えてたりして。

  • 原発再稼働で一つ。
    ※電力危機(FITによる急激な値上がり、供給不安)対応で原発再稼働待った無し。
    私の地元で風力の大規模開発が持ち上がりました。
    取り付け道路の維持。20年経過後の設備がどうなるのか。業者の約束はどう守るのか
    疑問点が多いのですが回答が得られません。
    特に海外からの投資も多いと聞きます。
    逃げられたらどうするの。だれが尻拭いするの?

  • 過日、私の携帯宛に世論調査依頼が架かってきました。固定電話宛ではなく携帯宛だったのが初めての経験だったので、私は電話を切らずに世論調査依頼に回答しました。

    野党が無能過ぎるので仕方なく、というか、新宿会計士殿が仰る「野党食堂」が提供する不味くて高い食事をする筈もないので、私は積極的にではありませんが自民党を指示します。しかしながら「聞くだけ首相」は無能故即刻辞めろ、との回答を、是非ともアンケートに正確に反映させる為の選択・応答をするのは難しかったです。

    新宿会計士殿の見立ての「岸田政権≒ステルス型安倍政権」で「岸田文雄首相自体、スキャンダルらしいスキャンダルがない(あるいはオールドメディアや特定野党が好きそうなスキャンダルネタが少ない)」のが、安部元首相と菅元首相の実務処理課題の継続に役に立っているのであれば、そして対中・対韓対応で、「聞くだけ首相」が三度目も騙される可能性が減じるのであるなば、私は歓迎します。

  • 体制的な話で言えば、その実、岸田政権って安倍、菅路線のままで目立たずしれっと前総理が出来なかったことが出来るので、安倍支持者や菅支持者にとっても都合がいいんですよね。

    防衛費の増額とか、安倍さんや菅さんが言えば凄まじい反発だったでしょうし。
    しかし、そんな、安倍支持者や菅支持者と思われる人に限って、岸田総理を批判してる。下手すれば罵倒している傾向があるように見えます。

    この辺り、ステルスに目眩ましされている安倍支持者、菅支持者の方も多いのではないかと感じています。

  • 独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (というより、自分でも独断や偏見であって欲しいので)
    (別に原発再稼働に限りませんが)日本人には、原発を再稼働したかどうかより、誰が再稼働したかに拘る人が多いのではないでしょうか。つまり、安倍総理や菅義偉総理が再稼働するのは反対だが、岸田総理が再稼働するには黙認する、ということです。もっとも、実際に電力不足になった時、仲間内から原発再稼働に反対した責任を問われるのを、恐れているだけかもしれませんが。
    駄文にて失礼しました。

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