実際のところ、円安は日本経済にとって良い影響をもたらすのか、悪い影響をもたらすのか。この点を巡っては、世の中で大きな誤解があるようですので、改めて指摘しておくならば、「円安のメリットを生かすも殺すも日本次第」、というわけです。こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、『韓国経済新聞』が配信した記事が掲載されていました。
国際収支のトリレンマと日本
この点、基本的に日本は変動相場制を取る国です。
変動相場制とは、為替相場が日々刻々と市場原理に基づいて動いていくという仕組みであり、為替相場には金利やインフレ率、経済成長率といったマクロ経済指標に加え、自然災害や戦争、動乱などの社会現象も織り込まれるのが一般的です。
そして、先週の『人民元ブロック経済圏が対ロシア制裁の穴となる可能性』でも述べたとおり、基本的には「国際収支のトリレンマ」と呼ばれる命題については、経済について考えるうえでの「基礎知識」のひとつとして踏まえておいて良い論点です。
デジタル人民元がロシアに対する経済制裁の「穴」になるかもしれない、といった議論を発見しました。正直、執筆された方は金融市場の専門家というわけではなく、人民元自体、オフショア債券市場やデリバティブ市場が未成熟であるという点に言及がない時点で、議論としては不十分と言わざるを得ません。ただ、中国が「人民元ブロック経済圏」を作り、そこにロシアを引き込むという可能性については、警戒は必要です。外貨準備凍結措置対ロシア制裁の本質は「ハード・カレンシーの没収」ロシアに対する西側諸国による経済・金融制裁につ... 人民元ブロック経済圏が対ロシア制裁の穴となる可能性 - 新宿会計士の政治経済評論 |
この「国際収支のトリレンマ」とは、「①資本移動の自由」「②金融政策の独立」「③為替相場の安定」という3つの目標を同時に達成することができず、どれか2つの目標を達成したならば、残り1つの目標を捨てなければならない、という、一種の「掟(おきて)」のようなものです。
日本は「①資本移動の自由」と「②金融政策の独立」という2つの命題を重視しているため、最後の「③為替相場の安定」という政策目標については、最初から放棄している、というわけです。
円安と円高、それぞれどういう影響があるのか
さて、日本経済にとって、円安と円高、どちらが好ましいのでしょうか。
これについては、一概に申し上げることはできません。為替相場に関しては、円高になれば外国からの輸入力が上昇する一方で輸出競争力が削がれますが、円安になれば輸入品物価の上昇という悪影響に対し、輸出競争力が上昇するというプラスの効果が得らるからです。
これに加えて、外国に対し借金を負っているかどうか、外国に対して資産を持っているかどうか、といった視点も重要です。
一般に自国通貨安になった場合は、外国から借りているおカネの自国通貨換算額が増えてしまうため、行き過ぎた自国通貨安は自国企業の財務健全性の観点からは好ましくない影響を与えるとされています。
しかし、日本は1980年代から90年代にかけて、全世界を相手に貿易黒字を稼いできたという事情に加え、日本国内の低金利と運用難という環境もあり、外国に対して莫大な債権・純資産を保有しています。わかりやすくいえば、「外国から借りているおカネ」よりも、「外国に貸しているおカネ」の方がはるかに多いのです。
たとえば、BISの国際与信統計(CBS)によると、2021年9月末時点において日本の金融機関は外国に対し、4兆8598億ドル相当を貸し付けているのに対し、外国から借りている債務は1兆1953億ドルに過ぎず、円安は日本の国富を大きく増やす効果をもたらします。
さらにいえば、政府が潤沢に保有している外貨準備についても、かなりの含み益が生じているものと考えて良く(著者の試算だと160兆円を超えています)、それを売り払えば、「国の借金」とやらの圧縮につながるだけでなく、消費税の年間の税収(20兆円)を遥かに上回る利益が実現するのです。
基本的に円安は日本にメリットをもたらすが…
このため、日本にとって円安は、「外貨建て債務の増大」というデメリットをほとんどもたらさず、むしろ「外貨建ての資産価値の増大」、「日本企業にとっての輸出競争力の増大」、という具合に、メリットの方がはるかに大きいのが実情でしょう。
ところが、そんな日本にとって、円安を手放しで喜べない状況があることもまた事実です。その最大のものは、電力コストの異常な高止まりです。多くの原発が休止していることに加え、「再生可能エネルギー」の買取制度が電気代を押し上げている格好です。
これに加え、日本は税制が非常に複雑怪奇であり、また、消費税、社会保険料などの負担も重く、日本国内で起業するインセンティブはあまり高くありません。
香港で国家安全法が施行された際、金融庁が「香港から金融ファームを呼び込む」などと鼻息を荒くしていたことがありましたが、正直、金融業界からはほとんど見向きもされていません。従業員を雇うことに伴う公租公課のコストが高すぎるわけですから、当たり前の話でしょう。
このように考えていくと、1980年代と比べて現代の日本では、電力の安定供給に難があり、税制が無駄に複雑で負担が重くなってしまっていること自体が、日本の競争力を大きく削いでいるのです。
韓経「止まらない円安」
こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日掲載された、『韓国経済新聞』(韓経)次の記事には、なかなか考えさせられます。
止まらない円安、韓国・日本経済に示唆する点
―――2022.04.09 10:25付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】
韓経によれば、8日の外為市場では1ドル=124円15銭と、2月以来で6%も値下がりし、主要通貨のうち「日本円がトルコリラの次いで下落幅が大きかった」(※誤植は原文ママ)、「3年3ヵ月ぶりに100円=1000ウォンを割った」、などとしています。
そのうえで、次のように述べます。
「円安がこのように進む場合、製造業の輸出で日本と競争関係にある韓国にもプラスにならない。製品の価格競争力がそれだけ落ちるからだ。新韓金融投資のキム・チャンヒ研究員は『円安が下半期まで続けば鉄鋼・機械・自動車などの業種に被害が生じるかもしれない』と懸念した」。
ことの本質は、これでしょう。
日韓両国の経済は、相互補完的というよりも、どちらかといえば競合関係にあります。
基本的に品質では日本企業が韓国企業のそれを上回っているものの、汎用品の価格競争力では韓国の方が強く、自動車では日本が韓国に対し優位性を維持しているものの、鉄鋼では互角、機械・半導体では韓国の方が優位、といったところが実情です。
したがって、円安傾向になれば、基本的に日本企業が国際的な市場で韓国企業を駆逐することができる可能性が上昇します。あとの課題は、電力の安定供給、といったところでしょう。
日本のメディアは、円高になればなったで「輸出産業が疲弊して日本経済はお終い」、円安になれば「輸入品価格が急騰して日本経済はお終い」、といった論調で報じることが多いのですが、韓国メディアだと「輸出競争力」という点に直接に斬り込むのは面白い点でしょう。
日本に「通貨政策」など存在しない!
もっとも、韓経には、こんな記述も出て来ます。
「円安は結局、日本の通貨政策が米国と異なるデカップリング(脱同調化)現象によるが、これは日本が通貨政策を『変えたくても変えられないほど』長期低成長の沼に入ったためということだ」。
違います。
まったく違います。
そもそも冒頭で指摘したとおり、日本は「トリレンマ」のうちの「③為替相場の安定」を捨ててしまっており、「通貨政策」というものは存在しません。
このあたり、韓国メディアの報道を見ていると、金融政策の目的が「為替相場をいじるためのものだ」といった誤解が根底に流れているフシがありますが、これはごく初歩的な経済学に対する勉強が完全に不足している証拠ではないかと思えてなりません。
日本にあるのは「通貨政策」ではなく、正しくは、「金融政策」です。
そして、インフレ率というものは、目に見える価格(たとえばパン、小麦、食品など)だけではなく、エネルギーや生鮮食品などを除外したベースの「コアコアCPI」などで判断する必要があります。この「コアコアCPI」が先月、依然としてマイナスだったという点は、意外と注目されていません。
すなわち、インフレ目標を達成していない以上、緩和的な金融政策については続けざるを得ず、現在の円安もその結果もたらされているものに過ぎないのです。
ちなみに韓経の記事では、「日本が経済沈滞から抜け出す可能性は現在のところ大きくない」などとして、たとえば少子化、財政健全化などで「経済的には厳しい状況」が続いている、などとしているのですが、このうち少子化に関しては、日本よりも韓国の方がはるかに状況が厳しいのも事実です。
(※ついでに申し上げれば、日本円のような「ハード・カレンシー」の場合、自国通貨建てで発行された国債のGDPに対する適切な発行水準の許容度は、韓国ウォンのような「ソフト・カレンシー」の場合と比べて飛躍的に上昇します。)。
そのうえ、日本が2019年7月に講じた韓国に対する輸出管理の厳格化(あるいは適正化)措置などの影響もあってか、日韓の産業の一体化はこれから徐々に逆転し始めるかもしれません。
いずれにせよ、『せっかくの円安なのに日本経済の復活を邪魔するのは?』でも指摘したとおり、日本経済の本当の課題を見抜くうえでは、産業構造上の「ライバル」である韓国のメディアの報道を読むのが手っ取り早いのかもしれない、などと思う次第です。
日銀の連続指値オペの影響もあり、円安がさらに進行しました。日本のように巨額の外貨準備や対外債権を抱える国にとって、円安は国富の上昇を意味しますし、また、円安の進行は日本の輸出産業にとって非常に良い影響をもたらします。ただし、現在は再生可能エネルギー買取制度や原発停止の影響、さらには無茶な増税路線を続けて日本経済を疲弊させた「ポンコツ官庁」である財務省が、日本経済の足を引っ張っている状況にあります。日銀「連続指値オペ」昨日は日銀が「連続指値オペ」を開始しました。連続指値オペの実施について【※PD... せっかくの円安なのに日本経済の復活を邪魔するのは? - 新宿会計士の政治経済評論 |
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今回の資源高の解決策に、購入価格を下げる努力というのがあります。
しかし、これは間違った努力です。
購入価格が高いか安いかは、あくまで相対的なものです。
しかし、ガソリン価格が上がったので補助金で安くしようとすると値上げ圧力が下がります。
結果価格転嫁が起こりません。
すると、輸入価格が上がるも輸出価格がそのままなので、相対的に貿易黒字が減ります。
なので、資源高はそのままで人件費が上がれば相対的にガソリン価格が安くなります。
しかし、現在日本の税制や政策のせいで人件費が上げ辛い状況となってます。
財務省の役人が数学出来ないせいですね。
そこで、今回の資源高の対策ではまず原発再稼働と石炭火力や火力発電所の新規建て替えに補助金を出して効率のいいものに替えます。
また、新規原発製造にも補助金を出して、自動車以外の原油使用量を極限まで減らします。
次に、毎年1月と6月に国民ひとりあたり10万円を配り、政府は企業に資源高の価格転嫁と人件費上げをお願いするのです。
給料さえ上がれば、資源高の衝撃も吸収出来ます。
また、これだけ円を増やせば円安になり更なる資源高を招くという不安もありますが、それは杞憂です。
日本の景気がよくなれば、海外に逃した資産が日本に帰ってきます。
また、円安になれば日本の輸出圧力が高まり貿易黒字となれば円安圧力も下がります。
全ての原因は、1980年後半うまくいってたシステムをバブル潰しのために改悪して、そのままにしているのが原因です。
西と東のデカップリングが進むので、日本にとって有利となります。
今こそ変わるときです。
>sey g 様
論旨は然りと思います。
しかしながら、
>現在日本の税制や政策のせいで人件費が上げ辛い状況となってます
税制上は賃上げ税制などもあり、税制そのものは、人件費の抑制要因の中では小さいと思われます。
そもそも、給与とは、下限が相場で決まり、上限が売上(提供した価値)の分配で決まるという性質があります。
給与を上げる場合、分配の源泉である売上の裏付けが必要となります。
売上が上がれば給与を上げられますが、当然に、分配の源泉である売上が下がれば、給与も下げる必要が出てきます。
しかしながら、本邦では、昇給は簡単ですが、減給は難しいです。
よって、経営者は昇給に慎重になる、換言すれば、売上が下がっても負担可能なレベルの昇給しか行いません。
以前のように、インフレ基調であれば、昇給しないことが事実上の減給となり、積極的な昇給のインセンティブになりますが、
現在のようなデフレ基調では、賃金メカニズムがうまく働かず、賃金が抑制されてしまいます。
本邦に必要なのは、現在の経済状況に合わない、古い法律を改正し、社会の効率化を図る事でしょう。
牛人様
鶏が先か卵が先か。
給料が上がらなく、購買力がないので価格を上げられないのか、それとも価格が上げられないから人件費が上げられないのか。
商品を買うのは金持ちではなく、圧倒的多数の労働者です。
その労働者の購買力が上がらないことには、価格転嫁しようにもできません。
そして労働者の購買力を上げるには給料の上昇ですが、価格転嫁が難しいので給料を上げられません。
バブル崩壊の時は、みんなのインフレ思考を大転換させるぐらいの衝撃を与える政策をしました。
現在のデフレ思考を大転換させるためには、少しの変化では全員の方向は変わりません。
年収五百万の5人家族の場合、年2回の一人あたり10万円給付で百万円の上昇ですので、値段を1割上げても生活は苦しくないし、購買力も減りません。
こうやって、インフレ率をあげ、景気を上げていけば 資源高の上昇率より給料の上昇率が上回れば、資源高は関係なくなります。
デフレ基調でのインフレ行動はバカを見ますし、インフレ基調でのデフレ行動もバカを見ます。
全員が一気に行動変換をしなければ、インフレにはなりません。
日本は消費税5%から、ずっと政策間違いをおかし続けて、その方向を変えようとしません。
今こそチャンスです。
あと、規制の事は詳しくないので アイデアを出せずすみません。
だからといって、某国のように所得主導政策と称して、他の要因を何も考えずに最低時給だけをむりやり引き上げても、かえって経済が混乱するだけですし。いよいよ内部留保に課税する案でも考えた方が良いのかもしれません。
龍様
某国は、固定相場制と資本移動の自由を選択しているので、実は金融政策の自由はありません。
よって、最低時給をあげても その原資となる お金の量を増やせません。
お金の量を増やさずに、最低時給を上げると お金の流れがカンストをおこします。
しかし、日本には金融政策の自由があります。
国債発行と国民への給付金により、市中に流れるお金の量が増えます。
値上げをしたら、購買力が減るのと 値上げをしても購買力がかわらないのと どちらが価格転嫁しやすいのか?
そして 内部留保への課税ですが そんな税制をつくるより 年率2%のインフレにしただけで 実質 内部留保は課税されたのと同じ効果になります。
日本の目指す道は インフレ そして マネタリーベースの増大により 景気回復することです。
sey g 様
マイナス金利政策を延々と続け、お金をジャブジャブ市場に供給しても、ちっともインフレ率2%が達成できないからこそ、現在のような状況になっているのではありませんか?
つまりは、金融政策だけではデフレ基調を変えることは難しいのかもしれないというのが明らかになりつつある、というのが現状だと思います。ならば、どうすれば良いのか、という点が現在の議題だと思います。金融政策があるから大丈夫というのでは答えになりません。
龍様
自分は現在の金融緩和は不十分だと思ってます。
確かに、金融緩和しています。でも、デフレが終わらないのは金融緩和に効果がないのではなく、金融緩和の量が少ないからです。
例えばロケット。噴射の量が少なく大気圏を超えられなかった時に、ロケットエンジンの噴射では大気圏を超えられないから、違う方法を考えなくてはならない。となるだろうか?
もっと長時間の噴射を、もっと重量を軽く、もっと噴射のパワーをあげようとなるのではないか?
今回補正予算で国債発行で金融緩和したが、一度も供給能力を越える程の需要増になるくらいの金融緩和をしませんでした。量が少なすぎるのです。
そして、次が重要です。
国債発行を伴わない金融緩和は、銀行の貸し出しが増えないと効果を発揮しません。
金融緩和で市中の国債を現金にかえても、その現金が国内の貸し出しにまわらないと、金融緩和は効果を出せません。
そして、デフレ時 たった0.01%の金利でも 借金は損になります。
故に国内に貸し出し先がないので、金融緩和だけではデフレ脱却は難しいのです。
デフレ時、損になってもお金を借りて投資出来るのは、幾ら借金をしても破産しない 日本政府しかないのに、数学的思考を出来ない財務完了が、何もしないので いつまでたってもデフレが終わらないのです。
あと、これは龍様を責めてるのではなく、陥りやすい思考の罠の解除のために 説明をしているだけなんで 気分を害されたらすみませんでした。
龍 様
>内部留保に課税する案
これだけは悪手といえます。
イメージされている内部留保は、金融資産の相手勘定としての剰余金だと思われますが、投資に係る資産勘定の相手勘定も内部留保に該当します。
すなわち、内部留保に課税すると、即効性のない投資が阻害されます。当然に、長期的な経済成長も阻害されるでしょう。
金融資産に課税する方がまだマシですが、
そもそもが、税制は公共サービスの原資を集めるツールですので、
経済対策に用いるのはあまり勧められません。
グローバル化した現在では、
結局のところ「上に政策あれば下に対策あり」ですので、
小手先の政策では、抜け道を塞ぎきれないのです。
労働法などの社会の基幹となっている部分を、現在の社会に適した形に変革する事が必要だと思われます。
sey g 様
>鶏が先か卵が先か。
この場合ですと、ほぼ売上(売上の見込み)が先です。
(投資が先行する場合もあります)
ほとんどのケースでは、給与のない事業者(個人事業者など)が売上(経済的価値)を獲得し、今後の事業展開(売上の増加見込み)が立つ場合に、
雇用を増やし給与を支払います。
(コロナ下での雇用維持など例外はあります)
すなわち、売上の裏付けがない場合、借入や投資資金の取り崩しでしか、
給与の原資がありませんので、ほとんどのケースで売上(見込)が先行します。
>そして労働者の購買力を上げるには給料の上昇ですが、価格転嫁が難しいので給料を上げられません。
売上とは、顧客が評価した経済的価値ですので、必ずしも値上げを意味しません。
新たに財やサービスを創造すれば良いからです。
実際に、売上は伸びていました。(コロナ以前)
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/result-2/h18sokuho/pdf/h2c1scij.pdf
(経済産業省)
しかしながら、売上の推移に対し、賃金の推移はほとんど動いていません。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b1_2_2_3.html
(中小企業庁 売上高の分析)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/dl/01.pdf
(厚生労働省 賃金の推移)
給与の下限を決める、労働市場に競争が働いていない事もありますが、
経営者が売上の減少リスクを負えていないから、
売上の増加が、給与の増加を生んでいないとも読み取れます。
企業の行動様式を変える事が必要であり、それを、社会環境を整えることで進める事が必要であると考えます。
牛人様
御説ごもっともです。
否定はしません。が、自分の説明の言葉足らずを追加します。
例えば、月給40万で毎月貯金10万円してる人がいます。
この人なら、より良いもので金を余分に払っても買いたければ買うことが出来ます。
しかし、月給12万円で月にギリギリの生活をしてる人が、今迄10キロ2000円で買ってた米をより美味しい10キロ3000円の米に買い換えられるか?といったら、おそらく無理だと思います。
極端な例ですが、より良いものが出来たとしても 購買力がなければ売れません。
いや、本当に欲しいものなら借金をしてでも買うというかも知れません。
しかし、借金も将来の収入の保証や収入の増加見込みがなければできません。
全てはデフレのせいなので、インフレになるように政策転換が必要だとあうのは理解できます。
余談ですが、その昔日本は固定相場制でした。
その時代、貿易黒字がそのまま日本円の増加となり、貿易黒字と景気に相関関係がありました。
しかし、変動相場制にしてからは、政府や日銀が経済成長や米国の通貨政策をみながら、マネタリーベースの調整をしなければならなくなりました。
しかし、彼等にはその能力がなく、米国が幾らドルを刷っても、貿易黒字がどんなに積み上がっても無策でした。
よって、米国の通貨政策、貿易黒字により自然と円高になり、すると貿易黒字を円替えするよりそのままドル投資する方が儲かるので資本流出が起こり、円高圧力をやわらげました。
するとドル円相場が安定して、益々日銀と政府は無策となり、資本流出が加速していったと自分は見ています。
また、プラザ合意で円高を抑えるためにマネタリーベースを増やしてバブルをおこしたが、あの時土地と株以外のインフレ率は2%前後でした。
あの時バブル潰しのために、全ての経済に急ブレーキを踏んだために、日本人全員が一気にデフレマインドになったのだと思ってます。
あの急ブレーキに匹敵する経済ショックで日本人に貯金したら利益が減る。金を借りて投資(投機ではない)しないと資産が目減りするなどとインフレマインドにさせないとジリ貧になると危惧しております。
sey g 様
こちらも言葉足らずであったようです。
申し訳ありません。
>極端な例ですが、より良いものが出来たとしても 購買力がなければ売れません。
ここで言う購買力は、内部留保の例のように、あるところにはある(企業などに蓄積されている)という前提で論じました。
企業などに購買させる(投資をしたくなる)事が大事だと思います。
>全てはデフレのせいなので、インフレになるように政策転換が必要だとあうのは理解できます。
「日本社会がインフレ環境に適応している」という事は共通認識であると思われます。
sey g 様は、上記命題に対し、「デフレ環境をインフレ環境にすべし」、とおっしゃっていると理解しております。
当方としては、見方を変えて、「日本社会がデフレ環境に適応してはどうか」と主張しております。
>余談ですが、その昔日本は固定相場制でした。
昔の日本は人口ボーナス期でしたので、現在との比較は難しいかと。
バブル期の対応が拙かった点は、然りと思います。
牛人様
デフレ環境に適応とは、どういう事でしょうか?
自分はドルの価値円の価値は相対的なものと認識しています。
そして、ドル円相場はドルの量と円の量、そして景気が関係していると思ってます。
例えば、日本円の量はそのままに、ドルの量を2倍にした場合現在1ドル120円が60円になるかというと、そうではありません。
1ドル120円に近づく様に動きます。
しかし、ドルの量が増えたので、米国ではインフレになり、物の値段が上がります。
しかし、日本円は増えてないのでそのままになると、同じ1ドル120円でも日本円の購買力が下がります。
しかし、ドル円相場は同じなので円の購買力が下がった事に気づきません。
1990年初頭、日本のプロ野球とメジャーリーグの給料格差は縮まってました。
しかし、現在その格差は3倍以上開いています。
何故か?
ドルの増加量に対して円の増加量が微々たるものだからです。
そして経済循環。
日本人は他国より貯蓄が大好きです。
昔バブル前、貯蓄、貸し出し、貯蓄、貸し出しとお金が好循環してました。
それは、銀行が土地を担保に幾らでも金を貸してたからです。
しかし、強引な手法でバブル潰しをしたため、銀行は土地や株を担保に貸し出すのを渋りました。
なら、銀行は技術や経営力、将来性に対して貸し出したか?
銀行にそんな能力がないので、そして国債を買うしか出来なくなったので、貯蓄貸出の好循環が止まりました。
しかし、政府が国債を発行して、公共事業したら、間に国債を挟む好循環になったのが、財務省の緊縮財政で国債、公共事業の間に楔を打ち込まれ、好循環が止まりました。
ここの楔を取れば、昔の様に貯蓄から公共事業、そして貯蓄と好循環していくと思います。
sey g 様
>デフレ環境に適応とは、どういう事でしょうか?
先の例で言えば、売上の減少を理由とした減給ができないという制度は、インフレには適応できますが、
デフレには適応してません。
>自分はドルの価値円の価値は相対的なものと認識しています。
全くもって然りと思います。
>そして、ドル円相場はドルの量と円の量、そして景気が関係していると思ってます。
然りではあると思いますが、もう少し要素を分けられるのではないかと感じます。
http://www2.meijo-u.ac.jp/~onishi/keikiw6/youin.html
(名城大学 大西ゼミナール 為替の変動の要因)
>例えば、日本円の量はそのままに、ドルの量を2倍にした場合現在1ドル120円が60円になるかというと、そうではありません。
>1ドル120円に近づく様に動きます。
おっしゃりたいことは分かります。
実際の為替の動きを参考にされているのだと思われます。
しかしながら、実際にはあり得ませんが、上記の景気を変化させずに、上記のドルの量を2倍した場合、
1ドル120円が60円に近づくというのが、基本的な考え方ではないかと思います。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2020/0331nk/n20_1_3.html#n20_1_3_3
(内閣府 感染症の危機から立ち上がる日本経済)
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00039/022500005/
(日経ビジネス 武田真彦 量的緩和がマネーサプライ、為替相場にもたらしたもの)
その他、sey g様の論じられる「景気」の影響で、実際の為替は動いていると、私は思います。
金融市場も発達しておりますので、長期的には、購買力などは、為替に織り込まれるのではないでしょうか。
>それは、銀行が土地を担保に幾らでも金を貸してたからです。
>なら、銀行は技術や経営力、将来性に対して貸し出したか?
>銀行にそんな能力がないので、そして国債を買うしか出来なくなったので、貯蓄貸出の好循環が止まりました。
確かに、バブル期に銀行の事業性を評価する能力が失われたという話は、よく聞きます。
>しかし、政府が国債を発行して、公共事業したら、間に国債を挟む好循環になったのが、
>財務省の緊縮財政で国債、公共事業の間に楔を打ち込まれ、好循環が止まりました。
>ここの楔を取れば、昔の様に貯蓄から公共事業、そして貯蓄と好循環していくと思います。
企業に内部留保が溜まっている事から、企業まではある程度降りてきているのではと考えます。
企業から個人にどう流すかが大事ではないでしょうか。
牛人様
お答え頂きありがとうございます。
概ね同意頂き感謝です。
ドル円相場の件は言いすぎましたが、言いたい事は伝わったと思います。
そして、儲けから人件費ですが、消費税が邪魔をしていると聞いた事があります。
人件費を引いて消費税を計算しないので、消費税を抑えるために派遣社員や人件費を抑えるインセンティブが働くと聞いた事があります。
確かに、90年以前は、税金で取られるくらいなら人件費や福利厚生でばらまいた方がいいとガンガン配ってた様な気がします。
これは、伝聞ですが。
そこら辺に人件費を増やすヒントがあるのかも知れません。
sey g様
議論を楽しんで頂ければ幸いです。
>そして、儲けから人件費ですが、消費税が邪魔をしていると聞いた事があります。
>人件費を引いて消費税を計算しないので、
>消費税を抑えるために派遣社員や人件費を抑えるインセンティブが働くと聞いた事があります。
消費税は消費者に負担させる、逆に言えば事業者には負担させない、
という大前提で作られております。
故に、事業者に対する外注費や人材派遣費用の消費税は、売上で預かった消費税から控除できますが、
事業者ではない者に対する給与や賃金は、控除できません。
なので、課税事業者には、同じことをやらせるのであれば、
外注や人材派遣をするインセンティブが発生してしまっております。
極端な例ですと、出前の外注業者のように、配達員を雇用ではなく、外注化することで、
消費税の節税と、交通事故等のリスクヘッジを行っている事業者もいます。
裁判に負けて糞ほど源泉税取られれば良いのに。
>確かに、90年以前は、税金で取られるくらいなら人件費や福利厚生でばらまいた方がいいと
>ガンガン配ってた様な気がします。
>これは、伝聞ですが。
>そこら辺に人件費を増やすヒントがあるのかも知れません。
たしか、昭和63年に、未払いの賞与は損金に算入しないという判例が出るまでは、
決算時に未払賞与を立てて、従業員に対する利益分配をしていたはずです。
当時は、未払賞与による税収減のインパクトが大きかったのでしょう。
しかしながら、今日では、国際的なトレンドとして、法人税率を下げ、代わりに他の税金(所得税や消費税や資産税)
を上げなければならない状況ですので、インパクトは小さくなっているはずです。
未払賞与の復活は面白いアイディアであると思います。
牛人様
楽しい議論をありがとうございます。
自分はバブルの時代に税金を払ってないので、実感がわかないのですが 昔に比べて税金を広く厚く取ってる様な気がします。
保険料や年金を含めると4公6民となってると思います。消費税を含めると5公5民になります。
確かに高額納税者の6公4民もよくは無いと思いますが、この税金の高さが 日本人の安物嗜好を呼び、高価な日本製を忌避させてるのではないかと見ています。
昔の税率は高く、税金を払うくらいなら何でも経費とするシステムが日本の良さだったのが、この経費を卑怯だと穴を塞いでいったのが悪かったのです。
日本の良さは、高くとも良い製品なら買うという、オタク的消費者で、故に安いものしか買えない現在の状況が、企業の商品開発力を削いでるのではと仮説をたててます。
と、ここまで書いて もっと大きな流れ 企業の人件費を抑えよう、電気料金が高い、海外に工場を建てよう、など 色々な要素も見ないといけないと気付き、また整理して来ないといけないと思いました。
また、色々な意見を教えて下さい。
ありがとうございます。
日本のメディアは弱い日本が大好き。
円安になれば「弱い日本」の証拠、円高になれば輸出ができなくなり「弱くなる日本」。どっちに転んでも日本を貶めている。
マスコミも”有識者”も、「円安で日本の行先は暗い!」「円高でこんな問題が!」
ばっかり叫び続けてきたんですよね。
ただ、最近は「じゃあ円安と円高どっちが良いんだよ。ちょうどいい所はどこだよ?」
「どっちも百害あって一利なし?そんな馬鹿な話があるか」と
突っ込まれやすくなったせいか、以前程そういう理論を振りかざさなく
なった印象があります。
「そういう都合の悪い事を聞いてくる奴は無視」が今までのスタンスだったけど、
無視できなくなる程広がってきたのでやむを得ずふてくされながら
口をつぐむ様になった……こんな流れになっていると思います。
「日本は遅れている」「北欧は理想郷」「中韓すごい、日本オワタ」
「外国を見習え」「日本は借金まみれ」……一昔前はマスコミが好んでいた
フレーズが、最近はもうほとんど使えなくなっている様に感じます。
単純に原発再稼働で問題は解決すると思います。その影響で円安解消するも良し、そのまま円安なら円安の美味しい部分だけを得られ、国富流出となっている原油天然ガス輸入は大幅に減らせます。
ホント簡単なことなんですが、なかなかそこに目がいかないのが残念です4
韓国はウォン安に対して介入している。
自国通貨安に介入するのはドルを売ることだから外貨準備が減ってるはず。
>「このため、日本にとって円安は、「外貨建て債務の増大」というデメリットをほとんどもたらさず、むしろ「外貨建ての資産価値の増大」、「日本企業にとっての輸出競争力の増大」、という具合に、メリットの方がはるかに大きいのが実情でしょう。」
問題は「外貨建ての資産価値の増大」「日本企業にとっての輸出競争力の増大」も増大した分を享受できるのは企業であるため最終的に国民ひとりひとりにまで還元されにくく、一部企業の社員給料が上がったとしても全体としては景気に最大の影響を与える国内消費がしぼみ続けることではないでしょうか。
円安のメリットを直接享受できない人にとっては、「国富が増大するといわれてもねぇ、おれのサイフはちっとも膨らまねぇ」という消費者心理は無視できないと思います。
円安・円高どちらが良いとは一概には言えませんが、逆に円高は輸出企業にとっては痛手ですが、一方輸入品の価格が下がるため国民の目に見える形でメリットが感じられ消費者心理がくすぐられる点でしょうか。
みなさんが様々な見地からご指摘のとおり
円安も円高もそれぞれの即効性と遅効性の
メリット・デメリットがありますが、
日本のメディアや偏向学者の
騒ぎ立てのレベルの低さには呆れます。
ただこれは、
日本だから言えることで
自国通貨安での崩壊に怯える
脆弱通貨国の半島さんとかでは
誤魔化しての通貨防衛に頑張る
死活問題なのでしょう。
私はこだわってはなかったのですが
この記事ご紹介のように韓国メディアが
円安を嫌ってるということは
円安のほうが望ましいのだろうと
感じます。
通貨防衛する金を他に回して通貨安に耐えれる国にした方が良いかも
要するに日本は韓国ほど為替変動に一喜一憂する必要がないということです。もちろん影響はおおいにありますけど、工夫して対処が可能なレベルってことです。
韓国はそうはいきません。ごく狭い範囲を除いては許容できず、折角の利益を吹き飛ばしてしまう恐れがあるということですね。また、日本の通貨安も隣の国の問題じゃなくて、輸出競争力の相対的低下という大問題な訳です。
願わくば日本の国民に「円安は嫌だよ」と声を上げてもらってなんとか円安を介入でもして解消させたい。だから日本語版に記事を書くのです。
まあ日本としてはどっしり構えてればいい。個人としてもメリットを享受する工夫をすれば良い。海外資産が豊富な企業の株を買うとか。