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台湾が3番目の貿易相手国に浮上しつつあることの意味

台湾は日本の友人:中国への配慮より「日本の国益」を重視せよ

貿易の世界において、「台湾>韓国」という基調は、定着するのでしょうか。本稿では「速報」として、昨日公表された貿易統計のデータをもとに、台湾が日本にとって「第3位の貿易相手国」に浮上しつつある現実と、そしてなぜ日本が台湾の国際社会入を後押しすべきなのか、その概要について報告しておきたいと思います。

2021/09/30 12:37追記

図表1に示した「貿易額/貿易収支」欄が誤っていましたので修正しております。コメント欄でご指摘くださった伊江太様、大変ありがとうございました。

日本の貿易高、またしても台湾が第3位に

今朝の『「三菱は謝罪と賠償を」という韓国市民団体の論理矛盾』の末尾で少しだけ触れたのですが、29日に公表された『普通貿易統計』によれば、8月末時点でも、台湾が日本にとっての3番目の貿易相手国だったことが明らかになりました(図表1)。

図表1 日本の貿易(2021年8月)
相手国 輸出額/輸入額 貿易額/貿易収支
中国 1兆4211億円/1兆6293億円 3兆0504億円/▲2082億円
米国 1兆1506億円/7576億円 1兆9082億円/+3929億円
台湾 5210億円/3239億円 8449億円/+1971億円
韓国 4785億円/2771億円 7555億円/+2014億円
豪州 1128億円/5263億円 6391億円/▲4135億円

(【出所】財務省税関『財務省貿易統計』より著者作成。なお、「貿易額」は「輸出額+輸入額」、「貿易収支」は「輸出額-輸入額」を意味する)

すなわち、日本にとっては最大の貿易相手国が中国、その次が米国、という構図は変わらないのですが、3番目の貿易相手国として、台湾が大きく浮上し始めているのです。

輸出、輸入、貿易額のすべての面で3位に浮上しつつある台湾

たとえばそれまでの「不動の3位」だった国・韓国と比べてみましょう。

まず、輸出額では、2019年10月以降、しばしば台湾が韓国を抜いて日本にとって3番目の貿易相手国として浮上しつつも、2020年を通じては韓国向け輸出が再び増えるなどの接戦となっていましたが、2021年5月以降は、すっかり「台湾>韓国」という基調が定着したかに見えます(図表2)。

図表2 輸出額・台湾と韓国の比較

(【出所】総務省統計局『普通貿易統計』データより著者作成)

次に輸入額でも、2020年4月以降、数ヵ月連続して「台湾>韓国」という状態が続き、韓国に抜かれるなどの接戦も続いていますが、今年に入って台湾が韓国を突き放す月も増えて来ました(図表3)。

図表3 輸入額・台湾と韓国の比較

(【出所】総務省統計局『普通貿易統計』データより著者作成)

その結果、輸出高と輸入高の合計値である「貿易高」についても、「台湾>韓国」となることが増えてきた、というわけです(図表4)。

図表4 貿易額・台湾と韓国の比較

(【出所】総務省統計局『普通貿易統計』データより著者作成)

台湾のTPP参加を日本が後押しすべき

こうしたなか、台湾がTPPへの参加意思を表明したとする話題については、以前の『大事な友人・台湾のTPP参加を日本が支援すべき理由』でも触れたとおりですが、日本にとって台湾の経済的な重要性が高まるにつれ、やはり日本が台湾の「国際社会入り」を強く後押しする材料がまた出て来たともいえます。

あるいは、菅義偉政権下で今年刊行された外交青書では、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」が、日本外交の7つの重点分野のうち、日米同盟に次ぐ2番目に位置付けられています(『外交青書:基本的価値の共有相手は韓国ではなく台湾だ』等参照)。

日本政府は中国に配慮しているためでしょうか、台湾自体をこの「FOIP」には含めていませんが、「FOIP」自体が一種の「価値同盟」(※著者私見)であることを踏まえるならば、自由、民主主義、法の支配などを尊重する台湾がFOIPに参加する資格があることは明らかでしょう。

日本では「岸田政権」が発足することがほぼ確実視されるなか、岸田「次期首相」が台湾の重要性をどうとらえているのかはよく見えませんが、台湾は日本のシーレーンにおいても重要であるだけでなく、日本の経済・産業にとってもその重要性が高まっていることは間違いありません。

なにより、日本政府自身、『令和3年版外交青書』のなかで、台湾を次のように位置付けたはずです。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(同P55)。

中国への配慮を重んじるあまり、日台の経済的なつながり、日本にとっての台湾の重要性が高まっているという事実を無視してはなりません。

この期の日台関係の進捗が注目されるゆえん、ということでもあるのです。

新宿会計士:

View Comments (15)

  • 台湾は蔡英文さん率いる民主進歩党が与党であり続ければ、そのとおりなのですが、下野してしまった場合、より痛手が大きくなってしまう、という問題があります。より大きいリスクは台湾の香港化です。かといって、上手いリスク回避手段を思い付かないのが厳しいところ。台湾を応援するしかないのでしょう。

    • >台湾は蔡英文さん率いる民主進歩党が与党であり続ければ、そのとおりなのですが、下野してしまった場合、より痛手が大きくなってしまう、という問題があります。

      韓国は誰がなっても同じです。

  • 図表1ですが、貿易額/貿易収支の欄の値が、脚注の「貿易額」は「輸出額+輸入額」、「貿易収支」は「輸出額-輸入額」を意味する、の定義と合いません。

    輸出額。輸入額の値は月間ベース、貿易額、貿易収支の方は四半期ベースくらいで計算されているのでしょうか。

    図表2以下のグラフを眺めた印象では、台湾>韓国の傾向が定着したという表現は、まだ尚早という気もするのですが。

    • 伊江太 様

      いつもコメントありがとうございます。
      また、貴重なご指摘、大変ありがとうございます。参照セルを間違えていましたのでさっそく修正しました。
      引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。

    • 貿易額の数値欄には、普通貿易統計の中から”8月までの国別累計輸入額”が誤引用されてるみたいですね。

  • 台湾を応援しようにも、未だ中国大陸と統一しようとする勢力が強い状態
    では、応援して良いのか考えてしまいます。
    統一は中共が台湾を飲み込むのか、はたまた台湾が中共を飲み込むかですが
    どちらも良い案とは言えない。
    ハッキリ台湾は台湾島だけでやっていくという気概を持ち、対外的に報道し
    実行していく時、TPPに入れるのだと思います。
    今の台湾情勢だと折角日本が骨折りしTPPに加盟させたとしても、第二の香港を
    作るだけにすぎません。

  • 台湾は政権交代すると従中政策に変更すると思われる

    • 大陸で始まった内戦構造において宿敵許さずだったはずの国民党が容共政党に変節してしまった過程に興味があります。すっきりした解説に巡り会いたいものです。深圳開発に協力まい進するつもりで母屋を盗られてしまった香港という実例もあることですし、すべてカネで説明できるのでしょうか。

      • はにわファクトリー様

        最近の習近平の舵取りはあまりに拙劣。香港での事態を見れば、台湾の人たちは、ふたたび国民党に政権と執らせれば、二・二八事件の悪夢再来なんて思いが、頭をかすめるでしょう。

        国民党もその辺を見越して、中国べったりにイメージ払拭を図っているようですが、習近平がいる限り、台湾と中国の間には、遠心力こそ働け、吸引力が生ずることはないような気がしますね。

      • 表のキーワードが西安事件なら、裏のそれは黄埔軍官学校あたりじゃないでしょうか。人と人との繋がりはカネの流れと違ってなかなか追えませんが、同校卒業生で文革で殺されたエリート将校の息子なんていう人物が茶飲み話をしてくれたりすると、急に天然色になるようなところもあります。30年代をほぼ通しで徹底中国支援のドイツ、第二次上海事変では派遣将校が中国兵の指揮を執って日本軍と戦ったほどのドイツがころっと我が国と同盟を結んだとか平気で説いてくれるのが歴史ですので、すっきりした解説はファクトリー様が御自分でコツコツ組み上げられる他ないかと思います。

  • 台湾がTPPやFOIPに加入すれば中国からの抑止力になると思います。
    TPPについてはマレーシアやベトナムが了承するのか分かりませんが、日本がしっかり後押ししてもらいたいです。
    尖閣にちょっかいを出したり台湾を恫喝している間はTPPに入れない、中国自体が社会主義をやめなければ入れない仕組みと思いますので、そのことをしっかり思い知らせて欲しいです。

    • 中国が信奉しているのはスターリニズムでしょう。

      「真の共産主義じゃないと Communist Partyを追い出されたので、中原でスターリニズムすることにしました」

  • すみません。
    ベトナムは社会主義国なので、上記で社会主義をやめなければ入れないと書いたのは間違いです。お詫びして訂正いたします。