ここまでくると、もはや「優良資産を抱え込んだ新聞社」ではなく、「不動産会社が趣味で新聞を刊行しているようなもの」ではないか――。株式会社朝日新聞社の決算を眺めていると、そう思わざるを得ません。売上高や売上総利益は右肩下がりで、リストラで販管費をカットしたものの将来は見えません。最大手の一角を占める同社ですらそうなのですから、同業他社の現状も「推して知るべし」、でしょう。
目次
新聞社の経営は謎
他人に厳しく自分に甘い新聞業界
日本の新聞社のおかしな点は数多くあるのですが、そのひとつが、「他人に厳しく自分に甘い」という態度です。
役所や企業が何か不祥事を起こしたら、トップが謝罪するシーンを大々的に取材したり、社説で反省や謝罪を求めたりするくせに、自分たちが不祥事を起こしたら徹底的にホッカムリをして知らんぷり。
自分たちに都合が悪い科学的知見に対しては、「科学を振りかざすな」などとうそぶく。
そんな日本の新聞社が、社会から見捨てられるのも、ある意味では仕方がない話かもしれません。
この点、スマートフォンなどのデバイスやインターネットが普及するなか、紙媒体のメディアが苦戦しているのは世界的な現象ですが『新聞の滅亡の原因は「傲慢なオールドメディア」の自壊』でも取り上げたとおり、日本のメディアの衰退が著しいのも、日本のメディアの「利権構造」がそれだけ深かった証拠ではないでしょうか。
朝日新聞の元記者の方がご著書を上梓されるのだそうで、これに先立ってウェブ評論サイト『現代ビジネス』に手記を投稿されています。この手記を読んでいくと、オールドメディア側の人たちが何を考えているのかの一端を知ることができるかもしれません。もっとも、非常に残念な話ですが、読んでいても共感できる部分は少ないかもしれませんが…。新聞部数の退勢は明らか一般紙がさほど減っていないという不思議なデータ年初の『「ブログ化する新聞」を待つ未来』などを含め、以前から当ウェブサイトでは、一般社団法人日本新聞協会が『新... 新聞の滅亡の原因は「傲慢なオールドメディア」の自壊 - 新宿会計士の政治経済評論 |
新聞社の多くはなぜか非上場・非開示
さて、新聞社のおかしな点のひとつに、他業界に対しては企業内容の開示を偉そうに求めるわりに、自分たちは企業内容の開示に積極的ではない、というものがあります。
著者自身がかなり以前から調査しているなかで、そもそも新聞社のなかに上場会社はほとんどなく、主要全国紙は軒並み非上場会社が刊行しています。したがって、各新聞社の財務内容を分析しようと思っても、なかなか思うようにいかないのです。
某新聞社のように、自社が刊行する新聞にこそっと貸借対照表要旨を広告してお茶を濁している事例もありますが、その会社は実質債務超過が疑われ、外部の支援がなければ、下手をするとあと数年のうちに資金繰りに窮して倒産しかねません(『某新聞社、4期連続営業赤字で自己資本比率も3%割れ』等参照)。
以前の『「実質債務超過」も疑われる、某新聞社の決算公告画像』では、ツイッターに投稿された、とある新聞社の決算公告と思われる画像をもとに、その新聞社の過去決算を簡単に分析してみました。こうしたなか、昨日はじつにけしからんことに、ついうっかり投稿されたと思しき最新の画像もありました。これがその新聞社の決算なのかどうかを確認することはできないので、とりあえず本稿でも、会社名を伏せたまま、純粋にその財務諸表のみに絞って決算を分析してみたいと思います。決算公告ついうっかり投稿――某新聞社の決算公告以前、... 某新聞社、4期連続営業赤字で自己資本比率も3%割れ - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、その新聞社のケースは、某宗教団体の機関紙の印刷を請け負っているほか、英紙『ガーディアン』が2018年12月7日付で報じた “Inside China’s audacious global propaganda campaign” という記事によれば、中国を宣伝する小冊子を配布している、などと指摘されています。
すなわち、某新聞が実質債務超過状態を疑われても仕方がないような状態でゾンビのように生き永らえている理由は、某宗教団体や中国共産党などの実質的な支援があるからだ、と考えれば辻褄が合いそうです。
そもそも新聞社自身が社会的影響力を喪失しつつある
このあたり、新聞社が特定国や特定宗教団体と結託すること自体、「社会の公器」(笑)として大きな問題ではないか、と考える人もいると思いますが、当ウェブサイトとしてはそうは考えません。新聞社自体が社会的に極めて大きな影響力を持っていた時代はすでに過去のものとなったからです。
実際、当ウェブサイトの事例で恐縮ですが、最近ではこの「実質債務超過が疑われる某新聞」を主要な情報源として利用することはほとんどありませんし、「定点観測」している内閣支持率・政党支持率の観測対象からも外しています。
敢えて同社を話題に取り上げることがあるとすれば、「同社でリストラクチャリングが行われている」とする話題や、「同社の記者が中東の空港でクラスター爆弾を爆発させた」といった話題などに限られるのではないでしょうか。
(あるいは「NHKの不祥事をNHK自身が報じない証拠」として「同紙でさえ報じているではないか」、といった具合でしょうか。)
もっとも、『ついにネット広告費がマスコミ4媒体広告費を追い抜く』でも取り上げたとおり、株式会社電通が公表する『日本の広告費』というレポートによれば、2021年にはついにインターネット広告費がマスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費を史上初めて追い抜きました(図表1)。
図表1 広告費の推移(マスコミ4媒体vsインターネット)
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』およびコメント主「埼玉県民」様ご提供データ等をもとに著者作成)
広告という分野は、新聞社にとっては購読力と並ぶ収益の柱ですが、新聞広告費については2000年の1.25兆円から、2021年には3815億円にまで激減しました。新聞広告費に関しては、市場規模が約3分の1に縮小した計算です。
いずれにせよ、社会の電子化・ネット化は今後間違いなく、着実かつ不可逆的に進んでいきます。
広告費という面でも、今後はインターネット広告費の「独り勝ち」構造はますます鮮明になっていくでしょうし、そうなると中国共産党としても、某新聞社を生き永らえさせる理由はなくなります。合理的に考えるならば、やはり早ければ数年のうちに、「大手全国紙の倒産」という話題を目にすることもあるかもしれません。
株式会社朝日新聞社の決算レビュー
なかには朝日新聞社のように余裕があるケースも
ただし、わが国の新聞社のすべてが経営難にある、という話ではありません。
歴史的経緯もあって、新聞社のなかには非常に優良な資産を多数抱え込んでいる事例も多く、「本業」であるはずの新聞発行ではなく、なかには、本来は「副業」であるはずの資産運用業や不動産賃貸業で巨額の収益を得ているというケースも見られるのです。
その典型例が、株式会社朝日新聞社でしょう。
じつは、当ウェブサイトにとって、株式会社朝日新聞社は非常にありがたい存在です。というのも、非上場会社でありながら有価証券報告書を作成し、公表しているからです。ほかの主要紙(日経、読売など)と比べて、この点だけは個人的に非常に高く評価できる点です。
こうしたなか、有報に先立って先月27日、同社が作成した決算単信が、大阪のテレビ局「朝日放送グループホールディングス株式会社」のウェブサイトに掲載されていました。
親会社等の決算に関するお知らせ【※PDF】
―――2022/05/27付 朝日放送グループホールディングス株式会社HPより
現時点ではまだ有報は出ていないため、踏み込んだ経営分析はできませんが、それでも単信の段階でも、いくつかの経営指標を使った分析が可能です。
売上高については右肩下がり
端的にいえば、今年の株式会社朝日新聞社の決算は、「減収・増益」でした。
ここでは、連単双方の経営指標を使って、著者自身が手元メモで残している過去の同社の決算と比較してみましょう。まずは、売上高です(図表2)。
図表2 株式会社朝日新聞社の売上高(連単)
(【出所】同社の過去の有報、単信等より著者作成)
いかがでしょうか。
まさに、「つるべ落とし」のように減少していることが確認できます。
2022年3月期の売上高は連結が2725億円、単体が1882億円で、これは最も古い2010年3月期のデータ(連結4703億円、単体3279億円)と比べ、単体ベースでは1397億円、連結ベースでは-1978億円も売上が落ち込んだ格好です。
ちなみに同社の単体売上高が2000億円の大台を割り込んだのは今世紀に入って以降おそらく初めてのことですが、単体売上高以上に連結売上高の落ち込みが激しかったという点については、少し興味をそそられる論点のひとつです。
というのも、同社の昨年までの有報に基づけば、新聞事業については単体売上高に、新聞以外の事業(たとえば不動産事業など)を合算したものについては連結売上高に、それぞれ反映されるのですが、この連結売上高の減少幅の大きさは、同社の不動産事業が何らかの変調を来している可能性を示唆しているからです。
ただし、このあたりの事情については単信レベルの海自ではよくわかりません。今月末近くに有報が出て来るであろうタイミングで、セグメント情報を使って内容を精査してみたいと思う次第です。
売上総利益は右肩下がりの一方で、営業利益はV字回復
その一方で、損益計算書項目で興味深いのは、売上総利益、営業利益についても急速に落ち込んでいる点でしょう(図表3、図表4)。
図表3 株式会社朝日新聞社の売上総利益(連単)
(【出所】同社の過去の有報、単信等より著者作成)
図表4 株式会社朝日新聞社の営業利益(連単)
(【出所】同社の過去の有報、単信等より著者作成)
このうち売上総利益については、著者自身の最も古い手元データである2013年3月期と比べ、2022年3月期においては、連単ともに半分以下に減少していることがわかります。
ただ、営業利益については昨年、連単ともにかなり巨額の赤字を計上しているのですが、今年は営利段階で連結ベースでは95億円と100億円近い利益を計上し、単体ベースでも79億円と、やはり堅調な利益に戻りました。
販管費抑制で280億円浮かす
では、こうした営業利益の「V字回復」をもたらした要因は、何でしょうか。
これについてはずばり販管費のデータがわかりやすいでしょう(図表5)。
図表5 株式会社朝日新聞社の販管費(連単)
(【出所】同社の過去の有報、単信等より著者作成)
いかがでしょうか?
比較可能な最も古いデータと比べて、販管費は連結ベースで半減、単体ベースでは6割ほど削減されていることがわかりますが、それだけではありません。2022年3月期においては、販管費が前年同月比で連単ともに約280億円ほど落ち込んでいるのです。
想像するに、人件費を含めた営業経費が相当に抑制されていることは間違いなさそうですが、このあたりについてはやはり有報で同社の人件費に関する開示資料も出てくるはずですので、興味深く待ちたいと思う次第です。
新聞社が不動産業を営んでいるのではなく…
なお、株式会社朝日新聞社は昨年、400億円を超える最終損失を計上しているのですが、『株式会社朝日新聞社の有報を読む』でも述べたとおり、この損失については基本的にリストラクチャリングの実施、繰延税金資産の取崩にともなう、一過性の要因に基づくものと考えられます。
そして、実際に株式会社朝日新聞社のバランスシートを眺めると、連結ベースでは総資産5742億円に対し、純資産が3506億円と、自己資本比率は61%にも達しており、基本的に経営基盤は盤石です。
このように考えていくならば、株式会社朝日新聞社はもはや「良く儲かっている不動産会社が趣味で新聞を刊行している」ようなものではないかと思えてなりませんし、いっそのこと、近い将来「株式会社朝日不動産」などと名前を変更しても良いのかもしれません。
いずれにせよ、最大手の朝日新聞社ですら、売上総利益が10年で半減しているほどですから、そのほかのメディアの状況も推して知るべしでしょう。
View Comments (11)
>このように考えていくならば、株式会社朝日新聞社はもはや「良く儲かっている不動産会社が趣味で新聞を刊行している」ようなものではないかと思えてなりませんし
おかしな内容の社内報を、多めに印刷しているからたまたま有料で社外の人間にも販売しているだけ、という感じでしょうか。
本当にこのまま朝日は不動産がメインで新聞は趣味の産物、なんて事態になったら
その内不動産事業に従事している方が不満になるんじゃないでしょうか?
「なんであいつらの同人サークルの経費の為に俺達が働かないといけないんだよ……」と。
それともいつかは「ダメだ、この同人誌はもう売れないどころか世間の恨みを
買うばかりになっちまったし、スポンサーも居なくなっちまった。今日から不動産だけで
食っていこう。不動産で働けない奴はクビか引退だな」となるのでしょうか?
>販管費抑制で280億円浮かす
そんなに削れる販管費があってうらやましい。
産経記者の阿比留瑠比氏が面白いツイートをしていました。
朝日の体質って業界内でも特殊なのかもしれません。
阿比留瑠比 @YzypC4F02Tq5lo0
https://twitter.com/YzypC4F02Tq5lo0/status/1532322361613004800
産経新聞が吉田調書を入手した際は、朝日とは異なり相当の範囲で回し読みした。で、私にこんな感想を言ってきた記者もいた。「もしかして朝日が入手したのとは別物ではないか。これをどう読んでも朝日記事のようにはならない」。だが、朝日は産経記事に抗議してきた。調書を読みもせずに…。
そんなツイートに悪乗りするこんな返信もw
安倍晋三 @AbeShinzo
https://twitter.com/AbeShinzo/status/1532739093737910272
珊瑚を大切に
新聞記者は衰退産業に従事していることをちゃんと認識できているのでしょうか? 大いに疑問です。
新聞不人気の最大原因は「割高感」です。
情報通信のコストは降下し続けてきました。紙媒体では実現不能な「機能」や「値打ち」を作る出せる時代なのです。新聞はなぜ今より安く生産できないのでしょうか。できないならば商品として、産業としての命運はもう尽きているのではありませんか。
つい20年ほど前まで「とらばーゆ」、「エービーロード」、「週刊住宅情報」などの紙の情報誌があった。仕事を探す人、海外旅行を計画している人、住宅購入を考えている人が買っていた雑誌だが、2000年代にすべてWebベースに替わったか廃刊になっている。
情報を売るという点では同じなのに紙の新聞はしぶとく残っている。なぜだろう。
考えてみると情報誌で扱っていた情報は「必要があって取りに行く情報」新聞の提供する情報は「世間の出来事」「へ~、そんなことあったんだ」とういうタイプの情報と言えるかもしれない。
そういえば昔、一般紙にも三行求人広告があり。「左官急募 高給 日払い可」のようなものがぎっしり並んでいたが、消えていった。インターネットの出現により、このタイプの情報は紙の新聞の機動力では無理になったということだろう。
では現在の紙の新聞に「必要があって取りに行く情報」は残っているか? あるある。
代表的なのが「株式欄」と「テレビラジオ欄」だ。株式欄は株をやらない人には全く無用の情報、株をやる人には全く役立たずの情報だ。テレビラジオ欄はテレビに内蔵されているし、一週間先までの番組を見ることができ、録画予約までできる。
新聞社の人間も知っていると思う。ただ株式欄とテレビラジオ欄を廃止して「当社ウエブサイトをご覧ください」にしたら日経朝刊だと3割の紙面が不要になる。たぶん値下げせざるをえなくなり、それで決断できないのだろう。朝刊の3割が削減されれば資源の節約(紙、ガソリン)になり、購読料が下がり、いいことずくめだと思う。
昭和の話ですね。朝日新聞を倒そうと朝日の収益源である新聞の広告、求人、旅行、住宅の無料に近い雑誌を果敢に発行して高収益の会社を創った東大卒の人がいましたね。
朝日新聞に未公開株を事件化されてしまいましたが・・・・・。
その会社がベンチャーのDNAを失わず、いまも社員から新たな創業者を出し続けているようですが・・・。
>株式会社朝日新聞社はもはや「良く儲かっている不動産会社が趣味で新聞を刊行している」
クスリと笑うツボでしたが
某新聞社の >某宗教団体や中国共産党などの実質的な支援があるからだ、
よく考えたら「日本」の国体?にまだ危機感が感じられませんね。合法的かもしれませんが実質、国家転覆を実行しているような新聞社です。共産党と一緒に「内外情勢の回顧と展望」に載せてもいいのではないしょうか?
不動産屋が趣味で新聞発行してて、実益有るうちは税金獲れるし経費計上してても税務署も何も言わんのでしょうが…
完全に本業からの経費持ち出し赤字垂れ流しになった場合は、按分どのあたりまで税務署は事業経費とみてくれるのでしょうかね?
1円でも売上あればいいのかしら??
経費丸抱えで経営者が趣味にイソシム…イイナア()
某新聞社についてまことしやかにささやかれているのが
某新聞記者が中国大使館に日々詣でる。
そして提供する情報に応じて小遣いを貰うというもの。
某新聞社の給料は同業他社より安く、記者も積極的なのだとか。
某新聞社は去年に資本金を1億に減資して中小企業となった。
大阪の本社ビルを信託銀行に担保として提供して210億を調達。
(某新聞社はあくまで担保とするがそのうち売却になるだろう)
もうしばらく某新聞社は存続しそう。
製作費を浮かせて利益を確保したTV局と同じく、中身がスカスカに・・。
まとめサイトを参照に「味付け(角度付け)記事」が作成される時代へ・・。
*****
(↓衰退予測リスト)
イ、侮 日 新 聞(アナドル)
ロ、嘲 日 新 聞(アザケル)
冫、冲 日 新 聞(ムナシイ)
二、凍 京 新 聞(イテツク)
ホ、杳 経 新 聞(クライ)
あと、自身に甘い「赦旗(ユルス)」も・・。