韓国で民間債務の合計が国内総生産の2倍超にまで膨張

韓国の民間債務が名目GDPの2.2倍に膨らんだそうです。これは、GDPの伸びを上回る速度で、企業や家計が債務を膨張させているという証拠でもあります。ウクライナ情勢、資源高、米FRBによる金融引締めなどの状況を踏まえると、尹錫悦(いん・しゃくえつ)次期政権は発足直後から厳しい経済運営を余儀なくされるかもしれません。もっとも、大変なのは日本も同じですので、わが国にも韓国を助ける余裕はなさそうですが…。

韓国資産バブルFRB主犯説

ひと昔前ならいざ知らず、現代社会においては、基本的に金融市場は世界中でつながっています。

そして、世界の「基軸通貨国」といえば米国ですが、その米国の金融政策は、世界中、とくに「通貨の信用力が弱い国」に対し、非常に大きな影響を与えるのが常です。

こうしたなか、『不動産市場から「韓国資産バブル」を解説する鈴置論考』などを含めて以前からしばしば言及してきたとおり、当ウェブサイトでは韓国のコロナ禍後から昨年末ごろにかけての資産バブルに関し、米FRBなどの主要国中央銀行による積極的な金融緩和政策と密接な関係があると考えています。

詳しいロジックについては、上記記事を含め、過去に何度となく指摘してきたとおりですので、本稿では繰り返しませんが、要約すると次の①~⑧のような流れです。

韓国資産バブルFRB主犯説
  • ①FRB等、主要国中央銀行による金融緩和
  • ②為替市場で韓国ウォンを含めたEM(※)通貨高
  • ③韓国の通貨当局が「ウォン高になり過ぎれば輸出業者が困る」と判断
  • ④韓国のウォン売り・ドル買い介入(→外貨準備の増加)
  • ⑤市中のウォン流通量が増大(→マネタリーベースの増加)
  • ⑥金融機関の家計向けローンが増大(→家計債務の増大)
  • ⑦カネを借りた家計がリスク資産(株式、不動産、暗号資産など)に投資
  • ⑧韓国ウォンがビットコイン取引通貨の第3位に浮上

(【出所】著者作成。なお、「EM」とは “Emerging Markets” 、つまり「新興市場諸国」のこと)

為替変動のインパクトは日韓で全く異なる

ちなみに上記①~⑧の流れも、③を除けばいずれも間接的に立証可能な客観的な統計、報告書などが存在しています。とくに、韓国では通貨当局が日常的に為替市場に介入を行っていることは、米財務省がレポートで指摘しています(『米国財務省が「韓国は為替介入を行っている」と認める』等参照)。

そして、FRBが金融引締め局面に転じた現在、基本的には米ドルの価値が上昇する動きが観測されています。

たとえば日本の場合も、ドル円(USDJPY)は数年ぶりに1ドル=120円を突破し、本日正午ごろで121.80円前後を付けていますが、韓国ウォンの場合も対ドル相場(USDKRW)は今月、一時1240ウォン前後にまでウォン安が加速しました(本日時点では1218ウォン前後)。

ただ、日本の場合と韓国の場合では、通貨安の「効果」は大きく異なります。

日本の場合、対外債権の規模と比べれば対外債務の規模は非常に小さく、また、自国通貨・日本円が国際的に広く通用する「ハード・カレンシー」であることから、通貨安になったとしても、基本的にはそれがトリガーとなって「金融危機」が発生するという可能性は非常に低いです。

しかし、韓国の場合、GDPに対する対外債務の規模も大きく、これに加えて韓国ウォンは国際的な金融市場でほとんど通用しない「ソフト・カレンシー」ないし「ローカル・カレンシー」です。

自国通貨安になった場合には、韓国企業にとっては外貨建てで借り入れている債務の弁済負担が大きくなってしまい、それが財務制限条項(コベナンツの一種)に引っかかることで信用不安を招く可能性が非常に高くなるのです。

とはいえ、ソフト・カレンシー国の場合は許容される為替相場のレンジが非常に狭く、自国通貨高になればなったで輸出競争力が損なわれるため、過度な通貨高は容認されません。

このため、韓国国内では「為替相場の調整(スムージングオペレーション)」が行われていることは市場参加者の間では周知の事実であり、また、米財務省が議会向けの報告書でも繰り返し問題視(『米国財務省が「韓国は為替介入を行っている」と認める』等参照)されています。

韓国の民間債務がGDPの2.2倍に=韓銀

こうしたなか、韓国経済の状況について、またひとつ、気になる記事が出て来ました。

韓国の家計と企業の債務合計、GDPの2.2倍=過去最高

―――2022/03/25 10:19付 朝鮮日報日本語版より

リンク先は、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)の記事です(※朝鮮日報の場合、記事が公表されてから数日経過すると読めなくなってしまうようですので、原文を読む場合は早めにお願いします)。

これによると、韓国銀行が発表した『金融安定状況報告書』で、民間債務(家計債務+企業債務)が2021年12月末時点でGDPの220.8%に達し、「1975年の統計開始以来最高を記録」したのだそうです。

すなわち、韓国の昨年の名目GDP2057兆ウォンに対し、民間債務は4540兆ウォンで、GDP比では家計債務が106.1%、企業債務が114.7%だったのだとか。

これについて同レポートでは、「低金利が続き、低コストで資金を借り入れられる条件が整う中、現政権の不動産政策失敗に伴う住宅価格高騰でマイホームを購入するために家計が多額の借金をしたこと」が主因だと指摘しているそうです。

朝鮮日報はまた、次のようにも指摘しています。

民間債務の対GDP比は2017年第4四半期(181.9%)以降、16四半期連続で上昇を続けている。経済規模の拡大を上回るペースで民間の借金が膨らんでいることを示している」。

当然、債務の膨張速度が急速過ぎるため、家計の債務弁済能力も低下します。

朝鮮日報によれば、2017年代2四半期に152.9%だった家計債務の可処分所得に対する割合は、「昨年第3四半期現在で173.9%となり、過去最高を記録」し、「昨年第4四半期も173.4%で高止まり」している、などと述べています。

自営業者がとくに苦しい立場に

これだけでも、なかなかに大変そうですが、それだけではありません。朝鮮日報によると、なかでも自営業者の債務の膨張速度が非常に大きいのだそうです。

韓国銀行の資金循環統計などに基づけば、家計債務、企業債務などの膨張速度が上昇したのは、とくに2020年のコロナ禍以降のことでもありますが、それ以前からもこれらの債務が経済規模を上回る速度で膨張し続けていることは確認できます。

こうした状況について朝鮮日報は、「自営業者の売り上げが減少する一方、債務が増加し、不良債権化の懸念が高まっている」とする韓国銀行の分析を取り上げています。

具体的には、金融機関による自営業者への貸出残高は昨年第4四半期現在で909兆2000億ウォンで「前年同期比13.2%増加」。家計債務全体の増加率が7.6%(※これも凄い数値ですね!)だったのと比べ、自営業者の債務の膨張速度が目立つようです。

いずれにせよ、米FRBの金融引締めがペースを速めるであろうと想定されることに加え、ロシアのウクライナ侵攻などの地政学上の不安要因、エネルギー・穀物価格などの上昇を要因とした物価への影響も懸念され、錫悦(いん・しゃくえつ)次期政権にとっては、政権発足当初から大変な経済運営を余儀なくされそうです。

このあたり、エネルギー価格などの上昇に直面するであろう点については日本もまったく同じですので、ちょっと隣国を助けるだけの余裕がないことについても、また間違いないでしょう。

読者コメント一覧

  1. 引っ掛かったオタク@不安尽きまじ より:

    お公家様互助組織宏池会岸田首領が余計なムーブをしてしまわんか…不安

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      平安時代から公家は金にはがめついから
      大丈夫かもしれん

  2. だんな より:

    「誰がやっても、韓国経済を立て直すのは難しいでしょう」と言って10年近くなりますかね。
    数字は、順調に悪化して行くんですけどね。
    自営業者の融資909兆ウォンを、自営業者の人数は558万人で割り算すると、計算が正しければ一人当たり約1630万円の負債になります。
    殆ど(430万人)の自営業者は、従業員無しらしいので、チキン屋の借金としては大き目だと思いますけどね。

    1. カオナシ より:

      計算は、合っています。
      推定で、99%は、不良債権でしょうね。
      推測で、銀行も大弱り。

  3. sqsq より:

    3月23日、韓国金融委員会が「元利支払猶予措置の終了」の3度目の延期を決定したそうです。
    次は徳政令か。

    1. 匿名 より:

      売上の2倍以上にあたる債務。
      企業で考えれば完全な自転車操業で、何かあれば破綻不可避と思います。
      かつてのダイエーやカネボウと同じ状態です。それらの企業は産業再生機構により私的整理で救済されましたが、国家となればそうはいきません。
      左派政権による経済音痴の際たる債務超過を、尹政権がどう立て直すか、余程の良策がなければ破綻不可避とは思うのですが。

  4. 無病息災の男 より:

    私は、2014年以降の韓国の国内総生産(GDP)は、全て虚飾であると思っています。その根拠は、少し古いですが、2014年4月16日付けの中央日報のコラム 【日本を超えた? 輸出入の統計改編が歓迎できない理由】 にあります。
    https://s.japanese.joins.com/JArticle/184232?sectcode=120&servcode=100

    このコラムよりますと、韓国企業の海外の子会社の輸出入も韓国の輸出入として計上する=たとえばサムソン電子がベトナム工場で生産したスマホの内、韓国への出荷分は韓国の輸入には計上しないが、ベトナムから他の国への輸出分は韓国の輸出として計上するようになったとあります。IMFがそのように決めたとありますが、そのような事実はないでしょう。2014年時点で韓国の電子関連製品の70%は海外生産になったといっていますから、サムソン製品が中心の韓国の輸出金額の実態は、かなり目減りしているはずで、それを戻せばGDPは増えるでしょう。実際のGDPはもっと低いのですが、世界における韓国の地位とプライドの基礎となっているのがGDPの世界順位ですから、韓国政府はGDPの虚飾を行ってでも維持したいのでしょう。

    そして、さらに2014年以降も韓国企業の海外生産拠点の設立は増加の一途をたどっています。
    まず、韓国政府は、2014年以降、海外進出企業の国内回帰活動を行っています。(JRTROの記事参照)↓
    https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/a236023fefcf660d.html

    この記事によりますと、2014年〜2021年で海外から韓国に回帰した企業(製造事業場と呼んでいる)の数は 108社です。
    しかも、韓国に帰ってきた108社中、107社は中堅・中小企業であり、大企業はたった1社です。だから、回帰活動の効果は小さい。
    その一方でその間に韓国から海外に出ていった企業(製造事業場)の数は2万3273社!!にもなります。

    こんな調子では韓国の失業者が増加するのは当たりまえ、政府は失業率もGDPの成長率も誤魔化すしかないし、給与も上がる訳はないし、民間の債務は増加するしかないので、住宅購入に限らず債務が増加するのは当然だと思います。韓国は処置なし!です。

    1. sqsq より:

      昔読んだ室谷克実氏の本にも韓国の財閥は連結決算をグループ会社の財務諸表を単純に足してやっていたと書いてあった。
      理由は「他の財閥もやっているから」

      要するに人より大きく見せたたいということ。

      さすがに今は外国人投資家もいるのでそんなことはできないけど。

  5. カズ より:

    民間負債の増大は、社会の借金気質だけではなく、限界を超えた追加融資(至る自転車操業)により、債務の滞り(不良債権化)を先延ばしにした金融機関の隠蔽体質のせいもあると思います。

    奔放な融資は無責任気質(借りるも貸すも大概にしなくちゃ)の為せる業。
    きっと、皆が首を長くして徳政令を待ちわびてるいるんでしょうね・・。

  6. masa より:

    韓国家計負債の実態はもっと巨大だという意見があるようです。
    韓国特有の制度が絡んでるので日本人には分かりにくいですね。
    ソースを貼っておきます。

    ■少額資金で買いあさる、「ギャップ投資」盛ん
    これまで一般的とみられていた住宅ローンでマイホームを購入する割合は27%にすぎないという異常な事態を招いている。(残りはチョンセ?)

    ■世界一の家計債務、次期政権は正念場
    家計負債の分析で第一人者のキウム証券ソ・ヨンス理事(アナリスト)は、NNAに対し「本来は統計に加えるべき重要なデータが抜け落ちている。実際の家計負債は相当な額に膨らむ」とみる。例えば、借り主が保証金として預けるチョンセ自体も大半が融資で賄われており、それを加えると韓国は世界でダントツの家計債務国となる。

    【アジア】【アジア取材ノート】韓国不動産に赤信号 「チョンセ」の苦悩
    https://news.yahoo.co.jp/articles/e0f5ab50f3027fdc991dcd46c78d4b26f3220f77

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。