韓国政府が対ロシア制裁の第一弾に同調しなかった意味
『日本・台湾・シンガポールも対露制裁同調…韓国は抜けた』。韓国紙『中央日報』(日本語版)の今朝の記事によると、米国が発表した対露制裁の第一弾に、韓国は同調しなかったのだそうです。韓国大統領府関係者は「韓国も国際社会の責任ある一員として米国など関連国と緊密に疎通している」などと述べたそうですが、煮え切らない態度です。
2022/03/01 14:00追記
本文中の誤植等を修正しました。なお、読者コメントが消えてしまっている件については、現在、復旧に向け調査中です。
対露制裁の本命は「ドル制裁」
先ほどの『対ロシア制裁の本命は「ロシアのドル取引からの排除」』で指摘したとおり、ウクライナ情勢を巡るロシアに対する制裁のなかでも大変に強力なものがあるとしたら、それはロシアの金融機関を米ドルなどの決済網から排除することでしょう。
これについて、米国政府が取り急ぎ、現時点で発表している内容については、「▼ロシアの2つの金融機関やその関連会社を米ドル決済から排除、▼ロシアの国債等の米国資本市場における発行・流通の禁止」、などの措置が含まれています。
Fact Sheet: United States Imposes First Tranche of Swift and Severe Costs on Russia
―――2022/02/22付 ホワイトハウスHPより
こうしたなか、もしも米国が本気で制裁を本格化していけば、ロシアを米ドル決済から全面的に排除する、といった展開もあるでしょう。
米ドルは現時点において、事実上の世界の「基軸通貨」ですし、ホワイトハウスの発表によれば、ロシアの外為取引の8割は米ドルを介在したものであり、かつ、ロシアの対外貿易の5割は米ドル建てです。そうなると、ロシア経済自体が大きな混乱に陥るという展開も十分にあり得るでしょう。
韓国が対米制裁に同調せず?
さて、こうしたなか、ロシアのウクライナ侵攻危機は、米国の同盟国に対し、意外な効果をもたらしたのかもしれません。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載されていたこんな記事を読むと、そうした感想を抱かざるを得ません。
日本・台湾・シンガポールも対ロシア制裁同調…韓国は抜けた
―――2022.02.24 07:18付 中央日報日本語版より
中央日報によると、米国の対ロシア制裁には英仏独などの欧州諸国に加え、日本、台湾、豪州、シンガポールなども同調したにも関わらず、「韓国は(制裁から)抜けた」のだそうです。
具体的には米国が米国製ソフトウェアや技術を利用して生産した半導体チップなど先端技術の対露禁輸を同盟国・パートナーなどと議論しているなか、「これら製品の主要生産地であるアジア諸国に制裁同調を要求」しているのだそうです。
これに加え、日本、カナダ、豪州、英国などは金融制裁で米国に追随する一方、ドイツはロシアとドイツをつなぐ深海底ガスパイプライン事業「ノルドストリーム2」のプロジェクト中断を打ち出すなど、主要国が相次いで対露制裁を発表している状況です。
これから半導体輸出規制議論が本格化したらどうなる?
一方、中央日報によると、韓国大統領府関係者は23日、「ウクライナ危機と関連し、軍事的支援や派兵は検討していない」としつつも、米国からの対露協調制裁への要請を受けているかどうかに関する質問にはこう答えたのだそうです。
「米国はロシアに対し高強度の輸出統制、金融制裁などの計画を明らかにしてきた。友好国ともこうした協議を続けている。韓国も国際社会の責任ある一員として米国など関連国と緊密に疎通している」。
すなわち、韓国政府としては、(いちおうは)対露制裁に同調する可能性があると述べた格好ではあります。
この点、実効性はほとんどないとはいえ、米国の対露制裁に真っ先に同調した日本などの事例と比べれば、何とも煮え切らない対応でしょう。すなわち、米国が主導し、日欧など主要国が同調した第一弾の経済制裁に対し、韓国が同調しなかったという事実は、何とも気になります。
当然のことながら、今後、米国が対露半導体輸出規制を発動する場合であれば、「半導体王国」である韓国も米国から同調を要求されると考えられます。その意味で、ウクライナ危機自体、米国にとっては思わず、「頼りがいのある同盟国」、「そうでない同盟国」を選り分ける、よい機会だったのかもしれません。
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