トリプル安の韓国、対ドル相場が1240ウォンを突破

外為市場でウォン安が続いており、昨日は1ドル=1240ウォンの大台に達したそうです。隣国・韓国では年初来、当ウェブサイトがカウントしただけでも12回も「トリプル安」を発生させています。もしもこのままウォン安基調が続き、それが通貨危機の兆候を示したとしても、残念ながらわが国にはそれを助ける余裕などないのかもしれません。

約6年ぶりの円安

昨日は外為市場で円安が進み、1ドル=118円30銭前後で取引されています。2016年2月以来、およそ6年ぶりの円安水準です。

日本円は従来、市場参加者からは「安全資産」として認識されていたフシがありますので、ウクライナ情勢を受けた市場全体の「リスクオフ」の流れのなかでは、ドルに対する円高方向に行くのが自然な発想でもあります。

しかし、世界的な原油高・資源高を受け、最近、日本の経常収支の赤字幅が拡大傾向にあることなどが意識されたためでしょうか、こうした「有事の円買い」という動きが発生し辛い傾向にあるのは気になるところです。

もっとも、日本という国は、自国通貨の円が国際的な金融市場で広く取引される「ハード・カレンシー」であること、対外債務が対外債権と比べて極めて少ないことなどを考えると、円安による日本経済への打撃は限定的と考えられます。

いや、むしろ円安になったら円安になったで、輸出競争力が伸び、とくにメーカーなどの企業にとっては業績が上振れる要因となること、円安による輸入品価格の上昇に伴う国産品への輸入代替効果も見込めることなどを踏まえると、円安が一概に悪いものとはいえません。

日本のメディアは円高になったら円高になったで「日本の輸出産業に大きな打撃が生じる」、「日本経済はお終いだ」、円安になったらなったで「輸入品物価が上昇する」、「日本経済はお終いだ」、といった具合に大騒ぎするのですが、いい加減、経済の実情を踏まえずに大騒ぎする癖は、やめた方が良いと思う次第です。

ソフト・カレンシーの場合はもっと大変

ところで、自国通貨が「ハード・カレンシー」である場合、その国の企業や政府は、基本的に自国通貨でおカネを借りることができます。もしも自国通貨でおカネを借りていた場合、自国通貨が上昇しようが、下落しようが、基本的に為替変動は債務償還能力に影響を与えません。

しかし、世の中にはそうでないケースもあります。

自国通貨が「ソフト・カレンシー」、つまり「その発行国・地域でしか通用しない通貨」である場合には、その国の企業などは、外貨でおカネを借りる必要が出て来ます。

そして、その国の通貨が上昇すれば、輸出競争力が損なわれますし、その国の通貨が下落すれば、外貨建ての借金の価値が上昇してしまう(つまり債務弁済負担が上昇してしまう)ため、債務償還能力に悪影響を与えてしまいます。

つまり、多くの新興市場諸国にとっては、自国通貨が国際的な通貨に対し、上昇し過ぎるのも、下落し過ぎるのも困りもの、というわけです。

こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝、こんな記事が出ていました。

ウォン下落どこまで…1年10カ月ぶりに1ドル=1240ウォン突破

―――2022.03.15 06:48付 中央日報日本語版より

中央日報によると、韓国ウォンの対米ドル相場(USDKRW)は昨日、10ウォン以上の上昇(=ウォン安)となり、1ドル=1240ウォン近辺で取引を終えたのだそうです(※ナイトセッションでは一時、1ドル=1242ウォンまで上昇したようです)。

年初来12回のトリプル安/日本に助ける余裕はなさそう

これについて中央日報は、「ロシアとウクライナの衝突が長期化し安全資産選好心理が強まった影響」に加え、ロシアの外貨準備の大半が西側諸国の金融制裁で凍結されているなか、同国の債務不履行の可能性が現実味を帯びていることなどを指摘します。

ちなみに中央日報によると、ロシアは16日までに1億1800万ドルの国債利払いを控えているほか、4月4日まで、相次いで6563万ドル、1億200万ドル、4億4653万ドル、21億2938万ドルなどの支払期限を迎える、などとしています。

この点、為替相場は上昇したり下落したりするのが常ですので、本日以降、小康状態に戻るかもしれませんし、また、例の為替介入によるウォンの買戻という動きも見られるかもしれません。ただ、中・長期的に見ると、為替相場の地合いが不安定であることは否定できないでしょう。

この点、昨日の『外国人が3週間で韓国株を5兆ウォン以上売越=韓国紙』でも取り上げましたが、韓国では年初から、「トリプル安」(株安、債券安、通貨安)が、当ウェブサイトにて集計しただけでも、12回発生しています。

金融市場の不安定な地合いが続くなか、韓国ウォンの下落が韓国の通貨危機につながらないかどうかも気になるところですし、もしそうなったとしても、日本も円安で大変ですので、残念ながら日本に韓国を助ける余力はないのかもしれない、と思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. sqsq より:

    有事のドル買い、米金利高で株から米債券への回帰、新興国からのリスク回避。このあたりが基調。
    韓国の場合はこれに加えて、コロナ感染の急増、格付け低下のリスク、新政権の経済政策の不透明、配当による4月の巨額資金流出があり、海外投資家は「とりあえず手仕舞うか」ということになりウォンはまだ下がるのでは。

  2. 元日本共産党員名無し より:

    > 年初来12回目のトリプル安
    経済指標の見方や何を指標にするかなどはさまざまですがこのトリプル安は経済的な苦境に傾きつつある証拠と言えますね。
    他の中進国各国との比較ではどんな具合なのでしょうか? 何となく他の中進国もトリプル安がボツボツ点灯する国が出てきそうではあります(未確認)。ウクライナ情勢のお陰でトルコの武器輸出が前年比で大変な躍進をしたと何かで見ました。今後も当分トルコはウクライナ情勢を天佑としてちょっと前に陥っていた悪性インフレから抜け出すのかも知れません。
    ブラジルがウクライナ情勢では対露制裁に加わらない諸国の中で目を引いたのですが経済的に何かあるのでしょうか?人口も国土も大国だしロシアからSLBMを打ち込まれる脅威だってユーラシア大陸や北米に比べたらゼロみたいなモノで忖度してロシアに忠義だてする理由がよくわからないのですが。

  3. M1A2 より:

     自称元徴用工の訴訟問題を解決する代わりに通貨スワップ締結を~とか、また性懲りもなく日本に通貨スワップを求めてきたりするんじゃないですかね。
    岸田政権だと必要のない譲歩をしちゃいそうで怖い。

    1. 名無しの権兵衛 より:

      M1A2 様へ
       同感です。 尹錫悦次期大統領から、直接、岸田総理に「岸田首相は、韓国大統領選挙直後の電話会談で、私に『日韓関係改善のために共に協力をしていきたい』と発言された。私は、日韓関係については、解決が困難な問題は事務レベルで協議を続けることとし、当面は、お互いに譲歩しやすい問題から解決していってはどうかと考えている。ついては、韓国政府は『佐渡島の金山』の世界遺産登録に全面的に賛成するので、日本政府は韓国政府との『通貨スワップ協定』締結を了解するということで、日韓関係改善の第一歩を踏み出していければと考えている。」と電話等で提案されると、「それは、グッド・アイデアですね。私も全面的に賛成です。」とか口走ってしまいそうで、大変心配です。 

      1. F6F より:

        M1A2様、名無しの権兵衛様

        私も岸田首相のこれまでの言動を見る限り、韓国の0:100ディールに簡単に乗せられてしまう可能性をどうしても排除することが出来ません。非常に危惧しています。

  4. より:

    円はUSドルに対してだいぶ下げてますし、ユーロに対しても、対ドルほどではありませんが下げ気味になっています。一方で、豪ドルやNZドルに対しては円高の方向に動いています。かと思えば、主要国の国債は軒並み値下がりで、金利ベースではドイツ国債は+39.7%となっており、単純なリスクオフの動きというわけでもなさそうです。

    https://sekai-kabuka.com/kawase.html

    市場で何が起きているのかよくわかりませんが、とりあえず韓国ウォンは1USドル=1244のラインを瞬間的に突破してますので、凡そ2年前の水準に近付きつつあり、さぞかし気をもんでいる人たちがいるのだろうなあと想像されます。韓銀の担当者には胃薬を支給すべきかもしれません。

    1. だんな より:

      龍さま
      そんなにデリケートじゃ無いでしょう。虫下しが、いいんじゃない。

    2. 匿名 より:

      つ【征露丸】

    3. 冥府白道 より:

      龍さま
      >>円はUSドルに対してだいぶ下げてますし、ユーロに対しても、対ドルほどではありませんが下げ気味になっています。

      今回ばかりはウォンよりも円の動きが気になります。
      円の強さは私自身六年前現場に出ていた際、当時円は120円前後をウロチョロで円安の
      流れは続くと読んで、格付け上位国の海外債券で固めた商品をお客様に持っていただい
      た(要は売りつけた)のですが、ブレクジットで一気に100円を切るまで騰がって
      泡吹いたという苦い経験から、自国通貨ながら侮りがたしと一目も二目も置くように
      なったのですが、さすがにこの動きは不気味です・・・・。まさにトリプル安がこの国で
      起きようとしている、そんな気配。
      先週のBSフジのプライムニュース、真田、鈴置さんの回をご覧になられた方も多いと
      思うのですが、あの冷静沈着(の筈)の真田さんが、ウクライナ侵攻以上に今回の円安に
      舞い上がってしまい、正直、頭の中はお花畑としか申し上げようのない意見を真顔で
      言うに及ぶ始末。改めて事の重大さを認識した次第です。
      正直申し上げて、120円を超えると一気に売られるようにも感じます。もちろん半世紀
      以上振りにガチの戦争が起こってしまったことによる動揺がマーケットを覆い、それに
      米の利上げや原油高が重なったとはいえ、我々日本人は持たざる国として新たな局面を
      迎えたように思います。
      憲法改正や核もそうですが、改めてこの国の形について議論すべき時が来たのではない
      でしょうか・・・・・?
      長文、また生意気なことを書いて失礼いたしました。

  5. 愛読者 より:

    明日のFRBの影響も見越して、相場からは目が離せなくなっています。ウオン/円レートで言うと若干のウオン高・円安に振れていますし、株価のピークからの値下がり率を見ても、韓国のほうが日経平均より若干下落率が高い程度です。日本の経常収支が赤字になってから、外国人が円や日本株を売るハードルが下がりました。ついでに、日本は公定歩合の利上げ余地がないので、今後、韓国と同様にトリプル安が進行することを予想しています。アジア通貨全体が下落している、という見方もできます。
    個人的には過去にそう予想してポジションを組んでいるので、それなりに含み益は出ています。
    外国人投資家は日本にとっての善悪ではなく(合法的な範囲で)利益で動きますので、日本経済は韓国と一緒に、かなり叩かれることもあり得ます。

  6. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    防衛ラインを1500くらいにした方が良い

  7. 門外漢 より:

    ああ、口座を凍結されたから介入出来ないんですね。え?違うの?

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告