で、結局、文在寅氏は日本にいらっしゃるのか、いらっしゃらないのか。韓国メディアの週末の報道などを眺めていると、「訪日が確定した」という記事や、「訪日は未確定」という記事が同じメディアに掲載されるなど、かなりの混乱をきたしているようですが、ただ、日本の側は国際社会のルールを尊重し、国際社会を味方につけ、原理原則をしっかりと守りつつ泰然自若としていればよいのではないかと思う次第です。
目次
瀬戸際外交は無視が基本
何となく以前から感じていたのは、中国や韓国、北朝鮮はときどき、日本などに対し、とんでもない難癖をつけてくることがあるのですが、そうした際の正しい対処法は、「国際社会を味方につけ、あとは無視する」ことに尽きるのではないか、と思います。
しかし、日本の企業や外務省などには、「相手の怒りを鎮めようと譲歩する」、という、傾向がみられました。
普段から当ウェブサイトで申し上げているのが、「ゼロ対100」理論と呼ばれるもので、2月に発刊した拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』の57ページ目にも転載したのですが、書評などを拝読する限り、かなり多くの方々に「ああ、なるほど」と納得していただけたようです。
ゼロ対100理論とは?
自分たちの側に100%の過失がある場合でも、インチキ外交の数々を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく、韓国や北朝鮮が好んで使う屁理屈のこと。
この「理論」に基づけば、日本が100%勝ったとしても、日本の利得はゼロであり、少しでも日本から譲歩を引き出せば、韓国にはかならずいくばくかの利得が生じます(図表1)。
図表1 ゼロ対100理論における得失表
ケース | 相手の得失 | 日本の得失 |
---|---|---|
100%、相手が勝った場合 | 100の利得 | 100の損失 |
日本と相手が引き分けた場合 | 50の利得 | 50の損失 |
100%、日本が勝った場合 | ゼロ | ゼロ |
(【出所】著者作成)
逆にいえば、韓国にとってはこの「ゼロ対100理論」、「どうせ言うだけならタダなんだから、とにかく難癖でも何でも良いから日本に対して文句をつけるべし」、という戦略として認識されているのでしょう。
なにせ、もともとの韓国側の主張が明らかな無理筋であったとしても、ほんの1ミリでも日本が韓国に譲歩した瞬間、韓国の「勝利」が確定するわけです。今回の「竹島一件」にしたって、韓国側に理はゼロですが、それでも「ゼロでも良いから文句をつける」、というのが韓国側の戦略だった、というわけです。
失敗例と成功例
慰安婦問題の失敗例
たとえば、慰安婦問題などは、日本が韓国に対して譲歩した典型例でしょう。
1990年代、慰安婦の強制連行に関する証拠がまったく見つからなかったにもかかわらず、当時の官房長官だった河野洋平は1993年8月、「当時の軍の関与の下に」、などと発言しました(1993年8月4日付・外務省『慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話』参照)。
これなど、自称元慰安婦やその支援団体らが「戦時中、日本軍によって強制連行された」などとする与太話を世界に広めたのですが、「ゼロ対100」理論でいうところの「ちょっとでも譲歩してくれれば儲けもの」、という考え方の典型例でしょう。
結果、日本政府は「ちょっと」どころではない譲歩をしてしまい、そのことがいまだに日本の名誉と尊厳を傷つけ続けているのです。
仕事柄、米メディア『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)や英メディア『フィナンシャル・タイムス』(FT)などにはよく目を通すのですが、慰安婦問題を巡っては、ほぼ間違いなく、「第二次大戦中の日本軍によるせい奴隷の問題」と明記されています。
朝日新聞社の捏造報道や河野洋平の独断による談話という「助け」があったとはいえ、自称元慰安婦問題は、韓国が国を挙げてありもしない問題を捏造(つく)りあげるのに成功した、というわけです。
しかも、いまや全世界がこの問題で韓国の味方となり、日本を糾弾してくれるわけですから、慰安婦問題は韓国が日本に対し、道徳的・精神的優位に立てる数少ない材料です。慰安婦問題で日本を糾弾するのは、韓国にとっては楽しくて楽しくて仕方がないのでしょう。
あるいは、慰安婦問題は絶対に「解決」してはならない問題であり、朴槿恵(ぼく・きんけい)韓国大統領(当時)が安倍晋三総理大臣とのあいだで取り交わした2015年12月の日韓慰安婦合意も、韓国にとっては「なかったこと」にしなければならないのだと思います。
(※もっとも、『韓国メディア「約束破りは韓国の文化。日本は理解を」』などでも述べましたが、韓国メディアにはときどき、「(約束を破るのは)わが国の文化のようなものだから、日本はそれを理解して欲しい」、などとする論考が掲載されるようですが…。)
日韓GSOMIAの成功例
その一方で、この「ゼロ対100」理論の韓国側の「失敗例」は、「日韓GSOMIA」(※正式名称は『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』)の破棄騒動でしょう。
韓国政府は2019年8月、日本政府の「輸出『規制』」に対抗すると称し、日韓GSOMIAの終了を日本側に通告しました。その目的はおそらく、この「ゼロ対100」理論に基づき、日本側から何らかの譲歩を引き出すことにあったのでしょう。
ところが、日本側はこのGSOMIA破棄に対し、「残念だ」、「韓国側は賢明に行動を」、などと繰り返すだけで、韓国が求めた「輸出『規制』の撤回」には応じませんでした(※というよりも、べつに日本は輸出「規制」を韓国に適用した事実はありませんので、撤回のしようがないのですが…)。
それどころか、GSOMIA破棄騒動の際には米国が介入に乗り出し、「韓国に対して」、GSOMIAを破棄しないよう、執拗に要求しました。
結果的に、韓国側はGSOMIA終了の数時間前になり、妙な付帯条件付きではありますが、事実上のGSOMIA破棄の全面撤回を表明しました(『韓国の「GSOMIA瀬戸際外交」は日本の勝利だが…』等参照)。
結局、日本側がただの一歩たりとも譲歩せず、原則論から一歩も動かなかったことに加え、日本の立場を米国と共有したことで、日本にとっては不当な譲歩を強いられなくて済んだわけです。
「ゼロ対100」理論に基づけば、どんなに日本が勝ったとしても利得はゼロなわけですから、「原理原則を一歩も譲らない」、「国際社会(あるいは友好国)を味方につける」のが最も正しい戦略だ、という事例がひとつ積み上がった格好だ、と言っても良いでしょう。
竹島一件は「成功事例」としてカウントして良い
さて、この「成功(?)事例」がもうひとつ、積み上がったようです。
一時的に(ごく一部で)大変に盛り上がり、そして、いまやすっかり見かけなくなってしまった論点のひとつが、韓国による「東京五輪ボイコット」論です。
ことの発端は、東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルウェブサイトに掲載されている日本地図の、島根県竹島の場所に、白っぽい斑点のようなものが描かれている(図表2の赤丸部分)として、韓国の丁世均(てい・せきん)元首相らが「五輪ボイコットも検討すべし」と主張したものです。
図表2 例の日本地図(クリックで拡大、赤丸は北方領土、竹島、尖閣諸島らしき点)
(【出所】東京オリパラ組織委員会公式ウェブサイトの画像ファイルを著者が加工)
この「五輪ボイコット」を呼びかけた人物としては、丁世均氏のほか、李洛淵(り・らくえん)元首相や李在明(り・ざいめい)京畿道知事らがいます(『韓国前首相が日本に「偏屈、恥知らず」など暴言を吐く』等参照)。
ちなみにここに挙げた3名の方には、いずれも次期大統領選への出馬を表明しているという共通点があることから、「コリア・ウォッチング業界」では「大統領選に向けたパフォーマンス」、「韓国政府が五輪ボイコット論に乗っかる可能性は低い」との見方もありました。
ただ、ここは韓国ウォッチングの面白いところで、「五輪ボイコット論」については早々に立ち消えとなった一方、「独島五輪地図修正要求」は韓国側で(勝手に)エスカレートし、韓国の「大韓体育会」が国際五輪委(IOC)に「仲裁を求める書簡」を送付。
ところが、『中央日報「IOCが五輪地図に政治的意図なしと回答」』でも述べたとおり、IOC側は「(東京五輪地図の竹島の表記は)単なる地政学的な表示であり、政治的宣伝には該当しない」とする趣旨の返答をしました。
実質的に日本の完全な勝利と考えて良いでしょう。
黄熙氏の「へこたれない精神」
ここで興味深いのが、いまから1ヵ月ほどまえの6月11日付で韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された『東京五輪のホームページに独島表記…IOC「政治宣伝ではない」』という記事です。
この中央日報の記事の末尾には、こんな記述もありました。
「韓国政府は受け入れられないという立場だ。政府はこの日、文化体育観光部の黄熙(ファン・ヒ)長官の名義で仲裁を促す書簡をIOC会長に緊急発送した」。
どうもこんな行動を見せつけられると、日本人のなかには「往生際が悪いな」、などと思う人も多いでしょう。
「IOCとしてはそれを政治問題とはみなさない」という返答を行ったのに、さらに韓国政府・文化体育観光部の黄熙(こう・き)長官名義でIOCのトーマス・バッハ会長に対し、重ねて「仲裁を促す書簡」を発送した、というのですから、ある意味では「へこたれない精神力」が凄いとも思います。
もっとも、これについては先月下旬に、こんな「続報」がありました。
東京五輪HP地図の独島表示問題 IOCの返信に「深い遺憾」=韓国
―――2021.06.25 18:52付 聯合ニュース日本語版より
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)が6月25日付で配信した記事によると、同部がIOCに10日付で送付した書簡に対し、22日にIOCから、次の趣旨の記述が含まれた返信があったのだそうです。
「東京五輪の大会組織委に問い合わせた結果、地図に表示された竹島は単に地形的な表現に過ぎず、どのような政治的意図もないことが確認された」(※ただし、聯合ニュース記事では「独島」という誤った表現が使われていましたので、引用に際しては「竹島」に訂正しています)。
以前とまったく同じ回答ですね。
これに対し同部はその内容に「深い遺憾の意を示す」などとしたうえで、次のように述べたのだそうです。
「世界中の人たちが新型コロナウイルスで苦痛を受けている時期に開催する東京五輪は、平和と和合の五輪にしなくてはならないはずなのに、(地図からの)独島削除を拒む日本の態度に非常に失望している」。
それを言い出すと、『竹島戦争ゴッコに興じる韓国にとり都合が悪いFOIP』でも述べたとおり、「竹島問題を機会あるごとに不必要に強調する韓国の姿勢こそが、むしろ五輪の『平和の祭典』としての意義を損ねているのではないか」、と反論したい気持ちでいっぱいになります。
文在寅氏の訪日
竹島一件は明らかに成功例
ただ、この問題に関しては、結局のところは「遺憾の意」で終わってしまったようであり、その「続き」が見当たりません。
その理由については、もともとの「竹島地図問題」が韓国側によるかなり無理筋な要求であったこと、「五輪ボイコット」論が大統領選候補者の政治的な主張であり、韓国国民・政府の賛同が得られなかったことに加え、後述する「文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の訪日」と関わっているからでしょう。
もっとも、この「竹島一件」に関しては、今後の日本外交の基本を考えるうえでは、大変に重要な事件のひとつだったのではないでしょうか。
GSOMIA騒動に続き、日本が原理原則、すなわち「竹島は日本固有の領土であるが、問題の地図は政治的主張ではない」という立場をただの一歩も譲らず、その認識をIOCとも共有したことが、今回の「勝利」につながった、というわけです。
すなわち、「原理原則を一歩も譲らない」、「国際社会を味方につける」、が、韓国の難癖封じ込めに役立ったのでしょう。
そして、韓国が日本に対してつけてきている難癖は、ほかにも、自称元徴用工問題に加え、海洋放出が決まった福島第一原発のALPS処理水を巡り、「福島汚染水問題」と頑なに呼び続けている問題などがあります。
これらについても、「原理原則から一歩たりとも動かないこと」、「国際社会と認識を共有すること」が基本でしょう。
慰安婦問題の失敗は、本来ならば韓国の主張がメチャクチャなものであり、冤罪であるにも関わらず、日本の側から積極的に罪を認め、反省と謝罪の意を表してきた点にあります。日本自身が罪を認めているのに、国際社会がわざわざ「日本の罪は冤罪だ」と証明してくれるはずがありません。
だからこそ、日本の側に理があるのならば、その理屈を国際社会に対し淡々と説明する一方、相手に対しては「日本は一歩も譲歩しないからな」と言い渡すだけで良い、というわけです。
これで、とりあえずは「負けない」外交ポジションを作ることができるのでしょう。
ただし、「ゼロ対100」理論だと、日本が最大限勝っても「利得」はゼロです。おそらく今後、中朝韓からは波状攻撃のようにひたすら冤罪をなすり付けられ続けるでしょうから、やはりどこかで中朝韓には不法行為のコストを彼ら自身に負担させなければなりません。
これについてはまさに拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』の主眼であり、この論点については今後も随時当ウェブサイトで触れていくつもりですが、とりあえず本稿では割愛します。
黄熙氏の発言の問題点
さて、ダラダラと前提条件をお話ししてきたわけですが、「黄熙氏がIOCのバッハ会長に書簡を送付し、ゼロ回答を喰らった」という、ある種心温まるエピソードをふと思い出すきっかけを作ってくれたのが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に土曜日付で掲載された、こんな記事です。
韓国文体部長官「東京五輪は韓日首脳会談の良い機会」
―――2021.07.10 09:51付 中央日報日本語版より
これは、黄熙氏が9日、共同通信やAP、AFP、ロイター、新華社など外国通信社の特派員との懇談会で、「文在寅氏が五輪を機に訪日し、菅義偉総理大臣と首脳会談をする可能性がある」と述べた、とする話題です。
リンク先記事によれば、黄熙氏は文在寅氏の訪日日程が「すでに確定した」と述べたうえで、「五輪には平和と和解の意味が込められていて(首脳会談をするには)非常に良い機会」、などと述べたのだそうです。
バッハ会長に書簡を送付した同じ人物の発言だと考えると、なんだか非常に複雑な気持ちになりますし、また、「文在寅氏の訪日日程がすでに確定した」などと言われても、なんだか戸惑います。
もっとも、報じるメディア、報じられた時点、発言する人物によって、てんでバラバラな内容が出て来るのは、韓国政府のテンプレートのようなものでしょう。
というのも、文在寅氏の訪日に関しては、先週の『韓国大統領府「成果ない訪日」を心配か=韓国メディア』でも紹介した韓国メディアの報道だと、韓国大統領府関係者は「日本はまだ公式に文在寅氏を招待していない」、「実務次元の日程調整も行われていない」と述べていたそうです。
都合が悪いとムニャムニャと誤魔化しているのか
それはともかくとして、黄熙氏の発言で気になるのは、やはり、竹島地図一件でしょう。
これについて眺める前に、中央日報の記述に含まれた、派手な事実誤認について指摘しておきましょう。
「東京五輪・パラリンピック組織委員会がホームページの地図に独島(ドクト、日本名・竹島)を竹島と表示し」…
表示していません。
そもそも問題の地図には「竹島」などの名前すら入っていませんし、サムネイルだと確認できないほど小さく、拡大してやっと白い斑点みたいなものが出て来る、という代物です。どうして簡単な事実確認すらしないで記事を書いてしまうのでしょうか。
(※もっとも、韓国メディアに掲載される記事において、事実関係が無視されるのは、いまに始まったことではないのかもしれませんが…)。
それはともかくとして、中央日報の記事によれば、黄熙氏の発言は、こう続きます。
「韓国国内で五輪ボイコット主張が起きていることについて『政治とスポーツは分離して考えるのが重要だ』と一線を画した/『両国間の政治状況がどうなろうと五輪には五輪の精神があり、準備をしてきた多くの選手の人生もある』とし、参加すべきだという意見を出した」。
これなど、竹島一件では日本の譲歩もIOCの仲裁も実現しなかったからこそ、こうやってムニャムニャと誤魔化しているように見受けられるのですが、いかがでしょうか。
ほかの記事では文在寅氏訪日は「未定」
さて、それはともかくとして、結局のところ文在寅氏は日本に来るのでしょうか、来ないのでしょうか。
先週から何度も何度も何度も何度も同じことを繰り返していますが、中央日報に昨日掲載された次の記事によれば、「未定」なのだそうです。
日本は「首脳会談検討もできる」と言うが…訪日手放せない文大統領の意志
―――2021.07.11 09:27付 中央日報日本語版より
具体的には、李哲熙(り・てつき)政務首席秘書官が8日、ラジオインタビューで次のように述べた、とする話題も紹介されています。
「外交は成果があってこそ動くもので、何の成果もなく動くことはできない。(訪日で)何か成果があるならば当然(五輪に)行かなければならないが、何の成果もなく行くことはできない」。
これは、見方によっては、「現在の状況だと文在寅氏が訪日したとして何か成果があるとも思えないため、文在寅氏の訪日は実現しない」、という趣旨だと考えることもできるかもしれません。
先ほどの黄熙氏の発言では、文在寅氏の訪日が「すでに確定した」とされていましたが、韓国ではメディアや発言者によって内容が相互に矛盾しているのは一種のテンプレートのようなものでしょう。
結局、どうなるのか?
文在寅氏のブラックスワン・ストーカー仮説
もっとも、こうした細かい点を別とすれば、リンク先の中央日報の記事に、内容的に目新しいものはほとんどありません。要するに、文在寅氏が訪日するかどうかと、訪日した場合に菅総理が首脳会談に応じるかどうか、というものです。
ことに、当ウェブサイトでは先週の『菅総理、「文在寅氏来日なら「丁寧に対応」=記者会見』でもお伝えしたとおり、菅総理自身は8日の記者会見で、文在寅氏が「訪日される場合は外交上丁寧に対応する」と述べています。
この「外交上丁寧に」がなにを意味するかは微妙ですが、一部のメディアが菅総理が「日韓首脳会談に前向きだ」、などと解釈して報じており、これが中央日報の記事のタイトルにもある「日本は『首脳会談検討もできる』」の記述につながっているのだと思います。
ただ、韓国大統領府側はこの菅総理の発言を「外交的屈辱」だと考えているらしく、「不快だ」などとしながらも、「一刀のもとに『日本訪問はない』という発表をしなくなっている」というのが中央日報の見解でしょう。
これについて、中央日報は9日の電話取材で、韓国大統領府関係者からこんな発言を引き出したようです。
「文大統領が残り任期の間に最も力を入れている事案のうち核心は朝鮮半島問題という点に異見はない。ところが米バイデン政権が対中・対北朝鮮問題を解決するため韓米日同盟を強調し、日本との関係改善は最も緊急な事案のひとつに浮上した状況」。
要するに、訪日と日韓首脳会談実現に向けた文在寅氏のなりふり構わない姿は、米国・バイデン政権からの圧力、という可能性が出てきた、というのが中央日報の分析でしょう。個人的にこの見解には全面的には同意できませんが、その可能性は十分にあると思います。
真の狙いは「米国の圧力」ではなく…
ただ、やはり文在寅氏の「真の狙い」は、南北関係にありそうです。
報道や発言から垣間見える文在寅氏の思考パターン自体はかなり単線的であり、おそらくその本質は「親日」でも「反日」でもなく、単に「北朝鮮」にしか関心がないのだと思います(『文在寅氏、米誌インタビューで日本への言及は実質ゼロ』等参照)。
このように考えると、文在寅氏は「南北関係改善」のために日本を「利用」しようとしているというのは、かなり説得力のある考え方であり、そのなかでもとくに「ブラックスワン・ストーカー」論は、仮説としては非常に興味深いものでもあります。
といっても、この「ブラックスワン・ストーカー」論は、当ウェブサイトのオリジナルではありません。『鈴置論考の文在寅氏「ストーカー」説と韓国の「狙い」』でも紹介した、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏の議論の受け売りです。
鈴置氏のいう「ブラックスワン」とは、いわば、「滅多に発生しないが、もしそれが発生したら大変に大きな影響がある出来事」のことであり、具体的には北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)が日本にやってくることです。
もちろん、この期に及んで金正恩が日本にやってくる可能性はほぼ皆無でしょうが、ただ、任期満了を10ヵ月後に控えた文在寅氏にとっては、「南北関係改善」に少しでもつながるのであれば、可能性は低くても、掴めるものはなんでも掴んでおこうと思っているのかもしれません。
中央日報にいわせれば、その発想とは、おそらくはこうです。
「強制徴用・慰安婦問題など過去史と連動された懸案を解決するためには首脳間チャンネルが稼動しなければ難しく、文大統領もこうした事実をよくわかっている」。
普遍的価値の日本とは相容れない価値観
この期に及んで「首脳間チャネル云々」と述べている点を見ていると、韓国政府や韓国メディアが日韓問題の本質をまったく理解していない証拠であると悲観せざるを得ません。
当たり前の話ですが、日本は「普遍的価値」、すなわち「自由、民主主義、法の支配、人権」などを重視する国であり、その前提として、「ウソはつかない」、「約束は守る」、「善隣友好外交」などの基本的な行動を尊重しているのです。
自称元慰安婦に関する1月8日の国際法違反判決、自称元徴用工に関する2018年10月30日と11月29日の日韓請求権違反判決を筆頭に、韓国自身が法の支配をないがしろにするような判決を乱発しているという事実を、あまりにも軽視し過ぎているように思えてなりません。
さて、個人的な感想を申し上げておきますが、文在寅氏が東京五輪を機に来日するかどうかを巡り、日韓メディアがここまで騒いでいる理由が今ひとつ理解できません。
一部メディアの報道を信じるならば、かりに文在寅氏が日本にやってきたとして、菅総理が首脳会談に応じるとしても、それは儀礼的なものに留まり、日韓間の諸懸案について協議することはないのでしょう。
(※なお、個人的には、後日、「言った」「言わない」の議論に持ち込まれるリスクも高いことから、たとえ儀礼的なものであったとしても、日韓首脳会談自体を開催すべきではないと考えています。)
いずれにせよ、韓国による東京五輪ボイコットは実現しませんでしたが、まだいくつかの波乱が(一方的に)韓国の側からもたらされるのではないかと思う次第です。
View Comments (58)
日本政府が約束を守れと言っているだけなのに、勝手に盛り上がっている隣国。毎日のように訪日の記事を見かけますが、本当に面倒くさい民族ですね。プライドだけ人一倍高いから、自縄自縛に陥っている。それすら気づかないのだから、哀れです。全く同情しませんが。
[단독]靑, 도쿄올림픽 최후통첩.."현안 하나도 안 받으면 불참"
『青瓦台、東京オリンピックについて最後通牒。 懸案事項を一つも受けるつもりないなら
不参加!』
강태화 입력 2021. 07. 11. 15:38
https://news.v.daum.net/v/20210711153825849
しかし、招待もしていないのに、「慰安婦・徴用工裁判」「福島の処理水」
「輸出管理」の問題について、少なくとも1つが議論される『正式会談』が
文大統領訪日の条件ニダ! 来週初めまでに、日本政府は回答をよこすニダ!
とか、強気に最後通告をつきつけてくるとか、何様のつもりなのでしょうか?
本当に、毎回、毎回、謎の発信をしてくるのですけれど・・・・。
ここまで図々しくできる理由は、何なのでしょうか?
[단독]靑, 도쿄올림픽 최후통첩…"현안 하나도 안 받으면 불참"
https://news.joins.com/article/24102867?cloc=joongang-home-toptype1basic
[중앙일보] 입력 2021.07.11 15:37 수정 2021.07.11 15:42
中央日報原文の韓国人たちのコメント欄が荒れていて興味深いです。
『No Japan運動を主導した大統領府が、ムン・ジェインはなぜ、あのように日本
に行きたいと、日本に懇願するニカ?』
『国の品格を台無しにするニカ?』
『昨日は行かないと言って、今日は呼んでくれと言っている。』
『建国以来、こんな無能な大統領見たことないニダ。』等々。
匿名希望の平民 さま
>ここまで図々しくできる理由は、何なのでしょうか?
「韓国外交は内政の延長」で、朝鮮半島の論理(韓国は正義だから)で外交しているからでしょう。
日本人から見れば「バカだから」「偉そうな乞食だから」になるんじゃないかな。
>本当に、毎回、毎回、謎の発信をしてくるのですけれど・・・・。
>ここまで図々しくできる理由は、何なのでしょうか?
私は韓国は集団として自己愛性パーソナリティ障害の行動を呈する事が多いと思います。
あの方達は自身の劣等感の裏返しとして、日本に対して傲慢に振舞い、見下す事によって、根拠の無い優越感を維持しようとしているでしょう。
結果として不可思議でズーズーしい発言となります。
これは修辞疑問文だとお見受けしますが、そうではなく純粋に疑問なのであれば、その原因は、韓国人の行動を日本人の価値観で評価しようとすることにあります。
韓国人には韓国人なりの行動原理があります。それを理解しておけば、今回の事例も、原則を踏まえたいつもの韓国人らしい行動です。特に驚きはありません。
もちろん、日本人としては、理解はしても共感や同意はする必要がありません。ただ心穏やかに。いつも通りの韓国人を観察するのみです。
すみません。大変失礼ながらついでに実験させてください。
上のコメントでは、匿名希望の平民様の発言を<q>タグで挟んでみましたが、これは使えないようですね。
BlockQuoteタグのみ:
BlockQuoteタグの内側にPタグ:
どうなるでしょうか。
Pタグは必須ではないように見えます。
韓国には「韓国人の日本人攻略マニュアル」というものが、あるらしいです。
文政権は、いわゆる「知日派」と呼ばれるまともな人材をすべて追い出し
このマニュアルに従って、対日外交をしているのでしょうか??
明治7年4月に日朝交渉に臨んでいた日本側代表が確認した、300年以上前
(江戸時代)に作られた朝鮮人が交易における、日本人懐柔法の手引書によると
「朝鮮人が日本人をあつかう6ヶ条の秘訣」 (公文別録・朝鮮始末第三巻の91頁に記載)
一、 遜辭 屈己接人辞氣温恭 (腰を低くして接する)
一、 哀乞 勢窮情迫望人見憐 (憐れみを誘う態度を取る)
一、 怨言 失志慷慨激出怒膓 (狂ったように怒る)
一 、恐喝 将加威脅先試嚇動 (威圧し脅す)
一 、閃弄 乗時幸會翻用機関 (あらゆる機会に乗じて翻弄する)
一、 変幻 情態無常眩惑難測 (ころころ態度を変えて惑わす)
現在は・・・さらに進化しているようです。。。
1、日本人が動揺したらそこには「金の沸く泉」があるニダ。
2、過去に反省する日本人は金が貯まらない。チャンスニダー。
3、日本人が反論してきたら、大きな声で怒鳴りつけるニダ。
4、日本のマスコミを味方にするニダ。(日本のマスゴミは、多数の韓国籍がいる)
5、体面を気にする日本人は国際社会で叩けば金を出すニダ。
6、日本人に弱みを見せるな。
7、日本人の女は、まず先に犯せ。
8、生粋の日本人など居ないと奴らに吹き込めば従順になるニダ。
9、日本国内での公害問題でも何でも、言いがかりをつけて賠償させろ。
10、日本人が正しいことを言い始めたら、関係の無い間違いを指摘してはぐらかせ。
11、親日はすべて抹殺。親でも殺せ。
12、愛国心は法律を超えるニダ。
13、金も技術も無いときは甘い声で日本に近づけ。
14、外国の同胞はいい道具になるニダ。
15、謝罪するくらいなら相手を訴えろ。
16、強い奴には媚びておけ、いつでも裏切れる。
17、商談の後は女にたっぷり接待させろ。
18、騙せない相手でも、一度試して見ることは常識ニダ。
19、被害を受けたら必ずいつか倍返しにしてやるニダ。
20、相手がうんざりするまで交渉は引き延ばせ。
21、贈り物を拒否して困惑させろ、日本人ならもっといい物持ってくる。
22、手のひらは反すためにあるニダ。
23、日本人の前では困って見せろ。
韓国外務省当局者が日本側対応を非難し強い遺憾の意を表明したとの記事が昨夜 NHK に出ています。発言者を明らかにしないことを条件に口から出たとおり言葉が報道されているのでしょう。
これは泣き言ではあるまいか。そうなら韓国外務省が言い分を聞いて欲しい相手は日本でない。政権内部のごたごたのあらわれだから。
すなわち、うまく(行かない|行きそうにない)のを日本のせいにしてみた。根拠を示さないで。エクスキューズ、言い訳の一種です。いつものことではありませんか。
そして、日本であれ韓国であれ、そんな評判が巷間に広まってしまうなら、職業人としての活動余地はますます狭まっていくのでしょう。
このNHKのニュースですね。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210711/k10013133901000.html
はてね、流出した内容って何でしょう?
匿名29号様
>はてね、流出した内容って何でしょう?
韓国側からの「訪日・会談要請(頭を下げた)の事実」なのかと。
「請われて仕方なくの訪日」にしたい彼らには、認め難い展開なのでしょうね。
もしかして「韓国側から首脳会談を要請された」と報じることで、彼らに「決まったことはない!」との即時否定をさせたりしたのかな??(訪日のハードルは高まるばかりです・・。)
> 中国や韓国、北朝鮮はときどき、日本などに対し、とんでもない難癖をつけてくることがあるのですが、
日本は・・・これら日本に近づこうとする時・・・これら3国のこの特性を生かして、正論(=3国が受入れられないこと)をかまして、やつら自身が自ら近づいてこれないようにするべきではないでしょうか。
丁寧な無視とか対応とかばかりでなく、こちらも時にはアクティブな対処をするべきでしょう。
訂正
・・・これら日本に近づこうとする時・・・
↓
・・・これらの国が日本に近づこうとする時・・・
まあ、韓国政府が日韓関係改善は米朝関係改善につながると信じているのは確かでしょうね。米韓関係が如実にねじれていることを現していますね。藁扱いされて迷惑なので米国は変なリップサービスをしないでください。
せっかくムンたんの呪いの言葉により両首都圏でコロナが蔓延しているのですから、来ない口実には事欠かないので無理してこない方が国内的にも良いと思うんですがね。ってか、オリンピック開催を祝賀しに来るのになんで成果が必要なのか。素直に自国他国の選手を応援すればいいのに。
>韓国外務省当局者は11日、文在寅大統領が検討している東京五輪の開会式出席と日韓首脳会談の開催に関連し、日本政府当局者が外交当局間の協議内容を日本メディアに一方的な立場や見解と共に流出しているとして「強い遺憾」を表明した
11日の時事通信の記事にそうありますが、日韓の協議内容がリークされた記事など私、見たことないのですが見逃してるのでしょうか?
どのマスコミが何日の何時何分に協議内容をのせたのか知りたいのですが⋅⋅⋅
マウントを取りたいがための虚報と思います。或いは、韓国内の新聞にさも日本側情報らしく騙った記事を出しているところがあるとか。
でしょうね。千に三つしかほんとの事言わない、せんだみつおよりひどい不健全丸出しの韓国マスコミです。
ごねれば日本が軟化するって思ってるんでしょうね。
ただ、日本として軟化しなきゃいけないような要素は全くない。嫌なら来なくていいよを最後まで突っぱねることができる。
それでも訪日して儀礼会談だけして帰るのか、やっぱ来ないのか。どっちにしろ韓国の負けは確定と思います。
ブラックスワン・ストーカー説も魅力的ですが、文大統領の今回の訪日騒動もゼロ体100理論の一環と思えます。即ち日本には会談を行う気ゼロに等しいのに、内容に条件を付けたり観測記事を盛んに出して、何とかマウントをとりつつ会談を成立させれば、これもゼロ対100の一つの成功例と言えなくもないかと思います。
現状日韓両政府の協議は、
韓国 オリンピック開会式に参加する
日本 他国の首脳と同様の面談をする
という状況のようです。漏れている情報というのは、この事だと思いますが、韓国マスコミも散々さ報道してますので、韓国側の遺憾は言い掛かりだと思います。
昨日の外交部の発表だと、韓国側の要求は現状プラス「韓国を特別扱いして、首脳会談で懸案の協議をするニダ」のようです。
自分から交渉のハードルを上げてしまう、朝鮮人の悪い癖ですね。
今週末には、結論を出すと言ってますが、「文大統領が訪日するする詐欺」という瀬戸際外交でしょうから、韓国はぎりぎりまで条件交渉を続けるでしょうが、現状の内容で来日するとなると日本に屈した形になるのでしょう。
現状なら「文大統領は首脳会談が無いから来日しない」は、ハズレのようですが、韓国世論は訪日に対してネガティブですので、お土産無しで訪日するかどうかは、最後までわかりません。
またその後に外相会談を計画中の報道も有りますが、韓国の願望でしょう。
10か月後には監獄行き間違い無しの文大統領ですから、彼の悲願である南北統一に繋がるのなら、日本の首相にも会い、上手くすれば任期中に金氏と日米(米は日本の説得次第)とで首脳会談が出来るーーーと腹黒い企みでもしてるんでしょう。
わざわざ五輪に来て内容の無い会談を菅総理にするのは不自然です。会談をすれば、日本が橋渡しすることになるかもしれない。「死に体」の文に訪日をさせてはなりません。
文化体育観光部の黄熙局長は文在寅氏の訪日日程が「すでに確定した」とブラフを流してます。また「政治とスポーツは分離して考えるのが重要だ」と言った。言う事がてんでバラバラで、お話にならないよ。いずれにしろ文大統領は来なくて良い。