3回目接種に潜む「メディアリスク」と「岸田リスク」
日本のワクチン接種は対象者の9割近くに対して実施されるなど、大変に優秀な成績を収めました。ひとえに菅義偉総理が掲げた「1日100万回接種」目標を、オールドメディアの理不尽な批判を跳ね除けてやり遂げたからですが、果たして菅総理の後継者である岸田文雄・現首相に、政治的な圧力よりも専門的な知見を重視し、「批判されてもやり遂げる」ということができるものなのでしょうか。
目次
VRSデータなどの検証
ワクチン接種状況に関し、当ウェブサイトではこれまで、「ワクチン接種記録システム(VRS)」(※)や首相官邸ウェブサイトなどの生データを眺めてきました。
※VRS生データのダウンロード方法
- 次の文字列をウェブブラウザのURL欄に打ち込むと、その時点の最新データが取得可能
https://vrs-data.cio.go.jp/vaccination/opendata/latest/prefecture.ndjson
- 上記文字列のうちの「latest」以降の部分を「{dt}/prefecture.ndjson」(※)に変えると過去データの入手が可能(※なお、{dt}は「yyyy-mm-dd」形式で日付を入力。たとえば「2021年12月24日時点で公表されたデータ」なら、{dt}の部分を「2021-12-24」に変換)
正直、世の中でもVRSの生データを生真面目にダウンロードして分析しているサイトはさほど多くないのではないかと自負していますが、これは政府のデータの公表方法がてんでバラバラでわかり辛いことにも、大きな責任があります。
じつは、現在、わが国の接種実績自体、情報源が大きく3つあり(VRSデータ、首相官邸『新型コロナワクチンについて』のページ、厚生労働省『接種の実績について(4月9日まで)』のページ)、それぞれにフォーマットも集計期間もてんでバラバラです。
これに加えて「医療従事者等への接種実績」や「3回目接種」についてはVRSのデータに入力されていませんし、また、「職域接種」については一部でVRSに入力されていたり、されていなかったりするなど、データの扱いもバラバラです。
実際に6~9月は100万回を超えていた!
ただ、こうした点を脇に置くとしても、肝心の接種実績自体は、大変に良好です。
わが国におけるワクチン接種は、菅義偉総理が5月7日の会見で「1日あたり100万回以上のペースで進める」と宣言したあたりから急加速し、実際に6月から9月にかけて、1日100万回を超える接種を記録しました。
これは、素直に評価して良い偉業ではないかと思います(図表1)。
図表1 ワクチン接種実績(公式ベース、12月13日公表分まで)
月 | 総接種回数 | 1日平均 |
---|---|---|
2月 | 28,530 | 2,378 |
3月 | 974,209 | 31,426 |
4月 | 3,244,514 | 108,150 |
5月 | 12,463,634 | 402,053 |
6月 | 36,151,887 | 1,205,063 |
7月 | 45,590,183 | 1,470,651 |
8月 | 42,060,631 | 1,356,795 |
9月 | 30,371,879 | 1,012,396 |
10月 | 21,576,743 | 696,024 |
11月 | 5,293,764 | 176,459 |
12月 | 415,439 | 34,620 |
合計 | 198,171,413 | ― |
(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。12月13日時点で取得したVRSデータ、12月13日時点で取得した職域接種データ・重複計上データ・3回目接種データなどを使用)
菅総理がぶち上げた目標は「1日100万回以上」ですが、図表で見れば明らかなとおり、1日平均接種実績は6月が120万回以上、7月が147万回以上、8月が135万回以上で、9月に入りようやく101万回にまで減速しました。
すでに対象者の9割近くが接種済み
10月には100万回を大きく割り込む69.6万回で、11月は17.6万回、12月は一気に34,620回にまで低下してしまいましたが、これはこれで問題ありません。なぜなら、すでに日本では国民の8割弱に対し、2回目までの接種を終えているからです(図表2)。
図表2 総接種回数と接種率(公式ベース)
区分 | 総接種回数 | 接種率 |
---|---|---|
①全体合計 | 198,171,413 | |
うち1回目 | 100,068,828 | 79.01% |
うち2回目 | 98,049,848 | 77.42% |
うち3回目 | 52,737 | 0.04% |
②一般・65歳以上合計 | 65,633,935 | |
うち1回目 | 32,891,265 | 91.96% |
うち2回目 | 32,742,670 | 91.54% |
③②以外の区分 | 132,484,741 | |
うち1回目 | 67,177,563 | 85.16% |
うち2回目 | 65,307,178 | 82.79% |
(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。12月13日時点で取得したVRSデータ、12月13日時点で取得した職域接種データ・重複計上データ・3回目接種データなどを使用。接種率の定義は、その年齢階層における累計接種数を『令和3年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】に記載されている人口で割った数値のこと。「全体」については1億2665万4244人で、「65歳以上」については3576万8503人で、それぞれ割っている。なお、「③」の区分については、便宜上、「12歳未満人口は1200万人だ」という仮定を置いたうえで、若干不正確ながらも、便宜上、対象人口を7888万5741人として算出している)
図表2では国民全体の接種率は1回目が79.01%、2回目が77.42%と算出されていますが、この比率はそもそも接種対象外である12歳未満を含めた人口に対して計算したものでもあります。
仮に12歳未満の人口を1200万人だと仮定し、日本の人口1億2665万4244人から1200万人を引いた1億1465万4244人で接種回数を割ってやると、1回目が87.28%、2回目が85.52%と、四捨五入して接種対象者の9割が1回以上の接種を受けている計算です。
すでに接種はほぼ頭打ちに
また、これまでの接種状況をグラフ化してやると、図表3のとおり、すでに10月末頃には1回目接種率がほぼ頭を打っていたことがわかります。
図表3 接種状況
(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。12月13日時点で取得したVRSデータ、12月13日時点で取得した職域接種データ・重複計上データ・3回目接種データなどを使用)
そして、日本の場合はファイザー社製・モデルナ社製のmRNA型ワクチンについて、それぞれのメーカーが定める間隔を厳密に守って接種しているケースが多く、ファイザー社の場合は1回目接種からほぼ3週間後に2回目接種が行われるため、早ければ年内にも、2回目接種回数が1億回を超えるでしょう。
もしそうであるならば、総接種回数(1回目、2回目、3回目の合計)が2億回に達するのも年内、ということです。
予想される3回目接種スケジュール
さて、こうしたなかで、もうひとつ、簡単なグラフも作っておきましょう。
現在、厚生労働省は3回目接種を巡って、「18歳以上」、「2回目接種が完了した日から8ヵ月が経過していること」、などの指針を出しています(『追加接種(3回目接種)についてのお知らせ』等参照)。
ということは、このガイドラインを守るならば、基本的には2回目接種完了時点のグラフを、そのまま8ヵ月ずらせば、3回目接種のスケジュールが見えてくる、というわけです(図表4)。
図表4 予想される3回目接種のスケジュール
(【出所】著者作成)
このグラフは12月13日までのデータをもとに2回目接種完了時期の8ヵ月後をそのまま3回目接種完了日に設定したものですが、これによると、9000万回を達成するのは来年6月下旬、1億回を達成するのは8月下旬と予想できます。
岸田リスクとメディアリスク
ただし、現実には「2回目接種から6ヵ月後」という具合に、接種時期の前倒しも検討されているという話も聞きますが、このあたりは岸田文雄・現首相の方針がまたブレブレとなったりしないかが個人的には非常に心配でもあります。
著者自身は残念ながら感染症専門家でも医師でもありませんので、3回目接種を2回目接種から何ヵ月後にするのが最も効果的なのかについて、専門的知見から判断することはできません。
ただ、仮に政府が専門家らの見解をもとに、いったんは「8ヵ月後」という判断をしておきながら、何らかの政治的な理由により、それを「6ヵ月後」に短縮しようとしているのだとすれば、これは大変におかしな話です。
もちろん、現在は新規陽性者の状況が落ち着いていますが、いつまた「第6波」が到来するかはわかりません。仮に「6ヵ月後」でも「8ヵ月後」でも、専門的な見地からは効果に大差がないのであれば、できるだけ早い方が良さそうにも思えますが、それを政治家が素人判断で決めるのはいかがなものかと思います。
いずれにせよ、菅義偉総理が残した教訓とは、「批判されてもちゃんとやり遂げることの重要性」でしょう。
『ダメダメなのは日本の感染対策ではなくメディアの報道』でも紹介しましたが、日本の新聞、テレビといったオールドメディアは、コロナ禍の最中に科学的知見を無視し、菅総理のコロナ対策を舌鋒鋭く批判し、コロナ対策の足を引っ張りました。
仮に第6波が到来した際、学習しないことで知られる日本のマスメディアが、菅総理を批判したように岸田首相に対する舌鋒鋭い批判を展開した場合、岸田首相がいつもの「ブレブレ」で3回目接種の時期を政治的に動かす、といったことが発生すれば、却ってコロナ対策で足を引っ張りかねません。
その意味で、「コロナ禍はメディア禍だ」、というリスクは、むしろ岸田首相の下で深刻化しないかが気がかりなのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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話を聞かなかったり、聞いてもそれを取り込まなければ、独裁政治と罵られ、
話を聞いて方針を修正すると、ブレブレだと罵られる。
総理大臣というのはドMじゃないと務まらないですね。
野党議員が大好きなフレーズ「首相としての資質に欠ける」というのはこのことを指していたのかもしれません。
もしくは、完全無欠で絶対に間違いを侵さず、人々の想像を超える最善手をずっと連発しつづける、神や天才でないと務まらない。
こっちの資質に欠けるということだろうか。
人為や人格に無謬性を求める性向に関しては、日本人もやっぱり
儒教の影響を強く受けた東亜民なのかな~と思う。
人間の本質的な不完全さに対する許容度が低い。
現職中はボコボコに批判されても、結局実績として何をやったかによって後世評価されるということだと思います。
マスコミに関しても同様で、戦前の朝日新聞・毎日新聞他は散々戦争を煽ったというのが定説となっていますし、戦後のマスコミは後世なんと評価されるか楽しみです。予想は「戦前の反省から過剰に政府批判に徹しすぎたがために反日傾向を持つに至り記事の偏り、誤報と称するフェイク・捏造を繰り返したことから国民の信を失い衰退した」です。
おはようございます。匿名29号様へ。
ほとんどおっしゃる通りだとは思うのですが、「戦前の反省」を朝日・毎日が素直にするとは思えませんので、ここを「戦前の自己責任回避から」と改訂していただけると100%賛成です。
横から突然失礼いたしました。
>「戦前の反省」を朝日・毎日が素直にするとは思えませんので、ここを「戦前の自己責任回避から」
賛成です。その方が正確だと思います。
報道産業に対する社会信頼は、この先失われることあっても回復したりしないと容易に予想できる状況が続いています。
天に唾する、今般新聞記者やジャーナリズムによる不遜行為・傲慢行為は益々と高まっているではありませんか。彼らに目を凝らし彼らを分析することによって、事実に裏付けられたより精度の高い報道とはいかようなものであるべきかはっきりさせていこうではありませんか。
新型コロナ禍になってこの2年間さんざんでしたが、良かったこともあると思います。
一つは、世間のワクチンの功罪に関する認識が高まったことで、確率が小さい副反応を恐れるあまりワクチン接種全体を否定することは、とるべき方法ではなかったことが理解されたことではないでしょうか。パンデミック時に国産ワクチンの開発力を無くして外国に頼らざるを得ない状況を作り出し、また副反応による事故はなくなったけれど、子宮癌などワクチンを接種していれば救えたかもしれない多くの命や病があったことが、やっと世間に認知されたように思います。
二つ目は、専門性を持つ内容についてマスコミは自分の都合に合わせて如何に曲げてしまうかもネットの普及と相俟って知られてきました。何より事実と事実から得られる推論をごちゃ混ぜにして言う自称専門家が多いのには驚きました。ましてや素人であるニュースキャスターに至っては何をかいわんや、です。
三つ目は、えーと、そんなに良いことばかりはありませんね。ネタ切れです。
以上。
コロナを機にオールドメディア離れが一層進んだことでしょうか。
日本の子宮頸がんワクチン接種を激減させた大手新聞の「無責任」
https://news.1242.com/article/326742
>HPVワクチンは若い女性だけの問題としてあって、社会全体で引き受けるだけの心構えが我々にできていなかった。しかし、今回のコロナは「日本人全員」に関係があるので、さすがにこの問題ではメディアに騙されなくなって来た。コロナ禍によって、「メディアのやって来たことは酷かったよね」ということがようやく社会全体で共有されるようになったとも言えるのではないでしょうか。その結果として、新型コロナワクチンの高い接種率があるのだと思います。
本当にそう思います。
抗体価の追跡データはあるはずです、ただ論文になって公表されるには時間がかかるでしょう。自分のデータでは高齢者のIG-G抗体価は4か月でプラスマイナスゼロの数値になりました。働く細胞的に言えばIG-G抗体はウイルスの感染用トゲに対する飛び道具なので、ワクチンの重症予防効果は無くなりませんがウイルス侵入早期の抑止力は低下します。ブレイクスルー感染が多発する要因だと思います。年齢的に若い人は抗体価が高かった分だけゆっくりかもしれませんが6か月では低下するでしょう。ワクチンの入荷量の縛りがあるので難しいとは思いますが、抗体価だけ見れば、パンデミックの状態でリスク高の対象は4か月から6か月間隔の接種が必要なのではないでしょうか。また変異株に対するワクチンの対応で接種間隔は変わります。
ワクチンによるεに対応できるメモリーB細胞誘導の効果ってどんなもんなんですかね?
> 岸田リスクとメディアリスク
昨日のカキコで私もココが言いたかった!
一度言ったことを訂正するな、とか、過ちを改めないのか!、とか、そういう話ではなく、ちゃんと科学的根拠に基づいて出した結論を、一部の声の大きい反論で、訂正したり、政策を空転させたりすることがリスクだと思います。
例えば、左巻きのマスコミやジャーナリストの意見に従って、K防疫なるものを実行していたら今頃どうなっていたか、治験に基づいてワクチン接種は拙速、という野党の意見を聞いて、ワクチン接種をもっと遅らせていたらどうなったのか、とか、要するに、日本政府、ひいては日本の足を引っ張りたいだけで、ただ批判だけしている人の意見まで取り入れるのは危険だという事だと思います。
上記は結果論でもありますが、安倍、菅首相が、どんなに批判されても、専門家の意見や科学的根拠に基づいて実行できたのがよかったのではないかと思います。
もう少し言うと、福島の処理水を、「安全だけれども安心できないから」と言う理由で、放出しない決断をするのと似たような感じだと思います。
なので、会計士様が「著者自身は残念ながら感染症専門家でも医師でもありませんので」とお断りを入れたうえで、前倒し接種は本当にいい事なのかと論考するのは、とてもフェアだと思います。
結局何が言いたかったかと言うと、たとえ批判されようとも、「科学的知見に基づかない」憶測や「こうあったらいいな」という希望は排除して政策を決定してほしいのに、岸田さんがブレブレなのと、それに付けこむマスコミは心配だと思う次第です。
台湾の中央流行疫情指揮中心陳時中指揮官のような有能でかっこよくぶれないリーダーが日本にも要ると本当にいいのですが。
そんな人がいたら、メディアは独裁の大合唱でしょう。
「ワクチン二回打ったら最低8か月は抗体が持続」というのが当初の科学的治験で(つまり、治験=実験室レベルの話)
その後、「市中では、6か月で抗体がなくなる例が続出」という海外の科学的データが出てきたので
慌てて修正したのでは?
どう考えても岸田首相は科学に基づいて判断していると思うが
岸田さんには、「案件毎に適切な判断基準を見定める能力」が欠けているように感じます。
首相就任後の岸田さんは、「批判され無い事」が優先し、意見を聞きすぎて決断が遅くなり、結局誰からも信頼されないという事態に陥っているように感じます。
ポリシー無き優柔不断という印象です。