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辻元清美氏の立候補は社民党の得票に影響を与えるのか

社民党、消滅!?

辻元清美氏が今夏の参院選比例区に出馬するそうです。なんだか、社民党の党首である福島瑞穂氏と、行動パターンが似てきた気がします。この点、福島氏は任期がまだ3年以上残っていますので、「福島・辻元の相打ち」という可能性はありませんが、ただ、辻元氏の立候補により、政党要件が危機にあるとされる社民党の得票がどうなるのかは気になる点です。

参院選でも「維新>立憲」?

今朝の『今夏参院選の投票先でも維新・立憲「逆転」=日経調査』では、日経などのいくつかのメディアによる調査で、今夏の参院選の「投票先」として、立憲民主党と日本維新の会の逆転が生じ始めている、という話題を取り上げました。

政党支持率で「維新>立憲」が定着しつつあるなか、日経新聞の調査では「投票先」でも両党の逆転が生じたようです。日経によると、夏の参院選で投票したい政党などについて尋ねたところ、1位は43%を獲得した自民党でしたが、2位は16%だった日本維新の会で、立憲民主党は10%にとどまり、3位に沈みました。その一方、例の「ヒトラー発言」を巡ってはほかにも報道があったようです。政党支持率の逆転現象昨日の『支持率低迷の立憲民主に対し連合が突き付けた「警告」』では、最新の政党支持率調査に加え、立憲民主党の支持基盤のひ...
今夏参院選の投票先でも維新・立憲「逆転」=日経調査 - 新宿会計士の政治経済評論

もちろん、参院選自体はまだ5ヵ月以上も先の話であり、現時点で各政党の正確な獲得議席を予想することは難しいのが実情でしょう。しかし、昨年10月末の衆院選でケチを付けて以降、立憲民主党を巡っては、あまり良い話題は聞こえてきません。

とくに、年明けすぐに発覚した「CLP問題」、続いて同党の最高顧問でもある菅直人氏による「ヒトラー」発言など、どうにも一般の有権者から見て、同党に対する魅力が高まる要素が見受けられません。このように考えていくと、立憲民主党の「社民党化」が急速に進み始めている、という仮説すら浮かんでくるのです。

利権野党・社会党の成れの果てが社民党

ところで、「社民党化」と申し上げたのには、理由があります。

社民党、あるいは昔の党名でいえば「日本社会党」は、かつては自民党と並ぶ「2大政党」と目されていたものの、基本的には「万年野党」などと揶揄されていました。実際、「土井ブーム」などの一時的な例外を除けば、基本的に社会党が国政選挙で自民党を上回る議席を獲得したこともありません。

著者自身の持論ですが、社会党は「最大野党の地位」に安住し、「護憲」、「平和主義」などの現実離れした理想を唱えているだけの、いわば「利権集団」と成り果てていたのではないかと思います。

高額の歳費や「文書通信交通滞在費」なども支給されるほか、鉄道・航空券の無料チケットなどのさまざまな恩恵を受け取り、それなのに国会では与党の妨害、揚げ足取りに終始しているにも関わらず、新聞やテレビで「政府と戦う格好良い野党議員」と擁護してくれる――。

まさに、楽しくて仕方がない地位にあったのでしょう。

ただ、社会党が現実離れしたところで遊んでいる間に、米ソ対立構造が終焉し、湾岸戦争などの局所的な紛争が発生するなど、世界情勢は大きく動きます。

そして、自衛隊を海外派遣するかどうかを議論する際に、社会党は「何でも反対」以外に選択肢を提示することができず、結果として有権者からも呆れられたのではないでしょうか。

社会党は結局、土井たか子委員長が退任し、1993年の政権交代、1994年の村山富市内閣(自民・社会・さきがけ連立)発足などの混乱のなかで、党としてのそれまでの主張をいきなり転換するなどしたため、党勢の退潮に歯止めがかからなくなります。

そして、党内の「右派」などは、社会党から分裂し、やがては1998年に発足した民主党に加わる源流となっていくのですが、残された「左派」が現在の社民党、というわけです。

辻元氏が参院比例で立候補

ただ、その社民党では、福島瑞穂氏(1998年に参院比例区で初当選)が、2003年に土井たか子党首に代わって党首に就任。以来、参院比例区での当選を続けていますが、その社民党自身は、いまや政党要件を喪失しようとしているようです(『今夏、社民党を待つ「2%の壁」』等参照)。

国内政治における今夏の注目材料は参院通常選挙ですが、社民党の得票率は2%を割り込むでしょうか。すでに「最大野党」である立憲民主党に対する支持率は減少傾向にあるのですが、新聞、テレビを中心とする古いメディアの社会的影響力が枯渇して行けば、昨年の衆院選に続き、「日本を支配してきた古い体制」が本格的に終焉する兆しとなるかもしれません。立憲民主党の支持率は低下傾向当ウェブサイトでは「数字」をテーマに、メディアが実施する6つの内閣支持率や政党支持率などのデータを「定点観測」しています(「定点観測」して...
今夏、社民党を待つ「2%の壁」 - 新宿会計士の政治経済評論

福島氏に対しては、2020年秋の党大会で、「あなたは社民党の遺産を食い潰した」などとする批判が出たことでも知られていますが(『福島瑞穂氏は社民党を食い潰すことで日本に貢献した』等参照)、まさに、社民党の歴史は日本の左派の歴史そのものといえるのかもしれません。

社民党は、かつては自民党と「二大政党制」を目指したこともある社会党の成れの果てです。その社民党は先週土曜日の臨時党大会で「分党」を決定しましたが、産経ニュースによると照屋寛徳衆議院議員は福島党首に対し、公然と、「あなたは先輩の遺産を食いつぶした」と批判したのだそうです。その意味では、福島氏は「社民党を食い潰す」ことで日本に多大な貢献をした、ということかもしれません。照屋衆議院議員が福島党首を公然と批判先日の『立憲民主の未来が見える?社民党所属国会議員が1人に』でも触れたとおり、社民党は土曜日...
福島瑞穂氏は社民党を食い潰すことで日本に貢献した - 新宿会計士の政治経済評論

こうしたなか、立憲民主党の「社民党化」が進むのかどうかという点で、興味深いのが、次の記事です。

辻元清美氏、参院選比例選への出馬を正式表明…昨年の衆院選で議席失う

―――2022/01/31 17:27付 読売新聞オンラインより

読売新聞だけでなく、複数のメディアが報じていますが、前衆議院議員で立憲民主党の副代表経験者でもある辻元清美氏が31日、今夏の参院選の比例区に立候補する意向を正式に表明したのだとか。

辻元氏は昨年10月31日の衆院選で小選挙区で落選し、比例復活もできませんでした(『落選した人物を「再び国会へ」:理解に苦しむ署名活動』でも触れたとおり、辻元氏の支持者と思しき人たちが、「署名を通じて」辻元氏を国会に送り込もうとする動きもみせた、という話題もありましたが…)。

選挙で落選した人に対し、「国会にもう一度戻ってきてもらいたい」というキャンペーンが「署名サイト」に立ち上がっています。これに対し、「万が一、選挙で落選した人を選挙以外の手段で議員にしようとしているのだとすれば、それこそ民主主義の否定ではないか」、といった趣旨のネットユーザーのコメントが出ているのですが、個人的にはネットコメントの方に納得してしまう次第です。辻元清美さん、早く国会に10月31日の総選挙では、新聞・テレビなどのメディア各社による「立憲民主党は議席を上積みする」という予測にも関わらず、...
落選した人物を「再び国会へ」:理解に苦しむ署名活動 - 新宿会計士の政治経済評論

この点、参院選の比例区は、「非拘束名簿式比例代表制」といって、有権者が政党名、候補者個人名のいずれかに投票し、各政党の議席数は政党名と個人名の合計に応じて配分され、当選者は個人名の得票数が多い順に決まる、という仕組みです。

したがって、辻元氏が当選するためには、「立憲民主党」と書いてくれる有権者、「辻元清美」と書いてくれる有権者が一定以上必要です。

支持層は重なっていませんか?

もっとも、シンプルな疑問ですが、「前衆院議員」「前副代表」という「大物政治家」(?)でもある辻元氏が参院で出馬するというのは、やはり、福島瑞穂氏のような「自身が比例で居座り党の遺産を食い潰す」というパターンを辿っているように見えなくもありません。

いや、もっといえば、辻元氏と社民党への支持層が重なっているのではないか、という疑問もあります。福島氏自身は任期が2025年までですので、今夏で福島氏と辻元氏が同時に立候補するということはありませんが、辻元氏が出馬すれば、その分、ただでさえ「2%喪失」の危機にある社民党の得票が、さらに減りかねません。

いずれにせよ、参院選は左派政党が議席をどれだけ変動させるのか、という点からは、なかなか興味深い展開となりそうだと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (18)

  • 辻元清美の同名さんが、他党から立候補するとどうなるんですかね?

    大阪では、前回、前々回と参議院選挙で立憲、共産の議席は有りませんが、統 立憲共産党として統一候補を出せば、当選の余地は有ると思います。
    比例代表でという事なので、大阪では立憲共産党統一候補が他に出るか、一本化出来ないという事でしょう。
    比例代表で得票率10%だと、4〜5人当選出来る計算になります。11人→8人と来てますので、有りそうな所。前回6位の川田 龍平氏が当落ラインの下になるのでは。
    辻元氏の前回衆議院選の得票が、66,943で投票率が下がるので50,000票位。前回立憲の比例当選ラインが73,787で、5人目は100,000超えてます。
    上位5人は、労組関係の組織票のようですので、辻元氏が、その候補を弾き出す可能性有りという事だと思います。当選しても、支持母体の候補を落としたとなると、後々にマイナスになるかもしれません。

  • 前衆議院議員にして前党副代表、しかもこれまでの当選回数7回(でしたっけ?)というベテランともあろう人物が、落選した翌年に参議院に鞍替えして比例代表として出馬、といういかにも立憲民主党らしいお粗末なドタバタ劇のようです。

    党本部での泉健太代表の「ジェンダー平等を目指して、辻元氏を先頭に頑張る」という迷言に至っては、もはや苦笑するしかありませんでしたね。

  • 関西生コンや野田中央公園用地、ピースボートやICAN、東日本大震災の義援金などなど疑惑のデパートで前科者の辻元清美。
    辻元の悪事を全て明るみに出せば、戦後政治史最大クラスのスキャンダルになるのではないだろうか。

  • 外野の要らぬ心配ですが
    衆議院の小選挙区で手堅く議席を取っていた辻元氏が、力及ばず落選したからといって参議院の比例区の椅子に座ろうとするのは立憲民主党内でいたずらに軋轢を生む愚行ではないかと思います。
    次回の参議院選挙は苦戦が予想されるのは誰の目に明らかなのに、そこで比例区の議席を一つ奪われる候補者らは内心穏やかでないでしょう。

  • 辻本清美が引っ張ってこれる支持母体の得票数よりも、彼女が存在する事に忌避感を覚え、投票先を変える浮遊層の票数の方が、現状はるかに多そうな気がします。
    立民は結果として、トータルでマイナスになるのではないでしょうか?

  • 有田氏と票の食い合いならないか心配です。
    オール沖縄wはどちらを応援するのでしょう?

  • 素朴な疑問ですけど、(辻元清美氏に限らず)弱っている政党への票や、弱っている企業のシェアを奪おうとするのは、選挙戦略や企業戦略としては、普通のことではないでしょうか。

  • 社会党が土井さんから赤松さんを挟んで村山さんになってこの時に細川内閣で連立政権になって、村山内閣で自民党と連立政権になりましたね。

    その後分裂していき社民党に名前を変えていきましたね。離党組が入ったのが民主党だったわけですね。

    このため民主党は北海道で強かったですね。社会党の基盤でしたからね。
    自民党との連立を押していた人たちは離党して別の政党を作るか、国民民主党に入党するかですかね。

    夏の参議院議員選挙で方向性が見えるかもしれないですね。

  • 『「自分の国は自分で守る」どうやって抑止力高めるか 「相手に打撃与えたら反撃を受ける」立民・泉代表の見解に疑問 米海兵隊出身・歴史研究家が緊急寄稿』
    https://www.zakzak.co.jp/article/20220131-NCGVAYOTKNN3TLQ6MWF464DXKA/
    >泉代表の国会発言(24日、衆院予算委員会)を聞いて、私は頭を抱えた。「相手に打撃を与えたら反撃を受けるので、攻撃を断念する」というのは、まさに「抑止力」の基本的な考え方である。泉代表は途中までは正解なのだが、なぜか結論が違っている。日本には「軍事のことが分かっているの?」と不安になる国会議員が多い。
     ダメだ。この代表も党も本当にダメだ。
     日本の国土に上陸して来た敵国軍をに打撃を与えたら、反撃を受けるので、攻撃を断念するとでも言うのか?
     正直言って、IQ検査とロールシャッハ検査が必要なレベルだと思う。もう本当に、第二の社民党の道を歩むしかないだろう。

  • 立憲民主党が理解していないのは

    ・辻元が出馬すれば極左岩盤の100人は熱烈に支持する
    ・しかし一般の有権者1000人は離れる
    ・トータルで大きく損をする

    この構図が理解できないらしいw

    今回の参院比例で辻元が当選。
    次回の衆院選で鞍替え出馬。

    こういう絵図を描いてるのだろうが絵にかいた餅に終わるだろう。

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