私学助成法と文科省「大学認可利権」の見直しこそ急務

日経の記事によると、私大の運営法人の4分の1が慢性的な赤字に陥っており、7割の私学で計画通りに学生を獲得することができていないそうです。私学には教育経費の最大半額という巨額の国費が投じられていることを踏まえるならば、文部科学省の「大学の設立認可基準」に関しては、利権の温床となっている可能性を疑うべきではないかと思う次第です。

官僚機構が日本を悪くしている?

当ウェブサイトでは以前からしばしば報告してきたとおり、日本という国の問題点のひとつは、官僚機構にあります。

官僚・国家公務員の多くは、私たち日本国民が選挙で直接選んだわけではないのに、不当に大きな政治的権力を握り、日本の国益を損ねていることがあります。省を挙げて増税に邁進し、却って日本経済の活力を削ぎ、GDPを押し下げている財務省など、その典型例でしょう。

ちなみに当ウェブサイトで述べる「国民の敵」とは、「国民から選挙で選ばれたわけでもないくせに、不当に大きな政治権力を握り、国益を妨害している勢力」などのことを指しますが、こうした勢力を排除するためには、結局のところ、私たち日本国民が賢くなり、選挙を通じて少しずつ浄化していくしかないのです。

さて、この「国民の敵」の「総本山」が、増税原理主義に染まった財務省であることについては、当ウェブサイトでもこれまでしばしば説明してきたとおりですが(『家計金融資産が2000兆円突破』等参照)、決してそれだけではありません。

「国民の敵」環境省・検証されないレジ袋有料化の効果』でも述べたとおり、違法性が極めて高い省令を勝手に書き換えてレジ袋有料化を強行した環境省などは、「国民の敵」の一角を占めている「小物」のひとつでしょう。

小物界の重鎮・文部科学省の私学利権

ただ、こうした「小物」のなかでも、やはり困りものの役所がひとつ存在するとしたら、それは文部科学省ではないかと思います。その典型例が、学校法人設立に関する許認可権であり、また、私学援助に関する利権ではないでしょうか。

具体的には、国、地方公共団体が私立学校に対し、援助を行うことができるとする法律――『私立学校振興助成法』――の運用に、じつは大変に「大きな問題」があるのではないかとする点を指摘しておく必要があります。。

私立学校振興助成法第4条第1項

国は、大学又は高等専門学校を設置する学校法人に対し、当該学校における教育又は研究に係る経常的経費について、その二分の一以内を補助することができる。

私立学校振興助成法第9条

都道府県が、その区域内にある幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は幼保連携型認定こども園を設置する学校法人に対し、当該学校における教育に係る経常的経費について補助する場合には、国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、その一部を補助することができる。

違憲立法でF欄大学温存し天下り先を確保

厳密にいえば、私学振興助成法では、大学・高専の場合はそれらを運営する学校法人に対し、また、それ以外の学校等に関しては都道府県を通じて学校法人に対し補助を行うことができる、とするルールですが、当然、ここには大きな利権が絡んでいます。

具体的には、法律の規定上は大学のレベルに応じて資金が配分されるという仕組みにはなっておらず、俗に「F欄大学」などと呼ばれる、教育レベルが著しく低い大学などに対しても同様に適用されます。日本人学生が集まらないがために、中国などから留学生をかき集めて学校経営を維持しているような事例も散見されます。

そして、これらの大学は文部科学省を含めた官庁、新聞社、テレビ局関係者などの「天下り先」としても有効活用されている、というわけです(前川喜平・元文部科学省事務次官の退任理由について調べていくと、やはり同様に「天下り」利権が関わっていた可能性が濃厚です)。

ただ、こうした「私学助成」制度があるわりに、私たち日本国民が負担する大学などの学費は非常に高く、とくに地方在住の人の子弟が首都圏などで独り暮らしして大学に通うような場合だと、「奨学金」と称した事実上の教育ローンを負うことが一般的です。

大学の学費は、国公立大学・文系の場合、4年間で約250万円前後とされており、これが私立大学・文系の場合は300万円を超えるようです。また、理系だと私立大学で500万円近くになることもあるようです。

しかも、そもそも論ですが、私立学校金に対し公費から助成することは、日本国憲法第89条の規定に明確に違反しています。

日本国憲法第89条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

すなわち、私学助成制度はその根拠法自体が憲法違反であるという点に加え、それによって「F欄」と呼ばれるなどと俗称される低レベルな教育しか行わない大学が大量に設立・温存され、さらには外国人留学生らに貴重な国費が使われている、という実態が存在するのではないか、といった可能性を疑うべきでしょう。

日経「私学の4分の1が慢性的な赤字」

こうしたなか、日経新聞に今朝、こんな記事が掲載されていました。

私大の4分の1が慢性赤字 先端教育投資に足かせ 日経集計

―――2022年4月18日 2:00付 日本経済新聞電子版より

日経によれば、全国の大学等616校を運営する572法人の決算情報をホームページから集計したところ、その4分の1が慢性的な赤字に陥っており、また、これら赤字校の7割が学生を計画通りに獲得することができていない、などとしています。

同記事はまた、私大の財務情報は「以前は学校関係者らが求めれば閲覧できる仕組み」で、「外部からのチェックが効きにくかった」としていますが、これが「20年度からインターネット上での公開が義務付けられた」ことで、今回のような記事につながったようです。

もちろん、この決算は学校法人会計基準に基づいたものであり、金融商品会計に関する時価情報などが織り込まれているのかどうかについては、記事を閲覧しただけではよくわかりませんが、その学校法人会計ベースであっても「4分の1が慢性的な赤字」というのは強烈な状況です。

具体的には、572法人のうち3年連続赤字だったのが139法人であり、15法人は負債が運用資産を超過していた、とも記載されています。

正直、私学には教育経費の最大半額に相当する巨額の国費が投じられていて、それでも赤字であるというのは、そこまでのコストを投じてまで私学を維持しなければならないものなのか、といった点に疑問を抱く理由になるのではないでしょうか。

日経記事には、こんな記述が出て来ます。

私大は新設規制が緩和された1990年代以降、約240校増加した。進学率の上昇で学生数も増えたが、18歳人口は最近20年で40万人近く減少。日本私立学校振興・共済事業団によると2021年度の入学者は46%の私大で定員割れした」。

このあたりが、文科省利権の正体のひとつではないかと思います。

いずれにせよ、大学の運営費は各大学がOB会などから寄付を募るなり、企業などのスポンサーを見つるなりして基金を募り、その分、各大学が設けた基準を満たした学生には低い受講料で優待する、といった欧米の一流大学のような仕組みは参考になると思います。

また、個人的には、大学などの学校法人に対する援助を止めて、学生に対してはセンター試験などの点数に応じて奨学金を支給する、といった制度の方が、教育制度という意味ではよっぽど健全ではないかと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 東海 より:

    東海の住人です。

    この地方は、自動車産業等の企業が多く、それらは自前の学園・大学を持っていることがあります。子供が、その中の理系の大学に通っていたのですが、授業料は国立と同程度でした。

    また奨学金も、それらの企業グループが資金を出し合い、学生へ貸与(という名前の給付)を行っています。(現在子供が受給中で、企業グループへ就職すれば、返済は不要)

    ブログ主の意見で、「大学の運営費は各大学がOB会などから寄付を募るなり、企業などのスポンサーを見つけるなりして基金を募り」は、大いに賛成します。
    奨学金も国から支給されているので、「大学などの学校法人に対する援助」は、不要でしょう。

  2. 羊山羊 より:

    粗製濫造される公立大も問題ですね。広い北海道の6校は仕方ない?にしても群馬、新潟、長野、静岡、石川の4校は多過ぎです。なぜか近隣県で私大の公立化スキームを共有して天下り先を増やしているように見えるのは考え過ぎでしょうか。一方、人口が多いのに府大と市大を合併させて1校にした大阪は維新の功績なのか功罪なのか。
    個人的には東京の有名理系私大の分校?が長野と山口で公立大として存在するのは地域名含めて何のこっちゃと思ってしまいます。

  3. ちょろんぼ より:

    会計士様

    F欄というのは過去の話でありまして、現在はG欄なるものもございます。
    F欄は皆様ご存じの事と思いますので、以下省略
    G欄は日本にある大学であるが、学生が日本人が少なく外国人ばっかしと
    いう大学があります。(注:日本語学校ではありません)

    さて、大学等への寄付問題ですが、これは日本の税制問題であり
    各種資料で出て来る「日本の寄付金が他国より低い」問題の大きな原因です。
    他国では寄付先が多くあり、所得・税額控除が可能ですが
    (本当かどうか解りません―資料ではそう書いてありました)
    日本の税制では「少数の特定機関」しか、所得・税額控除を認めておりません。
    この窓口の狭さが問題なのです。 この窓口を広くさせる事ができれば
    大学等への寄付金が増える要素となります。

  4. 普通の日本人 より:

    これって「宦官」のことでしょうか。
    全てが悪いわけでは無いのでしょうが、権力を握っているのが良くないですねえ。
    それにNHK同様自己増殖する。アメーバみたい。
    シロート国会議員には手を出せない力がある。
    本当はメデアがその道のプロとして目を光らせて欲しいのですが。
    無理ですね。道床ですもんね。
    やはり選挙しかないですよね。

  5. ありにゃん より:

    亀レス失礼。

    「低学歴国」ニッポン 革新先導へ博士生かせ: 日本経済新聞
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD122W50S2A210C2000000/
    日経がこのような記事を出しました。
    さすが新聞社様って感じですね。
    日経で院卒の社員はどれくらいいるのでしょうか?

    日本で院卒の割合が少ないのは日本では大学院に行くインセンティブが少ないからですね。
    よく日本は「学歴社会」と言われますが、米国や韓国のほうがよっぽど「超学歴社会」です。
    韓国では大卒が有利ってことで短大や専門学校までもを大学とした結果、大卒や院卒でも見合った仕事がない、就職できないってことが起きていますが。

    IT系の中小企業に勤めていますが、役員とも距離が近いのでちらっと話を聞くと、採用は高卒以上なら学力や忍耐力があるだろうとみなし、職歴>資格>学歴の順で重視しているように見えます。社員の最高学歴はMARCH・駅弁大学卒です。
    外資系コンサル・IT企業や日系大手ではまた違うんでしょうけど。

    大卒や院卒の割合を増やしても実際の学力は上がらないと思いますし、大卒や院卒に見合う仕事は増えないですし、本当にすべての仕事に高学歴が必要かどうかは疑問です。
    学問や研究を極めたい人に対して大学や大学院に行けるように、また卒業後に就職できるように支援は必要ですが、一方で高学歴じゃなくてもある程度の収入を得られるような職につけるような状態にすべきです。

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