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個人的実体験に基づく「自称元徴用工訴訟の不自然さ」

自称元徴用工問題の落としどころのひとつこそFOIP

自称元徴用工訴訟を巡り、昨晩は「韓国の大法院(最高裁に相当)が三菱重工の資産差押命令に関する再抗告を棄却した」とする報道が流れていました。これ自体、正直、大した記事ではないのですが、そもそも論としてもうすぐ自称元徴用工判決から3年を迎えるため、少し個人的な「訴訟体験」も交えつつ、彼らの本当の狙いと日本政府のあるべき対応について探ってみたいと思います。

要約

  • 本気で訴訟を戦うつもりなら、売却が容易な資産を調べ上げ、最初から差押をするのが当然
  • 非上場株式や商標権、特許権など、売却はとても困難であり、非現実的
  • 通常、差し押さえるなら、預貯金のほか、不動産、金銭債権、上場株式など「換金が容易な資産」であるべき

訴訟体験

訴訟体験に基づく知識

当ウェブサイトでは「客観的に確認できる情報源」をもとに議論を進めるというスタイルを好んでいるつもりなのですが、たまには個人的な経験をもとにした、とても主観的な話をすることを許してください。

といっても、その体験について、個人を特定しない範囲以上の詳しい経緯(相手先の実名や訴訟内容、管轄地裁など)について申し上げるつもりはありません。あくまでも「一般論」として申し上げられる範囲に限定させていただきます。

じつは、当ウェブサイトの著者はかつて、在日韓国人を相手に裁判を起こしたことがあります。合計請求額はギリギリで8桁(つまり千万円単位)であり、市井の小市民としては「滅多に目にすることがない金額」です(※もっとも、大企業に属している人から見れば微々たる額かもしれませんが…)。

また、当ウェブサイトで「法人格否認の法理」や「不当利得請求訴訟」、「差押え」などにときどき言及するのは、これらが公認会計士としての専門領域の事項であるだけでなく、「訴訟当事者となった自分自身が肌感覚で知っているもの」でもあるからです。

そして、自身の拙い体験に基づけば、やはり、そもそも訴訟に踏み切る前の段階で、相手とは最大限、交渉をします。訴訟はカネも時間もかかりますし、確実に自分の言い分が100%通るという保証もありませんし、相手だって生活があるわけですから、そのなかで相手と「落としどころ」を見つけようと努力するわけです。

ただ、相手がどうしても話し合いから逃げ回り、にっちもさっちも行かなくなってしまうこともあります。

実際、当時はウェブ主自身もピュアでしたので、「話せばわかるはず」、「こちらが努力して話し合いの場を設け、膝詰めで話せば、法律論と感情論をうまく折り合わせられるはずだ」、などとシンプルに信じ、何度も何度も話し合いの場を設けようとしたのです。

法的措置に踏み切る

しかし、不当利得をしてきた「加害者」らが最後の最後まで逃げ回り、自分自身も精神的にゲンナリしてきた、信頼できる友人でもあるとある公認会計士(※この人物も在日韓国人です!)に愚痴がてら相談したら、ヒトコト、「話してもわからない者がいるから法律があるんだ」、と喝破されてしまいました。

結局、そのヒトコトがきっかけとなり、法的措置を講じるのに舵を切ったのが、いまからちょうど10年前、東日本大震災直後の2011年5月のことでした。

幸い、こちらの言い分をよく聞いてくれる弁護士の方を見つけることができ、訴訟自体はこちらにとって有利に進みました。結論だけ申し上げるならば、「100%」とまでは言わないまでも、こちらの言い分についてはかなり通り、相当に有利な形で決着をつけることができました。

もっとも、いかんせんわが国の訴訟は手続が大変に遅く、また、引き当てた裁判官による運・不運もかなり大きいという実情があります。このあたりの詳細(とくに裁判所という腐敗した役所の問題点)については、いずれいろいろと書きたい内容も多々あるのですが、本稿とは無関係なので割愛します。

いずれにせよ、最終的には差し押さえていた銀行預金や金銭債権、不動産を売却し、すべて清算して入金するまで5年以上の歳月を要しましたが、個人としても専門家としても、それだけの年月をかけただけの「成果」はありました(日本の司法の問題点を肌で感じることができたのも悪い話ではなかったと思います)。

いずれにせよ、「法律を破る者、話し合いから逃げ回る者に対しては、法律などを使った強制的な解決をするしかない」という著者自身の持論は、こうした体験から導かれたものでもある、というわけです。

資産差押は訴訟と並行し、実効性あるものを!

さて、こうした経験も踏まえて申し上げるならば、人間、本気で「戦おう」と思ったときには、相手に対して自身の手の内を見せず、有無を言わさずに行動に移すものです。

たとえば、資産の差押えはその典型例であり、とりわけ弁護士とも相談のうえ、慎重に対処したのが、「相手の資産のうち最も大きな部分をいかに相手に悟られずに差し押さえるか」、という点です。

先ほど申し上げたとおり、事件の特定を防ぐために詳しい話については控えますが、当時、訴訟を始めるに際しても、当方にて相手先の取引銀行とその支店を特定し、訴状を相手に送達するとともに、電撃的にいくつかの銀行口座と金銭債権を差し押さえたのを、今でも昨日のことのように覚えています。

どんな相手であっても、預金を差し押さえられてしまえば、訴訟に応じざるを得ません。あわせて、弁護士のアドバイスに基づき、訴訟の争点となっていた商業用不動産についても差押えを実施したのは、今になって思えば、相手に勝手に抵当権を設定されたりしないような措置だったのでしょう。

ちなみに相手が所有している資産には、たとえば非上場会社(具体的には、旧法に基づく資本金300万円の有限会社)の社員権(※株式会社でいう株式のようなもの)や、銀行からの抵当権がべたべたと引っ付いた居住用不動産などもありましたが、そうした資産を差し押さえるのは無駄なので、最初から無視しました。

ただ、もしも先方に有能な弁護士が最初からついていたとしたら、勝手に資金を移したり、契約書を書き換えたり、抵当権を設定したりする、という訴訟妨害を行ってきていたかもしれません。このあたり、訴訟相手が会社法制や担保法制の素人だったので(笑)、大変に助かった、という事情もあります。

いずれにせよ、何か問題が生じた際、とりあえず最初は問題を解決すべく、話し合いの努力はすべきですが、相手が話し合いにまったく応じない場合には、法的措置を講じるべきです。

そして、そのような措置には時間もカネもかかりますので、もしやるのであれば、「確実に勝てる」場合にのみ行うのが鉄則だと思う次第です。

自称元徴用工裁判

自称元徴用工裁判の不可思議な点

当ウェブサイトが訴訟について取り上げる際には、どうしても著者自身のこのような体験が念頭にあるのですが、その際、韓国の自称元徴用工裁判を眺めていて、「どうして相手に自身の手の内を見せるのか」、「どうしてそんな無意味なことをするのか」、という点には、いつも違和感を抱きます。

そもそも論ですが、自称元徴用工判決問題は、2018年10月30日と11月29日、それぞれ韓国の最高裁に該当する「大法院」が日本企業2社に対し、違法な損害賠償を命じたことで、日韓間の国際問題として急浮上したものです。

日本政府はこれについて、韓国という「国家が作り出した違法状態(日韓請求権協定違反)」を解消すべく、最初は日韓請求権協定第3条(1)に基づく「外交的協議」を呼びかけ、、次に同(2)(3)に基づく「仲裁手続」への付託を韓国政府に通告しました。

しかし、韓国政府はこれらの手続のすべてをすべて無視し、2019年7月19日には、「違法状態解消のための日本政府からの要求を完全に無視した」という意味での国際法違反も確定しています(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』等参照)。

こうした日本政府の努力が功を奏しなかったことについては非常に残念な話ですが、日本政府としての「あるべき対応」についてはのちほど触れるとして、ここでもうひとつ注目したいのが、「被害者の救済」という点から見た、この訴訟の不可思議さについて、です。

いったいどういうことでしょうか。

訴訟で救済を目指すなら、最初から資産差押するはず

いちおうお断りしておきます。自称元徴用工判決自体、「朝鮮半島で強制徴用された」などと自称する者やその遺族らが訴訟の原告となっている点で、そもそも「お話にならない」というレベルなのですが、ここではとりあえずその論点を脇に置きます。

もし彼らがいう「強制徴用された被害者のおじいさんたち」が、本気でこの訴訟を通じて救済を受けようとするのであれば、通常、訴訟中に相手の換金可能な資産を探し当て、それを同時に差し押さえようとするでしょう。

本件訴訟で日本政府は一貫して、「『旧朝鮮半島出身労働者』(※自称元徴用工の日本政府の呼び方)が勝訴し、日本企業に不当な不利益が発生するような事態が生じれば、日韓関係に深刻な事態を招く」と警告し続けてきました。

当然、かりに大法院で勝訴の確定判決を受けたとしても、日本企業が損害賠償に応じるはずがない、ということくらい、最初からわかっている話です。

新日鐵住金(現在の日本製鉄)については2018年10月、三菱重工については2018年11月に、それぞれ大法院判決が下りましたが、それまで時間は十分にあったのですから、同時並行で日本企業の在韓資産、とりわけ預貯金や不動産、金銭債権、上場株式などの資産を探しておくべきでした。

「コリア・ウォッチャー」という立場を離れ、純粋な「訴訟経験者」としての立場に立つならば、「どうして有り余る時間でそれをやらなかったのか」、というのが、最大の疑問であるとともに、偽らざる感想でもあるのです。

差押えに適する資産と適さない資産

あらためて振り返っておくと、当ウェブサイトでは当時の新日鐵住金に対する判決が下された直後、2018年11月1日付の『「債権差押」爆弾は日本企業撤退招く?徴用工巡る韓国式思考』で、「本気で換金するなら金銭債権を差し押さえるはずだ」と「予言」しました。

というのも、資産には、「差押に適する資産」と「差押えに適さない資産」があるからであり、金銭債権は預貯金や不動産、上場株式などと並び、差押に適する典型的な資産だからです。

しかし、現実に自称元徴用工らが差し押さえている資産は、日本製鉄と不二越に関しては非上場株式、三菱重工に関しては知的財産権(商標権や特許権)であり、くどいようですが、「換金がほぼ不可能な資産」ばかりです。

また、先月は「三菱重工の金銭債権を差し押さえた」とする報道がありましたが(『徴用工「金銭債権の差押」の衝撃』等参照)、結局、自称元徴用工側は何やらムニャムニャよくわからない理由をつけ、差押自体を取り下げてしまいました(『【速報】自称元徴用工側が金銭債権差押を「取り下げ」』等参照)。

まともなセンスをしていれば、「金銭債権を差し押さえたら容易に換金が可能だ」という点に気付くでしょうから、知財や非上場株式といった「わけのわからない資産」ではなく、さっさと金銭債権(とくに短期間で現金化する売掛債権や株式配当金請求権、特許使用料など)を差し押さえるのが鉄則でしょう。

それなのに、自称元徴用工側はその金銭債権の差押えを、まるでなにかに慌てるかのように、そそくさと撤回してしまったのです。

そのうえで、昨日もこんな報道が出ていました。

韓国最高裁 三菱重工の再抗告を棄却=資産差し押さえ命令

――― 2021.09.13 20:14付 聯合ニュース日本語版より

これは、三菱重工の知的財産権差押を巡り、同社が差押命令を不服として再抗告していた件で、大法院が13日、三菱重工側の再抗告を棄却したと発表した、とする話題です。

正直、「まだやっていたのですか」、「やれるものならやってごらんなさい」、とでも申し上げたい気持ちでいっぱいです。差し押さえられているのは「商標権2件、特許権6件」だそうですが、そんなもの、どうやって換金するつもりなのでしょうか。

最初から換金するつもりはない

結論からいえば、自称元徴用工や遺族、あるいは、(正確にいえば)彼らの支援者らは、訴訟手続・差押手続を通じて「強制徴用被害者」の損害回復をしようとは、最初から思っていないと見るべきでしょう。

そのモデルケースは、自称元慰安婦問題にあります。

自称元慰安婦らの場合、本人が「私は慰安婦だった」と証言さえすれば、「被害者様」として韓国社会に君臨することができます。また、その自称元慰安婦らに寄付されるであろう金銭、給付されるであろう公的資金も、利権、腐敗、使い込みなどの温床なのでしょう。

自称元慰安婦らの矛盾だらけの証言も、河野洋平という男が1993年に発した「河野談話」のおかげで、少なくとも韓国社会では「唯一絶対の真実」として、また、国際社会でもある程度は「信憑性のある話」として受け止められているのです。

慰安婦関連団体の元代表で、現在は詐欺罪で起訴されている尹美香(いん・びこう)国会議員の事例を見れば、自称元慰安婦問題が、いまや完全に韓国国内で「利権化」していることは、明白な事実でもあります。

また、2017年5月に発足した文在寅(ぶん・ざいいん)政権が、日韓関係で発足初年度に取り組んだ内容のひとつが、2015年12月に日韓両国が取り交わした「日韓慰安婦合意」に関する「プロジェクトチーム(PT)」の立ち上げであったことも、記憶に新しい点ではないでしょうか。

当然、自称元徴用工問題の関連当事者らも、こうした自称元慰安婦問題の「成功事例」をつぶさに見ているはずですから、最終的な目的も、「日本政府の口から直接、自称元徴用工問題が事実であると言わせる」ことにあると見るべきなのです。

ただの1回でも良いから、首相か官房長官あたりが自称元徴用工問題について「歴史的事実だ」と認める談話でも発表してくれれば、そこを手掛かりにして、韓国側は自称元徴用工問題の利権化を目指すつもりでしょう。それを発表してくれるのは、「枝野幸男首相」でしょうか、それとも「福山哲郎官房長官」でしょうか。

歴史問題の本質的問題点と3つの落としどころ

さて、これに対する日本政府の対応については、もう「生ぬるいもの」では許されないことは言うまでもありません。

以前から報告しているとおり、自称元慰安婦問題や自称元徴用工問題を含めた日韓の歴史問題には、つぎの2つの本質的問題点があります。

日韓歴史問題の2つの本質的問題点
  • ①本来、日韓間のあらゆる請求権に関する問題は、1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に決着しており、慰安婦問題は2015年12月の合意で最終的かつ不可逆的に解決済みである。
  • ②韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである。

現在の日本政府、とくに安倍晋三総理や菅義偉官房長官、あるいは彼らの後継者である菅義偉総理大臣、加藤勝信官房長官らは、一貫して、「韓国が国際法を守らなければならない」と言い続けています。

これは、①の立場を反映したものと見られ、従来の「事なかれ主義」的な日本外交からすれば、大きな進歩であることは間違いありません。

ただ、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題などの日韓諸懸案の落としどころについては、究極的には次の3つ以外にはあり得ません。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • (1)韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
  • (2)日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
  • (3)韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

韓国のこれまでの行動などに照らし、(1)の選択肢があり得ないことは、ほぼ間違いありません。

したがって、おそらく日韓関係破綻を回避するうえで、あり得るとしたら、「日本の首相の謝罪と引き換えに、韓国国内で自称元徴用工判決を無効化する立法措置を講じる」といった具合に、日本側の何らかの「一方的譲歩」を伴う解決策です。

日本政府はどう対処すべきか

ゼロ対100理論の限界

ここで忘れてはならないのが、「ゼロ対100」理論です。

【参考】ゼロ対100理論とは?

自分たちの側に100%の過失がある場合でも、インチキ外交の数々を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく、韓国や北朝鮮が好んで使う屁理屈のこと。

この理論が厄介なのは、もともとが韓国の無理筋な言いがかりである以上、日本が最大限勝利したとしても、得るものはゼロである、という点にあります。得失表を作ってみると、図表1のとおりです。

図表1 ゼロ対100理論における得失表
ケース 韓国の得失 日本の得失
韓国が100%勝った場合 100の利得 100の損失
日本と韓国が引き分けた場合 50の利得 50の損失
日本が100%勝った場合 ゼロ ゼロ

(【出所】著者作成)

逆にいえば、韓国にとってはこの「ゼロ対100理論」、「どうせ言うだけならタダなんだから、とにかく難癖でも何でも良いから日本に対して文句をつけるべし」、という戦略として認識されているのでしょう。

なにせ、もともとの韓国側の主張が明らかな無理筋であったとしても、ほんの1ミリでも日本が韓国に譲歩した瞬間、韓国の「勝利」が確定するわけです。自称元慰安婦問題など、日本が100を失い、韓国が100を得たという意味では、韓国にとっては「ゼロ対100理論」の最大の勝利事例なのです。

脱「ゼロ対100」理論

では、先ほどは言いかけて「後回し」にした、日本にとっての理想の対応とは、いったい何でしょうか。

それは、「日本が200%勝つこと」です。

先ほどの図表1を、図表2のように書き換えてみましょう。

図表2 ゼロ対100理論における得失表(修正版)
ケース 韓国の得失 日本の得失
韓国が100%勝った場合 100の利得 100の損失
日本と韓国が引き分けた場合 50の利得 50の損失
日本が100%勝った場合 ゼロ ゼロ
日本が200%勝った場合 100の損失 100の利得

(【出所】著者作成)

この「修正版・ゼロ対100理論」こそが、自称元徴用工問題で重要な対応です。

自称元徴用工問題を巡り、現在のところ、日本政府は「日本企業に不当な不利益が生じることがあってはならない」とする立場で一貫しているのですが、これが韓国にとっては、「日本企業に『不当な不利益』が生じなければ何をやっても良い」と勘違いされている可能性が高そうです。

しかし、日本が何らかの行動を取った結果、韓国に対し何らかの損失が生じる状況を創り出すことができれば、自称元慰安婦問題、自称元徴用工問題、旭日旗問題、火器管制レーダー照射問題、天皇陛下・上皇陛下侮辱問題、竹島問題などを「包括的に解決する」ことができるかもしれません。

そのヒントは、FOIPです。

これは、当ウェブサイトで何度となく申し上げてきた、「自由で開かれたインド太平洋」、英語でいう “Free and Open Indo-Pacific” のことで、安倍総理の「置き土産」を菅総理が形にしたという、後世への最も大きな遺産のひとつです。

つまり、韓国に対して明示的に何らかの経済制裁を発動するのではなく、日本が「韓国抜きのFOIP」を推進することで、結果的に韓国に対し何らかの実害が生じる、という姿を目指すべきではないでしょうか。

日本政府はFOIPから韓国を除外

これに関連し、ちょうど昨日、首相官邸の公式ツイートが出ていました。

このあたり、政府はもっと積極的に、FOIPについて「わかりやすく」情報発信していただきたいと思う次第ですが、ただ、コンセプトとしては非常に明快です。

日本は「法の支配、航行の自由、自由貿易」などの基本的価値に基づき、地域の経済的繁栄と平和・安定の普及に努める、ということであり、この理念に賛同してくれる国は大歓迎、ということでもあります。

注目すべきは、その範囲に含まれている国々です。この図表だと、「▼太平洋、▼米国、▼豪州、▼ASEAN、▼インド、▼インド洋、▼欧州」――が、FOIPに包含されています(図表3)。

図表3 FOIP

(【出所】首相官邸ツイート)

この点、カナダ、ニュージーランド、英国などが含まれていないのは大変気になりますし、できれば台湾も含めてほしいところではありますが、ただ、重要なのは日本政府が韓国を「FOIP」に含まれる国とみなしていない、という点でしょう。

同じことは、菅総理のツイートからもうかがうことができます。

菅総理はハッキリ、「米国、ASEAN、豪州、インド、欧州など」を協力すべき相手国に列挙し、韓国を抜いています。

これが、すべてでしょう。

サイレント制裁は解決策のひとつ

当ウェブサイトなりの解釈ですが、おそらく現在の日本政府の方針を突き詰めていけば、まさに「価値と利益を共有する国(≒韓国以外の国)との連携を強化することで、結果的に価値と利益を共有しない国を浮かび上がらせる」という形での、目に見えない制裁が徐々に実現していくのかもしれません。

「国際法と国際常識をないがしろにする相手」に対しては、「丁寧な無視」を続けるとともに、その裏で「国際法と国際常識を大切にする連合」を作ることで対抗する、というのは、ひとつのスマートな対応法のひとつといえるかもしれないと思う次第です。

(もちろん、日本政府としてはこの「サイレント制裁」以外にも選択肢は必要であることはいうまでもありませんが…。)

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

なお、本稿で取り上げようかどうか迷ったのが、次のリンクです。

徴用被害者遺族が控訴 「時効で請求権消滅」を不服=韓国

―――2021.09.13 15:52付 聯合ニュース日本語版より

これについては正直、論評にすら値しないので、いちおう「メモ書き」程度にリンクのみを示すに留めることにします。

新宿会計士:

View Comments (19)

  • 私も日米両国で裁判を経験しましたが、相手の財産を調べるのは訴訟前に真っ先にやることでしたね。また、それは秘密裏にやるのは鉄則ですね。でないと、財産を隠されてしまいますから。
    ところで、韓国側の狙いですが、利権化が本丸というのは間違いないと思うのですが、同時に「日本を小突き回すネタを手に入れる」ということが重要なのだと思い始めました。
    彼らの精神にとって、気軽に憂さ晴らしできる劣等な存在を周囲に置いておくのが重要なようです。
    この点、日本でも少なからぬ人たちが、どんな事でも政治家や大企業が悪いせいだと結論づけ、悪態をついて憂さ晴らしする構造と近いものがあると感じます。

    • > 利権化が本丸というのは間違いないと思う

      なぜそれが利権化しうるのかという点も考えるべきであると思います。
      2015年のいわゆる慰安婦合意の後、韓国メディアでは「これで日本に対する道徳的優位性を主張する根拠が喪われてしまう」ことを憂慮する声が随分と聞かれました。合意当初から想定されていたように、韓国側が合意をちっとも遵守しようとはしなかったため、韓国側が「慰安婦問題」でいかに言い募ろうとも、日本側からは「まずは合意を遵守しろ」と返されるだけになってしまい、道徳的優位性に基づく難癖を付けられなくなるという惧れです。
      韓国で「慰安婦」が聖域化したのは、それが日本に対する道徳的優位性を証明する"疑うべくもない生きた証拠"とすることに成功したためです。元来、韓国人にとっては日本に対する道徳的優位性は自明の理ではあるのですが、日本人の目にも映る形でその優位性を誇示できるようになるというのは、とても重要だからです。そして一度聖域化してしまえば、誰も疑問を持つことも許されなくなり、「慰安婦」の代理人を自称する団体としては、何でもやりたい放題になります。こうして「慰安婦」たち本人はそっちのけで、「慰安婦問題」は利権化することになります。

      韓国が「自称徴用工問題」で「慰安婦問題」と同じ構図を狙っているのは、おそらく間違いないでしょう。しかし、利権化するためには、そして利権化しても韓国国民から咎められないようにするためには、道徳的優位性を証明するものと位置づけ、韓国国民の内心の願望を裏打ちするものとしなければならないのです。
      故に、原告団がわざわざ換金が困難なものを差し押さえているというのは、実際に換金していくばくかの現金を得ることではなく、日本政府に不法性を認めさせること、あわよくば河野談話に倣った「〇〇談話」を出させることを目的としているからです。そうやって「自称徴用工」を聖域化することに成功すれば、利権など後からいくらでも付いてくるでしょう(ここでも「自称徴用工」本人たちはほったらかしです)。

      以上のように考えると、日本として為すべきことは、まず道徳的優位性とかいう空疎な概念を完全に否定することであると考えます。「道徳的優位性?何それ、美味しい?」でもいいですし、韓国側が持ち出そうとしたらその都度「そんなもんに付き合うつもりはない」と否定するのでもいいでしょう。相手の土俵や拠って立つところを完全に否定することが重要だと考えます。
      おそらく、大方の日本人にとっては、「道徳的優位性」とか言われても何のことやら見当もつかず、「何それ?」としかならないだろうと思いますが、韓国人にとっては、世界認識の根幹です。韓国国内でどうしようが知ったことではありませんが、それが韓国国内でしか通用しないということを、叩き込むことを考えるべきだと思います。

    • 声闘(声討、ソント)って云うヤツなんですかね。声の大きさで相手の言論を封じる、言い負かしたら勝ち。検索すると声闘文化なんて、文化にまで例えられていたりしますけど、きちんと説明するような資料があったりするものでしょうか?ネットで検索しても偏った情報が多そうで。阿野煮鱒さんが知ってそうですが、最近お見掛けしないですね。

  • FOIPから排除するってのは、一度入れちゃったりすると、二度と使えないカードだと思うのです♪
    韓国みたく、あちこちで何度でもやらかしてるのを相手にするのには、一度しか使えない強力なカードだけじゃなく、それなりに気楽に使える細かいカードもたくさん要ると思うのです♪

    どっかの誰かがいってた日本政府が用意してる100の対抗策は、何ひとつ披露されることもなくて、もしかしたら単なるハッタリじゃないかとさえ思うのです♪
    方策はあっても実施するための法的根拠がないってなら、作ればいいだけだと思うのです♪
    それに、その法的根拠を作るって作業自体が、圧力になると思うのです♪

    日本政府は、現金化されたらって言うけど、こんな訴訟に巻き込まれること自体が不利益だと思うのです♪

    ほんと日本企業とか日本人に対する全ての訴えは、日本の裁判所が日本の法律で裁くようにして欲しいのです♪
    韓国の裁判所のお仕事を日本の裁判所が肩代わりすることになるけど、それくらいの出費は仕方ないと思うのです♪

  • >最終的な目的も、「日本政府の口から直接、自称元徴用工問題が事実であると言わせる」ことにあると見るべきなのです。
    あるいは、日本政府の口を借りることが出来なくても、日本企業が判決に従うことで韓国大法院の判決は韓国の独りよがりのものではない、もし間違いであるなら判決に従うはずはない、と河野談話のような錦の御旗にするつもりでしょう。
    もちろん、自称元徴用工問題という個別の事案ではなく、大元の上告理由の「不法な植民支配・侵略戦争に直結した日本企業に対する反人道的な不法行為(の慰謝料)」を日本は受け入れたとし、各種○○問題を派生させるつもりではないかと思います。

    それにしても日本の弱腰よ、サラミ戦術で閾値を後退させられ、茹でガエル状態になっても気がつかない、中国の爪の垢を煎じて飲め、と言いたい。

    • その昔、海外で事故を起こしても絶対にエクスキューズミーと言うなといわれていました。
      日本の社会は、相手を気遣い、まずは謝る、交渉はそれからという文化です。
      多くの外国は謝ることは自分の過ちを認めたことになる文化です、中国なんかは明らかに相手が悪いとわかっていてもマシンガンの様に自分の正当性をがなり立ててきます。
      その悪例が、宮沢元総理が謝罪し、河野談話を世に出したことで国際社会は韓国の嘘を認めました。
      今回も、もし日本や日本企業が韓国大法院の判決に従えば国際社会は(自称)徴用工問題も事実だと認めるでしょう、絶対に日本文化の思考で対応してはいけないのです、海外の問題はその国の思考で対応をはからなければ解決できません。

      • >相手が悪いとわかっていても
        自分が悪いとわかっていても、の間違いです。

  • 戦後のドサクサ期に大都市のターミナル駅や繁華街は、元の住人、権利者が散り散りバラバラになり、或いは死亡し、権利が不明のまま、生き残った者達がバラックから始まりビル等を建て、更に土地と建築物の所有者が違う居住者もまた違う、なんて当たり前で、非常に複雑なまま現在に至っているケースは多いです。

    もう最初の世代は日本人も在日外国人もほとんど生きてないと思いますが、元々の権利書やらが無いケースもあり、それが余計に再開発とかにネックになっている原因というのは聞きますーーーーなんて、会計士さんの実話を読みながら耽ってました。

    韓国の日本に対する最終的な目的は、「日本政府の口から直接、自称元徴用工問題が事実であると言わせる」こと。コレが出れば何百回でもお代わり出来る。偽慰安婦で散々旨い汁を吸ったので、忘れられないのです。

    ただの1回でも良いから、首相が(今なら特に安倍総理)自称元徴用工問題について「歴史的事実だ」と認める談話でも発表してくれれば、御の字。

    だから現金化が難しい物件ばかり差し押さえする。ヤルぞヤルぞーですネ。

    FOIPから韓国を抜く、、妙手です。アチラは気が付いていても、どうしようもない。怖い中国様が居ますからね。サイレント制裁だけど、実質効果大いにアリと思います。

  • いろんな面で、韓国は厳しく扱う必要がありますね。
    丁度、こんな報道がありました。
    "キムチ、魚介類など日本に輸入された韓国産食品の「違反事例リスト52」" (NEWSポストセブン 021.09.13 07:00) より。

    検査結果判明前に流通可

    そんなザルなルール、変えなきゃだめでしょう。
    日本国民の健康を守るという観点から、違反事例が多い韓国の食品(もどき)の輸入を禁止するか、「韓国側での全数検査を義務づけ、検査漏れがあった場合には巨額の罰金を課す」くらいの措置は必要かと。
    他にも、発火の恐れがある韓国製バッテリーの輸入禁止とか、安全を理由にできることは多々ありそうです。

  • >しかし、不当利得をしてきた「加害者」らが最後の最後まで逃げ回り、自分自身も精神的にゲンナリしてきた、信頼できる友人でもあるとある公認会計士(※この人物も在日韓国人です!)に愚痴がてら相談したら、ヒトコト、「話してもわからない者がいるから法律があるんだ」、と喝破されてしまいました。

    その在日コリアンの公認会計士みたいに、真っ当な人間も在日コリアンの中に入るのですが、在日コリアンの集団や民団、朝鮮総連という単位で観た場合に、主流派では無くなってしまうであろうところが、在日コリアンは基本的に日本社会で日本国民と共生出来ない連中だと受け止める理由なんですよね…。

    朝鮮総連だと、北朝鮮からの迂回輸入とかで捜索を受けると、民族差別にすり替えて被害者コスプレしたりしてましたし。

    民団も朝鮮総連と区別が付かない組織になってきてるし、今後の展望は良くないですね。

  •  相手は絶対譲歩しなさそうですから(3)になる可能性が高そうです。アメリカからも「日韓関係、破綻させていいよ」的なサインが出ているような気がします。出ないと、日本が譲歩しないなんて「珍しい」行動の説明が付きません。

    ●日韓関係の修復が難しい理由
    https://www.nippon.com/ja/in-depth/a02701/
     昔に比べて韓国の反日は弱くなっているというデータがあります。昔は大使館に銃弾が撃ち込まれたり、反日デモの数も多かった。今はデモ参加者が減少こそすれ増加する見込みはあり得ないということです。

     シンシアリーさん(だったかな?)の言葉を借りれば「反日の普遍化」が起こっていると。旭日旗の問題のように、気に入らないことは何でも反日行動に出てしまうような、偏在化の傾向にあると。

     反日がしつこく行われているのは、上記「日韓関係修復が難しい本当の理由」で説明されている通り、経済的に日本への依存度が低くなっていることかと。だから「日本はもういらないから何をしてもいい」というのが反日がしつこい理由かと。

     経済的に日本を強くしようというのもすぐには難しそうですし、クアッドであったり、FOIPであったり、国際法を守らない国は国際的な枠組みに入れないよというメッセージ、会計士様のいうような「サイレント型制裁」をうまく使うことが重要かと。
     それでレッドチームに行くようなことがあれば、「もう知らんよ」ですが。レッドチームとの経済関係は、もう韓国にとって麻薬的なものではないかと。

  • 徴用工判決は、日韓併合を違法とする為の判決。
    これが一番肝心な所なので、忘れずに。

    • だんな様

      同感です。
      韓国にとって無限の請求が可能となる金づる、かつ戦って独立したという民族的誇りを得ることができるものであり、従って絶対に諦めることは許されない「民族の興亡をかけた一大戦略」なのです。

      逆に言えば、日本にとって決して一ミリたりとも譲歩できない、「日本国家の未来の存続をかけた抗戦」なのです。
      その重要性は慰安婦問題とは比較にならないほどです。

      余談ながら、総裁候補の岸田氏は外相時代に、登録が決まった世界遺産委員会の場で韓国のしつこい交渉に屈し、日本による「forced to work」を認めてしまいました。
      韓国が企んだ一連の徴用工裁判の第一の布石で、まんまと敵の攻略にはまってしまったのです。
      人が良くて押しに弱い岸田氏が外相であったのは日本にとって不運でした。

      https://www.j-cast.com/2015/07/06239576.html?p=all

      しかしまだまだ敗退にはほど遠いので、日本政府は今のまま、しっかりと韓国に「解決済み」の繰り返し攻撃で踏ん張って欲しいものです。

      FOIPの発展拡充により、日本に対する信頼度をまし、結果理解を示す国を増やす必要があります。そのためには、韓国の参加を阻止しなければなりません、眉をひそめるようなやり方で無く、紳士的に韓国参加のデメリットを合理的に説くのが肝要です。

  • > カナダ、ニュージーランド、英国などが含まれていないのは大変気になりますし、できれば台湾も含めてほしいところ

     カナダとニュージーランドは「太平洋」に含まれていると考えていいのではないでしょうか?
     英国については、英国、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポールの軍事同盟たる「5ヶ国防衛取極 Five Power Defence Argument ; FPDA」というのがありますので、ASEAN諸国のマレーシアとシンガポールを巻き込んだら自動的に英国が含まれる事になります。この辺、分かる人には分かるので、中共に圧力をかけるにはこの表記でも十分です。
     わざわざ英国の参加を書いてしまうと、「アジアの問題にアングロサクソンが口を出すな」という戦前の日本人も口にしていた反感を中共の「分からない」人にも持たせる事、「スエズ以東からは50年前に撤退しているのに、なんでどうでもいいアジア問題に血を流さねばならないのか」という英国の国内世論(特に労働党、自由民主党支持者)の反発を買う事で、英国軍の積極的な参加をためらわせてしまう恐れがあります。

    •  追記です。
       太平洋には英国領ビトケアン諸島がありますので、英国を太平洋に含めるという考えもありかと思います。
       この理屈で言うとタヒチやニューカレドニアを含むポリネシアを領有するフランスも含む事になります。フランス軍も北朝鮮や南シナ海の監視を目的に艦艇を派遣してますからFOIPに入れてもいいかもしれません。

  •  最終的な目的も、「日本政府の口から直接、自称元徴用工問題が事実であると言わせる」ことにあると見るべきなのです。
    ⇒日本政府の口から直接言わせなくても、日本企業が自称元徴用工に一言「謝罪」すれば、「強制連行と強制労働」が事実であったことが証明され、当時の日本政府が「強制連行と強制労働」を日本企業に命令したことが証明されます(民間企業が独断で「強制連行と強制労働」を実行できる訳がありません)。
     そうなれば、1930年にILO総会で採択され1932年に批准された「強制労働条約」に違反する行為を日本政府が行なったことが証明され、日本政府に対して「謝罪と賠償」を求めることが出来るというのが、自称元徴用工原告代理人のシナリオではないでしょうか。

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