金融面での日本の「韓国離れ」は通貨スワップ終了後顕著に
昨日の『外交知らずの外交官?日韓に「ツートラック」を要求か』でも述べたとおり、外交は一般に、冷徹な国益の世界だけでなく、国民の感情というものを無視することはできません。こうしたなか、現在の日韓はそれなりに深いおつきあいをしているのですが、いくつかの統計的事実を追いかけていくと、どうもこうした関係は、遅かれ早かれ、ある程度は解消されていくのではないか、などと思えてなりません。
例の米国務省担当者の「不適切」発言
中央日報の記事を振り返る
最初に、ちょっとした「補足」から始めましょう。
昨日の『外交知らずの外交官?日韓に「ツートラック」を要求か』の末尾では、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に木曜日付で掲載された、次の記事に関する話題を取り上げました。
米国務省の韓日担当副次官補「韓日、過去と未来は別々の“カゴ”で扱え」(1)
―――2021.07.29 16:14付 中央日報日本語版より
米国務省の韓日担当副次官補「韓日、過去と未来は別々の“カゴ”で扱え」(2)
―――2021.07.29 16:14付 中央日報日本語版より
これは、「米国務省のマーク・ランバート日韓担当副次官補」(※肩書は中央日報の記事どおり)が現地時間28日のカンファレンスで、「日韓協力の必要性」を強調したうえで、「米国が考える日韓解決法」を提示した、などとする話題です。
当ウェブサイトでは、「報じたメディアがメディアだけに、その記載内容が公正中立なのかどうか、あるいは鵜呑みに信じて良いのか、という問題はある」としながらも、「もしもこの報道が事実なら、これはとんでもない内容だ」、と申し上げました。
なぜなら、中央日報によると、ランバート氏は次のように発言したと報じられているからです。
「米国は共通の基盤を探るために日韓両国政府と協力してきた。我々は率直になろう。歴史は変わらない。20世紀に起きた残酷行為はそのままだ」。
ランバート氏のいう「20世紀に起きた残虐行為」が何を指しているかについては、この記述だけではよくわかりませんが、中央日報は「日帝の蛮行を意味する」と補足しています。
「残虐行為」って、いったい何ですか?
もしも中央日報の指摘どおり、前後の文脈から判断して、ランバート氏が「(韓国が主張するかのような)日帝の蛮行」の意味でこのように述べたのだとしたら、なかなか恥知らずな人物です。
「20世紀に起きた残虐行為」の具体的事例を挙げるならば、米国による東京など主要都市への無差別大空襲、広島・長崎への原爆投下、米軍がベトナム戦争で枯葉剤を使用したこと、あるいは同じくベトナム戦争における韓国軍の行為あたりが、間違いなくそれに相当するでしょう。
はて、日本が韓国に行った「残虐行為」とは、いったい何のことでしょうか。
もしかして、「日本が朝鮮半島を35年間統治し、朝鮮王国時代の両班制度を廃止し、残虐な刑罰を禁止し、水道・電気・道路・鉄道・港湾などのインフラを整え、学校を整備したこと」を「日本の韓国に対する20世紀における残虐行為」だと呼んでいるのならば、とくに何も言うことはありませんが…。
いずれにせよ、「過去の問題」と「未来の課題」は別々のかごに入れて処理せよ、という発言については、この部分だけを切り取ると、まさに韓国が普段から述べている「ツートラック」(権利だけ主張するけれども義務は果たさないという態度)そのものでしょう。
日本として受け入れられるものではありません。
他メディアもこの発言に注目した
もっとも、これについては昨日になって、中央日報以外のメディアも取り上げています。
たとえば、左派メディアである『ハンギョレ新聞』(日本語版)は、「ランバート氏は20世紀に起きた日本の残酷行為に触れながらも、韓国と日本が未来に向けて協力しなければならないと述べた」、という具合に報じています。
米国務副次官補「20世紀の残酷行為はその通り…それとは別に韓日は協力すべき」
―――2021-07-30 07:08付 ハンギョレ新聞日本語版より
具体的には、ハンギョレ新聞の報道だと、「第二次世界大戦当時の日本の残酷行為を歴史的事実と認めながらも、歴史と分離して韓日が協力することが重要だと強調した」、と記載されており、先ほどの中央日報の「ツートラック」に力点を置いた記事の書き方とは微妙なニュアンスの違いもあります。
さらには、『朝鮮日報』(日本語版)も、ワシントンの金真明(きん・しんめい)特派員がこんな記事を配信しています。
「韓日の歴史と未来は別のかごに」…米国務省の韓日担当副次官補が注文
―――021/07/30 17:01付 朝鮮日報日本語版より
あくまでも個人的主観ではありますが、朝鮮日報といえば、文在寅(ぶん・ざいいん)政権に対してはとくに批判的であり、最近だと中央日報よりも「保守的」・「反文在寅政権」的な記事を配信することが多いメディアだと思います。
その朝鮮日報の記事によれば、ランバート氏のこの発言は、柳明桓(りゅう・みんこう)元韓国外交部長官らから「米国のバイデン大統領は韓日関係に積極的に介入する意向はあるのか」との質問に対してなされたものなのだそうです。
発言自体は「言語道断」、ただし独自の解釈も…
金真明氏は、次のように指摘します。
「ランバート氏が語った『残酷な行為はそのままだ』とは『日本による植民支配の歴史は変わらない』という意味に解釈できそうだ。しかし『このような過去の歴史により、可能な両国の協力にマイナスの影響をもたらすことは未来志向的ではない』という趣旨だ」。
つまり、金真明氏にいわせれば、「米国務省の当局者」という立場の人物が「公開の場」でこのような発言を行ったということ自体、「日韓の歴史的和解は難しい」と米国が判断し、「歴史分離論」を訴え始めたとも解釈できる、ということでもあります。
つまり、この話題は多少のタイムラグを伴ったものの、韓国を代表するメディアに相次いで掲載された記事では、ランバート氏の発言内容自体はおおむね共通していることから、ランバート氏が本当にそのように発言したと考えて良いと思います。
そして、解釈自体はメディアによって微妙に異なっており、とくにハンギョレ新聞と朝鮮日報については、米国のメッセージの力点が「米国が日本の蛮行を認めたこと」よりも「歴史分離」に置かれているという、ほぼ共通の見解を指摘したことが、なかなか面白い点だと思います。
これらの韓国メディアは指摘していませんが、敢えていえば、ランバート氏は「日本に対して」、ではなく、「韓国に対して」、「歴史問題は勝手にやれ」、「日米韓3ヵ国連携に影響を及ぼすな」、「日本との関係改善の努力をしろ」と発言した、という可能性は十分にあるでしょう。
また、日本の側としても、安全保障面で日米韓3ヵ国連携に協力している限りにおいては、経済関係で韓国との関係を薄めたとしても、べつに米国からは何も文句は言われない、ということでもあります。
ということは、米韓関係が続いている限りは「日米韓3ヵ国連携」にいちおうおつき合いはするものの、韓国との関係については不必要に深めたりしない、という戦略を取っても、それはそれで悪いことではないのかもしれません。
(※もっとも、「20世紀の残虐行為」などと発言したという点に関しては、正直、「言語道断」であり、とうてい受け入れられない話である、という点については、あらためて強調しておきたいと思う次第です。)
外交は「感情」と「利害」で見るべし
中国とどう付き合うか
さて、非常にくどいようですが、国と国との関係を決定する際に重要なのは、(1)国民感情に照らしてその国との良好な関係を築くことができるかどうか、という点と、(2)その国と付き合う必要がどのくらいあるか、という点でしょう。
たとえば中国に関しては、いまや日本国民の多くが良い感情を抱いていない相手国であり、ネット上でもときどき、「中国と国交を断絶すべきだ」などとする極論が出てきたりすることもあります。
しかし、株式会社ワックが刊行するオピニオン誌『月刊WiLL』や産経新聞社が刊行するオピニオン誌『正論』に昨年掲載していただいた拙稿でも主張しましたが、経済的な関係でいえば、少なくともいま、この瞬間に関して、「日中断交」は選択肢としてあり得ません。
中国を当てにしなくても日本経済は全然OK
―――『月刊WiLL』2020年10月号 P268~より
切っても切れない日中関係」の幻想
―――『正論』令和3年1月号P74~より
同様のことについては、今年1月、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が理事長を務める「国家基本問題研究所」でも報告させていただいた次第です。
「数字で読む中国経済」 新宿会計士
金融評論家の新宿会計士氏は1月8日(金)、国家基本問題研究所企画委員会において、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員と意見交換した。<<…続きを読む>>
―――2021.01.08付 国基研ウェブサイトより
もっとも、これらの議論は、「日中が未来永劫、断交できない」という意味で申し上げたものではありません。
日経新聞などに騙されたという側面はあるにせよ、日本企業が1990年代以降、みずから積極的に中国に入れ込んでいったという意味では、日中の産業、サプライチェーンが密接に絡まってしまったというのも、いわば日本の「自業自得」のようなものです。
だからこそ、今後、日本経済が復活する過程で、中国との関係についても徐々に整理していくことが大切であり、少なくとも現在のような「中国が日本にとって最大の貿易対手国」という状態(『6月の輸出高も「台湾>韓国」:基調は定着するのか?』等参照)についても是正は必要でしょう。
日中が30年以上の時間をかけて関係を深めてしまった以上、この関係は1年やそこらで清算できるものではありませんが、少なくとも5年、10年という単位で、「日本と基本的価値を共有し得ない国」との関係については、ある程度整理していく努力は必要だと思うのです。
韓国との貿易関係は非常に深いが…
さて、同じ文脈において、もういちど、韓国についても考えておきましょう。
一般に、経済活動の3要素は「ヒト、モノ、カネ」であるとされます。このうち「モノ」の流れに関しては、『6月の輸出高も「台湾>韓国」:基調は定着するのか?』でも報告したとおり、日本にとって韓国は欠かすことができない重要な国です。
ただ、それと同時に、中・長期的な基調で見ると、徐々にその「地位」に変動が生じていることもまた事実でしょう。速報値ベースで、2021年6月分の相手国別の輸出額、輸入額、貿易額(=輸出額+輸入額)、貿易収支(輸出額-輸入額)を、貿易額が大きい順に5ヵ国ほど並べてみましょう(図表1、図表2)。
図表1 相手国別輸出入額(2021年6月)
相手国 | 輸出額 | 輸入額 |
---|---|---|
1位:中国 | 1兆5874億円 | 1兆6359億円 |
2位:米国 | 1兆3456億円 | 7667億円 |
3位:台湾 | 5073億円 | 2917億円 |
4位:韓国 | 4782億円 | 2973億円 |
5位:タイ | 3089億円 | 2410億円 |
その他 | 2兆9946億円 | 3兆6054億円 |
合計 | 7兆2220億円 | 6兆8381億円 |
(【出所】『財務省貿易統計』より著者作成)
図表2 相手国別貿易額・貿易収支(2021年6月)
相手国 | 貿易額 | 貿易収支 |
---|---|---|
1位:中国 | 3兆2233億円 | ▲486億円 |
2位:米国 | 2兆1123億円 | +5789億円 |
3位:台湾 | 7990億円 | +2157億円 |
4位:韓国 | 7755億円 | +1809億円 |
5位:タイ | 5500億円 | +679億円 |
その他 | 6兆6001億円 | ▲6108億円 |
合計 | 14兆0601億円 | +3840億円 |
(【出所】『財務省貿易統計』より著者作成)
米中両国が輸出相手としては「ツートップ」である一方、輸入先として最大の相手国は中国であることが確認できます。
台湾と韓国の逆転
ただ、3位以下については、なかなか面白い現象が発生しています。貿易相手国としては、台湾と韓国が「つばぜり合い」を繰り広げており、とくに最近だと、台湾の輸出相手としての重要性が高まったためか、台韓両国は貿易統計上も頻繁に順序が入れ替わっているのです(図表3)。
図表3 台湾と韓国に対する輸出額(2021年1月以降)
月 | 対韓輸出額 | 対台輸出額 |
---|---|---|
1月 | 4294億円 | 4140億円 |
2月 | 4242億円 | 4120億円 |
3月 | 4952億円 | 4909億円 |
4月 | 5174億円 | 4935億円 |
5月 | 3902億円 | 4520億円 |
6月 | 4782億円 | 5073億円 |
上半期合計 | 2兆7346億円 | 2兆7698億円 |
(【出所】『普通貿易統計』より著者作成。ただし、速報値を更新していない部分もあるため、財務省統計の確定値とは異なっている可能性については要注意)
もう少し長い期間で、今度は輸出高と輸入高の合計(つまり貿易高)についても、グラフ化しておきましょう(図表4)。
図表4 対台貿易額と対韓貿易額(金額単位:十億円)
(【出所】『普通貿易統計』より著者作成。なお、この図表の金額単位は「億円」ではなく「十億円(billion yen)」である点にはご注意ください)
日本の産業界は韓国より台湾を選びつつある…のか?
こうした動きに、日韓関係の「未来」を感じ取ることができるのです。
すなわち、日本と韓国「だけ」の関係で見れば、日本の対韓輸出高に関しては日韓関係「悪化」以降も大して変化が生じていないかにも見えますが(というよりも、日本の対韓輸出高については、むしろ「増えている」かに見えるほどです)、全体とのかかわりでは決してそうではない、ということです。
すなわち、昨今のコロナ禍の影響もあってか、中国、韓国、台湾の欧米向けの半導体、スマートフォンなどの輸出が堅調であり、当然、日本から中韓台への「モノを作るためのモノ」(半導体製造装置、半導体等電子部品など)の輸出も急伸しているのですが、その「伸び方」に違いがある、というわけです。
結果として、輸出分野における日本にとっての韓国の重要性が台湾に追いつかれ、最近だと台湾と韓国の逆転が生じることも増えてきたのでしょう。
もちろん、これが日本国内における対韓感情の悪化によるものであるかどうかに関しては、議論が分かれるところではあります。統計から判明する数値自体は「客観的な事実」の一種ですが、その数値の「原因」を探る行為自体、まさに「主観的な分析」の範疇に属するからです。
ただ、ここでは敢えて「印象」だけで語っておくと、やはり、国レベルでの関係の「悪化」は、企業の現場レベルでも微妙な影を落とすのではないかと思います。
しょせん企業も「法人」ではなく、企業経営者、企業の現場の意思決定権者、という具合に、「ヒトの集合体」だからです。
金融から見た意外な日韓関係
金融面での「脱香港」「脱韓国」は徐々に進む
そのことがもう少しよくわかるのが、国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)が取りまとめている『国際与信統計』(Consolidated Banking Statistics, CBS)でしょう。
このCBSのうち、日本が集計しているデータに関しては、『日本の金融機関、香港と韓国への与信額が減少傾向に』でも触れたとおりですが、とくに大きな特徴があるとすれば、統計上、日本の金融機関が露骨に香港と韓国を避け始めているという点にあります。
たとえば、同じ「オフショア」のくくりで見ると、日本の金融機関による香港とシンガポールに対する与信額は長年だいたい同じような動きを見せてきましたが、昨年あたりから露骨に香港に対する与信額が低下していることが確認できるのです(図表5)。
図表5 邦銀の香港とシンガポールに対する与信額(最終リスクベース、金額単位:百万ドル)
(【出所】日銀『BIS国際与信統計』、 The Bank for International Settlements “Download BIS statistics in a single file” 等のデータをもとに著者作成)
これは小さな変化に見えますが、それと同時に看過してはならない変化でもあります。金融市場にとって重要なのは「市場規律の安定性」であり、中国共産党の締め付けの強化とこれに伴う国際社会の反発は、それだけで香港の金融センターとしての地位を揺るがす(かもしれない)からです。
露骨に停滞する対韓与信
同じく、韓国に対する与信も露骨に停滞しており、日本の対外与信全体に占めるシェアは大きく下がり始めています(図表6)。
図表6 韓国に対する与信額とシェア(最終リスクベース、左軸の金額単位:百万ドル)
(【出所】日銀『BIS国際与信統計』、 The Bank for International Settlements “Download BIS statistics in a single file” 等のデータをもとに著者作成)
隣国でありながら、融資額、融資シェアともに停滞しているというのは、大変に重要な兆候です。
ただし、韓国に対する与信額が頭打ちになったのは、意外なことに、2012年なかばの話です。
この時期といえば、李明博(り・めいはく)大統領(当時)による島根県竹島への不法上陸、天皇陛下(現在の上皇陛下)に対する侮辱、そして野田佳彦首相(当時)による親書の返送事件などが発生し、日韓関係が非常に緊迫し始めたころでもあります。
日韓通貨スワップの終了と日本の対韓与信
ただ、個人的には、邦銀の対韓与信の低下は、日韓通貨スワップの終了という要因が大きいのではないかと睨んでいます。
日本の韓国に対する通貨スワップは、チェンマイ・イニシアティブ(CMI)に基づく100億ドルの「米ドルスワップ」と、日銀が韓国に提供していた30億ドル相当の「円建てスワップ」の2本から構成されていました。
そして、野田元首相は首相に就任して直ちにこのスワップを700億ドル(ドル建て400億ドル+円建て300億ドル)に増額する措置を講じたのですが、2012年12月の政権交代で安倍晋三総理大臣が政権に返り咲き、あわせて麻生太郎総理も副総理兼財相として入閣。
野田元首相と異なり、麻生総理は韓国に甘い顔を見せず、CMIスワップも日銀スワップも相次いで失効し、2015年2月には日韓通貨スワップの残高はゼロになりました(『韓国の無礼な態度により麻生総理が席を立ったのは当然』等参照)。
つまり、安倍晋三、麻生太郎両総理による「日本政府と日本銀行は韓国の金融をバックアップしない」という強い意志表示が、この対韓与信シェアに現れてきているのではないでしょうか。
BIS最新統計でみる「与信シェア」
こうしたなか、本稿でもうひとつ示しておきたいのが、数日前にBISが公表した2021年3月までのCBSデータです。
これによると、韓国の企業・金融機関・公的セクター等は、2021年3月末時点において、外国の金融機関から3792億ドルを借りているのですが(※最終リスクベース)、その内訳については全体の3割が米国、4分の1が英国、15%ほどが日本です(図表7)。
図表7 韓国に対する国別国際与信残高(2021年3月時点、最終リスクベース)
相手国 | 金額 | 構成割合 |
---|---|---|
合計 | 3791.74億ドル | 100.00% |
うち米国 | 1151.49億ドル | 30.37% |
うち英国 | 975.47億ドル | 25.73% |
うち日本 | 570.34億ドル | 15.04% |
うちフランス | 351.68億ドル | 9.27% |
うちドイツ | 144.77億ドル | 3.82% |
うち台湾 | 137.59億ドル | 3.63% |
(【出所】日銀『BIS国際与信統計』、 The Bank for International Settlements “Download BIS statistics in a single file” 等のデータをもとに著者作成)
このあたりは、改めて確認すると、意外な気もします。
日本は韓国の「隣国」なのですから、韓国にとって「最大の債権者に違いない」、という印象を持っている人も多いのかもしれませんが、現実には金融機関が韓国の企業等にカネを貸している国としては、米国が最大で、英国がこれに続いているのです。
日本の対韓与信シェアは低下していた!
また、韓国に対する対外与信全体に占める日本の金融機関のシェアも、決して一定ではありません。
2016年12月ごろに韓国の外国からの借入が減ったことがあるのですが、その際、韓国に対する対外与信に占める日本の金融機関のシェアが25%近くに達したことがあるものの、その後は一本調子で下がっていることが確認できます(図表8)。
図表8 韓国に対する対外与信の推移と日本のシェア
(【出所】日銀『BIS国際与信統計』、 The Bank for International Settlements “Download BIS statistics in a single file” 等のデータをもとに著者作成)
こうやって見ると、隣国同士かつGDP規模の大きな国同士であるという点を踏まえるならば、日本の韓国に対する与信は意外なほどに小さく、かつ、年を追うごとにそのシェアはじわじわと減っている、というわけです。
そして、文在寅政権の対日不法行為がこうした動きを加速させているであろうことは推測できるのですが、時期的に見て、日本の金融機関の韓国離れが始まったのは、やはり李明博政権時代末期と考えるべきではないでしょう。
いずれにせよ、現実に「統計で」両国の姿を見るという作業は、大変に興味深い仕事ではないかと思う次第です。
日本人ビジネスマンの8割が…
さて、「外交にしろ経済活動にしろ、それを動かしているのは現場レベルである」という点で、思い出しておきたいのが、雑誌『週刊ダイヤモンド』が2015年秋口に実施した、「ビジネスマン6000人に尋ねた日韓の本当の大問題」という調査です。
『5年前の調査で日本人ビジネスマンの8割「韓国不要」』でも詳しく述べましたが、結論的に言えば、日本人側では「ビジネス上、韓国は日本にとって必要である」と答えた割合が22.6%に留まる反面、「必要でない」と答えた割合が77.3%に達していたのです。
いまから6年も前、少なくとも現在ほどに日韓関係がギクシャクしていなかった時期であるにも関わらず、当時からこれだけのビジネスマンが「韓国は不要」と答えていたわけです。
類似の調査が現在実施されたらどういう結果になるのかについては、大変に興味深いところです。
ただ、それよりも、「年月の経過」が日本経済にどういう影響を与えるかについては注目したいと思います。
というのも、6年経過すれば、当時、アンケートに答えた若手、中堅も、いまやそれぞれ中堅、管理職クラスに昇格しているからです(かくいう「新宿会計士」自身が6年前に退職した会社でも、当時の若手が中堅に、当時の中堅が管理職として、それぞれ組織の中核を担い、バリバリ働いているようです)。
今後の日韓関係については、少なくとも産業、金融の面に関していえば、なんとなく答えが見えつつあるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
View Comments (26)
>はて、日本が韓国に行った「残虐行為」とは、いったい何のことでしょうか。
>もしかして、「日本が朝鮮半島を35年間統治し、朝鮮王国時代の両班制度を廃止し、残虐な刑罰を禁止し、水道・電気・道路・鉄道・港湾などのインフラを整え、学校を整備したこと」を「日本の韓国に対する20世紀における残虐行為」だと呼んでいるのならば、とくに何も言うことはありませんが…。
独立国ではなく従属国、隷属国のままで居たいのに、日本が色々教えて大人扱いした事で子供のままでは居られなくなった事が、「日本の韓国に対する20世紀における残虐行為」なのだと考えます。
韓国はずっと子供で居たいのに、日本の所為で韓国は大人として生きていかざるを得なくなった訳で。
朝鮮日報の記事より。
>韓米同盟についてランバート氏は「70年以上続く同盟が今も変わらず意味があるかについて米国は米国国民に、韓国は韓国国民に説明すべき状況になった」と発言した。「韓米同盟は強固」とは発言せず、同盟を維持するため両国が努力する必要があることを明言した点に注目が集まった。
此処も興味深いところですよね。
米国側は韓国政府が韓国民に米韓同盟の意味や必要性を説明するのを待っているという事でしょうし。
韓国人の棲息数も寿命も伸ばしてしまったことでしょう。
本来の姿に戻る過程は、凄惨なものになるでしょうから。
イーシャ さん
悲惨な老後と、とても低くなった出生率によって減少は既に始まってますしね。。。
今後は、世界各地に散らばった同胞を呼び戻し、除鮮を進めるとwin-winなのでしょうけど。
感じ方は人それぞれ。
普通、クサヤのニオイは嫌悪感を抱くものですが、クサヤのニオイが好きだと言う人もいます。
日本人にとって、身分制度でひとが人として扱われない状況や、清の属国である事はとても可哀想だと思います。
しかし、朝鮮式朱子学では序列が無くなる事は餓死するよりも辛い事。
両班や奴隷を無くし、法による支配、独立して自らが全てを決定する事、半島では死よりも辛かったのです。
何故なら、韓国よりも北朝鮮の方の統治が安定しているのを見てもそれはわかります。
ただ、韓国人もバカでは無いのでその自らの感覚を世界に訴えても同情を貰えない事ぐらいは理解出来ます。だから、自分達の辛かった状況を世界に理解出来る残虐行為に置き換えて訴えてるのです。
半島よりかは日本の感覚に近い米国の外交官が、騙されるのはいかがなものか?とは思います。
それで、外務省はランバート氏に「残虐行為」とは何のことか問い合わせたのですか?
あれこれ想像するより、本人に糺すのが一番と思いますが。元々はすべてアメリカ発であり韓国がそれを増幅し自己解釈を加えて利用しているだけなので、元栓から締めてゆかねば駄々洩れであり、たとえ末端の韓国が今消滅したとしても第二次世界大戦時の日本の評価は変わりません。
詳細なレポート、ありがとうございます。
貿易相手国としては、台湾が韓国を猛追、現在は中国、米国に次いで第3位、韓国は4位になってますが、再逆転の可能性もアリですネ(無いように思うが)。
しかし、なんて言うか、輸出入ビジネスも国際感覚抜きにしては成立しないし、対日関係が非常に良好であるか、日本が理不尽な扱いを受けているかで、「モノ」をどちらの国に出すかの選択は、変わって来ると思います。
日韓関係がギクシャクから破綻手前まで追い込んだ文大統領の功績により、日本が完全に韓国をBグループ扱いに落とし、他の遠くて関係の薄い国並みに出来ました。文大統領みたいな極端な反日路線だから、日本も親韓派を押さえ込んで動けた。
しかし、金融面では韓国に対する与信はだいぶん前から小さく、「日本の韓国離れが始まったのは、李明博政権時代末期」(会計士さん)とは、ここ10年ぐらいのタームで離れ始めたのですね。
「20世紀の残酷(残虐?)行為」が何を指すのか分かりませんが、韓国のマスコミがこぞって取り上げている以上、それに近い発言があったのはほぼ間違いないんでしょう。ただランバート氏が言いたかったのは、以前シャーマン氏(現国務副長官)が「政治指導者が過去の敵を非難することで安価な拍手を得ることは簡単なことだ」と歴史認識の差を悪用することを批判したのと同じことではないか。シャーマン氏の言葉にも「過去の敵」と韓国が一貫して日本を敵視してきたかのようにみられる発言も含まれているが、実際には日本に治めてもらって多くが喜んでいた事実もある。米国の高級官僚でも面倒くさい韓国には多少のリップサービスをするけど、本当のところは「昔のことはぐだぐだ言うな、今米韓のために何をするかだ」と突きつけたのに、韓国風に訳すと「ツートラック」になつてしまう、ということではないのか。もう少ししたら本当のところがわかってくるような気がします。
昔「貿易金融」という言葉を習った覚えがある。
韓国への与信減少は貿易量の減少の反映なのでしょうか?
意訳すると
「米国は共通の基盤を探るために日韓両国政府と協力してきた。我々は率直になろう。あなたたちの思い込む歴史は変わらない。あなたたちの脳内にだけにある20世紀に起きた残酷行為は反日行為を続けても、日本が謝ったとしてもそのままだ」。
対韓与信額の定額化と与信シェアの低下は、混乱をきたさない範囲での消極的関与を意味してるのかもですね。
個人であれば「ロールオーバー」「ベリ(減り)ーロール」「背任とび?」と、”高飛び” の兆候に注視すべき時なのかもです・・。
m(_ _)m
加速化する反日感情により韓国のカントリーリスクが急上昇、かつ核を持った日本滅亡を企む南北統一国家の誕生の可能性を考慮すれば、そのカントリーリスクの上昇は今後も天井知らずといったところでしょうか。。
企業が対韓ビジネスを縮小、撤退するのは当たり前の話でしょう。
半島内に金融資産、在庫、その他の資産を一切持たず、支払いは前受金による入金のみ、各種技術ノウハウや顧客社員情報等につき物理的にも論理的にも共有しない、等の条件をクリアした場合のみ、短期契約によるビジネスを実施するというのが、まともな経営者の判断かと思います。
ランバート国務次官補の発言は、自己矛盾を含んでいますね。
そもそも日本が「残虐行為」をしたとされているのは中国大陸においてであり、朝鮮半島ではありません。
それはサンフランシスコ講和条約でも認められたことであり、日本も事実誤認等の反論を封じて条約を受け入れました。
ランバート国務次官補は、対中国を睨んで日韓は協力すべき、なかんずく日本は韓国に「残虐行為」をしたのだから、協力行為とは別にその「残虐行為」に対して責任を持て!、というツートラック外交を日本に強要しているようですが、それは韓国の主張をそのまま受け入れたものであり、歴史誤認も甚だしいです。
日本は韓国に対して残虐行為をしたので中国と対峙すべき、でなく、日本は韓国(当時は日本)と一緒になって中国に対して残虐行為をしたので、今も協力して戦え!、というなら筋の通った話ですが(皮肉です)
昔の対ソ連という見地なら、ランバート国務次官補の言うツートラックはまだ説得力はなきにもあらずですが。。