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【分裂】代表選後の立憲民主党を待つ将来【党名変更】

立憲民主党の代表選が行われているようですが、肝心の日本共産党との共闘路線をどうするのか、などについては、どうも現在立候補中の4名から明確な答えは出て来ていないようです。こうしたなか、個人的に予想する「次の展開」は、党代表選後の党の分裂ないしは党名変更です。最大野党である立憲民主党が迷走することがあれば、日本の政治にはどんな影響が出て来るのでしょうか。

立憲民主党の選挙戦

これまでに当ウェブサイトで何度となく述べて来たとおり、立憲民主党は「最大野党」であり、わが国の憲政上、「最大野党」には野党に与えられる質問時間の配分をはじめとする、大変に強い権限が与えられています。

これにくわえ、もともと野党には与党と比べて質問時間が多く与えられているため、結果的に、立憲民主党は「最大野党」として、国会運営そのものに対し、大変強い影響力を与えることができてしまう、というわけです。

この点、立憲民主党がその絶大な権限を使い、国会運営を健全なものにしてくれているのであれば、これは大変望ましい話ではあります。

しかし、現実には、立憲民主党の議員らは、「もりかけ・さくら」などと呼ばれるスキャンダルの追求にかなりの時間を割いて来ましたし、たとえば立憲民主党の幹事長でもある福山哲郎氏が2020年3月4日の参院予算委員会で述べた「時間が余ればコロナ対策もやります」は、発言としてはあまりにも有名です。

(※なお、「もりかけスキャンダル」自体は『もりかけ問題がもたらす野党・メディアのテーパリング』などを含め、当ウェブサイトでもこれまで何度となく取り上げて来た論点であるため、本稿では割愛します。)

立憲議員「コロナ対策を頑張った立憲に来ると思っていました」「総理、嫌でしょうが『桜を見る会』について質問させていただきます。時間が余ればコロナ対策もやります」。これは、2020年3月4日に立憲民主党の福山哲郎幹事長(参議院議員)が参院予算委員会で発言した内容であり、立憲民主党にとって「コロナよりもスキャンダル追及が大事だ」ということを象徴する発言でもあると思います。こうしたなか、衆院選も終わりましたので、本稿では「元祖スキャンダル」である「もりかけ問題」を振り返ってみたいと思います。2021/11/03 08...
もりかけ問題がもたらす野党・メディアのテーパリング - 新宿会計士の政治経済評論

正直、立憲民主党の国会対応戦略というものは、「健全な民主主義国」に期待されるものとは程遠い、というのが実情ではないでしょうか。

ただ、『衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ』などでも述べたとおり、今年10月31日に行われた衆院選では、立憲民主党は勢力を公示前の109議席数から一気に96議席に減らしてしまいました。

今回の総選挙、最大の勝者は、おそらくは議席を4倍近くに伸ばした日本維新の会であり、また、事前に惨敗を予想する意見も見られた自民党も、議席数は15議席減で済んだという意味では、「勝者」といえるかもしれません。一方の敗者はいったい誰なのか。「立憲共産党」と揶揄された野党共闘にも関わらず13議席減らした立憲民主党もさることながら、やはり最大の敗者は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアではないかと思うのです。2021/11/01 10:15追記図表に注記を追加しています。オールドメディアさん、予測はどうでしたか?...
衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ - 新宿会計士の政治経済評論

これを「敗北」「惨敗」とみるかどうかは難しいところですが、少なくとも多くのメディアが予想していた「公示前勢力プラス30議席前後」という予想と比べてみれば、ずいぶんと大きな後退です。

敗北したのはオールドメディアも同じだが…

このあたり、「敗北したのは、立憲民主党に加え、あれだけ立憲民主党を応援しておきながら、選挙予測を大きく外した、新聞、テレビを中心とするオールドメディアの側だったのではないか」というのが、現時点における著者自身の見解でもあります。

余談ですが、『「自民1強に終止符」と報じシレッと修正した時事通信』などでも取り上げたとおり、時事通信はうっかり「自民1強に終止符」などとする記事を配信してしまい、後刻、慌てて記事のタイトルをシレッと修正したという珍事も発生しています(しかも、時事通信がこれについて謝罪したという事実はないようです)。

10月31日の総選挙の当日、主要メディアの多くは「自民党惨敗」、「立憲民主党躍進」などと報じました。ところが、ふたを開けてみたら、自民党は多少議席を減らしたとはいえ与党で絶対安定多数を占め、立憲民主党は敗北の責任を取り枝野代表が辞意を表明しました。こうしたなか、本稿では時事通信が配信した「自民1強に終止符」なる大誤報なども題材にしつつ、メディア利権の腐敗について考えてみたいと思います。メディア利権絶大なメディア利権『メディア利権と野党利権は衆院選を機に崩れ始めたのか』などで議論したとおり、当ウェ...
「自民1強に終止符」と報じシレッと修正した時事通信 - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、先ほど述べた「立憲民主党96議席」をもたらした要因は、いったい何だったのでしょうか。

「野党共闘のおかげで96議席を達成することはできたものの、野党共闘をしても96議席が限界」、という見方もできるのかもしれません。

あるいは、現時点における個人的印象をベースに申し上げるなら、最大級の支持母体のひとつである連合から日本共産党との共闘について苦言を呈されていたこともさることながら、やはり「何もしなくてもオールドメディアが守ってくれる」という状況に安穏としてしまったことに尽きると思います。

日本ではとにかく、オールドメディアが立憲民主党などの野党をあまり批判しないで甘やかすという傾向があり(※著者私見)、結果として、立憲民主党は有権者がまったく求めていないことを公約にするなど、国民の潮流を読み誤ったのではないか、という仮説です。

たとえば、約2ヵ月前の『発表しない方がマシだった?立憲民主党の政権「公約」』では、2021年9月に立憲民主党が発表した「公約」の「第1弾」、すなわち「『枝野幸男内閣』が初閣議で直ちに決定する7項目」と題したものを紹介しています。

先日の『急速に劣化進む特定野党:意外と脆かった「野党利権」』でも触れましたが、野党、とりわけ最大野党である立憲民主党の劣化が激し過ぎます。いや、「劣化」というよりも単にメディアのメッキが剥げ落ちただけなのかもしれませんが、それにしても、彼らが何か発表するたびに、ネットでは一般人が全力で嫌悪感を表明しているようなのです。なかでも噴飯物は「初閣議の7項目」と「市民連合との6項目」でしょう。自民党総裁選で、野党が埋没する来週、自民党総裁選が始まる菅義偉総理大臣が自民党総裁選に出馬しないと明らかにし...
発表しない方がマシだった?立憲民主党の政権「公約」 - 新宿会計士の政治経済評論

これがまた強烈です。

「枝野幸男内閣」が初閣議で直ちに決定する7項目
  • 2021年度補正予算の編成
  • 新型コロナウイルス感染症対策司令塔の設置
  • 2022年度予算編成の見直し
  • 日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命
  • ウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料の公開
  • 「赤木ファイル」関連文書の開示
  • 森友・加計・『桜』問題真相解明チームの設置

(【出所】立憲民主党HP『枝野代表が「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」7項目を発表 福山幹事長会見』)

補正予算などの件はともかく、4番目以降を望んでいる国民は、いったいどれだけいたのでしょうか。

もちろん、立憲民主党ウェブサイトで確認できる政権公約(っぽいもの)はこれだけではなく、『「1億総中流社会」の復活』など、経済・外交政策などもちゃんと含まれていますが、やはりこの「初閣議」云々は強烈すぎたのではないでしょうか。

枝野氏の後任を決める選挙

さて、『党代表を「変えよう」=立憲民主』などでも触れたとおり、立憲民主党の枝野幸男代表(当時)は総選挙から2日が経過した11月2日の午後になって、党執行役員会で「衆院選敗北の責任を取って辞任する」と述べました。

これにともない、現在、立憲民主党の代表選挙が始まったのですが、これに関し、読売新聞が週末に、こんな記事を配信しています。

「共産と共闘」歯切れ悪い4氏…立民代表選、泉氏の対応に注目

―――2021/11/20 07:33付 読売新聞オンラインより

読売新聞は、代表選に出馬している4人(逢坂誠二・元総務政務官、小川淳也・元総務政務官、泉健太政調会長、西村智奈美・元厚生労働副大臣)の19日の共同記者会見について、「主要な争点である共産党との共闘を巡り、歯切れの悪い発言が目立った」と批判的に報じています。

読売によると、小川氏は共闘路線について「野党候補の一本化は必要」だと述べたほか、泉氏が来年夏の参院選に向けた「1人区での一本化」の必要性に言及するなど、基本的にはどの候補者も野党共闘には肯定的なのだそうです。

ただ、一番肝心なのは、日本共産党との協力関係ですが、読売は次のように指摘します。

政権交代を実現した場合、『限定的な閣外協力』するという共産との合意については、4氏とも評価を避けた」。

このあたり、立憲民主党は事実上の「立憲共産党」ではないか、とする一部有権者からの疑念に、代表候補者らが今後、どうこたえていくのかが、いまひとつ見えません。

党分裂?党名変更?

さて、ここから先は、長年、「民主党」→「民進党」→「希望の党」+「立憲民主党」、といった野党の集合離散を眺めて来た1人の有権者として、ざっくばらんな主観に基づく予想ですが、立憲民主党は今回の代表選からしばらくして、「例の切り札」を取り出すのではないでしょうか。

それは、①党分裂、②党名変更、です。

前者の党分裂については、民進党が2017年9月に「希望の党」に合流しようとした際、希望の党の事実上の党首(?)だった小池百合子東京都知事から「排除の理論」を持ち出され、立憲民主党が飛び出した、という経緯を思い出します。

今回も代表選が行われていますが、その結果、誰が勝っても党内でしこりが残り、不満を持ったグループが飛び出していく、といった展開は十分に考えられます。

(※ちなみに日本維新の会と国民民主党が連携して統一会派を結成し、立憲民主党から23人以上の離脱者を受け入れれば、衆院側で最大野党の地位を立憲民主党から奪うこともできるかもしれない、という点については、現時点では「ここだけの話」にしておきましょう。)

また、後者の党名変更については、民主党が「民進党」に名前を変えた故事にちなみます。

やはり選挙戦で立憲民主党に対し、「立憲共産党」「立件民主党」などのあだ名がついてしまったこと、「コロナより桜」などで「有権者の印象が相当に悪い」(と立憲民主党幹部が判断する)ことなどで、実現するかもしれません。

とくに、『立憲・共産党の年代別支持層は70歳以上が最多=産経』などでも触れたとおり、立憲民主党や日本共産党は支持者の若返りに苦慮しているという状況にあります。

衆院選で「立憲共産党」が敗北したことは、社会のインターネット化とも密接な関係がある、というのが当ウェブサイトの以前からの仮説です。こうした仮説を裏付けるかのように、産経ニュースには昨日、立憲民主党の支持層が高年齢層に偏っているとの調査結果が掲載されていました。新聞、テレビなどのオールドメディアの社会的影響力が衰退するのも時間の問題です。世論調査でも日本維新の会が大躍進!昨日の『政党支持率で立憲民主党と日本維新の会の「逆転」も?』でも取り上げたとおり、当ウェブサイトでは6つの世論調査(読売新聞...
立憲・共産党の年代別支持層は70歳以上が最多=産経 - 新宿会計士の政治経済評論

若年層へのイメージ戦略という観点からは、(何度目なのかは知りませんが)何度目かの党名変更、ということもあり得る話ではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (15)

  • 立憲民主党支持者と共産党支持者が重複してるから選挙区被らない様にしよう、という協力はするけど、政権交代実現で共産党の意向は汲みません、というわけにはいかないものねえ。

    立憲民主党はどんどん共産党に近づけば良いと思います。

  • 立憲代表選挙は、どうでも良いし、良く分からないので放置してましたが、読売新聞から情勢分析が出てました。
    【独自】立民代表選、決選投票の可能性強まる…国会議員票で泉健太氏がややリード
    https://news.yahoo.co.jp/articles/277592a84d0e9f35685ed6227fe6e6e2917dce37
    ニュースで流れる順だと、逢坂氏>小川氏>泉氏>西村氏かと思ってましたが、この情勢分析では、決戦投票になるだろう以外は、見当が付きません。

    割れるにしても、二つに割れるかどうかも不明ですが、選挙互助会ですので、割れたくは無い。
    党名を変えるなら、民意による投票で決めれば良いと思います。
    そうすれば「立憲共産党」の誕生でしょう。

  • 共産ホールディングスの子会社として
    「立憲共産党」「共産民主党」に分裂します

  • これからまた多くのサイトでの党名候補合戦が楽しみです。例えば「立憲共産党」はあまりにもど真ん中過ぎるから、そのまま共産党にプレゼントしても全く異論はありませんが、一層のこと、あらかじめ当読者欄で新党名候補を募集し、これから路頭に迷うであろう議員さん達に党名候補の一覧を提供するのも、政治活性化の観点から有効と思うのですが。

  •  先祖返りということで、社会(害)党がよいような気がします。昔、野党第一党であった社会党の内部は、後に民社党となるような右派の勢力もいれば、今の革労協の先祖である社青同などという共産党よりも左の勢力も存在し、右と左の距離は自民党と共産党の距離よりもあるといわれていました。
     そして、党首には福島瑞穂氏を招聘するのが良いのではないかと考える次第です。

  • 思った以上に共産党アレルギーが強かったということだな

  • 党名変更ですか?
    『共に民主党』が良いかもしれませんね。判りやすいでしょう?

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