昨日、日本で岸田文雄内閣が発足しました。これに関連し、早速、隣国メディアに、とある社説が掲載されました。「日本は発想を転換し、国際条約を揺るがす事項を容認しないという態度を改めよ」、という、ある意味では大変に驚くべき主張です。ただ、言い換えれば、この社説は「現在、国際法を踏みにじっているのが韓国の側である」という事実を暗に認めたという意味で、なかなか興味深いといえます。
岸田首相の門出を祝うかの陽性者激減
日本で昨日、菅義偉内閣が総辞職し、かわって岸田文雄内閣が発足しました。
しかも、岸田首相の門出を祝うかのごとく、『336日ぶりの快挙:都内で新規陽性「100人割れ」』などでも述べたとおり、昨日は東京都における新型コロナの新規陽性者数が約11ヵ月ぶりに低水準を記録しました(あるいはワクチン接種完了率60%という菅総理の「置き土産」のおかげかもしれませんが…)。
岸田首相がこの菅総理らの遺産をフル活用することができれば、政権に勢いが出て、内外に山積する諸課題についても精力的に取り組むことができるかもしれません。
相変わらず、ハンギョレの社説が凄い
こうしたなか、今回の岸田新政権の発足を「好機」と勘違いしている国がひとつあるとしたら、やはり隣国でしょう。
先日の『現実世界に都合の良い「りせっとぼたん」はありません』では、韓国の左派メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に掲載された、こんな社説を取り上げました。
[社説]岸田新総裁選出、韓日関係リセットの契機にしよう
―――2021-09-30 08:12付 ハンギョレ新聞日本語版より
端的にいえば、「岸田新首相を韓日関係リセットの契機に」、という主張であり、たとえば現在、事態が事実上膠着状態にある自称元徴用工判決などを巡っても、「日本が問題解決のための対話に乗り出さなければならない」などと主張する代物です。
そんなハンギョレ新聞には、本日も、こんな社説が掲載されていました。
[社説]日本の岸田新首相、「第100代首相」らしい「発想の転換」を期待する
―――2021-10-05 07:04付 ハンギョレ新聞日本語版より
最初に細かい点でツッコミを入れておきましょう。
「このような冷え込んだ両国関係が続くことは両国いずれにとっても有害だということを、岸田首相が知らないはずはない。岸田首相は、今月末に総選挙が終われば、『安倍元首相の影』ではなく日本の100代首相として、新たな歴史を書き記していかなければならない」。
社説タイトルにもあるとおり、ハンギョレ新聞は岸田氏が「日本の100番目の首相」、「100という数字の象徴性」など、やたらと100を強調したうえで、「新首相の就任が凍りついた韓日関係にとっても変化の契機となることを願う」と述べているのが印象的です。
ただ、岸田首相が第100代目であるということは事実ですが、残念ながら、岸田氏の「第100代首相」としての在任期間はもう長くありません。もうすぐ衆議院議員総選挙が実施され、選挙後にもう1度内閣総理大臣の首班指名選挙が行われることに伴い、来月には「第101代首相」が誕生するからです。
極論すれば、岸田首相が総裁として率いる自民党が大敗し、枝野幸男・立憲民主党代表が次の第101代首相に選ばれる、ということだってあり得ます(可能性は極めて低いですが…)。
国際条約違反を事実上認めたハンギョレ社説
さて、こうした細かい論点はさておき、正直、この社説の多くの主張については、わざわざ取り上げる必要性は高くありません。
「最高裁が強制徴用被害者に対する賠償判決を下すと、日本が輸出規制という経済報復で対応し、これに韓国がGSOMIA終了宣言で対抗する」などの応酬がなされた、とする、韓国メディアにありがちな、いつもの事実誤認の塊が展開されているに過ぎないからです。
ただ、本稿でこの社説に注目した理由は、こうした記述にあるのではありません。
ハンギョレ新聞としての「ホンネ」が思わずポロッと出て来てしまっている部分があったからです。
「両国の冷え込んだ状態が改善されないのは、1965年の韓日基本条約と請求権協定を揺るがすいかなる事項も容認しないという日本の硬直した態度のためだ」。
…。
この記述、「国際的な条約を踏みにじっているのは韓国の側だ」とハンギョレ新聞が事実上認めてしまったようなものです。
この文章を社説に混ぜ込むということは、ハンギョレ新聞としては、現在の韓国の態度が1965年の日韓基本条約・請求権協定を揺るがそうとしているものであると認識しつつも、こうした態度を認めよと日本に要求している、ということを意味します。
端的に言えば、お話になりません。
いったん両国が締結した国際条約を巡り、自分の国の情緒に反するという理由で一方的に踏みにじることが、国際社会で容認されるものではないからです。言い換えれば、「1965年の日韓基本条約と請求権協定を揺るがすいかなる事項も容認しない」という一貫した態度こそ、日本が取らねばならないものです。
ただ、見方を変えるならば、このハンギョレ新聞の社説は「わが国は国際条約を踏みにじろうとしているが、日本はそんなわが国に歩み寄らなければならない」と恥ずかしげもなくざっくばらんに言い放っている、ということです。
ある意味では清々しさすら感じます。
「3つの落としどころ」論
あるいは、このハンギョレ新聞の社説自体、普段から当ウェブサイトで申し上げているとおり、日韓関係の究極的な落としどころには、結局、次の3つしかあり得ないという仮説の妥当性を、韓国側の主張から裏付けるものである、という言い方もできます。
日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
- ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
- ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する
(【出所】著者作成)
日韓関係の破綻を本気で回避するためには、韓国が国際法を守ってくれるか、それとも日本がいつもどおり国際法の原理原則を捻じ曲げて韓国に譲歩するか、そのいずれかしか道はなく、そのどちらも実現しなければ、日韓関係はやがて破綻せざるを得ません。
ハンギョレ新聞が主張しているのが②であることは明らかですが、個人的には「日本が原理原則から逸脱した譲歩をしなければならないような外交関係」というものは破綻しても仕方がないと思いますし、むしろ破綻することを恐れて原理原則を譲歩する方が、国としてのリスクだとすら考えている次第です。
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ハンギョレが言いたいのは「韓国に愛は無いのか」でしょうね。
日本は既に「そんなもんねぇよ」になってますから、無意味な主張です。
韓国は、日韓請求権協定に基づく韓国政府との協議要請に応じず、日韓請求権協定第3条2に基づく仲裁付託の通告・仲裁の手続にも従いませんでした。
当然、韓国が協定を無視して国際法違反状態に突入したことは重大な問題ですが、それ以前の大問題として、韓国はトラブル回避のための条項すら無視する国であるということです。
韓国が第3条違反を犯した時点で、日本は、韓国が対等な交渉ができる相手ではない、との烙印を押しました。
日韓請求権協定に留まらず、韓国との関係を全て断ち切っても余りある行為だからです。
しかるに、日本としては「1965年の日韓基本条約と請求権協定を揺るがすいかなる事項も容認しない」ことを固守するのは、当然のことです。
韓国に対する信頼が完全に回復しない限り、第3条の協議を含めて韓国との交渉は意味がなく、未来永劫変わりがありません。
日韓請求権協定は日韓基本条約の付随協約ですからね。これを蹴ったと言うことは日韓基本条約第3条にある「大韓民国政府が朝鮮の唯一の合法政府」だという確認事項も自ら蹴ったわけで、
本来、今の韓国政府は日本政府の正式な交渉相手でもない(韓国がそうした)。それでも現在日本が韓国を一応主権国家として扱っていて、自ら約束守って主権国家に戻るチャンスは潰さないでいること自体が大幅な譲歩ですよね。
あ、もちろんここまでタテマエ論だけで物事突き進めると、国家間紛争をメシのタネとするようなハイエナ達が世界中から集まってくるでしょうからこれも問題ですが、
向こうがここまで言うならこういう原則を示してやることも必要なのではと
TEMP様
確かにそうですね。
となると「丁寧な無視」というのは、辻褄が合いますね。
まあ、日韓基本条約の破棄を日本自らが行ってわざわざ手を汚す必要もない(めんどくさい)わけですから、日本としては韓国が日韓請求権協定を破るなら、強烈な制裁を加えれば事足ります。
岸田総理(with高市政調会長)には、それを実行できる準備を進めていただきたいですね。
彼らの要求は要するに「日韓基本条約を、韓国有利な不平等条約に書き換えろ」ですからね。
普通のまともな主権国家なら呑むどころか話し合いにも応じないのは当然で、自民の左右どころか野党が政権とっても交渉の硬軟が変わるぐらいで基本は同じゃないでしょうか?よほど腐った政権以外は。
まあ、中国が武力国境拡張くわだてても、それは中国が強国だから当たり前、悪くない。などど主張する彼らにはこうした「普通のまともな主権」の概念はなく、全ては力の上下関係なのでしょうが
該当記事はもしかすると「認めてしまった」のではなく「優しく言っても解らないようなので具体的に教えてやる」ぐらいの感覚なんじゃないでしょうか?
日韓基本条約をちゃぶ台返しするには、
「北と電撃合併して、韓国の継承国としての立場は放棄する」
というウルトラ志井というのも微レ存。
>この記述、「国際的な条約を踏みにじっているのは韓国の側だ」とハンギョレ新聞が事実上認めてしまったようなものです。
うーん🤔、「事実上」と付け加えざるを得ないところ、ハンギョレが認めていない姿勢は変わらないって事でもあると考えるんですよね。
河野談話も、韓国側としては「事実上、日本政府がいわゆる慰安婦問題を事実だと認めて謝罪した談話である」となる訳で。
ちなみに、既に中央日報だったかが「韓国の国力が上がったのだから、日本は韓国の国力が弱い時に結んだ条約を改める事に付き合うべきだ」という趣旨の社説を書いてたと記憶しており、『韓国政府が約束を守らないのは、約束を守らない韓国民が選んだ代表だからだ』って事で良いんじゃないかと。
イーシャさま
韓国が国際法違反を認める云々は、さして重要では無い届いて思います。
慰安婦合意は有効だと言っても、何も変わりません。
国際法違反を認めるような事が有っても、韓国の態度は変わらないと思います。
だんな さん
そうですね、仮にICJで韓国の国際法違反が決定しても韓国の態度は変わらないでしょうし。
ただ、ICJでの判決に韓国が従わない場合に、日本が韓国に経済制裁を加えれるようになるか興味があります。。。
クロワッサンさま
クロワッサン様への返信でした。
申し訳け有りませんm(__)m
一生の不覚。
「枢軸国の戦争犯罪に対しては、国際法は適応されない」と韓国は考えているのでは?
バシラス・アンシラシスは土壌常在菌様
枢軸国の中に朝鮮(当時は日本国)が入っております。
「枢軸国の戦争犯罪」と記載しておりますが、日本が日本に戦争犯罪を
実行したのですか?
もしかして、朝鮮を植民地だと思っているなら、誤りです。
朝鮮を日本本土化しただけです。
植民地にできるほど現地人が進化していなかったので、近代化する為
日本本土化したのです。 何故、台湾を植民地化できたのか、考えてみましょう。
だからこそ
韓国は枢軸国扱いを免れる為に
「ウリは植民地支配された被害者」とアピールしている
>国際条約違反を事実上認めたハンギョレ社説
慰安婦合意や日韓請求権協定は、朝鮮脳で「正しく無い合意」になってますので、この記事が事実上国際法違反を認めたとするのは、意味が無いでしょう。
>1965年の韓日基本条約と請求権協定を揺るがすいかなる事項も容認しないという日本の硬直した態度のためだ
日韓請求権協定で解決した日韓併合期間の事を蒸し返して、しつこく集って来る韓国の賤しい態度の為でしょう。
韓国マスコミの論説を読むと、関係改善を岸田首相に願うという論調が、増えて来たように思います。
彼らが最終的に目的としているのは、1910年の韓国併合条約がそもそも不法であり無効だったという彼らの主張を日本に認めさせることにあります。実際、韓国憲法前文は韓国併合条約などはなかったという前提で書かれています(混乱しそうですが、前者は大韓民国、後者は大韓帝国を指します)。1965年の日韓基本条約では、併合条約はもはや無効であるとは記述されていますが(第2条)、そもそも不法だったという韓国の主張は容れられていません。この点が韓国としては不満でならず、ひっくり返したいと強く念じています。つまり、韓国としては「日韓基本条約の文面には不満だが、当事国力の弱かった韓国は拒めなかった。いまや国力も対等(以上)になったのだから、基本条約は修正されなければならない」と考えており、修正されなければならない条約の付随文書など取るに足らない問題であると考えていると見做すべきでしょう。
もっとも、韓国併合条約が否定された場合、彼らが言うところの「史上最も暴虐だった植民地支配」とは矛盾します。植民地と占領地とでは全く異なる概念だからです。まあ、そこまで考えているとは思えませんが。
> 関係改善を岸田首相に願うという論調が、増えて来た
全ての問題は、自分たちではなく、誰かが解決してくれるに違いない、あるいはそうであるべきだという韓国式思考法の表れですね。
面白いですね、というか、そういう考え方の民族なのはわかっている話ですが、公器としての新聞社説で世界に向かって恥を晒しているのが面白いですね。
枝野幸男・立憲民主党代表が次の第101代首相に選ばれると、上記を飲む(約束を守らないことが党是なので)でしょうw
ハンギョレ新聞と朝日新聞と毎日新聞はそれを期待していますか?