X
    Categories: 外交

アジア系女性記者に報道官「米国は慰安婦合意を歓迎」

韓国では大統領に対する名誉棄損で訴えられます

さきほどの『「不等号の向き」を盛大に勘違いする「加害者・韓国」』や『日韓首脳会談見送りの3つの要因』では、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の訪日断念に関連し、最近の日韓関係を巡る話題をいくつか取り上げたところですが、本稿ではその補遺として、少し気になる記事を2つほど取り上げておきます。ひとつは米国のネッド・プライス国務省報道官の慰安婦合意などに対する言及、もうひとつは駐韓日本大使館の相馬弘尚総括公使が市民団体から告発された、とする話題です。

プライス報道官にアジア系の女性記者が質問

文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の訪日断念という話題を巡り、わざわざ米国務省のネッド・プライス報道官に確認した記者がいらっしゃったようです。

Department Press Briefing – July 20, 2021

―――米国時間2021/07/20 15:01付 米国務省HPより

現地時間の20日午後3時、つまり日本時間の本日早朝4時ごろ実施された記者会見では、「ウェンディ・シャーマン国務副長官の北東アジア訪問」(※日本、韓国、モンゴルの3ヵ国を7月18日から25日の日程で訪問していること)に関連した質問が出ました。

これに関連し、質問者(※アジア系の女性)は「韓国大統領が東京への訪問計画と日本の総理大臣との会談計画を取りやめましたが、これについてコメントが欲しい」、と要求したようです。原文をそのまま紹介しておきましょう。

QUESTION: Thank you. Can we please move to Northeast Asia? So Deputy Secretary of State Wendy Sherman is visiting Northeast Asia and she’s meeting with senior officials in Japan and Korea. As you have – may have already seen in the media reports, there are new emerging rifts between these two countries, Japan and Korea, two close allies of the United States, over some wartime history. For example, the Korean President Moon Jae-in is canceling his planned travel to Tokyo and to meet with the Japanese prime minister. First, I would like to know, do you have any comment on the latest development?

プライス報道官「当事者に聞いたら?」

日韓両国はたしかに米国にとってどちらも「同盟国」ですが、それと同時に米国から見て「外国同士」でもあります。そんな外国同士の関係について尋ねられたとしても、プライス報道官としては困ってしまうのではないかという気がしますが、案の定、プライス氏はこんなことを回答しました。

“So I don’t have any comment on travel plans or potential meetings between those countries. I would need to refer you to them for comment.“

意訳すれば、「知らんがな、当事国に聞け」、といったところでしょうか。

そのうえで、プライス報道官は、こう続けます。

“What I would say broadly – and as you know, Deputy Secretary Sherman will have an opportunity to engage in a trilateral conversation with our Japanese and Republic of Korea counterparts later today Washington time, early tomorrow morning Tokyo time. But the broader point that we have made all along is that a robust and effective trilateral relationship among the United States, the Republic of Korea, and Japan – it is critical for our shared security and common interests in defending freedom and democracy, upholding human rights, championing women’s empowerment, combating climate change, promoting regional and global peace and security, and bolstering law – bolstering the rule of law in the Indo-Pacific region and across the globe.”(※後略)

意訳すれば、こんなところでしょう。

東京で日米韓3ヵ国の当局者会談が開かれるが、安全保障上、自由、民主主義、人権、女性の社会進出、気候変動対策、地域と世界の平和と安定、そしてインド太平洋と世界における法の支配の強化に向けた3ヵ国協力は重要だ」。

プライス氏「慰安婦合意は重要だ」

ただ、この同じアジア系の女性記者の質問は、これに留まりません。

次にはこんな質問も出ました。

“Does the United States has a position over the so-called comfort women issue?”

いわゆる慰安婦問題を巡り、米国としての何らかの立場はあるのか、という質問です。

しかし、これについてもプライス氏はこう答えます。

“Well, we have long encouraged the ROK and Japan to work together on history-related issues in a way that promotes healing and reconciliation. Secretary Blinken, who was then Deputy Secretary Blinken, has spent a lot of time working and tending to the trilateral relationship, knowing just how important it is.”

このあたりも、米国政府としての従来の立場から何ら変わるものではありません。

意訳すれば、「米国としては日韓両国に対し、歴史に関わる問題を巡る和解や癒しを勧奨して来たし、当時は外務副長官だったブリンケン現国務長官は3ヵ国連携の重要性を認識し、それに尽力してきた」、といったものです。

ところが、これにプライス氏は、こう続けます。

“As we stated at the time in 2015, we welcome efforts such as the 2015 agreement between the two countries as an example of their commitment to forging a more productive and constructive bilateral relationship.”

つまり、「2015年の日韓慰安婦合意」を引き合いに出し、「日韓両国がより生産的でより建設的な二国関係の構築で合意した」として、高く評価しているのです。

中央日報がこれを記事にした理由がよくわからない

こちらもあえて口語で意訳しておきましょう。

重要なことだから何回も言わせるな、慰安婦問題は2015年の合意で解決済みだ」。

この点、当ウェブサイトとしては、この2015年の慰安婦合意については「自称元慰安婦問題という与太話を日本政府自身が否定するチャンスを失わせた」という意味では「酷いものだった」とは思う反面、当時の国際情勢に照らし、短期的には日米韓連携を円滑に機能させるのに役立ったと考えています。

そのうえ、米国自身が「この合意で慰安婦問題は解決した」と見ているというのは、大変に重要なポイントです。慰安婦合意自体、米国が強く仲介し、実質的に立ち会ったというものである以上、少なくともこの問題に関し米国は「最終的かつ不可逆的に解決済み」とする慰安婦合意の立場を支持せざるを得ません。

プライス氏に質問したこのアジア系の女性記者の狙いはさだかではありませんが、少なくとも米国政府の立場は明確であり、こうした米国政府の支持の裏付けがあるからこそ、日本としても自称元慰安婦問題でこれ以上韓国に譲歩する必要はないし、する必要もない、というわけです。

さて、プライス氏に質問をしたこの人物は、いったい何者なのかはよくわかりません。

ただ、これに関連し、韓国メディア『中央日報』(日本語版)は本日、こんな記事を配信しています。

文大統領訪日取り消しに米「ノーコメント…堅固な韓米日関係が重要」

―――2021.07.21 12:06付 中央日報日本語版より

記事の内容のうち、プライス報道官の発言部分については、特段の虚偽はありません。

ただ、こうした記事を配信したところで、韓国メディアが「日韓慰安婦合意によって、慰安婦問題については最終的かつ不可逆的に解決した」という事実から目を背けているという状況に何らかの変化が生じるとも思えませんが…。

相馬公使の暴言問題・その後

その一方で、駐韓日本大使館の相馬弘尚総括公使の「暴言問題」(『駐韓公使「暴言」問題で期待する日本政府の「塩対応」』等参照)に関連し、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)には昨日、こんな報道もありました。

韓国市民団体 不適切発言で日本公使を警察に告発

―――2021.07.20 15:05付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースによると、韓国の市民団体が相馬公使を「侮辱・名誉棄損の疑い」で警察当局に告発したのだそうです。

誰に対する侮辱・名誉棄損なのかについて、記事には明示されていませんが、文脈に照らし、おそらくは「文在寅氏に対する」侮辱と名誉棄損、なのでしょう。

もちろん、「馬鹿げた話題だ」と笑うのは簡単です。

一般に、民主主義国家においては、権力者である大統領に対する侮辱や名誉棄損は罪として成立しないからです。しかも、相馬氏には外交官としての特権もあるため、「法的には」、相馬氏の身柄を拘束したり、刑事告訴したりすることは難しい気がします。

加藤氏が告訴されたという実例もある

ただ、韓国には、当時の加藤達也・産経新聞ソウル支局長を「朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領に対する名誉棄損」で告訴したという前科があります(『今回の鈴置論考は「先祖返りする韓国からの流れ弾」』等参照)。

しかも、加藤氏自身は朝鮮日報を引用して日本国内向けに執筆した記事が問題視され、在宅起訴されて出国停止となったという点の異常性もさることながら、当の朝鮮日報に関しては、まったくの「おとがめなし」だった、というのです。

韓国が「法治国家」ではないという証拠です。

また、一般に外交官に対しては特権があるというのはそのとおりですが、それと同時に、韓国が外国公館に対して守られなければならない一般的なルールを守っていないという事実もあります。

ソウルにある日本大使館前の公道上には、日本を侮辱する銅像が建立され、また、毎週のように大騒ぎの集会が行われているという話もあります。韓国において外交に関するウィーン条約などが守られるという保証はありません。

このように考えたら、日本政府は早急に相馬氏を本国に呼び戻した方が良いのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (55)

  • 不謹慎な話しですが、いっそのこと相馬氏を拘束でもしてくれたら、日本に根強く残る韓国大好き連中(政治家含む)に彼の国の異常性を徹底的に知らしめられる、且つ彼の国の擁護者になれなくなるなどの側面もありますね。

    • 例の加藤氏ですら擁護者は居ましたし
      「韓国に対して猥褻な言葉を使う差別者なんだから拘束は当然」
      みたいな感じで、これくらいなら擁護すると思いますよ。
      宗教を舐めてはいけません。

  • そうですね、相馬公使を早急に呼び寄せて褒賞を授けましょう。

    紅綬褒章「自己ノ危難ヲ顧ミス人命ノ救助ニ尽力シタル者」などイケるんじゃないでしょうか。

    • >紅綬褒章「自己ノ危難ヲ顧ミス人命ノ救助ニ尽力シタル者」

      上手いなあ(^^♪

  • 米国の提言が訪日プランのプロローグとなった(または文在寅がそう思い込んだ)とされる"説"もある中で、
    米国は一貫して一言も言及しなかった。VOAのようなメディアでも沈黙を貫いた……よね?
    ただ3カ国連携の枠組みが残ればいいという立場。

    この程度の「騒動」や「亀裂」はラインを越えるものではない。米国による何らかのケアやプロデュースが必要なストーリーではないということ。

    文在寅政権に対する評価、日米の意思疎通がかなり深く行われているのが透けて見えるね。
    逆を言うと、日本が国内事情により勝手に韓国に譲歩しても関与しないよ、という話でもある。

  • 相馬公使には申しわけないし不謹慎ですが、逮捕されたら面白いと思ってしまいます。

    • Naga様

      産経新聞の記者みたいに、南朝鮮から出られないのは禁固刑です。
      もし、牢屋に入る事になったら、竹島戦争で捕虜扱いされた漁民のように
      餓死となります。
      南朝鮮に赴任となる事から、殉職の覚悟があれば良いのですが。
      早めの人事異動で、日本や他の国への転勤をご祈念致します。

  • 新宿会計士 様

    >重要なことだから何回も言わせるな、慰安婦問題は2015年の合意で解決済みだ

    重要なことだから何回でも言う
    or
    判り切ったことを何回も言わせるな

    と思うんですが?

  • 韓国は市民団体が好き勝手やってるようですが学びませんか?

    旭日旗で騒ぐソとか言う教授(韓国国内でも修士論文・博士論文が他の文献からの引用コピペだらけで詐欺師扱いされていた時期もある芸能事務所所属の旭日芸人)やVANKなる似非歴史を広める為の圧力団体を日本が被害者として風評被害も含めて損害賠償裁判をアメリカでもイギリスでもいいので起こすべきなのでは?

    なにもICJじゃなくていいんです。
    日本人全てが現実に被っている被害に対するフェイクニュースやヘイトに対しての損害賠償裁判ですから。

    韓国だけが「教科書に載ってた」「タイムズスクエアで表示してた」「当時の半島人から聞いた」で捏造すり似非歴史は韓国にしか無いもので、世界の正史(それが戦勝国の書いた都合の良い歴史であっても)とは全く違います。

    そろそろ忍耐も限界に近づいてる気がします。

    なんで、2000年代に入ってから主張し始めたり社会科学や自然科学的に根拠が無い事を野放しに暴言受けなきゃいけないんでしょう?

    第二次世界大戦時に半島は日本で日本が戦犯なら戦犯地域でしかなく、半島併合も破綻した半島統治王朝の要請で国際連盟に押し付けられて日本が平和的に無血併合しただけで軍事侵攻でもなく、欧米の植民地とは明確に違う救済であり植民地とすら言えず、チンピラが暴れたにしても「光復軍」なる軍事組織との抗戦などほぼ無かったことは連合軍が明言しています。

    半島地域の荒廃が本当に起こったのは半年併合が終わった第二次世界大戦後の朝鮮戦争での同族並びに露中対西側諸国の戦闘でであり、その頃日本は武装解除されてたんですが?

    今、歴史を正しておかないと似非歴史が定着してしまいます。

    詐欺師の似非歴史詐欺はこの辺で止めさせるべきかと思います。

    • 私は以前から韓国人のやることにいちいち対応するのは無駄だと思っています。
      難癖付けてくる相手(チンピラ)にまともな対応は意味が無いと思っていますので。
      私は今回の相馬公使の対応こそが韓国に対する適切な対応だと思っています。
      恥をかかせるというカウンターパンチが攪乱戦略として最も効果的だと思いますので。
      日本の政治家や公務員は真面目なのが長所であり欠点だと思います。
      意図的に真面目と不真面目を使い分ける器用さがあると良いのですが。
      あと300年くらいは無理かもしれません。

      難癖に対してはまともな対応よりも相手を煽る対応が何よりも有効です。
      このような対応を繰り返すと韓国は激昂して自制心が無くなり本音を露わにすると思います。
      日本が韓国を煽ることによりマウント出来る位置を確保する事が出来ると思います。
      日本が半島を言葉によりコントロールる事によって半島対策の主導権を握ることが出来ます。
      いつ裏切るかも知れない韓国はあくまでも友邦では無く一つの駒に過ぎませんが。

      朝鮮半島は中国の台頭により日本にとって優先事項では無くなっています。
      即ち中国の台頭により戦後は終わっていたのです。
      日本は「Post戦後」の世界にどのような役割を果たして行くのかという事が問われているのだと思います。
      半島に関わる時代は最早過去のものになったのです。

  • naga 様
    それは可哀想だ、日本人なら本人の身になってやらねば。なんてたって、特殊な国だからねぇ。

  • アジア系女性記者というのはおそらく韓国政府の意を受けて質問しているのでしょう。
    アメリカの出方を見ている。
    他でも書いたけど、韓国は失うものは何もない。せいぜい面子くらい。アメリカが仲介に乗り出して日本に対して駄々をこねる韓国に譲歩しろと言ってくれるのを期待している。

    • 国務省のウェブサイトを見ていると、質問者はVoice of Americaの中国系記者Nike Ching氏のようですね。

    • >質問者はVoice of Americaの中国系記者

      LinkedIn で記者の職業的プロフィールが読めます。出身大学も記入されています。
      記事多数を執筆されているはずですから署名記事をインターネットクロールすればどのような政治的立場で活動して来たのかすぐ判明するでしょう。KMT 系藍派なのかも知れません。

  • 相馬氏は外交官なので普通の国では拘束されませんが、普通の国ではない韓国では産経新聞ソウル支局長のように何が起こるか分かりませんね。
    しかし、外交官が他国で拘束されたとすると日本は報復措置を公然と取ることができます。別に
    相馬氏に人身御供になってほしいなどとは考えていませんが、もし氏の失言?が練られた作戦の一部であるならば、その後の処理まで計画されているとは、考えすぎでしょうか。トリガーを引いたのだから韓国の出方次第では徹底的に向き合うという期待もあります。つまり、日本に召喚するとされながら何故かお役所仕事ぶりを発揮して、ぐずぐずと韓国に居続けてますます反日を煽るとか。

  • 相馬公使については厳重注意にとどめ、通常の人事異動の季節までは現職に留まっていただくのがよろしいでしょう。
    火病を発した韓国政府がペルソナノングラータを発動したらしめたもの。
    相互主義に則り、我が国も駐日韓国大使を国外退去にすればよい。

1 2 3