保守系のオピニオン誌『月刊Hanada』に、「デジタル人民元が登場したところで人民元が基軸通貨になることはない」とする論考が掲載されました。これは、当ウェブサイトで以前から申し上げてきた論点を、改めて雑誌という形式に落とし込んだものです。『月刊Hanada』様、大変ありがとうございました。また、「新宿会計士」名義の寄稿は、『月刊正論』、『月刊WiLL』に続き3冊目です。
デジタル人民元を巡る一連の論考
昨年から今年はじめにかけて、当ウェブサイトでは相次いで、「デジタル人民元」をテーマにした小稿を掲載しました。
たとえば、『人民元は基軸通貨とならない④デジタル化以前の問題?』では、人民元が基軸通貨とはならないという一連の論考の一環として、いわゆる「デジタル人民元」を巡り、「支払手段がデジタル化したところで、人民元そのものが不便なままだと、人民元が国際通貨化することはない」と申し上げました。
「デジタルカレンシーで人民元は米ドルに代わる基軸通貨になる!」。こんな議論を見かけることが増えてきました。結論から言えば、あり得ません。いや、「あり得ない」というよりも、人民元を国際化させようと思うならば、「デジタルカレンシー」よりも先にやることがほかにいくらでもある、という言い方のほうが正確でしょうか。中国の金融シリーズ当ウェブサイトではここ数日、中国と金融をテーマにした小稿をいくつか連続で掲載してきました。『「のろのろバス」AIIBの資産規模は最大手信金並み』(2021/11/21 05:00)『人民元... 人民元は基軸通貨とならない④デジタル化以前の問題? - 新宿会計士の政治経済評論 |
また、『アプリのダウンロード開始のデジタル人民元「脅威論」』では、その「続編」として、デジタル人民元そのものが人民元経済圏内に普及するかどうかという論点と、もしデジタル人民元が普及したときに、人民元そのものが国際通貨化するかどうかは別問題だ、と指摘したつもりです。
あらかじめ申し上げておきますが、「デジタル人民元脅威論」はウソです。北京オリパラを前に、デジタル人民元のスマホ試行版アプリの実証実験が始まるそうですが、いくら人民元の使い勝手が良くても、人民元が米ドルに代わる基軸通貨となることはなさそうです。これについては現在、某誌にて詳細な説明資料を準備中であり、準備が整い次第、ウェブサイトにてお知らせしたいと思います。人民元脅威論人民元は基軸通貨にならない!当ウェブサイトでは昨年11月に、「人民元が世界の基軸通貨になることはあり得ない」という視点で、次の7... アプリのダウンロード開始のデジタル人民元「脅威論」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただし、このような主張をすると、なかには「いやいや、中国の金融覇権への野望を甘く見るべきではない」、「実際に中国は『一帯一路構想』や『AIIB』、『人民元建て通貨スワップ』などを使って世界の金融を牛耳ろうとしているではないか」、といった反論を受けることもあります。
この点は、たしかにこうした疑問に答えておく必要があります。
そこで、『「人民元通貨圏」は世界経済にとっての「脅威」なのか』のなかでは、人民元が西側諸国の金融秩序における主要通貨(米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドなど)と並ぶことはあり得ないが、中国が「人民元経済圏」を作ろうとしているのではないか、と申し上げた次第です。
中国の真の狙いは「人民元の国際化」ではなく「人民元経済圏」の確立である――。かつての東西冷戦時代、米ドルを中心とする西側諸国の経済と、ルーブルを中心とする東側諸国の経済は、完全に分断されていました。もしかすると、中国の真の狙いは、人民元をこのまま国際化することではなく、人民元を使う国、すなわち「経済圏」を拡大することにあるのかもしれません。人民元脅威論人民元という通貨は国際的な資本市場で使い物にならない先日の『アプリのダウンロード開始のデジタル人民元「脅威論」』でお伝えしましたが、著者自身は昨... 「人民元通貨圏」は世界経済にとっての「脅威」なのか - 新宿会計士の政治経済評論 |
「新宿会計士」の論考が月刊Hanada最新号に掲載されました!
これらの論考を下敷きにしたものが、今月26日に発売される保守系オピニオン誌『月刊Hanada2022年3月号』に掲載されます。
【参考】『月刊Hanada2022年3月号』
(【出所】アマゾンアフィリエイトより)
記事のタイトルは『デジタル人民元 脅威論者たちの罠』、執筆者は「金融評論家・新宿会計士」です。
肝心の内容ですが、当ウェブサイトをご愛読くださっている方であれば、すでにご存じの論点も多いものの、やはりプロフェッショナルの編集者の方が添削しているため、大変すっきりと読みやすい文章だと思います(ただし、文体は当ウェブサイトのものとは大きく異なっています)。
「ウェブ発」の時代は到来するのか?
ちなみに通販サイト・アマゾンのリンクに掲載された目次を眺めていると、この論考自体は同号の『総力特集 これでも五輪開催国か!』と題した特集の一環として掲載される、とのことですが、ほかの執筆者の方を眺めると、「新宿会計士」以外はすべて実名です。
とくに長谷川幸洋氏や青山繁晴氏といった錚々たる面々に並んで、いきなり「新宿会計士」という怪しげなペンネームが出て来て、思わずのけぞりますが、「新宿会計士」名義で論考を掲載してくださった『月刊Hanada』様にも深く感謝申し上げる次第です。
ただ、一昨年の『月刊正論』や『月刊WiLL』などへの寄稿も、同じく、「新宿会計士」名義で行っていますが、考えてみれば、この手の「ペンネーム」による寄稿記事が最近、増えてきたような気がしてなりません。
このウェブサイト自身も、べつにどこかの新聞、テレビ、雑誌などで有名になったわけではなく、ウェブの片隅で自分勝手なことを書き連ねているうちに、いつの間にかアクセスが増えてきた、という経緯があります。それが、いつのまにか雑誌に寄稿し、書籍を出版するようになったのですから、興味深い話です。
このように考えていくと、「新聞、雑誌で名を売った人がウェブサイトを開設する」のではなく、「ウェブサイトで名を売った人が雑誌に寄稿する」という、従来の「逆バージョン」のパターンが増えて来ることは、インターネット時代ならではの現象といえるのかもしれない、などと思う次第です。
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月刊Hanadaへのご寄稿掲載、お誠におめでとうございます。
新宿会計士様のお名前が、あの長谷川幸洋氏と並んでいる目次欄を拝見し、なぜだか思わずほっこり致しました。(笑)
関係無い話だが
デジタル人民は脅威だと思われる
アメリカでは幽霊が投票していたし、日本でも自民党の党員票が中国の工作員ばかりになっている