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岸田首相「矢野財務次官の処分考えていない」、なぜ?

岸田首相の発言は財務省次官発言をオールドメディアが守り切れなくなっている証拠でもある

NHK受信料利権、財務省増税利権、環境省レジ袋利権、オールドメディア記者クラブ利権、最大野党質問時間利権――。世の中にはさまざまな利権があり、相互に密接に絡まり合っているのですが、利権構造は複雑であるほど、いったんどこかが崩れ始めたら、意外とあっけなく、連鎖的に破綻するかもしれません。岸田首相が財務省の矢野康治事務次官の処分を「まったく考えていない」とわざわざ言及したことは、もしかしたらその典型例かもしれません。

NHK利権

理不尽な利権の典型例は、NHKだ!

利権には3つの特徴がある。それは、(1)得てして理不尽なものであること、(2)いったん確立すると、外からそれを壊すのが難しいこと、そして(3)利権を持っている者の怠惰や強欲で利権が自壊することもある、ということだ」――。

これは、当ウェブサイトでかなり以前から何度となく指摘してきた「利権の3大特徴」というものです。

利権の多くは理不尽であり、そしていったん確立すると、それを変えるのはなかなか難しく、したがって理不尽な仕組みのまま、多くの人が疑問を感じながらも利権は生き延びていくのです。その典型例が、NHKの受信料利権でしょう。

放送法第64条第1項本文を読むと、テレビを持っているとNHKと受信契約をする義務が生じると書いてあります。

放送法第64条第1項本文

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

悪法といえども法は法。

日本は法治国家ですから、基本的に法律は守らなければなりません。したがって、テレビを買って自宅に設置すれば、あなたにはNHKとの間で受信契約を結ぶ義務が生じ、また、NHKと受信契約を結んだら契約に従いNHKにカネを払わなければなりません。

NHKを倒産させる自由を持たない視聴者

改めて言うまでもなく、これって明らかにおかしな話でしょう。

あなたがもし「テレビは好きだけれどもNHKだけは嫌い」だったとして、テレビを買ってきて自宅に設置したら、いくらNHKが嫌いであっても、NHKと契約を結んでカネを払わねばなりません。たとえ、NHKの番組を1秒も視聴しなかったとしても、です。

経済学的に見ても、これは明らかにおかしな話です。

理屈の上では、自由主義経済国家においては、消費者が選択しない商品は売れず、そんな商品ばかりを作る企業には倒産が待っています。これを、小難しく表現すれば、「消費者は特定企業を倒産させる権利を持っている」、とでも言えば良いでしょう。

ところが、NHKに関しては、私たち一般消費者が自由主義経済の原理に基づいて「NHKの番組を視聴しないことを通じてNHKを倒産させる」、という権利を持っていません。

もしもNHKを倒産させたければ、法的に受信契約を締結しなくて良い状態、すなわち「NHKを含めた地上波のテレビ放送が受信できない状態」を、私たち消費者のうちのかなりの人数が作り上げねばならないのです。要するに、「私たち消費者の多くがテレビを捨てる」、ということです。

そんな状態、現状では非現実的でしょう(将来的にはわかりませんが…)。

少なくとも1600万円近く?異常に高額な人件費

NHKの問題は、まだまだあります。ことに、『NHK「1人あたり人件費1573万円」の衝撃的事実』などでも触れた財務面での問題は、看過できません。

1兆円を超す金融資産、不透明な連結決算に加えて「隠れ人件費」疑惑もNHKが2021年3月期(=2020年度)の財務諸表と連結財務諸表を公表しました。当ウェブサイトとしては、NHKが「公共放送」として相応しくないほど非常識に超高額な人件費を負担している点や、国民からかき集めた巨額のカネを1兆円以上、さまざまな形で保有している点を指摘して来ましたが、ここで最新状況について改めてまとめておくとともに、あらためて、NHKの「あり方」について考えてみたいと思います。NHK問題の要諦NHK問題をまとめると…?当ウ...
NHK「1人あたり人件費1573万円」の衝撃的事実 - 新宿会計士の政治経済評論

そもそもNHKは「公共放送」を自称していますが、職員の待遇は国家公務員などの給与体系に従っておらず、著者自身の試算だと、少なく見積もって職員1人あたり1600万円近くという、下手な民間上場企業を遥かに上回る高額な人件費が計上されています。

また、何に使うつもりなのか、過去の受信料が過大だった結果と思われる、都心部の超優良不動産物件、年金資産を含めれば総額1兆円を軽く超える莫大な金融資産などを所有していますし、これらの莫大な資産をNHKが有効活用しているフシはありません。

NHKは関連団体を大量に乱造し、グループ内で利益を付け替えている可能性もありますし、子会社ではさらに乱脈な人件費を計上している可能性は濃厚です。

これらに加え、『NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか』などでも述べたとおり、面積でも設備の豪華さでも、議員宿舎をはるかに上回るほど豪奢な社宅に、NHK職員が月額2~3万円で住んでいるという一部の報道もあります。

先日の『NHK職員に対する住宅手当に潜む「隠れ人件費」問題』では、NHK職員に対して月額5万円の住宅補助が出ているとする内部告発や、広尾の物件に2万円で住んでいる職員もいるらしいとする記事を紹介しました。これについて、もう少し踏み込んで補足しておきたいと思います。NHKの人件費問題事情は伏せますが、個人的にはこの数日、大変に忙しく、あらためて振り返ると、ここ数日の記事については誤字・脱字も多く、また、いくつか議論したい論点がすっぽり抜け落ちていたりもします。そのひとつが、先日の『NHK職員に...
NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか - 新宿会計士の政治経済評論

それらの報道が事実であれば、まさにNHK職員様は現代の貴族そのものでしょう。

NHKを守るオールドメディア業界

もっとも、こうしたNHK問題を突っつくメディア(新聞社、地上波民放テレビ局など)は、ほとんどありません。

なぜなのかはよくわかりませんが、仮説はいくつかあります。

たとえば、やはり新聞社も民放テレビ局も、しょせんは同じ「記者クラブ」などの利権組織に所属しているがため、NHKの職員様たちに対して情が湧き、あまり舌鋒鋭く追及しないようにしている、という可能性はひとつ考えられるでしょう。

また、もうひとつ考えられるのは、新聞、テレビなどのオールドメディア産業関係者には、単純に「財務諸表が読めない」、「基本的な統計が読めない」、「エクセルやアクセスを使った統計分析のスキルがない」、といった可能性でしょう。

ただ、事実として、新聞や民放テレビ番組で、NHKの受信料利権について継続的に問題視している社は見当たりませんし、受信料利権を変えなければならない、などと主張するメディアもありません。

NHK自身の強欲が続けば、やがては視聴者が当ウェブサイトの管理人のようにテレビを見なくなるという可能性を、民放テレビ局の経営者の方々は、意識すらしていないのかもしれません。

利権は自滅する

さて、人間というものは面白くて、利権を持っている本人は、得てして、「自分が持っている利権が社会的に見ておかしなものである」という点を、ときどき忘れてしまいます。

ここで興味深いのが、総務省が公表する『令和3年度版 情報通信白書』の『第2部第4章第2節 ICTサービスの利用動向』に掲載された図表です(PDF版だとページ数が454ページあり、全体を一括ダウンロードすると42.5MBと少々重たいのでご注意ください)。

この白書の333ページ目(第2部第4章第2節のファイルだと28ページ目)の一番上に掲載されている『図表4-2-3-2 NHKの放送受信契約数の推移』と題する図表を眺めると、NHKの受信契約が2019年度末において減少に転じていることがわかります(図表1)。

図表1 NHKの放送受信契約数の推移

(【出所】令和3年度版情報通信白書P333図表4-2-3-2)

もちろん、この現象が2019年度だけの一過性の現象なのか、それとも今後、トレンドとしてNHKの受信契約が減少し始めるということなのかを見極めるには、これだけだと不十分です。

ただ、個人的にはYouTube、ニコニコ動画を含めた多くの場合は無料のウェブ上の動画配信サイト、あるいはNetflixだ、Huluだ、Amazonプライムだ、といった有料の動画配信サービスなどと比べれば、やはりNHKは割高だと感じる人も多いのではないかという気がしてなりません。

そうなると、NHK利権がいつまでも続くとも思えない、というわけです。

利権3兄弟の罪

なぜ財務省やNHKが問題なのか

さて、長々NHK問題について振り返ってみましたが、じつはこのNHK利権は、日本に存在するいくつかの利権のひとつに過ぎません。

利権構造にヒビが入り、給付金議論がさっそく活性化へ』を含め、最近、当ウェブサイトで何度となく申し上げている論点が、「官僚機構-オールドメディア-特定野党議員」という、一種の利権構造の存在です。

メディア利権の崩壊で国政が良い方向に動き出すわけ10月末の衆院選は「官僚、メディア、野党議員」という「鉄の利権トライアングル」にヒビを入れたという意味で、大変に有意義なものでした。そのうえで、日本の政治が良い方向に変わる兆候が、さっそく出て来ました。『財務省の言いなり?給付金に年齢制限や所得制限を検討』でも紹介した「制限給付金」案報道に対し、2つの野党から批判が出てきたことと、高市早苗政調会長自身もこれを否定する発言を行ったことです。利権トライアングル官僚・メディア・野党議員という鉄のトライア...
利権構造にヒビが入り、給付金議論がさっそく活性化へ - 新宿会計士の政治経済評論

NHKは利権として大変わかりやすい存在ですが、官僚機構やNHK以外のオールドメディア各社、あるいは最大野党である立憲民主党を筆頭とする特定野党なども、やはり問題のある利権そのものです。

このあたり、当ウェブサイトでもごくまれに、NHK利権を批判的に取り上げたら、「NHKも国会で予算が可決成立しているんだから、間接的には国民がNHKの存在を是としている証拠でしょう」、といった、きわめてピント外れなコメントを寄せる方が、ごく一部にいらっしゃいます。

また、財務省に関しても、「しょせんは官僚組織なのだから、政治家が決めた方針に従っているだけでは?」、「消費税などの増税も国会で決議しているわけだから、増税利権を叩くなら財務省ではなく自民党では?」、といった批判をなさる方がいらっしゃいます。

どちらも、「法形式では」そのとおりでしょう。

その気になれば放送法第64条第1項本文だって、議員立法で廃止法案を提出しようと思えばできますし、国会議員が束になれば、消費税等の増税だって否決できた(あるいは増税法案を廃止することができた)はずでしょう。

ただ、それと同時に、NHKを含めたマスメディアは「報道」というかたちで、財務省は国税庁という事実上の捜査機関や主計局という予算決定権などを通じて、政治家に対して隠然たる影響力を所持しているという「実質」を無視するのは、あまりにも卑劣です。

利権3兄弟の罪は自民党より遥かに重い

当ウェブサイトとしても、歴代の、おもに自民党出身の政治家の不甲斐なさについては敢えて否定するつもりはありませんし、日本が「失われた30年」を経験しているのも、やはり第一義的には歴代の自民党政権と、その自民党を政権与党にしてきた私たち日本国民の責任でもあることは間違いありません。

しかし、私たち一般国民の意思決定を歪めてきたという意味では、官僚機構、オールドメディア、特定野党議員らの罪は、自民党議員よりもはるかに重い、というのが、当ウェブサイトを運営していて著者自身が至った結論です。

  • 官僚機構が無駄に複雑で込み入った政省令・告示・通達を公表し、それによって行政の解釈権を一手に握り、また、記者クラブなどの独占的な仕組みを通じて新聞社やテレビ局などのオールドメディアの報道を支配下に収める。
  • オールドメディアは記者クラブを通じて情報を独占し、テレビ局は電波利権、新聞社は宅配網利権、NHKは受信料利権など、それぞれ新規参入を阻む仕組みを採用し、国民に絶大な影響力を与え、かつ、特定野党を擁護するような低レベルなコンテンツでもそこそこ儲かる仕組みを守る。
  • 特定野党はオールドメディアに「報道しない自由」で徹底的に守ってもらい、野党に与えられる莫大な質問時間を悪用し、週刊誌片手に政府・与党関係者のスキャンダルを追及したり、政局を演じたり、徹底的に行政を停滞させるために嫌がらせで審議拒否を行ったりする。

…。

自民党が不甲斐ないという点についてはそのとおりなのですが、官僚機構の独走(財務省の増税利権、環境省のレジ袋増税など)、オールドメディアの偏向報道、特定野党のスキャンダル追及などについては、いちがいに自民党「だけ」が悪いとは言い切れません。

「悪い」という意味では、まさに官僚機構、オールドメディア、特定野党議員らが国益を無視し、自分たちの利権を守るためだけに動いてきたことが最も責められるべきなのです。

衆院選で利権がぶっ壊れ始めた?

ただ、そのオールドメディアの「報道しない自由」により、立憲民主党などの特定野党の大躍進、というストーリーが崩れたのが、10月31日の総選挙だったのではないでしょうか。

野党共闘から距離を置いた日本維新の会が勢力を11議席から41議席へ、国民民主党も8議席から11議席へとそれぞれ伸ばす一方で、野党共闘の中核にあった立憲民主党は勢力を109議席から96議席へと後退させ、一気に100議席の大台を割り込みました。

もちろん、自民党も276議席だった公示前勢力を261議席へと若干減らしているのですが、減少率でいえば、打撃が大きいのは明らかに立憲民主党の側です。さらに、日本共産党が地味に12議席から10議席へと勢力を後退させたのも、注目点のひとつでしょう。

この点、公明党が29議席から32議席へと3議席ほど増やしたこと、れいわ新選組が1議席から3議席へと、議席数を「3倍」に伸ばしたことなどは若干気がかりですが、あくまでも当ウェブサイトとしては、有権者がオールドメディアの報道に踊らず、総じて賢明に行動したのではないかと思います。

だからこそ、当ウェブサイトは『衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ』のなかで、衆院選での真の敗者はオールドメディアそのものではないか、と申し上げたのです。

今回の総選挙、最大の勝者は、おそらくは議席を4倍近くに伸ばした日本維新の会であり、また、事前に惨敗を予想する意見も見られた自民党も、議席数は15議席減で済んだという意味では、「勝者」といえるかもしれません。一方の敗者はいったい誰なのか。「立憲共産党」と揶揄された野党共闘にも関わらず13議席減らした立憲民主党もさることながら、やはり最大の敗者は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアではないかと思うのです。2021/11/01 10:15追記図表に注記を追加しています。オールドメディアさん、予測はどうでしたか?...
衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ - 新宿会計士の政治経済評論

個人的にはオールドメディアの社会的影響力は徐々に低下していくと予想していたのですが、蓋を開けてみたら、オールドメディアが想像以上に社会的影響力を失っていたことに、大変に驚くことともに、新しい時代を予感させるという意味では、大変に楽しみな展開になってきたともいえるのです。

なぜ?岸田首相が矢野次官の「処分」をわざわざ否定

さて、既得権益の権威が揺らいでいる証拠として、こんな話題についても取り上げておきましょう。

首相、財務次官処分考えず 「ばらまき合戦」寄稿で

―――2021/11/10 16:55付 産経ニュースより

この記事、産経ニュースに昨日掲載されていたので、読んだ方も多いかもしれません。

岸田文雄首相が月刊誌『文藝春秋』12月号のインタビューで、同誌11月号に財務省の矢野康治事務次官が「財政再建の必要性を訴える内容」を寄稿した問題を巡って、矢野次官の処分については「まったく考えていない」と述べた、というものです。

こんな話題を眺めると、ニューヨークタイムズからチワワ呼ばわりされ(『岸田首相をチワワ呼ばわりして笑い飛ばす記事の下品さ』等参照)た岸田首相については、チワワというよりは財務省の飼い犬と呼んだ方が近いと思う次第です。

~「思わず笑ってしまう」のは、岸田首相がチワワに似ているかどうかという点ではなく、それを記事に仕立て上げてしまうニューヨークタイムズの低レベルさ、そしてそれを引用して笑いものにする方ではないか~今回の選挙で自民党が多少議席を減らしたとはいえ、依然として単独過半数を維持していることは、有権者が岸田文雄首相を信任したという意味でもあるのでしょう。ただ、その岸田首相のことを、ニューヨークタイムズが「チワワ」と呼んだそうです。思わず笑ってしまうのは、こういう下品な記事を平気で配信するニューヨークタイ...
岸田首相をチワワ呼ばわりして笑い飛ばす記事の下品さ - 新宿会計士の政治経済評論

(※「財務省の飼い犬」は、ちょっと言い過ぎました。謝罪申し上げます。全国の犬好きの皆さん、並びに飼われている犬の皆さん、大変に申し訳ありませんでした。)

この点、岸田首相といえば、外相を務めていた当時、2015年には、明治期の産業革命関連施設の世界遺産登録、日韓慰安婦合意という、日韓関係の2つの件で韓国にコテンパンに騙されたほどの人物です。岸田氏の絶望的なまでの愚鈍さについては、事前にわかっていた話なので、致し方がない側面はあります。

岸田首相がもし本気で矢野次官を守ろうと思えば、ウヤムヤにしてしまうべきでした。

これをわざわざ「処分をまったく考えていない」と言及してしまったこと自体が議論を再燃させ、「矢野次官を更迭せよ」とする世論を煽ったのだとしたら、まさに「意図せざる結果」をわざわざ招くという意味で、岸田首相の政治的センスのなさ(あるいは頭の悪さ)の証拠でしょう。

ただ、個人的に注目したいのは、頭が悪い岸田首相でさえ、わざわざインタビューで「矢野次官の処分はまったく考えていない」と言及した点でしょう。

岸田首相自らが「矢野次官の処分を考えていない」と言わざるを得なかったということは、自民党内などからも矢野次官に対するかなり強い批判が巻き上がったという可能性を強く示唆していますし、また、オールドメディアを盲信しない有権者が増えてきた証拠でもあるのかもしれません。

つまり、オールドメディアが矢野次官のことを守り切れなくなっている、という意味です。

矢野次官の主張のどこが間違っているか

ちなみに財務省が垂れ流す、矢野次官が主張したような「財政破綻論」は、オールドメディアが大好きな論調でもありますので、矢野次官がこれを週刊誌で訴えたところで、オールドメディアの皆さんにとっては、「財務省事務次官様が自ら筆をおとりになり、財政破綻論の警告を鳴らされた」、と映るかもしれません。

しかし、矢野次官の発想は、初歩レベルから大きく間違っています。

2000兆円に達する日本の家計資産:国債増発が急務』などを含め、当ウェブサイトでは以前から何度も申し上げているとおり、矢野次官が提唱したとされる「財政破綻論」は、バランスシートの方側しか見ていないという意味で、会計学や経済学の素人が陥りがちな誤りだからです。

財務省こそ「国民の敵」の総本山今月も、日銀から資金循環統計が出てきました。家計が所有する金融資産の残高はなんと1991兆6191億円と史上最大に達しました。あとひといきで2000兆円の大台です。また、海外部門の資産負債差額(俗にいう対外純債権)も388兆6680億円と過去最大です。日本の最大の問題点は、いうまでもなく、日本経済が復活するために必要な財政出動を、財務省がかたくなに拒んでいることにあります。資金循環統計日本銀行は昨日、資金循環統計の最新データ(2021年6月末基準、速報値)を公表しました資金循環統計(速...
2000兆円に達する日本の家計資産:国債増発が急務 - 新宿会計士の政治経済評論

金融商品の世界では、誰かにとっての資産は、他の誰かにとっては負債です。たとえば、事業者から見た銀行借入(金融負債)も、銀行から見たら事業者に対する貸付(金融資産)ですし、個人から見た銀行預金(金融資産)も、銀行から見たら個人からの借金(金融負債)です。

つまり、バランスシートの議論では、誰かが借金をしていたら、必ず誰かがその人にカネを貸しているのであり、「閉鎖経済」(外国と貿易・投資などをしていない閉じた経済)においては、国全体では金融資産の総額と金融負債の総額は常に一致します。

また、「開放経済」(外国との貿易や投資関係がある、外に向けて開かれた経済)においては、国全体での金融資産・金融負債のアンバランスは、「海外部門」における金融資産・金融負債のアンバランスと、プラスマイナスが逆で一致します。

実際、日本の場合、日本国内に資金が余り過ぎていて、海外に対して純額で400兆円近く「貸し付けている」状態にあるのです(図表2図表3)。

図表2 日本全体の資金循環バランス(2021年6月末時点・ストック、速報値)【※クリックで拡大】

(【出所】日銀『データの一括ダウンロード』のページより『資金循環統計』データを入手して加工)

図表3 日本全体の資金循環バランス(2021年6月末時点・ストック、速報値)【※PDFファイル】

(【出所】日銀『データの一括ダウンロード』のページより『資金循環統計』データを入手して加工)

矢野次官が本気で財政破綻論を信奉しているならば、申し訳ないのですが「簿記4級からやり直せ」としか言い様がありませんし、もし「わかっていて」財政破綻論を敢えて唱えたのならば、やはり財務省事務次官という絶大な権力を握る立場にある以上、極めて悪質であり、最低限でも懲戒免職が相当です。

いずれにせよ、「財務省の飼い犬」が矢野次官を守らざるを得なかった理由は、「官僚−メディア−野党議員」という「鉄の利権トライアングル」の真ん中にあるオールドメディアの社会的影響力がガタガタに緩んできている証拠と見るのが妥当ではないかと思うのです。

気が付けばブログに負ける新聞社説

さて、とある方がつい先日、こんな趣旨のことを指摘されていました。

インターネットの世界では、大手新聞だろうが、素人のブログ記事だろうが、そこに書かれている内容に説得力があるかどうかという同じ土俵で勝負が行われる」。

至言です。

ひと昔前、大手新聞社といえば、そこに書かれている社説を人々は有り難がって読んだものですし、それが日経新聞となれば格別でした。

ところが、『日経「日韓ともに残された時間は少ない」論への違和感』などでも指摘しましたが、最近は日経新聞にもおかしな論説がたくさん掲載されるようになりました(※厳密には「最近になっておかしな論説がたくさん掲載されるようになった」わけではありませんが…)。

というよりも、オールドメディアがこれまで、記者クラブ制度、参入障壁などの利権にあまりにも安住してきたためでしょうか、彼らはあまりにも勉強不足であり、あまりにもスキルが不足しており、ネット上で専門家が展開する議論には勝てなくなり始めているのです(『取材力も分析力も専門知識も足りないオールドメディア』等参照)。

ここで一句。

気が付けば ブログに負ける 新聞社説

…。いかがでしょうか?

玉木さんをどう見るか

さて、最後にとても良い兆候について指摘しておきましょう。

オールドメディアを経由せずに直接情報発信する政治家が、確実に増えているのです。たとえば自身のYouTubeチャンネルを設けている、国民民主党の玉木雄一郎代表などは、その典型例でしょう。

個人的には、国民民主党や玉木氏に対しては100%の信頼を置くことはできませんが、それでも直接、自分の言葉で有権者に語り掛けようとする姿勢は高く評価できます。

こういう「オールドメディア飛ばし」をする政治家が増えていけば、日本は確実に良い方向に変わっていきますし、実際、「オールドメディア飛ばし」をする政治家が増えています。

日本の未来は、意外と明るいのかもしれませんよ。

新宿会計士:

View Comments (32)

  • 選挙が終わったら尻尾が出まくって来ましたね
    給付金もこれでもかというほどグダグダな内容になりました
    公明党がどうとか言いますが、そういう事では無いです。財務省の言いなりって事です
    ただこの人の良い点?は、あまり中身が無い中道的な人物なので、
    世論やブレーンが言う事を、良いと思ったら取り入れ、
    カメレオンの様にどうとでも持論を変えるらしい、という事です

    ただ客観的に考えれば、この人の政権で、経済や安保がそんなに良くなるとは思えません
    就任時が最も華だった、という事になりそうな雰囲気がプンプンしています
    言うてもそれなりの仕事をしたスガ氏の劣化版、という事になりそうな

    それで支持率が危険水域まで下がって、参院選でまた新しい人を立てて盛り返しを狙うのか、
    なあなあで参院選まで行って負けるのか、
    それでも立憲が弱いから、何の功績も無いのにだらだらと長期政権になるのか
    現時点ではあまり良い見通しが出来ない人です

  • >「いろんな議論があっていい。政府の結論が出たら従ってもらえると信じている」

    前半はそのとおりだと思うのです♪
    後半も一般論としては正しいと思うのです♪
    岸田総理の考えはわかんないけど、言い方としては、矢野事務次官の考え方自体は是としてないようにも感じるのです♪
    ただ、財政再建放棄しないってのは、閣議決定してたと思うし、自民党も党として決めてたんじゃなかったかな?って思うので、方針転換するならそれなりに労力がかかると思うのです♪

    財政再建から方針転換するなら、矢野事務次官を処分しないまでも、どっかに栄転させてあげれば良いのにって思うのです♪・・・・・・駐韓日本大使なんかはどうかな?

  • 公務員も組織の許可さえ得れれば自由に雑誌に寄稿できるようですね。

    しかし財政の番人がドスを効かせながら「ふふっ分かっているな。こちらはあなたの税に関わる情報を全て一手に握っているのだぞ」と牽制球を投げてこようものなら政治家ならずとも怖いものです。

    財政の歳入が増えることにしか興味がなく、財政の規律さえ守れれば最悪、国の経済成長がどうなろうと国民の生活がどうなろうと知ったこっちゃない。不可思議な組織です。やはり歳入が増えた年なんかには小躍りして喜んでいるのでしょうね。

  • 矢野事務次官の件ですが、
    例えばトヨタの専務が週刊誌に「自動車は環境に害悪しかもたらさない。日本も いついつまでに自動車を全廃しなければならない。」などと発表しても 降格されない事はないと常識的に考えて理解出来ます。
    それが、官僚なら無事だと考えるのが官僚やマスコミの常識がズレてるのだと思います。
    日本には発言の自由はありますが、自由には責任や結果が伴います。
    矢野事務次官が、会議の中であの発言をしてもセーフですが、週刊誌に発表するのなら職を辞す覚悟か、若しくは辞してからすべきで あの発言をして そのまま事務次官に居座るのは常識がないか 精神年齢が子供かのどちらかだと思います。

    普通の財務省官僚なら自ら発言せずに、子飼いの知識人に腹話術宜しく喋らせます。
    自ら言わなければならない程追い詰められてるのか、それとも義憤か。

    田母神氏を更迭したのなら!矢野氏も更迭するのが筋だと思います。

    • > 田母神氏を更迭したのなら!矢野氏も更迭するのが筋だと思います。
      まったくその通りですね。強く同意します。
      日本は法治国家ですでど、停波を食らった東北新社と、注意で終わったフジテレビなど、厳密な運用ができてないように思います。
      あと、覚悟という意味では、民主党時代に中国漁船衝突事件の映像を流出させた海上保安庁の職員などを思い出した次第でした。

  • 岸田総理も、火消しで言っちゃ逆効果ですよねw
    でも、マスコミもこれ以上掘り下げないんじゃないかな。

    やはり財務省は首相よりも権力を握っているんでしょうね。
    ここの利権を崩していくには、対抗組織を立ち上げて競わせるしかないでしょう。
    (たぶん、、、)

  • この一連の出来事が
    政府が財務省に対して「貸し」を作りつつ、財務省という組織を
    それとなく表へ注目するような下地を作る事で
    将来的に立場を逆転させていくその一歩の動きであるなら
    支持率低下を恐れない身を切る行為で大したものだとは思いますが
    流石にそこまではないですよね・・・。

  • いつも貴重なお話ありがとうございます。
    私は、70歳を超えてていますが定年退職してから自然に新聞は10年以上全く読まなくなりました、家族が読んでいるので購入はしています、テレビのニュースも見なくりました。定年退職後は非正規で働いていましたが、非正規なので働き先の会社の心配する必要もないので、必要性を感じませんでした。   
     先生が前に言われたようにインターネットで情報を収集しています。。

  • Wikiを全面的に信用するわけにいかないとは思いますが、いくつか気になることが記載されていたのでご報告しておきます。

    なんでもこの人物は「財務省内でも厳格な財政再建論者として知られ【原理主義者】と評されることもある」とか。

    ほかにも「週刊誌にポリ袋ハンターと写真付きで紹介されたことがある」とも。(笑)

    その週刊誌とは週刊ポストでした。

    https://www.news-postseven.com/archives/20210928_1694377.html?DETAIL

  • NHKの受信契約数の推移ですが、グラフの範囲で見る限り、2012年から6年かけて10%増を達成したのに、2019年1年でその増分が半減(5%減)しちゃったということでしょうか。
    日本が人口減少に突入して久しいのに、これだけ「営業努力」していたことにも驚きますが、2019年の減少幅が大きいと思いました。

    2019年と言えば、N国党が国会に議席を得た年です。N国党は私にとっては過去のものですが。
    彼の発信する情報には、いかに受信契約を破棄するか、いかに受信料を払わずに済ませるか、NHKからアクションがあったらどうするこうすると、具体的なノウハウが多く含まれていました。
    彼らが選挙に出て議席を得たことで、当たり前と思っていた受信契約に疑問を持った層や、払わないための具体的手段を得た人を掘り起こしたかもしれないと思いました。
    思いつきレベルですが。

  • 財務省の方針が、相も変わらず「財政規律」一本鎗であるということでしょうね。
    この部分を変えない限り、財務省もこれまでの政権も、結局は20年以上続いているデフレを脱却をするつもりがないとしか、国民には見えないと思います。
    追い打ちをかけるコロナによる経済への強烈な打撃を考えれば、財政出動を協力に打ち出すべきで赤字国債なんて気にする場合ではないと思います。

    昨日、山本太郎氏が麻生総理に対して「万死に値する」と暴言を言ったらしいです。
    https://news.ameba.jp/entry/20211111-99/
    山本氏の言葉は悪いが、記事の内容においてプライマリーバランスの指摘に限っては、首肯せざるを得ない部分があると思っています。

    実際に、アベノミクスの「機動的な財政出動」はやるにはやったのですが、主に社会保障関係費に比重を置かれていましたし、プライマリーバランスを気にしていた結果として、他の歳出は比較して抑え目にならざるを得ませんでした。
    これは、栄養失調の人に対して、その体形にあったカロリーしか与えなかったら、ガリガリのままだった、というお話です。
    栄養が足りません。
    今は借金をしてでも、多めに栄養を摂るべきなんだと思います。

    借金をするということは信用があってできることです。
    財務省が主張するプライマリーバランスと赤字国債の話は、「信用が先か、借金が先か」の話だと思いますが、今ある信用を使わなければ、苦しむ時期が長引き、引き戻せないほど弱体化してしまいます。
    というか、そもそも健康でなければ信用なんて無くなってしまいます。
    コロナ禍で打撃を負っている今じゃなくて、いつやるのでしょうかね。
    そもそも、政府は、国家がより健康になるために、栄養を与える部位をどこにするか、将来どのような体形にするのか目標を定めて、効果的に実行するのが仕事だとおもいます。
    それが予算ですよね。
    アベノミクスの三本の矢の「成長戦略」は、この部分で型枠にはめられて残念な結果になったのだと思います。

    総裁選で高市さんが主張してくれた「インフレ率2%までプライマリーバランス凍結」は、そこの反省を安倍総理と話し合ってぶち上げたんじゃないかなぁ、と思います。
    これがないと、デフレ脱却はできないと思います。
    岸田さんがやらないなら、サッサと変わってほしい。
    サナエノミクスに期待したいと思います。

    また、今回の選挙結果のおかげで、ダメ野党の衰退が明確になって、与野党の関係にレジームチェンジが起こりそうなので、国会も多少はピリリとしたものになるのではないかと期待します。

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