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ワクチン提供に感謝する台湾:蔡英文氏の「善の循環」

台湾こそ日本にとって価値と利益を共有する大事な友人

日本が台湾に対し、新型コロナウィルスのワクチンを無償提供し、これに対し蔡英文(さい・えいぶん)台湾総統が日本に謝意を示したとする話題は、『台湾などへの追加ワクチン支援表明に蔡英文氏から謝辞』でも取り上げたとおりです。こうしたなか、この蔡英文氏を巡っては、ポーランドなどに対しても同様に謝意を述べているようであり、しかもその際に発した「善の循環」という表現こそ、私たちの国・日本が目指す方向でもあるように思えてなりません。

日本はアジアから大変好かれている

意外と知られていませんが、日本はアジア諸国(特定3ヵ国を除く)から「大変に好かれている国」です。

少し古い調査で恐縮ですが、外務省が2017年11月に発表した『ASEAN10か国における対日世論調査』によれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10ヵ国に対する調査で、日本に対し全体の89%が「友好関係にある」と答えたほか、対日信頼度も91%に達していたのだそうです。

あくまでも個人的主観で恐縮ですが、日本がアジア諸国から深く信頼され、好かれている理由は、やはり日本という国が国際法秩序を大事にし、法や契約をじつによく守り、そして個々の日本人が誠実に振る舞ってきたからではないかと思います。

実際、同調査によれば、「この50年間、ASEANの発展に最も貢献してきた国はどこか」とする質問に対しては、3位の米国(32%)、2位の中国(40%)を抑え、日本が55%で堂々の1位に輝いています。

このこと自体、日本の対ASEAN支援の在り方や戦後日本の歩みが高く評価された証拠であり、私たち日本人としても、決して慢心することなく、ただ卑屈になることもなく、これまでどおり、いや、これまで以上に世界の平和と発展のために微力を尽くしていくという姿勢が重要なのでしょう。

台湾もまた友人が多い「国」だ

こうしたなか、この外務省の調査について、少し残念な点があるとしたら、台湾について触れられていないことです。日本がアジアで大変に好かれているということはわかるのですが、そのほかの国、とりわけ台湾が世界でどう思われているのかについては、個人的には大変気になるところです。

ただ、これについて間接的にうかがい知ることができる記事が、いくつか出て来ていることもまた事実です。

台湾国営メディアである『中央通訊』(日本語版)は先日、こんな記事を配信しています。

ポーランド、台湾へのワクチン提供発表 アストラ製40万回分

―――2021/09/04 19:58付 中央通訊日本語版より

中央通訊によると、ポーランド政府は4日、台湾に対し英アストラゼネカ製のコロナワクチンを40万回分無償提供すると発表し、ワクチンを搭載した航空機がすでに台湾に向けて出発した、などと報じています。

しかも、記事を読み進めていくと、こんな趣旨の記述もあります。

  • 昨年台湾から医療用マスク100万枚がポーランドに届けられた
  • (台湾外交部は)今回のワクチン提供に「心から感謝している」(と述べた)

むかしから「情けは人のためならず」といわれます。

これは、「相手に善意で支援をすれば、それは結局自分自身に返ってくる」という意味ですが、まさにそのことわざどおり、善意で外国に支援をすれば、外国から善意が返ってくるという典型例を見た気がします。

中央通訊はまた、「ワクチンの確保が難航した台湾に日米をはじめ複数の国が支援の手を差し伸べた」として、「これまでに日本から約334万回分、米国から約250万回分、リトアニアから約2万回分、チェコから約3万回分が届けられた」などと報じています。

中国による妨害にも負けず、まだ数量的には不十分であるとはいえ、ちゃんとしたワクチンを外国から提供されるのは、それだけ台湾が世界から好かれているという証拠であるように思えてなりません。

蔡英文氏は相手に感謝を忘れない

しかも驚くのは、この「続報」です。

同じく中央通訊にその翌日付で掲載された次の記事によると、蔡英文(さい・えいぶん)総統自身がポーランド政府に謝意を示したのだそうです。

蔡総統、ポーランドに感謝 無償提供ワクチン40万回分が台湾に到着

―――2021/09/05 13:26 中央通訊日本語版より

中央通訊によると、蔡英文氏の発言はフェイスブックでなされたもので、次のような趣旨の内容が書かれています。

  • 民主主義の仲間が共にウイルスと戦ってくれた
  • (ポーランドは)われわれと普遍的価値観を共有し、台湾と共にウイルスと戦ってきた仲間でもある
  • (医療物資を贈り合ってきたことは)民主主義国家間が互いに支え合ってきた「善の循環」だ

「善の循環」!

まさに、この「民主主義国間の善の循環」の考え方こそ、私たち日本が目指すべき姿ではないでしょうか。

そして、じつは蔡英文氏が外国に対し、謝意を示すのは今回だけではありません。当ウェブサイトでも今年7月の『台湾などへの追加ワクチン支援表明に蔡英文氏から謝辞』などで報告したとおり、蔡英文氏はわが国に対しても、ワクチン提供に対する謝意を示してくれています。

個人的には、外国に支援しても、その相手国からは「支援が遅い」、「額が不十分だ」などと恨み言をいわれるのが通常だと勘違いしてしまっていたのですが、蔡英文氏の発言は、「外国に良いことをして、その相手国から感謝してもらえるのは素直に嬉しい」という当たり前の事実を思い起こさせてくれた気がします。

日本と台湾は基本的価値と利益を共有する

以前の『外交青書:基本的価値の共有相手は韓国ではなく台湾だ』などでも指摘しましたが、日本政府が今年発表した外交青書を丹念に読んでいくと、日本は台湾を次のように位置付けています。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(同P55)。

外交青書上、日本の近隣国で、ここまで高く評価されている「国」はほかにありません。

また、『台湾が韓国を抜き「3番目の貿易相手」に浮上した意味』などでも分析したとおり、台湾は日本にとって良き隣人であるだけでなく、産業・経済面においても「3番目に重要なパートナー」に浮上しつつあります。

現時点において、日本政府は台湾を「国」とは認めていないため、現状でたとえば「日台通貨スワップを締結する」、「台湾をFOIPに招き入れる」などの行動を取ろうとすれば、中国からの反発が非常に強いと予想されます。

これに加え、台湾という「国」も一枚岩ではなく、「親日一辺倒」ではありませんし、台湾自身が沖縄県石垣市にある尖閣諸島に対する領有権を主張しているという事実については、非常に残念な話ではあります。

ただ、これらの障害はあるにせよ、それでもやはり、外交においては基本的な価値と戦略的な利害をともにする相手のことは大切にしなければなりません。

「お互いの相違についてはある程度『棚上げ』としつつ、それよりも相手の苦境に思いを致し、自分たちにできることは何かと考える」。

こうした本当の意味でのツートラックが成立する貴重な相手国が台湾です。

蔡英文氏のいう「善の循環」、私たち日本人にとっても大切にしたい考え方ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (19)

  • >蔡英文氏のいう「善の循環」、私たち日本人にとっても大切にしたい考え方ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

    「日本が、悪いニダ」の国とは、「善の循環」は無さそうです。
    本来ならご近所さんとは、持ちつ持たれつ、困った時はお互い様という関係が「理想」だと思います。

    中央日報から
    台湾がCPTPP参加を推進…中国「『一つの中国』原則に従うべき」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/c316d90223b366a0bc22cc469add20b292562a35
    台湾がイギリスと同時にCPTPPに加盟すると良いなぁと、思っています。
    CPTPPへの加盟は、既に参加している全ての国の承認が必要です。現加盟国に中国の意見で加盟の邪魔をする国は有りませんので、2国セットで進めれば理想だと思います。
    日本もCPTPPを十分活用出来てるか?という課題が有ると思います。

    • このタイミングでこの記事は、個人的に腹立ちました。 
      韓国経済人団体、「韓国・台湾、CPTPPに同時加入を提案」
      https://s.japanese.joins.com/JArticle/282765?servcode=300&sectcode=300
      >韓・台湾経済協力委員会の韓国側のキム・ジュン委員長は「韓・台湾の経済協力強化のための制度的課題として、韓国・台湾両国のCPTPP同時加入を提案する」と述べた。

      「ふざけるな」でしょう。

      • だんな様
        >「ふざけるな」でしょう。

        まったくもっておっしゃるとおりです。
        韓国は、国際法は無視する、国家間の約束、条約は守らない、
        知的財産権保護の概念が無い(パクリ横行)等々
        この国とは二国間、多国間の条約、協定、覚書等、
        (今後新規に)取り交わすに値しません。
        台湾と韓国を同列に扱っては、台湾の皆様に申し訳けありません。
        まったくふざけた話です。

    • 率直に言って,台湾のCPTPP加盟は賛成できませんね.
      以前から台湾は韓国と並ぶほどの為替操作国(敢えて「国」と書きます)でした.

      もう一つは蔡英文総統や民進党がこの先もずっと台湾の舵取りを担う保証は何もなく,国民党政権は(東日本大震災への当時の馬総統ご本人が音頭をとって集めて下さった莫大な額の義捐金という敵味方を超えた人道的な御支援はありましたが)北京の方を向いており基本的に反日です.

      更に言うと台湾経済界の大物で大陸へ多額の出資をしている人々(その典型は世界最大の半導体製造メーカTSMCを育て上げたテリー・ゴウ氏)の多くは共産チャイナ首脳や人民解放軍の上層部と非常に親しいという事実です.実際,現実問題として共産党とその軍である人民解放軍が全てを掌握している共産チャイナにおいて,党や軍の上層部と深い繋がりを持たずに多額投資をするなどというのは不可能です.

      つまり,蔡英文総統は日本として信頼できる台湾の指導者であると私も思いますが,彼女がずっと政権を担える訳ではなく,場合によっては共産チャイナの手先が台湾の舵取り役を担うという由々しき事態が現実に起こり得る仕組みになっているのだ,ということを,日本は決して忘れてはいけないのです.

      外為操作の常習犯である(この一点だけでも自由貿易協定を結ぶ相手としては不適切だと思いますが)だけでなく,政権交代が起きると日本とよりも共産チャイナと仲良くしたがる政権が舵取りをする国を,CPTPPに加入を許すのは日本として余りにもリスクが高すぎるのです.

      今の蔡英文総統の台湾統治やお人柄が非常に良いからと言って,再び上げることの困難なタイプのガードをむやみに下すのは余りにも短慮すぎるというか人が好過ぎるのです.蔡英文総統の任期満了後の台湾がどうなるかは未知なのですから.

      台湾に対するガードを下すとすれば,台湾が二度と大陸側(共産チャイナ側)に戻れないようになってからにすべきです.即ち,台湾が独立宣言をし,日米など西側諸国による承認や日米との安全保障条約の目途が立ってからだというのが,私の考えです.

      それまでは,お互いに温かい関係にある隣国として親密に(しかし深入りせずに)付き合うべきです.

  • 「情けは人のためならず」の成句は、本文中で使われているように、「善意の循環」を意味するのが本来なんでしょうが、最近は、情けを掛けられた対象の自助努力の芽を摘むことになるから、却って「人のためにならない」と理解する人が増えている、というはなしを聞いたことがあります。

    だけど、近隣国の有様を観察していると、もっとスゴい解釈も出来そうですね。「情けを掛ける」=「恩恵を施す」、つまり「目上のポジションを取る」で、情けを掛けられた側は、格下に扱われたと恨みを募らせることになり、結局人のためにはなっていない、なんて。果実はしっかりいただいた上でのはなしなんですけどね(笑)。

    時代とともに言葉の使われ方が変遷していくのはよくあることですが、こういう妙な解釈がスタンダードになるような世の中は、来て欲しくないものです。

    • 伊江太様

      仰る通り「情けは人の為ならず」は時と場合によって意味或いは目的が変わりますね。

      半島の場合は逆効果でした。
      戦後の支援は感謝されるどころかやっぱり日本が悪かった、もっと謝れ、もっと金出せと言う最悪の結果になりました。

      情けをかける時はよくよく気を付けないといけませんね。
      私も下心があるのでは無いかと疑われないよう気を付けています。

  • 台湾国に喜んでもらえると、何故か嬉しくなってしまう日本人が此処にいます。

  • 威風堂々とはまさにこのことだと思います。僭越ながら卑見を敢えて申し上げますと、会計士さんは人類の未来に良くも悪くも影響のない国について拘られ過ぎておられるように感じられます。大きく変わろうとしている世界についての経済側からの論評を、一読者は待ち望んでいるのです。

  •  善の循環を大事にする=善で返してこない(どころか悪で返してくる)相手には善を与えるべきではない、とも考えられるのですが。
     見返りを求めるのは善ではないだとか、相手が悪であろうとまずは自ら善を示さなければとか、果ては悪で返されても自らは善を貫くべきだとか……善という概念そのものによってこの論法が否定されてしまう、そして見透かしてくる相手にはまんまと利用されるのが難しいところ。

  • 「善の循環」、素晴らしい言葉ですね。
    私はこの言葉から、人の良い面を意識して見ましょう、という意思を感じます。

    それは、「善の循環」を阻害する、(日本)人の悪い面を意識して見ましょう、とするお隣の国の意志に対する、蔡英文総統の「善なるメッセージ」のように聞こえます。

  • >蔡英文氏のいう「善の循環」、私たち日本人にとっても大切にしたい考え方ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

    ですから、昔の偉人は言ったではないですか……「環」をもって尊しと為すと…?

  •  どうしてあの国とこうも違うのか…日韓併合のほうがよくて、台湾統治のほうが植民地に近かったというのに。人間が違うとここまで違うということか。

     大震災の義援金から、政治のことまで心配してくれる日本語で発信してくれている台湾人がいたり、民間外交の成果とみてよいのでは。

     韓国人もすごく多く日本語でYouTubeをしてくれているが、利益のためというにおいがプンプン、一部韓国の反日教育を嫌って日本で情報発信してるものも多いが、何もしてくれていない人間たちこそお前たち、と言いたい。韓国とはいくら民間交流をしてもプラスにならない。

    • サムライアベンジャー 様

      >人間が違うとここまで違うということか。

      これに尽きると思います。

  • 私も「情けは人の為ならず」の意味を、取り違えてました。「情けは他人の為にならないよ」と。台湾とは相譲れない部分もありますが、それはそれで別の問題。南朝鮮、中国、ロシアの3悪とは違います。おっと北を入れて4か。どっちでもええわ(笑)。

    日本が良かれと思ってしてあげた事も、「遅い」「量(金額等)が少ない」「(困っているクセに)くれるなら、貰ってやってもいい」「もっと沢山寄こせば、○○しても良い」等、、、特に韓国は異常です。

    日本と台湾は基本的価値と利益を共有します。韓国は不要、関知しない。日米台で同盟を作りましょう。でないと、台湾は中国に侵略される事、間違いなし。蔡英文総統もきっとその気持ちだと思います。

  • 私は蔡英文政権は支援すべきだと思いますが、国民党は要注意だと思っています。
    国民党には所謂本省人が多いようですし、半導体やEMSなど台湾を代表仕る企業家は本省人が多いようです。

    加えて台湾の大手企業は、中国本土の資産を人質に取られています。
    国民党政権になった場合、台湾の韓国化すなわちコウモリ外交になる可能性が大きいと思います。
    中国の共産党政権が崩壊するまでは、台湾を安易にTPPに参加させるべきではないでしょう。

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