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    Categories: 金融

ロシア外貨建て国債にポテンシャル・デフォルトの判断

ロシアが誇る対独戦勝利記念日である5月9日に向けて、首都の名を冠したモスクワ艦の撃沈以外に澪、もうひとつの「戦果」(?)が出て来ました。ISDAのDCは20日、ロシアがドル建てユーロ債の元利払をルーブルで行ったことを「ポテンシャル・デフォルト」と認定したようなのです。もしも猶予期間内にドルでの支払いがなされなければ、ロシアは5月4日に正式にデフォルト認定される可能性が出て来ました。

5月9日に向け目標を修正

ロシア「5月9日までの勝利宣言」に合わせ目標修正か』でも取り上げたとおり、ウクライナに対し軍事侵攻中のロシアが、5月9日の対独戦勝利記念日に向けて、戦争の目標を変更したのではないか、といった疑いが出ています。

ロシアがウクライナ戦争を巡り、5月9日の対ナチ戦勝利記念式典までに「勝利宣言」を考えているのではないか、とする報道が出て来ました。CNNは米政府情報当局者の発言を引用し、「ロシアがキーウ制圧からウクライナ東部制圧に目標を修正した」と報じています。ただ、英国のトラス外相は「ロシアの戦争犯罪を捜査する活動を英国が全面支援する」と述べるなど、さながら西側諸国とロシアの「持久戦」の様相も呈してきました。当てが外れたロシアウクライナ侵攻からもうすぐ40日ロシアのウラジミル・プーチン大統領が「特殊な軍事作...
ロシア「5月9日までの勝利宣言」に合わせ目標修正か - 新宿会計士の政治経済評論

これは、米メディア『CNN』が日本時間の4月3日付で報じた次の記事のなかで、ロシアが「5月初頭の『勝利』を目指し、その軍事目標をウクライナ東部制圧に変更した」と米政府高官が明らかにした、などと報じたものです。

Russia shifting focus to show a victory by early May in eastern Ukraine, US officials say

―――2022/04/03 10:02HKT付 CNNより

(※ちなみに同記事は日本語にもなっており、『プーチン氏が「目標修正」、ウクライナ東部で5月に勝利宣言か 米情報当局』で読めます。)

モスクワ艦沈没、あるいは「撃沈」という「戦果」

要するに、「ウクライナ全土の制圧とゼレンスキー政権の排除」というロシアの当初の目標が、ここに来て完全に失敗に終わったため、5月9日に向けて手っ取り早く、何らかの「勝利宣言」を行うための準備をしている、というわけです。

具体的には、首都・キーウ周辺から部隊を撤収させ、ウクライナ東部のドンバス地域や、南東部のマリウポル周辺などを制圧することで、クリミア半島からドンバスに至る一種の「回廊」を形成することを目的としているのではないか、といった疑いです。

ただ、そのわりには、ロシアが現時点までに華々しい「戦果」をあげた形跡はなく、それどころか、ロシア側にはいくつかの深刻な損害も生じています。首都の名前を冠した黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が「沈没した」という事件などは、その典型例でしょう(『ウクライナ高官「モスクワ沈没前」と称する写真を投稿』等参照)。

ロシアは「モスクワ」艦沈没の理由を「火災と嵐のため」などと述べていましたが、その説明がウソであるかもしれないという証拠が出て来ました。ウクライナのアントン・ゲラシチェンコ内相顧問が現地時間18日、SNS『テレグラム』に投稿した写真によれば、「モスクワ」が炎上し、傾いている姿が映っています。また、少なくとも写真で見る限り、「嵐」ではないように見受けられます。ロシアの黒海艦隊に所属する旗艦「モスクワ」が沈没したとする話題については、『「沈没」という設定をうっかり忘れ「報復」叫ぶロシア』を含め、当ウ...
ウクライナ高官「モスクワ沈没前」と称する写真を投稿 - 新宿会計士の政治経済評論

ちなみに「沈没」というのはロシア側の「設定」ですが、状況証拠に照らせばウクライナ側による「撃沈」という可能性もかなり濃厚です。

また、マリウポルなどでの無差別攻撃は、ロシア軍の無法ぶり、あるいは残忍さを全世界に知らしめているという意味では、長い目で見て、決してロシアのためになりません。おそらく、西側諸国はロシアに対する経済・金融制裁を当面解除しないでしょう。

今度はポテンシャル・デフォルト

こうしたなか、5月9日に向けて、もうひとつの興味深い現象が出て来ました。

ロシア国債「潜在的な不履行」、ルーブルでの支払いで委員会判断

―――2022年4月21日 7:42 JST付 Bloombergより

ロシア国債、不履行寸前 ルーブル払い認めず―業界団体

―――2022年04月21日05時35分付 時事通信より

いくつかのメディアによると、国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)の決定委員会(DC)は20日、ロシアがドル建ての国債2本の支払をルーブルで行ったことが「潜在的支払不履行(ポテンシャル・デフォルト)」に当たるとの判断を下したそうです。

(※ISDAのDCは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のデフォルト事由抵触を認定する委員会ですが、CDSの仕組みなどについては、『ロシア国鉄のCDSが発動:ソブリン債もCE申し立て』などでも詳しく説明していますので、ご参照ください。)

予想どおり、ロシア政府に対するCDSのCEがDCに対して申し立てられたようです。もしもロシア政府が公式にデフォルト認定されたとしたら、西側諸国の金融制裁もあらたな局面に達したといえます。おりしも現地時間月曜日には、同じくDCがロシア国鉄のスイスフラン建ての債務についても、CEのひとつである「支払不能」の認定を下したそうです。CDSとは?クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる金融商品があります。これは、ある「参照組織」に「クレジット・イベント(CE)」が発生した場合に、プロテクシ...
ロシア国鉄のCDSが発動:ソブリン債もCE申し立て - 新宿会計士の政治経済評論

具体的には、今月4日に発生した、ロシアのドル建てユーロ債のルーブルでの元利払いが契約違反に該当するのだそうです。ということは、猶予期間(30日)が切れる5月4日までに債券保有者に対するドルでの支払いがなければ、デフォルトが宣言されることになりそうです。

これが5月9日に向けての「戦果」(?)なのだとしたら、皮肉としては面白いかもしれない、などと思う次第です。

新宿会計士:

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  • G20閉幕 ロシア代表の発言時 米英などが席を立つ異例の展開
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220421/k10013591421000.html
    鈴木財務大臣は途中退席しなかったものの、イギリスのスナク財務相は、ツイッターへの投稿で、ロシアの代表が発言する際、アメリカやイギリスなど、複数の国の代表が席を立ったことを明らかにし、異例の展開となりました。

    悪目立ちするのが好きみたいですね。
    NHKのテレビのニュースでは、鈴木財務相は「退席したかどうかを記者に聞かれて」「ちゃんとロシアを批判した」と答えたと言ってました。(笑)