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岸田首相肝いり?「四半期開示廃止」に賛同ゼロの衝撃

岸田文雄首相が「新しい資本主義」の一環として掲げる「四半期開示見直し」への賛同がゼロだった――。こういう衝撃的な記事がありました。「新しい資本主義」の「元ネタ」になったと思しき「公益資本主義」なる書籍を執筆した原丈二氏は、「短期主義は投機につながり、バブルを発生させ、中間層が貧困層に没落する」、「したがって四半期決算を廃止すべき」とする趣旨の発言をしているのですが、そんな浅薄で誤解に満ちた考え方が否定されたことは、ある意味では当然のことかもしれません。

岸田首相の驚くべき発言

岸田首相の「株主は賃上げ理解を」発言の不勉強ぶり

岸田文雄首相を巡っては、当ウェブサイトではかねてより、「会社法制そのもの」をきちんと理解しているのか疑問だ、などと申し上げてきました。

たとえば、『不勉強すぎる岸田首相「株主は賃上げ必要性理解せよ」』では、岸田首相が昨年12月21日の記者会見で、次のように発言したことを紹介しました。

賃上げを通じた分配は、コストではなく、未来への投資です。きちんと賃金を支払うことは、企業の持続的な価値創造の基盤になります。この点を企業の株主にも理解してもらうことが必要です」(※下線部は引用者による加工)。

岸田首相は昨日の会見で、「賃上げの必要性を企業の株主も理解すべき」などと言い放ちました。不勉強、不見識にもほどがあります。あるいは、あまり考えたくないのですが、岸田文雄さんという人物は、そもそも会社法や株式市場などの基礎知識を持っていない可能性もありますし、あるいは「確信犯」として、日本を社会主義国か何かに私用としているのかもしれません。株式会社の社員カネさえあれば誰でも上場会社の社員になれますよ!「カネさえあれば、上場している株式会社の『社員』には、誰でもなれる」――。こんなことを申し上げる...
不勉強すぎる岸田首相「株主は賃上げ必要性理解せよ」 - 新宿会計士の政治経済評論

この発言、会社法制の趣旨に照らすならば、なかなかに強烈です。

前段にある「賃上げを通じた分配の強化」の部分については、いちおう、岸田首相なりの政治哲学のようなものが感じられます(※それに賛同するかどうかは別として)。しかし、なぜそれを、「株主が」理解しなければならないのでしょうか?

もしかして、岸田首相の念頭にある「株主」とは、「会社の所有者」兼「会社の経営者」、という意味合いで使われている用語ではないでしょうか?

もしもそうだとしたら、これはとんでもない思い違いです。

そもそも上場会社の場合、所有と経営は分離している

企業財務論の基礎レベルの話ですが、現代資本主義社会における「会社」は、基本的には所有と経営が分離しています。

もちろん、非上場会社の場合だと、経営者・創業者一族がほとんどの株式を所有していて、結果的に所有と経営が一致しているという事例もあるのですが、それは「会社という制度は、所有と経営を一致させることもできる」という話に過ぎません。

ましてや、岸田首相の発言は、大企業を含めて企業一般に対して向けられたものであり、日本を代表する名だたる大企業はほとんどが上場会社であり、それらの上場会社で所有と経営が一致しているケースは、ほとんどないと考えて良いでしょう(皆無ではありませんが…)。

そして、株式会社は会社の資本金を株主が拠出することで成立する会社のことですが、株主は自分が出資した資本金の範囲内でしか責任を取りません。これが、「株主有限責任の原則」、すなわち、「会社が倒産したら、最悪、自分が出資した資金が回収できなくなる」、という責任の取り方です。

その一方で、会社の経営者は、「株主から経営を任されている受託者」であり、会社役員(※委員会等設置会社の場合は取締役、監査役設置会社の場合は取締役や監査役)は株主総会で選ばれる、という仕組みです。

さらにいえば、上場会社の場合だと、むしろ株主の方が、頻繁に入れ替わっていますし、大きな会社ともなれば、日本中、あるいは世界中に何万人、何十万人という株主が散らばっていて、個人投資家であれば、「自分は株主だが、その会社の社長の名前すら知らない」、というケースが一般的でしょう。

当然のことながら、株主の立場からすれば、首相ごときから「賃上げを理解せよ」などと注文を付けられても、それに応じる義務は一切ありませんし、それどころか、株式市場という、政府にはコントロールできない存在に対して注文を付けると、株式市場からは「株価下落」という「天罰」を喰らわされるかもしれません。

このあたり、「株主が理解せよ」などの発言ひとつで、岸田首相という人物が市場、あるいは資本主義そのものをまったく理解していないということが露呈するわけですから、なかなか興味深いと思わざるを得ないのです。

株主(つまり社員)と従業員の違いを理解していない

ただ、岸田首相の発言を巡って、不安な気持ちにさせられたのは、これだけではありません。

岸田首相「株主資本主義からの転換は重要」発言の衝撃』などでも紹介したとおり、岸田首相は「新しい資本主義」に関連し、「企業支出のうち配当金の割合が過度に上昇しているのではないか」との質問に対し、「企業文化のなかで分配を考えた場合、おっしゃるような点は大変重要」などと答えた、というのです。

岸田首相が「株主資本主義からの転換は重要な考え」として、株主配当よりも従業員への賃金分配などを重視する考えを示したようです。株主配当と賃金というまったく次元が異なる概念をいっしょくたに議論している時点で恐ろしいところがありますが、岸田首相のいう「新しい資本主義」とは、もしかしたら資本主義そのものの否定なのかもしれません。岸田首相のちょっと驚く認識以前の『不勉強すぎる岸田首相「株主は賃上げ必要性理解せよ」』では、岸田文雄首相が「賃上げの必要性は株主も理解すべき」などと述べた、とする話題を取り上...
岸田首相「株主資本主義からの転換は重要」発言の衝撃 - 新宿会計士の政治経済評論

正直、株主への配当と従業員に対する賃金を同列に置いている時点で、岸田首相の経済制度自体に対する基礎知識水準が非常に怪しい限りです。

報道等によれば、岸田首相は就任以来、「市場偏重・株主偏重の資本主義がもたらした歪みの是正に取り組む」考えを示しているのだそうですが、株主への配当は株式投資に伴うリスクの対価であり、その「リスクの対価」を国全体で規制する、という発想は、まさに資本主義の否定そのものでしょう。

では、なぜこれが「資本主義の否定」なのか。

そもそも論ですが、株主と従業員は、似て非なる存在であり、株主に対して支払われる配当金と、従業員に対して支払われる賃金は、まったく別次元のものです。

重要な余談:社員は株主であり、従業員は社員ではない

ちなみに、少しだけ余談を述べておきたいと思います(※ただし、とても重要な余談です)。

会社の従業員のことを「社員」と呼ぶ人がいるのですが、この用語については、完璧な間違いなので注意しましょう。そもそも「社員」とは、「その会社の出資者」のことを意味しますので、当然、株式会社の社員は「株主」です。

昨日時点でトヨタ自動車株式会社の株価は2184円だったそうですので、手数料を無視すれば、218,400円分あれば、トヨタ自動車の株式を1単元(=100株)購入することができたという計算です。

このため、どこかの証券会社に証券口座を開き、218,400円でトヨタ自動車の株式1単元を買い付ければ、「私はトヨタ自動車の『社員』です」と名乗っても、法的には間違いではありません。

このあたり、著者自身も興味があって、会社従業員のことを「社員」と呼ぶ誤用がいつから始まった調べたことがあるのですが、少なくとも戦後の一定の時期には、会社従業員のことを「社員」と呼ぶ表現が定着していたようです。

「元ネタ」は公益資本主義

社員はリスクテイカーであり「分配」、従業員は「費用」

余談は以上として、本論に戻りましょう。

株式会社の社員、すなわち「株主」とは、会社に対して資本を提供する「リスクテイカー」であり、そのリスクの対価として得られるものは、基本的には株式配当(インカムゲイン)と、(上場会社株式だった場合は)株式の値上がり益(キャピタルゲイン)です。

このうちインカムゲインについては、会計上は、損益計算書に含まれる「費用」「原価」ではなく、あくまでも剰余金処分計算書上の「利益処分の一環としての分配金の支払い」に含まれますし、キャピタルゲインについては会計上、一切無視されます(つまり会社としてはあずかり知らぬ世界の話です)。

これに対し、株式会社の従業員、すなわち俗世間で誤用されている用語でいう「社員」とは、会社から「雇用契約」により雇われている人物であり、その従業員が会社から受け取る金銭は、「労働の対価」としての人件費(給与・賞与、法定福利費、福利厚生費、退職給付費用、資格取得のための補助金など)です。

そして、従業員に対し計上される費用は、会計上も販管費、製造原価など、税引前利益を計算する際の構成要素です。

いわば、従業員に対する金銭の支払は、企業がマンパワー(ヒト)を使用したことに対する費用の支払であり、株主に対する金銭の支払は、従業員に対する人件費を支払ったあとの残余利益のなかから、会社の所有者たる株主に対して「分配」されるものであり、「費用」ではありません。

いずれにせよ、岸田首相が「従業員に対する『分配』」なる用語を使うから紛らわしくなるのですが、従業員(≠社員)に対する金銭の支払は「分配」ではなく「費用」であり、株主(=社員)に対する金銭の支払は「費用」ではなく「分配」です。

そして、「従業員に対する費用を増やす」という決断をすることは、株主から委任を受けた経営者が経営責任をもって判断すべきことであり、その結果、株主価値が毀損した場合は、岸田首相が責任を負ってくれるわけではなく、経営者が株主に対して直接、責任を負わねばならないのです。

この点、安倍晋三総理が在任中に、経団連に対して賃上げを要請したことがありましたが(『連合、参院選で「立憲民主党を支援せず」もあり得るか』等参照)、これはあくまでも「お願いベース」の話であり、「労働者への賃金を引き上げるために、会社法制を含めた制度そのものを恒常的に変更する」、という話ではありません。

連合が立憲民主党を見放しつつあるというのは、本当だったのかもしれません。先日の『支持率低迷の立憲民主に対し連合が突き付けた「警告」』では、「連合が今夏の参院選に向けてまとめた選挙方針で、支持政党を明示しなかった」とする時事通信の報道を取り上げましたが、朝日新聞が昨日、ほぼ同じ趣旨の内容を報じました。異なるメディアが報じたということは、やはりこの報道は事実である、という可能性が濃厚です。野党勢力に「地殻変動」最近、わが国の野党勢力に「地殻変動」が生じつつあるのかもしれません。最大野党である立憲...
連合、参院選で「立憲民主党を支援せず」もあり得るか - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、岸田首相の「新しい資本主義」は、ともすれば労働コストの膨張をもたらしかねず、日本全体におけるリスクマネーのリスクテイク余力を削いでいくという形ともなりかねません。

新しい資本主義の正体は「公益資本主義」?

こうしたなか、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」なる概念、正体は原丈二氏が執筆した『「公益」資本主義』なる書籍がネタ元ではないか、などと指摘されているのですが、どうも岸田首相の発言内容に照らして、同著が岸田首相に大きな影響を与えていることは間違いありません。

そして、大変申し訳ないのですが、同著、あるいは原氏の発言などを拝読していると、どうもこの原氏という人物が、会社法制どころかマーケットそのものに対する単純な知識不足に基づく重大な思い違いをしているのではないかと思しき点を、いくつも発見してしまうのです。

これについては『ダイヤモンドオンライン』に昨年10月30日付で掲載された、原氏に対するこんなインタビュー記事も、参考になるかもしれません。

岸田版・新しい資本主義の元ネタ?「公益資本主義」提唱者が語る“分配の理想形”

―――2021.10.30 5:20付 ダイヤモンドオンラインより

(※ダイヤモンドの記事は会員限定版ですが、無料会員でも一定条件を満たせば読むことができるようです。ただし、会員登録の方法、閲覧条件などについては、ダイヤモンドオンラインで直接ご確認ください。)

ダイヤモンドによれば、公益資本主義とは次のような考え方のことだそうです。

社員・顧客・仕入先・地域社会・地球といった全ての社中に貢献することにより企業価値を上げ、その結果として株主にも利益をもたらすという資本主義のあり方。社中への公平な分配、中長期投資、企業家精神による改良改善を旨としている」。

冒頭から「社員」という用語が出て来ますが、文脈から判断して、この「社員」とは正しい意味(つまり「株主」)ではなく、「会社従業員」の意味で誤用されているものと推定されます。この時点で薄々、嫌な予感がしてきます。

「株主資本主義は新自由主義につながるもの」

原氏は岸田首相が外相だったころに内閣参与を務めていたと述べており、岸田氏に対して「公益資本主義」の考え方を伝えたところ、岸田氏がいたくその考え方を気に入ったのだとか。

そのうえで、原氏はこの「公益資本主義」について、自ら次のように説明します。

公益資本主義において、会社は社会の公器です。『社中』と言っていますが、社員や顧客、仕入れ先、株主、地域社会、地球など会社を支えるあらゆるメンバーに会社の利益を分配します。一方で、新自由主義につながる株主資本主義では、会社は株主のものです」。

…。

しつこいようですが、会社従業員を「社員」と呼ぶのは誤用であり、基本的に会社法制をきちんと学んだ人であれば、このような誤用をすることは考えられません(※ごくまれに弁護士の方でも会社従業員を「社員」と呼んでいるケースもあるようですが…)。

その点もさることながら、この原氏の認識、「会社は社員(つまり株主)の利益獲得のための仕組みである」という会社法制の考え方を無視しているものであり、資本主義の否定、あるいは一種の「社会主義」、「共産主義」にもつながる考え方です。

一方、原氏が「新自由主義につながる株主資本主義」と呼んで批判している考え方は、じつは「株主がリスク資本を提供することで事業が起こされる」という意味では資本主義の根幹であり、ここを否定すること自体が資本主義の否定そのものでしょう。

どうして四半期開示が「短期主義」と関係あるのか?

さらには、ダイヤモンドの記事を読んでいると、こんな記述も出て来ます。

短期主義になればなるほど、活動が投機に近くなる。投機はバブルを発生させ、バブルは必ず崩壊します。その時に、中間層の財産が富裕層に移り、中間層が貧困層に没落するのです。短期主義を改め、中長期で経営できるよう、四半期決算を廃止すべきだと考えます」。

このあたり、控え目に申し上げて会社制度・株式上場制度・金融商品取引法制に対する初歩的な誤解、いや、もし理解したうえでこのように述べているのだとしたら、悪質な「誤誘導」そのものです。株主は「短期志向」である、という点について、まるで当然の前提であるかのごとく議論を進めているからです。

「短期主義が投機を招き、投機がバブルを発生させ、バブル崩壊で中間層が没落する」。なんだか「風が吹けば猫が三味線になる」というくらい、荒唐無稽で稚拙な空論ですし、「四半期決算を廃止すれば短期主義を改めることにつながる」というのも、理論的因果関係がメチャクチャです。

もちろん、現実の株式市場では、「高頻度取引」(HFT)のような手法でアービトラージ的に発注を繰り返すという事例も存在しますし、また、市場においては現物株式だけでなく、ときとしてデリバティブを駆使し、ときとしてショートセルを駆使し、さまざまな影響を与える市場参加者も存在します。

しかし、GPIFや銀行・保険・年金等の機関投資家のなかには、アセット・アロケーションの一種として株式を長期ポートフォリオ戦略の一環で保有しているケースもありますし、個人投資家のなかにもiCeCoなどの仕組みを使い、長期的にポートフォリオを組み立てているケースもあるでしょう。

しかも、「四半期開示」と「短期主義」の間には、何の関係もありませんし、「四半期開示を廃止したら短期主義と決別できる」という論理的因果関係など存在しません。

もちろん、個人的には、四半期開示が開示作成者(=企業)の実務担当者にとっては大変な重荷になっているという点については気になっているところですが、それはあくまでも「開示の簡素化」という側面から議論されるべきものであり、「短期主義廃止のために四半期開示を廃止せよ」とは意味不明です。

その意味では、原氏の株式市場に対する理解は極めて浅薄であり、稚拙です。そして、この程度の理解に基づいて提唱されている怪しい考え方に、岸田首相が乗っかってしまったのだとしたら、岸田政権を見ていると、本当に不安になります。

四半期開示廃止の賛成が「ゼロ」!

さて、岸田首相自身が方針として掲げる「新しい資本主義」とやらの一環にある、「四半期開示の廃止」を巡っては、昨日、こんな記事がありました。

岸田首相が見直し目指す四半期開示、廃止賛成ゼロ-金融審作業部会

―――2022年2月18日 17:26 JST付 Bloombergより

Bloombergによれば、岸田首相が掲げる四半期開示の見直しを巡って、昨日の金融審議会作業部会では「短期主義を助長するものではない」とする趣旨の発言が相次ぎ、廃止に賛成した委員がゼロだったのだそうです。

ある意味では、当たり前でしょう。

もしも岸田首相が原氏の「公益資本主義」を鵜呑みに信じているのだとしたら、その理解自体が会社法制や証券法制などに対する誤解に満ちた極めて浅薄なものだからです。

ちなみにBloombergには、「四半期報告書と決算短信の一本化を求める意見も多数出た」などと記載されていますが、これは当ウェブサイトでも指摘している「開示簡素化」という文脈に沿ったものと考えるべきでしょう。

それに、麻生太郎総理の義弟(妹の夫)でもある鈴木俊一財務相兼金融担当相も、ご自身が金融担当なのであれば、岸田首相に対し「その考え方は論理的におかしいですよ」といさめるべき立場にあるはずでしょう(※これについては単純に、鈴木財相にその能力がない可能性が高いのだとは思いますが…)。

あるいは、岸田首相が自分の周りを固めているはずの財務省出身のブレーンの皆さんが、岸田首相に「その考え方はおかしい」と指摘できない時点で、財務省という役所がいかにポンコツであるかという証拠なのかもしれません。

考えてみれば、財務省は30年このかた、増税原理主義で日本経済を歪め、低成長の罠に叩き込んで来た主犯でもあるため、財務省出身者が岸田政権のブレーンを固めた状況でこうなってしまうというのも、ある意味では当然の帰結といえるのかもしれません。

「岸田おろし」はあり得るのか?

さて、最後に少しだけ、もうひとつの余談です。

岸田首相が日本をどこに持って行こうとしているのかはよくわかりませんが、少なくとも「新しい資本主義」が、日本全体をさらに低成長に叩き込むのではないか、との懸念は、岸田首相が就任してからの株価の動きを見ても、あながち杞憂ではないように思えてなりません。

こうしたなか、普段だと正直、あまり見向きしない「政界動向記事」が、ふと目に留まりました。

安倍晋三の「岸田つぶし」が全内幕…メンツ丸潰れの元総理「復讐のシナリオ」

―――2022.02.18付 現代ビジネスより

岸田よ、今に見ていろ…安倍晋三「政権奪還」の露骨な復讐劇がはじまった…!

―――2022.02.18付 現代ビジネスより

講談社が運営するウェブ評論サイト『現代ビジネス』に、安倍総理が菅義偉総理と組んで、「岸田潰し」を画策している、などとする記事が掲載されていたのです。ざっくり要約すると、こんな具合でしょうか(原文では安倍・菅両総理、岸田首相らは呼び捨て表記ですが、要約に当たっては表記を改めています)。

  • 「新しい資本主義」は、財務省ポチとも揶揄される岸田首相がアベノミクスを否定するために使い始めた用語だ
  • 安倍政権時代の看板政策も廃止されたことに加え、岸田首相の中韓に対する煮え切らない態度は安倍総理にとって許せない
  • 岸田派(宏池会)は谷垣グループ、麻生派などと合流し、「大宏池会」を目指す動きもある
  • そこで安倍派(清和会)は菅義偉総理が二階派を引き継ぎ、自身の派閥を立ち上げるのを待っている
  • 一方の菅総理にも、コロナ対策を巡って岸田首相に「俺の遺産で食っている」と不満をぶちまける
  • 二階派も足して70人強まで膨らんだ菅派と、95人の清和会が組めば、大宏池会を上回る

…。

このあたり、記事に紹介されている政治家らの発言をどこまで信頼すれば良いのかはわかりませんが、ただ、岸田政権を巡るさまざまな不祥事が出てきていること、それらの不祥事が「自民党内の政治的謀略」という可能性があること、などについては、ジャーナリストの泉宏氏も指摘しています。

岸田政権を急襲「不祥事3連発」に潜む不穏な蠢き/「自民党内の政治的謀略のにおいがする」との声も

―――2022/02/17 9:00付 東洋経済オンラインより

泉氏によると、この「不祥事3連発」は、「反岸田派と目される有力議員からは『参院選に向け、首相をレームダックに追い込むチャンス』との不穏な声ももれてくる」のだそうです。

これらの報道が事実なら、もしかすると、立憲民主党が今夏の参院選に向けて支持率低迷・不祥事発覚・連合や日本共産党との関係で大混乱に陥っていること(『連合が決定した参院選基本方針で「支援政党」記載なし』等参照)もあり、自民党内では「政争」の余力もある、ということでしょうか?

今夏の参院選:辻元清美氏が社民党の2%の壁を阻むのか?連合が異例の「支援政党なし」を決定――。連合は昨日、中央執行委員会を本部で開き、今夏の参院選に向けた基本方針を決定したそうですが、異例にも「支援政党」が明示されていなかったったのだそうです。ただし、あくまでも報道ベースですが、政策協定については政党ではなく候補者個人と締結するとの方針を決めるなど、連合が立憲民主党に対し、「逃げ道」を作っているかに見えなくもありません。ギクシャクする連合と立憲民主党の関係昨年10月の衆院選のあたりからでしょうか...
連合が決定した参院選基本方針で「支援政党」記載なし - 新宿会計士の政治経済評論

その意味では、政権発足からまだ数ヵ月の岸田首相にとっては、安倍、菅両総理を含めた自民党内の動きは、非常に気になるところなのかもしれない、と思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (47)

  • 新たな資本主義を創る議員連盟
    発起人 甘利氏
    会長 岸田氏
    最高顧問 安倍氏 麻生氏
    2021 6 11 発足です

  • 四半期開示って、かなり、企業の負担になっているのですがね。
    何故、廃止に賛成者が居ないのでしょうか?

    • 賛成する人が少ないというのを聞いて、市場というものを理解しているんだなと安心した。
      例えば四半期の開示は企業の任意、やってもやらなくてもいいということにしたら何が起こるだろう。四半期開示をしない会社の株主は株を売って逃げ出し、株価は下がる。それを見て「この値段ならバーゲンだ。会社ごと買ってもいいな」という人が出てくる。
      結果、すべての会社が四半期開示をやることになる。
      四半期開示が負担になっているなら上場しなければいい。開示は他人の金で経営をさせてもらうコストだと考えた方がいいのでは。

    • 岸田賛成・擁護派の方ですか?
      だとしたら岸田さんを支持している理由は何ですか?
      (煽りではないです。)

  • 昨日、Bloomberg の記事を読み、こちらで解説してもらえることを期待していました。
    岸田首相の狂った新しい資本主義は、習近平式の共同貧困富裕と、分在寅式の所得主導経済を取り入れた、日本を特亜に差し出すための媚中媚韓政策だと思っていましたが、公益資本主義という怪しげな本だったのですね。その本の著者の意図がどこにあるかまでは、知りませんが。

    他にも、"株式公開価格の設定プロセス見直し、スタートアップ支援で-岸田首相" (Bloomberg 2022年1月19日 15:25 JST) という報道もありました。
    こちらも、公開価格が低いのではなく、評価が定まっていないことによる株価変動の大きさに付け込んでひと儲けしようと、イナゴが群れて初値をつり上げるのが悪いのであって、数ヵ月もすれば公開価格を割る銘柄も多いことを全くご存じないようで、下手な見直しをすれば公募に応じる人がいなくなり、スタートアップの妨害にしかならないと感じています。

    岸田首相の経済政策は、極浅い表面的なことしか見ない(理解できていない?)ものが多くて不安です。
    ウリ売りの「聞く力」というのも、「自分の思想に合う話だけを聞き、合わないものには聞かない自由を発揮する力」だと感じます。

    それから、社員という言葉の誤解を広めたのは、松下幸之助氏の「社員稼業」という言葉かもしれません。

  • 岸田氏の経済リテラシーは文在寅とあまり変わらないんじゃないかという気がしてきた。
    株主は理解してくれ? 従業員の賃金水準のことは経営者に任せてあることで、これをマネージできるから経営者。高くしすぎて利益が減っても、安く放置して従業員が逃げても経営者の仕事の範囲であって株主に何の関係もない。株主はそういうことをマネージできない経営者の首をすげ替えるだけ。
    岸田氏の発言には統制経済のにおいがある。そういうことを理解できない人かもしれない。

  • 日本の経済学者はマル経の影響を受けている人が多い。
    株主=資本家、従業員=労働者という考え。
    そこから「会社は誰のものか?」などというくだらない問いをする。
    株主のものに決まってんだろう。
    そもそも、従業員のいない会社は可能だが株主のいない株式会社はない。

  • どちらかといえば、賃上げではなくて雇用促進につながる設備投資に力を入れて欲しいです。
    単にバラまいただけでは、家計の貯蓄残が増えるだけで社会に還元されたりはしないのかと。

    普通に考えれば賃上げは人手不足に伴って発生するのが自然な流れです。
    一律に賃上げを強要しても経営体力のない企業が廃れるだけのことかと。

    成功企業が ”三方よし(社会還元?)” を体現してるのは、経営体力に余裕があるからです。
    因果関係的に見ても”三方よし”を実践すれば無条件に成功企業なれるのではありません。

    岸田首相の唱えてる「新しい資本主義」は錯誤の産物なのだと思います。
    日本の未来が「在ったらしい資本主義」にならないことを切に願います。

  •  「株主の利益を削って従業員の賃上げに回せ、株主は理解しろ」じゃなくて、「従業員も株を買って株主になり、企業の利益を得るようにしよう」という形だったら少しはましだったと思います。従業員の給料の一部を自社株で支払ってもいいでしょう。給料の一部を仮想通貨で払ってる会社もあるのですから、本人の同意があれば実現も可能です。
     中長期的な経営をするよう目指すのなら、四半期決算廃止よりも日経平均やTOPIXのインデックスファンドを購入させ、長期保有するよう仕向けるという手もあります。NISAの拡充をやってインデックスファンドを10年以上保有した人に免税するのも一案です。

    • 大賛成です。
      頑張った分だけの成果が着実に獲得できる仕組みがいいと思います。
      やりがいを損ない(モラルハザード)かねない、一律の賃上げには反対です。
      *不測の事態に備えれば、自社株一辺倒ではない方がいいのかもですね。

    • とある福岡市民 様

      趣旨には賛成なのですが、実際には困ったことも。

      持ち株会に入っていた知り合い。
      失業とともに、資産も失いました。

      卵は同じ籠には入れないほうが…。

  • 「資本主義」なんて言葉を使って、風呂敷広げすぎなんですよ。
    「資本主義」もそうですが「分断」「リアリズム外交」等々も、人によって語る意味が変わるので、こんなのを目標にもってきちゃうと、出来上がったものが多くの人にとって中途半端になって不満ばかりが募ると思います。

    曖昧な言葉は、政権を批判する側(野党、運動家、評論家、左翼マスコミとか)にとっては、逃げ道もあるし相手の出方によって攻め手を変えられるし、使い勝手がいいと思います。
    政権を担う側はずっと注目されるし、必ずしもそうではないと思うんですよね。

    自民党内での非主流派が長くて、野党グセがついちゃったんですかね。

    • だから非主流派に政権を取らせたらダメなんだよね

  • 岸田は話を聞く人間だと自他共認めてるみたいだけど見てると極一部の偏った人の意見しか聞かないように見える
    四半期決算のせいで短期的になるとか配当のせいで企業の利益が従業員に回らないとか、そういう企業も中にはあるのかもしれんが全体の状況を反映したものでない
    四半期では平然と赤字発表し、配当は寄越さない
    俺が持ってる銘柄なんてそんなんばっかだよ
    切り取った一部だけ見て全体の仕組みを変えようなんて滅茶苦茶になるだけってわからんのかね

    • >岸田は話を聞く人間だと自他共認めてるみたい

      証券税制の話、株主は賃上げを理解してほしいという話、四半期開示の話、すべて国民に受けると思って話してるみたいだけど自分の無理解をさらけ出してるだけじゃないかな。

    • 岸田首相の「話を聞く人間と自他共認めてる」について辛辣な評価を書くと
      ”他”の方々は「適当にヨイショしておけばこちらの言いなりにできる軽い神輿」という意味で行っていると思われます。
      また、”自”は根幹となる信念や行動原理がないのを借り物の知識を聞いて誤魔化している様に見えます。

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